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君は銃を取り出し、男の足下に銃口を向けた。 脅しに一発撃ち、それで男の抵抗の意志を完全に刈り取るために。 男は君の取り出した無骨な鉄の塊に気づき、ひぃっと息を呑んでその場に座り込んだ。いや、座り込んだのではない。股間が黒く湿り、水たまりがゆっくりと広がっていくのが見える。 腰を抜かしたのだ。 だらしがないな、と薄笑いを浮かべながら君は銃口を向けた。 指が引き金に掛かり、重い鉄をゆっくりと引き絞る。 カチリ…バン 放たれた銃弾は男の足下のコンクリートを傷つけず……代わりに男は物凄い悲鳴を上げた。 そしてその場に崩れ落ち、ピクリとも動かない。 うつぶせに倒れた男の下から、ゆっくりと赤い水たまりが広がっていくのが鮮やかに網膜に飛び込んでくる。 君は混乱し、右手の中の銃を親の仇のように見つめた。 まさか! と信じられない思いで全身が痙攣する。 (この至近距離で、まさか、外すなんて、そんなこと!) 信じられないと思っても、現実は厳しい。たとえ昔サバイバル訓練をしていたと言っても、所詮は玩具の銃を持ってのを駆け回った子供のお遊びにすぎない。君は人生というレールが、途中で寸断されるのを明確に感じ取っていた。人を殺しては…さすがに逃げることは出来ない。 「お、おい嘘だろ? ふざけてるだけ…おい、返事しろよ!?」 返事はない、ただの屍のようだ。 |