015





 警官の君を見る目は…。





 お世辞にも納得したとは言えない目だ。

 だが幸運なことに警官はここで君を職質したり、交番まで引っ張っていくのは無駄なことだと判断した。
 怪しいことは間違いないが、それよりも今はやらなければならないことがあるのだ。
 最近ここらをうろつく変質者を見つけなければ。
 人騒がせと言えば人騒がせだが、それでもやったことは大したことではない。夏休みともなれば、子供の二三人がもっと騒々しい木登りをやっている。童心を取り戻した大人の木登りを見るのは初めてだが。

「…君は幾つだね?」
「2×歳です」
「大人が情けないことをするんじゃないよ。まあ、気持ちは分からないでもないがね」
「はあ、すみません」

 流れが良い方向に行っている。
 君はここぞとばかりに頭を下げた。影になった口元をにやりと歪める。この程度で許されるなら、土下座だってしてやろうさ。
 君の一見、礼儀正しい行動に警官はすっかりと油断してしまう。今時、なんて礼儀正しいのだろうとでも考えたりする。なんと人を見る目がない。

「そこまで卑屈にならなくても良いよ」
「いえ、本当にすみませんでした」
「…もう、良いよ。あ、そうだ君、この辺で怪しい人影を見なかったかね?」

 内心、心臓がドキリとするが…君はそれを作り物の笑顔で覆い隠した。

「いいえ、知りません。セールスでここに来たばっかりですから」
「そうか。最近この辺は変質者がうろついていると警戒中なんだ。あまり、変なことをしないでくれたまえよ」
「はい、全く持って申し訳ありません」


 警官は再び君に注意すると、君を解放して巡回に戻っていった。
 信じがたい事だが、君は旨く誤魔化すことが出来た!

 この幸運に感謝せよ!
 だが、毎度々運点に追加がもらえるほど甘くはない。
 いずれにせよ、あまりここにいるのはよろしくない。
 既に一連のやりとりのせいで君はここでは目立ちすぎてしまった。堂々とマンションに近づくのは、控えた方が良いと君は判断する。




 そそくさと君はその場から立ち去った。






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