【萩原視点】
「…………あの人は一体、何を考えているんだ?」 天城先輩からプレゼントされた品々を見て、俺は頭を悩ませた。 鞄の中には、まず、浴衣が入っていた。ご親切なことに二人分あり、おそらく十夜とともに着ろということなのだろう。十夜用の浴衣は白を基調とし、裾には慎ましく竜胆の花があしらわれている。清楚なイメージの十夜にきっと良く似合うだろう。 一方、俺用のものは、濃紺が地色とした渋い柄の浴衣だった。布の肌触りもよく、造りもしっかりとしていて、けっして安物ではないことが窺える。 来週には山下公園で花火大会が催される予定なので、さっそく十夜と一緒に浴衣を着て行こうと思った。 浴衣の下に身に付けるように、白いTバックと黒いTバックのパンツも用意されていた。 準備がいい。 浴衣を着ても、下着のラインが分からないようにとの配慮なのだろう。……もちろん、それ以上の配慮もあると思うのだが……。 白いTバックを身に付けた十夜の姿を思い浮かべ、俺は口元を緩ませた。真っ白い肌の十夜に純白の下着……。しかもTバック……。 ……色っぽいぜ、十夜。 想像だけで俺のナニは硬くなった。 いや、これはたんなる想像なんかじゃない。確実に約束された未来図なのだ。 ……Tバックっつーことは、下着脱がせなくても入れられるっつーことだよな。こう、紐をずらして、ずぶっと……。 「…………」 我慢できなくなり俺は畳の上で胡坐をかき、白いTバックの下着を眺めながら、自分の性器を乱暴に扱き始めた。 ……十夜……可愛いぜ……。 下着を身に付けた十夜の艶やかな姿を妄想しながら、俺は右手を激しく動かした。 天城先輩のおかげでえっちに積極的になった十夜は、一体どんな痴態を見せてくれるのだろう。 「ああんっ。萩原、もっとぉ……。そこぉ……っ!」 十夜はまろやかな尻をいやらしく振りながら、俺が与える快感を貪っている。 ……ふっ……。十夜、可愛いぜ……。 「ひぃんっ。そんなに……あっ……」 俺が深々と身を沈めると、十夜は甘い悲鳴を上げて身体を淫らにくねらせた。 ……くううううううううっ。ステキだ、十夜! 可愛いぜ、十夜! 愛してるぜ、俺の天使!!! 十夜の可愛くて綺麗で艶やかな顔を思い浮かべながら、俺は自分の手の中で欲望を弾けさせた。 「…………」 俺は手にべったりついた自分の体液をティッシュで拭いながら、荒くなった息を整えた。 ……しまった。勿体無いことをした。無駄弾(むだだま)を撃っちまった。 もうすぐ実物の十夜が帰ってくるというのに俺ってヤツは……。 十夜相手だったらいくらでもイけるので、一度ぐらいイったところで構わないと言えば構わないのだが。 「…………とりあえず、他に何が入っているかチェックするか」 浴衣のほかに、白衣と聴診器が入っていた。 ……これはお医者さんごっこでもしろということか? 十夜に着せろといわんばかりに看護婦のコスチュームもあった。これもまた、十夜に似合いそうな、純白な衣装……。白いストッキングとナースキャップまでオプションで付いている。 ……天城先輩。俺は心からあんたを尊敬するぜ……。 俺は拳を握り締め、天城先輩に対する尊敬の念を一層強めた。 なんだってこう、ソソル衣装を探し出して来られるのか。それは天城先輩の優れた観察眼と推察力の賜物に他ならない。 だが、鞄の一番下に入っていた『衣装』の意味が分からなかった。 「?」 取り出して広げてみる。どうやら軍服のようだ。対となる十夜用のものはないようだ。 「……着てみろっつーことだよな?」 大きさから言って、俺が着るためのものであることは間違いない。 だが、これを着たから、どうだっていうんだ? かの有名な、ナチス親衛隊の黒服のようだが。 ジャケット、ズボン、ブーツ、制帽、ベルト、たすき、腕章、白のYシャツ、黒いネクタイ、白手袋、その他もろもろ。細かいパーツまで揃っている。ずいぶんと本格的だ。金も手間も、さぞかしかかっているだろう。 「…………一体、何を考えているんだ?」 分からない。 天城先輩の考えが分からない。 自分は所詮、小市民だということを俺は悟った。天城先輩のスケールのでかさに打ちのめされる。 「…………とりあえず着てみるか」 それ以外の使い方がないのだから、そうするしかないのだろう。俺は天城先輩の真意を探るべく、衣装を身に付け始めた。 【十夜視点】 「えー?」 ……なになになになに? なんなの一体!? 俺、すごく驚いた。 だって家に帰ってきたら、萩原、着てるんだもん。 軍服を! ……え? なんで? どうして?? あれって、ナチス親衛隊(SS)の制服だよねぇ? なんで萩原ったら、そんなもの着てるわけ? 「……???????」 混乱。 ……なんだって萩原、そんな格好をしているの? だってさ、ふつーに日常生活送っていたら、着る必要なんてまったくないよね。 ……なんで? どうして?? そもそもあの服、どこで手に入れてきたわけ? なんかめちゃめちゃ本格的。 ………………でも……。 「……カッコイイ」 俺は自分の口からぽろりとこぼれ出た言葉に自分で赤面した。 ……でもでも、萩原ったらすっごく衣装が似合ってて、とーってもカッコイイんだもん! 「おかえり、十夜」 俺の姿に気がついた萩原は、俺の顔を見て優しそうに微笑んだ。 ……うわっ。それ、反則! そんなにカッコイイ格好をして、そんなふうに微笑まれたら俺……。 「どうした十夜? 顔が赤いぞ?」 萩原は心配そうに、俺の顔を覗き込んできた。頬に萩原の息がかかるのを感じて、俺はますます顔を赤くした。 ……ああ、もう! そんなふうに顔近づけないでよね! すっごくドキドキしちゃって、俺……。 「十夜?」 「っ!」 萩原の不思議そうな顔と声を無視して、俺は萩原の首にしがみついた。 ……だってすっごくカッコイイんだもん! ……カッコよくてドキドキして……俺、目、マジで潤んできた。 ……俺、今、萩原に欲情してる……。 ……萩原に触れたくてたまらない。 ……こんなにカッコイイ男が、俺の恋人なんだ。 ……萩原が……欲しい。 ……萩原が俺の恋人なんだって、しっかり、確かめたい……。 「萩原ぁ」 俺は甘えた声で萩原の名前を呼んで、軽く目を閉じ唇をうっすらと開いた。萩原はすぐに俺の望みに気が付いてくれて、俺の唇を優しく吸ってくれた。 「あんっ……」 萩原がソノ気になるように、俺はわざと甘い声を漏らす。 ……強く抱きしめて欲しい。キスして欲しい。 ……もっと俺に触れて欲しい。 ……愛してるって、言って欲しい。 「十夜、カワイイ……」 「ん」 顔中にキスされながら、背中を優しく撫でられる。すごく気持ちいい。身体も心も満たされる。 ……俺、萩原のこと、好きだなぁ。 シアワセ。 好きな人の腕の中にいるって、死にそうなほどシアワセ。 「好き」 想いが溢れて胸が苦しくて、俺は破裂しちゃう前に好きって気持ちを言葉に変えた。 でも、これだけじゃ、足りない。 だって俺、本当に萩原のこと好き。 言葉だけじゃ俺の気持ち、ちゃんと伝わっていないと思う。 だからもっと萩原に強く抱きついて、自分から唇を重ねた。ううん、『重ねる』、じゃなくて、萩原の唇を『奪った』。舌を絡ませ唾液をすすって、濡れた音のするえっちなキス。 ……まだ。まだ、足りない。 ……キスでも追いつかない。 ……俺の想いに間に合わない。 ……もっと、もっと、もっと……! 気がつけば俺は萩原を畳の上に押し倒していた。軍服姿の萩原は、驚いた顔で俺の顔を見上げている。 その途端、羞恥が蘇ってきた。 ……わー。俺ってば、なにやってんのさー。萩原、驚いてるし……。 ……うわああん。恥ずかしいっ。 「ごめんっ、萩原っ」 慌てて萩原の上からどこうとするけど、その前に萩原に腕を掴まれて止められた。 「そんなに俺が欲しかったのか?」 萩原は唇の端をちょっと吊り上げ、意地悪そうな目をして俺の耳元で囁いた。 う〜。萩原、そのカッコでそんな鬼畜そう顔をするとハマリすぎ! カッコイイけど怖いよ。Sっぽいカンジ。鞭とか持ってたら似合いそう。似合うけど、俺、痛いの嫌いだから、SMはよそうね。 なんてくだらないことを考えながら、俺は萩原の唇に吸い寄せられるようにキスをした。俺からのキスを萩原は大人しく受けていた。 「……萩原、そのカッコ、すごく似合う。俺、ドキドキしちゃった……」 俺は正直に告白した。 「似合うか?」 自分じゃ分かっていないみたいで、萩原は軽く首をかしげた。 ……はうんっ。萩原、カッコイイっ!!! 「すっごく似合う! ね、萩原、写真撮らせて!」 「写真?」 「うん。……ダメ?」 「別に構わないが」 「わ。やった!」 軍服姿の萩原なんて、滅多に見られるものじゃないし。絶対、写真撮っておきたいよ。 それにしても……なんで萩原、軍服なんて着ているんだろう? あまりにも萩原がカッコイイからつい興奮しちゃったけど、今もしちゃってるけど、でも、不思議だよね。 なんで? どうして?? 「ところで萩原、なんで軍服着てるの?」 「サービスだ」 「え?」 「十夜を喜ばすためだ」 「……え?」 ……そりゃ、まあ、喜んだ、かなあ……。 萩原のきりっとした顔立ちに、禁欲的な制服が似合ってて、ついうっとりと眺めてしまう。白い手袋を嵌めた手で髪をかきあげる仕草もさまになっていて、胸の辺りがきゅーっとちゃう。 その、胸だけじゃなく、下のほうも反応しちゃったりなんかするんだけど……。 「えーと、じゃあ、どこで手に入れたの?」 「秘密だ」 「えー? なんで秘密さ。教えてくれたっていいじゃん!」 「十夜、タネを知ったら魔法じゃなくなるからな。ナイショだ」 萩原はカッコイイ姿をしてとびきりステキな笑顔見せながら俺に言った。 【萩原視点】 ……なるほど。こういう格好をすると十夜は喜ぶわけか。 頬を赤く染め、潤んだ瞳で俺を見上げる十夜の姿を観察しながら、俺は天城先輩の意図を理解した。 俺が十夜の裸エプロン姿や猫耳姿に感動したのと同じようなものなのだろう。つまり、十夜もこの俺に欲情してくれているというわけだ。 ……ずいぶんオイシイ状況じゃねぇか。 俺は内心でほくそ笑んだ。 天城先輩には感謝してもし足りないほどだ。 「萩原ぁ」 十夜は甘えた声で俺の名を呼び、うっすらと唇を開いて目を閉じた。十夜の「ちゅーして萩原」のポーズは可愛らしくて俺はくらりとした。 ……食っちゃいたいぐらい可愛いぜ。 十夜の可愛さと色っぽさに酔いながら、俺は十夜の唇を軽く吸った。柔らかくてしっとりしていて、十夜の唇の感触は気持ちイイ。 「あんっ……」 キスの合間に十夜は甘い声を漏らす。俺の体にしっかりとしがみつき、積極的に俺のキスに応えようとする。 「十夜、カワイイ……」 俺の囁き声に、十夜は照れたように微かに微笑む。 ……ああ……。十夜、お前は、なんて可愛いんだ……。 俺は十夜の体の線を手の平で確かめながら、十夜の顔中にキスを落とした。 頬も、額も、瞼も、鼻も、唇も、十夜はそこら中がカワイイ。全身がカワイイ。カワイクてたまらない。 「好き」 十夜は少し泣きそうな切ない声で、俺への気持ちを訴えた。 そうか。 十夜は俺のことが好きなのか。 知っていたはずの十夜の気持ちを、俺は新鮮な思いで受け止めた。 嬉しい、と思う。十夜が俺に惚れていてくれているということが。 自分が十夜に惚れて貰えるほどの魅力がある男だとは思えない。だが、俺は今、十夜の気持ちを素直に信じることが出来た。 俺が十夜を想っているように、十夜も俺のことを想っているのだ。 十夜は自分から俺の唇に唇を重ねてきた。触れるだけじゃない、ちゃんと舌を使ったディープなキスだ。大胆に十夜は、俺の舌に舌を絡ませてきた。二人の間で濡れた音が響く。 「…………っ!?」 いきなり畳の上に押し倒されて俺は驚いた。 十夜は頬を染め息を荒くし、欲望をあらわにした顔をしていた。俺の肩を押さえつけて俺の体に伸し掛かり、自分の望みを隠そうともしないケダモノの目をした十夜は美しかった。 普段の、穢れない天使のような顔をした十夜とは別人のようだ。 ……それほどまでに、俺を求めてくれるのか。 俺は息を詰めて十夜の姿に見入っていた。 十夜ははっと我に返った顔をして、羞恥に顔を真っ赤にした。大胆な自分の行動が恥ずかしくなってしまったらしい。恥ずかしがる必要などないのだが。 「ごめんっ、萩原っ」 恥ずかしさのあまり目に涙を滲ませ、俺の上からどこうとした十夜を、俺は腕を掴んで引きとめた。 ここはやはり、俺を押し倒した責任というものを取ってもらわねば。 「そんなに俺が欲しかったのか?」 十夜が恥ずかしがることを承知で、俺は十夜の耳元で囁いた。思わず口元が笑ってしまう。 案の定、十夜は恥ずかしそうに身を捩った。だが、俺が抱く腕の力を強めると、十夜は大人しく俺に身体を預けた。そして当たり前のように俺の唇に唇で触れてきた。 「……萩原、そのカッコ、すごく似合う。俺、ドキドキしちゃった……」 とろんとした目をして十夜は言った。 予想以上に俺の軍服姿が気に入ったらしい。 しかし、どうしてそれほど俺のこの格好がお気に召したのか分からず、俺は首を傾げた。 「似合うか?」 「すっごく似合う! ね、萩原、写真撮らせて!」 十夜は目を輝かせてやや興奮気味な口調で言った。 「写真?」 「うん。……ダメ?」 「別に構わないが」 「わ。やった!」 十夜は無邪気に喜んだ後で、はたと俺がこんな衣装を着ていることに疑問を抱いたらしい。 そりゃそうか。普通は同居人が、いきなり日常とはかけ離れた格好していたら驚くよな。 「ところで萩原、なんで軍服着てるの?」 「サービスだ」 「え?」 「十夜を喜ばすためだ」 「……え?」 俺の言葉に十夜は困ったような顔をした。 俺の答えにどうやら満足できなかったらしい。 「えーと、じゃあ、どこで手に入れたの?」 「秘密だ」 「えー? なんで秘密さ。教えてくれたっていいじゃん!」 「十夜、タネを知ったら魔法じゃなくなるからな。ナイショだ」 天城先輩からの受け売りのセリフだ。十夜はまだ納得しかねているようだったが、俺は無視して十夜のシャツに手をかけた。 別に一から説明しても良かったのだが、今は切羽詰っているので時間が惜しい。 限界近くまでキていたのは俺だけではなかったようで、俺に服を脱がされながら、十夜は俺のズボンのファスナーを下げた。 中から屹立している俺を取り出し、十夜はソレに丁寧に舌を這わせ始めた。 【十夜視点】 萩原のモノをちゅぱちゅぱ吸いながら上目遣いでちらりと萩原の表情を窺うと、切なそうに眉を寄せ、萩原は低い声で呻いた。唇を噛み締め快感を堪えている姿が色っぽくてカッコよくてどきどきした。 ……はうんっ。萩原ってばカッコイイ! いつもイイ男だけど、衣装似合いすぎでますますイイ男だよぅっ! 軍服姿の萩原は『硬派』って感じがして。とてもコンナコトしそうもないのに、俺とえっちなことしてるのがミスマッチで不思議で。 ……俺、変だ。胸が、どきどきする。いつもより体が熱い……。 ……こんなカッコイイ人が俺の恋人だなんてシンジラレナイ! 俺ってすごく幸せ者!! ……でも、こんなにカッコイイと、他の女の子に盗られちゃわないかすごく心配……。萩原だって俺なんかより、可愛い女の子のほうが好きなんじゃないかな。萩原の隣には、俺なんかよりも可愛い女の子が似合うんじゃないかな……。 ……すっごく不安になってきた。うーっ。やだやだ! 萩原を他のコに盗られるなんて絶対ヤダ! 俺は不安な思いをぶつけるように、なおさら念入りに萩原のモノを口中で愛撫した。 ……コレだって、俺だけのモノなんだからっ。 「十夜、俺にも舐めさせてくれ」 ……えーっ。やだぁ。 萩原を口に咥えたまま、目だけで俺は不満を訴えた。 ……だってもっともっと萩原のこと気持ちよくしてあげたいんだもんっ。萩原のせ、せ、せーえき飲むまで、俺、やめないから! 「……十夜、俺の顔を跨いでくれ。舐め合いっこしよう。それならいいだろ?」 「…………」 ……それってさあ、すごく恥ずかしい格好なんじゃ……。 ……ああんっ。でも萩原カッコイイから逆らえないしっ。 「〜〜〜〜っ」 恥ずかしかったけど俺はズボンと下着を脱ぎ捨て、萩原の顔を跨いだ。萩原には俺の性器と後ろの穴までばっちり見えちゃってるわけで……。 ……ひゃ〜。やっぱこの体勢、やだ! こ、これっていわゆる、69(シックスナイン)とかゆーやつだよね。やらしいよ、このポーズっ。 俺はちょっと半泣き状態だった。なのに萩原ってば、アンナトコやコンナトコを舐めてくるし。もうっ。そんなに大胆に舐めないでよねっ!! 恥ずかしさを誤魔化すように、俺は萩原のモノへの奉仕に専念することにした。 で、でも、集中して舐められないっ。だって萩原、指入れて来るんだもんっ!! 「あんっ……」 ……はぅんっ。そ、そんなとこ指でつつかれたら……。 ……わっ。し、舌がっ。 萩原はちょっと乱暴に俺の後ろを指で広げ、ソコに舌を捻じ込んできた。内部を濡らされる感触に俺は背筋を振るわせた。 「ひぃんっ。あんっ……」 ひちゃりと濡れた音が背後から聞こえる。なんだかめちゃめちゃヤラシー音……。 ……あんっ……。も、もっとぉ……っ! 俺は思わず、すぐそばにあた萩原のアレにほお擦りしてしまった。 ……コレ。コレが欲しいの……。入れて、欲しい……。 「萩原ぁ……」 肩越しに振り返って萩原に目で訴えるけど、萩原ってば俺のアソコをじーっと見ていて気が付いてくれない。 「十夜のここ、ぴくぴくしてて可愛いな……」 くすりと笑って、萩原は俺の尻にちゅっと音を立ててキスをした。 ……ばかぁ。そんなふうに焦らすなよ〜。 「萩原ぁ……入れてぇ……」 我慢しきれず、目に涙を溜めた状態で俺は萩原にお願いした。俺の体、萩原のことが欲しくてたまらない。早く、欲しい……。 萩原の目の前でわざとお尻を揺らして誘惑するけど、萩原はすぐに誘いにはノって来なかった。 「十夜、欲しかったら自分でヤってみろよ」 ちょっと意地悪そうに笑ってそんな意地悪なこと言うし! 萩原だって余裕なんかないくせにぃ! 萩原の先端からはとめどなく透明な液が溢れてて、すぐにでも弾けてしまいそうだった。……俺のモノも同じぐらい、キてるに違いないけれど。 「と・お・や」 「〜〜〜〜っ」 これってひょっとして、我慢比べ? ……どうしよう。後ろがすごいむずむずする……。 ……でも自分で……なんて恥ずかしいし! ……でもでも、萩原ので中をいっぱい擦って貰いたいし! ……………………………………。 ……………………………………。 ……………………………………。 ……………………………………。 ……ダメ! やっぱ我慢できない! 恥ずかしいけど、それよりももう耐えられないよーっ。 ……我慢比べは萩原の勝ちでいいから! ……萩原が、欲しいの……。 恥ずかしかったけど、俺は体勢を変えて萩原の上に跨った。 萩原は軍服をきっちり着込んだまま、アレだけ出しているような状態だ。 俺のほうは、下はすっぽんぽんで、シャツは萩原の手によって前のボタンをすべて外されていて羽織っているだけの状態で。……あ。そういえば靴下脱ぎ忘れてる。ちょっと間抜けな格好かも? 「十夜、ゆっくりでいいから」 そこはかとなく嬉しそうな表情で萩原が言った。うう。もう後には引けない。今日こそ頑張って、き、き、き、騎乗位をするんだ! 「可愛いよ、十夜」 萩原は甘く囁きながら、俺の腰をゆっくりと手袋を嵌めたままの手で撫で摩った。俺はその感触にも感じてしまった。 どこもかしこも敏感になってて、今の俺の体はものすごくえっちだ。俺がこんなになっちゃうの、萩原の前でだけだけど。 「萩原、好き……」 俺を見詰める萩原の熱い瞳に心がざわめく。 ……好きだよ、萩原。だから、欲しい……。 萩原に見守られ、俺はゆっくりと腰を落としていった。内部がみっちりと、萩原のモノで満たされていく。最後まで萩原のモノをおさめ終えて、俺は満ち足りたため息をついた。まだ入れただけで満足しちゃうのもヘンなんだけど……でも、やっぱ、この感触イイっ。 好きな人と体の一部で繋がっていられるというだけで、それだけでもう幸福で……。 嬉しくて、泣きたいような気持ちになる。 幸せ。 俺、今、ものすごく幸せ。 「萩原、好き」 「十夜、俺も好きだ」 萩原が優しく微笑みながらそう言ってくれるから、もっと幸せな気分になった。 ……この人を愛してよかった。 ……この人に愛されてよかった。 何度でも、繰り返しそう思う。 俺は何度でも萩原によって、幸福の極みに押し上げられる。 幸せだなあって、しみじみ思った。 きっと、自分は今、世界中の誰よりも幸福だ。 萩原に抱きつけないこの体勢が少し寂しくて、俺は萩原に手を差し出した。萩原は何も言わなくても分かってくれて、俺の手を捕まえてきゅっと握り締めてくれた。 指と指が絡まりあう。 心と心が絡まりあう。 「動いてくれ」 「……うん」 萩原の手を握り締めながら、俺はゆっくりと腰を動かし始めた。 初めての体位で最初はどうすればいいのか分からなくて、我ながらたどたどしい動きだったけど、だんだんとコツが掴めてきた。 萩原の上で俺は気違いみたいに腰を振り続けた。俺の動きに合せ、萩原も下からずんずんと突き上げてくる。強い快感に翻弄される。 「あんっ。気持ち、イイ……はぁんっ……」 こんなふうに積極的に自分から動いて、萩原が呆れてないかなと心配になったけど、止められなかった。夢中になって俺は萩原の体を自分の体で味わった。 加速するジェットコースターのように、俺は快感の中を駆け抜けた。 「ああんっ」 萩原を一番奥まで受け入れた状態で達すると、萩原もすぐに俺の中を体液で濡らした。 強い快感が去ると先ほどまでの自分の痴態を思い返し、俺は心配になってしまった。 ……浅ましいヤツだって思われていたらどうしよう……。 俺は怖々と萩原の表情を窺った。 萩原は上体を起こし、繋がったままの状態で俺を強く抱きしめた。 「すっっっっっっっっっっっっげぇ可愛かった」 「そ、そう?」 「そう。すっげぇよかった。俺の体の上であんなふうに淫らに動いて……。可愛くて可愛くてめちゃめちゃ感動した」 ……良かった。呆れてはいないみたい。 俺は安心した。 「えーと、萩原はカッコよかった。いつもカッコイイけど、今日もすごくカッコよかった……」 好きだよって気持ちを込めて、萩原の頬に音を立ててちゅーしたら、荒々しく畳みの上に押し倒された。 ……わわっ。萩原ってばイったばかりなのに、もう大きくなってる……。 「くそっ。お前はなんでそんなに可愛いんだよ!」 「えっと、なんでって……」 「もう一回ヤらせろ。っつーか、犯す」 わーっ。『犯す』だなんて、なんてこと言うんだ! でも萩原、ワイルドですごくカッコイイし……。 「うん。いっぱい犯して……」 俺はうっとりと萩原の首に腕を回した。 今日はお布団敷く暇もなく突入しちゃったから直に畳でちょっと背中が痛いけど、我慢することにする。すぐに、そんなことぐらい忘れるほど、気持ちよくさせてくれるって分かってるから。 俺は萩原が動きやすいように、精一杯足を開いた。 見詰め合って、キスをした。 それが再開の合図。 容赦なく萩原に揺さぶられ、俺は身悶え快楽の声を上げ、萩原の存在を体の奥で感じ取ったのだった。 |