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 覚悟を決めた君は木の幹に手を置いた。
 脳裏に「豚もおだてればなんとかかんとか」と言葉が浮かぶ。豚だって登れるなら、人間ケンスケにだって…。
 根拠無くそう自分自身を励ますと、君は両手に力を込め、足を木にかけようと…かけようと…して結局果たせなかった。

(ちっ、なんてこった)

 予想外のことだったが、君は自分が思っていた以上に体が重くなっていた。
 履いている靴が営業用の革靴であることも要因の一つだ。
 そもそも背広姿で木に登ろうと考えるなど、冷静に考えればおかしいことにすぐ気がつくはずなのに、そんなこともわからないほど焦っていたとは。
 凌辱することばかり考えて気が急いて、そこまで頭が回らなかったのか。
 君の頭上を「アホー」と鳴きながらカラスが飛んでいった。

 以上、様々な要因、特に太ってしまったことから判断して、木に上ることはかなり難しそうだ。

 なんて事だ…。

 しかし、ここで諦めるわけには行かない。君は覚悟を決めた。
 ここで逃げたら最後まで負けなんだ。心の中で強く念じる。
 願うことをやめたら、諦めたらそこで終わってしまうのだ。
 だから君は逃げない。

 サイコロ2個を振れ。
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