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 更に情報を聞き出した君は、予想外に有力な情報を得たことに狂喜していた。
 男が差し出した戦利品…。それには彼の守備範囲を遙か彼方に外れた幼女の写真が大半を占めていたが、いくつかは彼にとってははずれの写真だった。しかし、うち数枚に君は頬をゆるめるのをこらえられないでいる。

「そ、それは照準合わせる前、たまたま撮れた写真なんだ…」

 それはエプロンを付けたマユミが洗濯物を干している写真だった。
 何気ない日常の一コマであるが、君が想像したこともない明るい表情を浮かべている。満ち足りて、幸せそうに…。

 こういう表情も出来るんだな、と感慨深い物を感じる。
 あの時、地球防衛バンドを結成したときは、彼女とは一言も用事以外では口をきくことがなかった。そもそも、彼女はシンジ以外を露骨に避けていた。音楽室に2人だけになったときなど、兎みたいにビクビクして非常に気分を害した物だ。
 今思うに、彼女は自分を心底恐れていたのだろう。

 思い出して不快に顔を歪めながら、他に彼女の写真がないか男に尋ねる。

「あ、ああ。たまたまファインダーに入ったんだけど、良い絵だったから」

 男が差し出した別の写真には、マユミのもう一つの一面が写っていた。
 まだ寝ぼけ眼のマユミが、カーテンを開けて控えめなあくびをしている。
 しかし、君が生唾をのみこむのは他に理由がある。



 君が生唾を呑んだ理由は…





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