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 たどり着いた先はコンクリートの地肌が剥き出しの、肌寒い一室だった。将来はマンションでも最も高級な部屋となるのだろうが、今は冷たい剥き出しの肋骨のような物だ。
 四角く開いた窓枠から、冷たく外の風が吹き込んできている。
 しかし、そんな環境にも関わらず室内は熱かった。

「くそ、なんだよ。顔を見せろよ。畜生、この間からさっぱりだ。もう何時間もこうしているのに」

 肩に毛布をかぶって座り込み、見るからに高級な望遠レンズ付きのカメラをのぞき込んでいる男がいた。ぶくぶくと太り、見るからに暑苦しい男だ。
 ぶつぶつぶつぶつ、誰かに話しかけているかのように独り言を呟いている。

 君は認めたくなかったが、どこか見知っているその雰囲気に内心苦笑した。
 出会う場所と状況が違ってさえいれば、もしかしたらわかりあえたかもしれない同じ趣味を持つ存在を前にしては、そうせざるを得ないだろう。
 しかし、いつまでもこうして見苦しい男の後ろ姿を見ているわけにはいかない。
 君は男のすぐ後ろにまで近づくと、エヘンと大きく咳払いした。ビクリと、狐に睨まれたリスのように男の体が震える。

「な、なんだなんだ!? 誰だよ、君は!? なんだよ、俺は何も悪いことしてないぞ」
 この手の手合いは、どうしてまず言い訳をするのだろう。
 余計疑われるだけなのに。
 君は出来る限り厳めしい顔を保ったまま、男に質問をした。

「こ、ここで何してるって…どうしてそんなこと言わないといけない」

 それは全くその通りだ。
 しかし、だからといってこんな奴の意見を尊重する必要はない。
 交渉するというのも手段の一つだが、あいにく君は彼を喜ばせるような情報も持ち物も、今持っているとは言えない。となると、出来ることは一つだ。

 君のまとう気配に気がついた、太った男はその外見からは信じがたい素早さで ――― でもやっぱり遅い ――― で後ろの飛び下がった。今まで腕力に自信のある連中から、散々小馬鹿にされるような生き方をしていた。だから危険に関する嗅覚が発達しているのだ。

 尤も、君に接近されるまでこの場にいた時点であまり優れた鼻とは言えないが。




太った若い男
技術点: 体力点:

 この戦いに限り、例え君が武器を持っていなくても、不健康なこの男は痛みに弱いため、素手でも2点のダメージを与えることが可能だ。武器があれば3点になる。
 カメラを武器にすることも可能だが、その場合、使用後にカメラは壊れて無くなってしまう。その点に充分に留意せよ。
 戦え。この戦いから逃げることは出来ない。
 もとい、この戦いからすら逃げるようではこの先どんな小細工を労しても、君は何事も成しえることは出来ないだろう。




 負けたら。

 勝ったら。
 もし、君がスタンガンを持っているのなら、問答無用で君は勝利することができる。

 もし君が拳銃を持っていて使うつもりなら。






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