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 登れないから困っているんだろうが!

 足掻いているうちに、本当に人がこっちに向かってくるのが目に入った。
 遠目からでもわかる独特の青い制服、間違いない。警察官だ。何ごとか叫んでいるのは、そこにいろとでも言ってるのだろう。勿論、このままここにいたら明日は新聞に小さく名前が載る。
 言い訳が付かないほど怪しいものを所持しているからだ。手枷、縄…。


『白昼の変質者、おだてないのに木に登る』



 やったぜ、ちょっとした有名人だ!

 などと思うはずもなく、君は慌てふためいた。
 一言で言うならパニックだ。夏の陽気で茹だった脳内を、ぐるぐると雑念が駆け回る。警察が来るにしたって、タイミングがあまりにも良すぎる。世の中全てが俺をはめようとしているのではないのか!?



(どうしてこんな時に!)

 答えを言えば、誰かさんが夏場のコート男のようにマンション周辺を彷徨いていたからなのだが。早い話が自業自得だ。
 ともあれ、君に迷っている暇はない。


 どうする?

 迎え撃つ

 逃げる






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