043
「ぎゃあ、ぎゃあぎゃあ」 散々に叩きのめされ、男は地面に転がって豚のような泣き声を上げた。君にサドの素質はないはずだが、奇妙に嗜虐芯をそそられる男の泣き声に、君は再びつま先を男の鳩尾に叩き込んだ。 「ひうぐっ、ゆ、ゆるしてよ」 無様に泣きわめく男に対し、君は欠片も憐憫の情は浮かばない。 もしかしたら違うのかも知れないが、人の獲物を横取りしようとするような不埒な奴はもっと殴りつけても良いのだ。勝手な意見だが、君は自分の考えに満足した。 さて、これからどうするべきか。 (まず何をしているのか聞き出さないとな) だいたい予想はついているが。 「しゃ、写真を撮っていたんだよ」 やっぱり。と思いつつ、君は更に続きを促した。一体誰の写真を撮ろうとしていたのか、その対象によっては、彼はもっと酷い目にあうだろう。 「お、女の子だよ。ちょっと前に見かけた、名前も知らないけどとても可愛い」 対象が予想と違ったことに内心安堵しつつ、同時に更に殴る理由が無くなったことで君は複雑な心境になった。となると、彼の目標はマユミではなかった訳なので、君が期待しているような写真を持っていないかも知れない。 (まあ、確かめるだけ確かめてみようか。それともここから離れるか) 聞くだけ時間の無駄だ。 君は更に質問した。 |