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 君は努めて平静に、そして気さくに警官に接することにした。言い訳は既に考えてある。小回りの利く自分自身の頭脳に感謝をしつつ、君はゆっくりと口を開いた。

「どうしたんですか、お巡りさん」
「それはこっちの台詞だよ。君、いったい何をしとるのかね?」

 警官の言葉に、今気が付いたと言わんばかりに肩をすくめると、君はゆっくりと先ほど君が登ろうとしていた木を指さした。そしてゆっくりと上方へと向けていく。それを警官の視線が追いかけていき、とある所で制止した。

「鳥の巣か…」
「ええ、少し懐かしくなって、ふとガキの頃を思い出しまして。
それで、年甲斐もなく巣をのぞき込んでみたくなりました。もっとも、ちょっと登った所でずり落ちてしまいましたが」

 同情を誘うように膨れた腹をなでて君は力無く笑った。そして、もうやんちゃだった少年ではないのだと、態度で言い添える。
 警官は鳥の巣と、そこから聞こえてくる雛の声、そして君の顔とを交互に視線を向ける。君の言葉の真意を測りあぐねているのだろう。確かに、いい年した大人が街路樹に登るなど非常識で人騒がせだ。だが、だからといってここで職質するほどのことだろうか。
 君は警官が面倒事を嫌っていることを見て取った。
 君の性根を確かめるように、警官は目をいっそう細くする。心の中で唾を何度も飲み込みながら、君は人騒がせなことをしたことを何度も謝る。

 運試しをせよ。


 サイコロ2個を振れ。
 出た目が君の運点と同じかそれ以下の場合は ……… こちらへ

 出た目が君の運点以上の場合は ……… こちらへ






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