残念ながら『初夜』を失敗してしまった俺は、次の機会はまだまだ先かと諦めていたが、意外なことに十夜は次回の挑戦に乗り気だった。痛い思いをさせてしまったのにもかかわらず、十夜は今度こそ絶対に成功させるぞと燃えていた。
「明日は金曜日だから、泊まりに行ってもいい?」 積極的な、十夜からの誘い。 想いが一方通行でないことを再確認する。嬉しい。 俺はもちろん十夜の言葉に頷く。 今度こそ成功させようと、十夜に負けないぐらい俺もまた燃えていた。 ありがたい(?)ことに叔父はバイセクシャルだ。男同士で繋がる方法を聞いてみることにした。 まだ早い時間なので店にはまだ客が入っていない。そのときにこっそり叔父にアナルでのセックスの方法を聞いてみた。だらしないところもあるが基本的に人がいい叔父は、俺と十夜がいよいよ『初体験』を迎えることを喜んでくれた。 「十夜ちゃん、OKだって? やったじゃん、賢司! 念願叶って良かったねぇ。よし! カワイイ甥っ子のために、叔父さん、いいものをあげるからね!」 叔父は俺に店番を頼むと、ふらりとどこかに出かけていった。戻ってきたときには大きな紙袋を抱えていた。 「叔父さん……それ、何……?」 「ん? アナルセックスの必需品だよ!」 爽やかな笑顔を浮べて爽やかでないことを叔父は言った。 「これがディルドでこれがアナル調教用バイブ。で、これもやっぱアナルを拡げるために使う電動アナルポンプ。直腸をキレイにするための注射型浣腸器。アナルに指を入れるときはこの指サックを使うんだよ? 素手でお尻の穴に入れると、衛生的に問題があるからね」 「…………ふーん」 「爪もキレイに切っておかないと、内部が傷つく可能性があるから気をつけて。あそこの粘膜はとってもデリケートなんだ。もちろん挿入するときはコンドームを使うこと。ナマのままでやったら賢司も十夜ちゃんもヒドイ目に合うよ。もし誘惑に負けてそのままヤっちゃったら、二人ともすぐに洗浄する必要がある」 ……こんなところでこんなキワドイ話をしていていいのだろうか? と思いつつ、俺は集中して叔父のレクチャーを受けていた。 「ディルドにもコンドームをかぶせて使うといいよ。便が付いていなくても悪い菌が付いていることもあるからね。ヘンな病気になることもあるから。で、忘れちゃいけないのがこのラブローション。アナルは膣と違って濡れるわけじゃないから、たっぷりとこれを使って繋がるんだよ」 「…………」 器具を一つ一つ取り出しながら、叔父は懇切丁寧に使い方を説明してくれる。 「人差し指を入れて第一関節を折り曲げたあたりに、胡桃大ぐらいのこりこりした部分がある。膀胱の下ぐらいかな? そこが前立腺って呼ばれる部分で、男がものすご〜く気持ちよくなれるところなんだ。ここをマッサージしてやると、射精しなくても強い快感を得ることが出来る。え? 叔父さんはどうかって? そりゃあもうこのゴールドフィンガーであんあん言わせちゃってるよ! 最近、若い恋人が出来てねぇ! ハニーがまたキュートでモテから叔父さん心配でね。しっかり繋ぎ止めておこうと、日々テクニックの向上を心がけているんだよ!!」 叔父は必要なことも聞かせてくれたが聞きたくもないようなことも聞かせてくれた。叔父の話を聞いて、いかに自分が知識不足だったのか思い知らされた。その日、叔父からのプレゼントを持ち帰って、器具に備え付けられている「正しい使用方法」をじっくり読んだ。 「悪い、十夜。今日は金曜日だから店が混む。だからバイトは休めないんだ。これ使って、先に部屋で待っててくれるか?」 「萩原、これって……」 「合鍵。十夜に持っていてもらいたい」 「…………うん」 十夜は渡した合鍵を大切に握り締め、嬉しそうに微笑んだ。十夜の笑顔を見て可愛いなあと思い、とうとうこの可愛い十夜とえっちが出来るのかと思うと俺の下半身は自然と熱くなった。これ以上興奮しないように、俺は必死で自分の性欲をコントロールした。こんなところで襲い掛かったら、十夜に嫌われてしまう。 十夜は一度家に帰って、着替えてから俺の部屋に行くつもりだと言った。 俺と十夜は駅まで一緒に歩き、そこで別れた。 叔父の店は俺の実家の近所で、俺が今住んでいるマンションとは駅一区間分離れている。俺がバイトのために降りる駅は、じつは、武藤が通学に使っている駅と同じなのだ。 「賢司、落ち着かないみたいだね」 「叔父さん、ごめん……」 「いいよ、謝らなくても。気持ちは分かるからね。こちらこそ、こんな大切な日にバイトに来させちゃって悪かったね。でもこの店も、賢司がいないとうまくまわらないからねぇ」 叔父は一時間早く上がってもいいといったが、俺は結局いつもの時間まで手伝った。一刻も早く部屋で待つ十夜の元に駆けつけたいという気持ちはあるが、叔父はいろいろアドバイスをくれて必需品までプレゼントしてくれた。その恩に多少は報いたいと思う。 「もし何か困ったことがあったら電話を掛けておいで」 「ありがとう」 持つべきものは優しい叔父だ。 まさかこのとき、本当に叔父に電話する羽目になるとは思わなかったが……。 叔父から貰ったさまざまな道具を前にして、十夜は顔を引き攣らせていた。オフホワイトのセーターを着た十夜は清楚な雰囲気をたっぷりと醸し出していて、その十夜の前に卑猥な器具を並べていることに俺は罪悪感を覚えた。 「萩原、これって……」 顔を奇妙に引き攣らせたまま、十夜は注射型浣腸器を手に取った。 「直腸を洗浄するための浣腸器だ。こっちの瓶に入っている液を、肛門から注入させるらしい」 「洗浄……。そ、そうか……。そうだよね……。アソコ、やっぱり汚いもんね……」 十夜はぶつぶつと呟きながら、注射型浣腸器を握り締めていた。 「……十夜、やっぱ、やめとくか……? 無理しなくていいぞ」 顔色を白くして浣腸器を見つめている十夜に、俺は同情してしまった。自分が抱きたいからと言うジコチューな理由で、十夜に「抱かれる側」を押し付けていると言う後ろめたさもあった。 十夜に挿入したいという思いはやまやまだが、舐めたり十夜の体を触ったりするだけでも十分興奮できるので、それで満足しようと俺は思った。 大切な十夜にあまり無体なことは出来ない。 「……いや、やる!」 浣腸器の説明書を握り締めながら、決意のこもった目で十夜は俺を見返した。 「十夜……」 「俺も男だ。今日はなにがなんでも萩原と最後までいくって決めた。この程度で怖気づいてたまるか!」 凛とした表情で十夜は言い切った。立ち上がって拳を握り締める十夜に、俺は思わずぱちぱちと拍手を送ってしまった。 「ただし! 俺がちょ、ちょ、直腸を洗浄している間は、萩原はその場から一歩も動くな! 動いたら、しばらく口きかないからな!!」 ……ちっ。 排便を耐える羞恥に満ちた十夜の顔は、さぞかしかわいらしーだろうなと思っていた俺は、内心で舌打ちをした。しかし十夜の最大の譲歩だと分かっていたので、俺は神妙な顔で頷いた。 「分かった。お前がいいというまで俺は絶対に動かない。もし約束を破ったら殺してくれても構わない」 「殺し……そんなもったいないことはしないけど……。じゃあ、俺、トイレとシャワー借りるから。待っててね」 俺の唇にちゅっと軽くキスをしてから十夜はトイレに向かった。十夜を待っている間、俺は退屈だった。なにせこの場から動くなと言われている。俺は言いつけどおり、正座をしたままテーブルの上の置かれている時計を眺めていた。 ……十夜、早く帰ってこないかな……。 バスルームから聞こえる水の音やらなんやらを聞きながら、俺はいろいろと想像してしまった。妄想とも言うかもしれない。今頃十夜は自分で自分のアヌスを押し開き、指を入れて中までキレイに洗浄しているに違いない。十夜は基本的に真面目な人間だ。アソコも真面目な顔をして真剣に洗っているのだろう。 ……俺が洗ってやりたかったんだけどな。 だが、今日のところはよしとしよう。目的は別のところになる。十夜が慣れてから、そのうちやらせて貰おうと俺は思った。 「萩原〜、お待たせ〜」 腰にバスタオルを一枚巻いただけの姿で出てきた十夜は、心なしかよれっとしていた。直腸の洗浄は十夜に精神的苦痛と肉体的苦痛を与えてしまったらしい。 「大丈夫か、十夜?」 「ん。へーき。ちゃんとキレイにしたから、なにされても平気だよ〜」 好きにしてとでも言うように、十夜はぐったりとしたようすでベッドにうつ伏せに寝転がった。すぐにでも襲い掛かりたかったが、叔父の店でうつされてきたタバコの臭いと自分の汗臭さが気になって、俺も軽くシャワーを浴びることにした。5分で全身を洗い終え、3分で全身を拭き終えた。 そしてさっそく、十夜をおいしく頂くことにする。 ベッドの上の十夜は、俺に食われるのを大人しく待っていた。 ……可愛い。 「十夜、もうちょっと足開いて」 「うん」 十夜は恥ずかしそうに俺の言葉に従い、閉じていた足をゆるく開いてくれた。俺は十夜の足の間に座り込み、まず、十夜のぷりっとした白い二つの尻のふくらみをそれぞれ片手で掴んでぐいっと広げた。よほど熱心に洗ったらしく、十夜の蕾は赤くなっていた。俺は十夜の尻に顔を埋め、十夜の後ろの窪みに舌を這わせた。たっぷり唾液で濡らしてから指を入れてみようとしたが、叔父の言葉を思い出して、指サックを人差し指につけた。指サックにはいぼいぼが付いていた。 十夜の後ろに惜しげなくローションを垂らし、自分の指にも指サックの上からローションを塗った。 指をそろりと一本挿入させ、俺は十夜の前立腺を捜した。 ……ここか? 「ああんっ! あっ……あっ……!!」 ビンゴだ。俺がぐりぐりと前立腺を刺激すると、十夜はびくびくと体を跳ねさせた。めちゃめちゃエロっぽい声を出して腰をむずむずと揺らしている。ずいぶんなよがりようである。 「十夜、俺、顔見たい。仰向けになって」 「やぁんっ……。ヘン……ヤダ……」 強烈な快感に、十夜は俺の言葉など聞こえていないようだったが、俺は無理やり十夜の体をひっくり返した。感じまくっている十夜の顔を、なんとしてでも見たかったのだ。 「あああっ!」 指を中に入れたまま体勢を変えたので、それが十夜にもっと強い刺激を与えてしまったようだ。十夜は大きな悲鳴をあげて先端からどくどくと白濁した液を流した。 しかし射精した後も十夜のエクスタシーは終わらないようだ。俺が指を内部で動かすたび、十夜は甘い声を漏らした。 ディルドやバイブ、電動アナルポンプなどまだ未使用の器具がテーブルの上に置かれていたが、俺はあえてそれらの道具を使わなかった。俺でさえまだ十夜の中に入っていないのに、こんな無機物が先に十夜を犯すなんて許しがたい。 俺は指だけで十夜のアヌスをほぐしていった。たっぷりと時間をかけ、二本・三本と、徐々に指の数を増やしていく。後ろを刺激するだけでなく、俺は使ってない左手で十夜の前を扱いた。 十夜に怪我をさせたくないし、無理をさせたくないから、俺は慎重にことを進めた。 「いやっ……萩原……怖いっ……。気持ちよすぎて、怖い……」 十夜がぽろぽろと泣きながら訴えるので、弄るのは後ろだけにした。代わりに十夜の体を唇で愛撫し、首筋や胸元に赤い花を散らしていった。白くて清らかな十夜の肌に、情事の証を付けていく作業は俺の征服欲を満たしてくれた。 ……そろそろ、いいかな? 俺は十夜の中から指を引き抜き、俺自身を埋める準備をした。指サックをゴミ箱に投げ捨て、叔父の忠告どおりペニスにコンドームを被せる。十夜の熱が冷めないうちに挿入しようと俺は慌てた。 十夜の体を折り曲げ、十夜の後ろに先端をあてがう。そしてゆっくりと俺は十夜の中に自身を沈めていった。 「んっ……ああっ……」 「十夜……平気か?」 たっぷりほぐしたつもりだったが、まだ早かったかもしれない。俺が挿入した瞬間、十夜は夢から覚めたような顔をした。快感も存在するだろうが、それ以上に痛みがあるのかもしれない。 十夜が無理をしていないかと俺は心配になった。 「へ……き……。もっと……きて……」 健気(けなげ)な十夜の姿に胸を打たれる。 「ああ。今日は、全部入れる。今度こそお前を俺のものにするから」 「うん。俺を萩原のものにして……。ああんっ……!」 十夜のようすを窺いながらじりじりと腰を進めていたが、大丈夫だと判断して俺は一気に奥まで突き入れた。 俺はすぐには動かず、そのままの状態でしばらく待った。十夜の中は熱くて狭く、頭がくらくらした。簡単にイってしまいそうだった。 「十夜、全部、入ったぜ。俺たち繋がってる」 今、これ以上はないと言うほど、俺と十夜は密着していた。肉体的だけでなく、今のこの状況は精神的にも俺を気持ちよくしてくれた。 「あ。すごい……」 十夜に俺たちが繋がっていることがしっかり分かるように、俺は十夜の手を導いて結合部分に触らせた。 俺の体の下で、いきなり十夜がぼろぼろと泣き出したので、俺は慌てた。 ひょっとして耐え切れないほど痛いのだろうか? 「痛いのか!? 十夜?」 「ううん……違う……俺、嬉しくて……」 泣きながら十夜は幸せそうに笑った。 「萩原、好き。だから、嬉しい……」 「十夜……俺の十夜……」 十夜のセリフに心臓を打ち抜かれる。これ以上ないというほど十夜のことが好きだと思っているのに、ますます俺は十夜に惹かれていく。 たまらなくなって俺は十夜の唇を荒々しく奪った。 「俺も嬉しい。俺のものだ。十夜……」 うわ言のように呟きながら、俺は腰を動かし始めた。加減が分からず、十夜のようすを窺いながら、内部を掻き回す。 「んっ……あっ……ああっ……」 十夜の口から甘い声が漏れるのを聞き、俺は安心した。少しだけ腰の動きを速いものにする。 ……くっ……気持ちイイ……。 サイテーなことに最後のほうは、俺は自分の快感を追うことだけに夢中になっていた。激しく十夜に腰を打ちつけながら、俺は一気に頂上へと向かっていった。 射精し終えてようやく理性が戻ってきた。 「ごめん……俺、早かったよな……」 十夜を気持ちよくしてやるつもりが、自分だけ気持ちよくなってしまった。気が付けば十夜の欲望はまだ、中途半端に立ち上がったままだ。俺は生まれて初めての挿入に我を忘れ、最愛の相手を置き去りにしてしまったのだ。 これは男として、かなり情けない。まったく余裕のなかった自分の態度に俺は軽く落ち込んだ。 「ごめん、十夜。口でやってやるから」 十夜の股間に顔を埋め、俺は丁寧に十夜を愛撫した。十夜は俺の髪を手で掻き乱し、惜しみなく甘い声を漏らして身悶えていた。裏の筋のあたりをちろちろと舌先で舐めていると、十夜はびくりと太ももを痙攣させてとうとうイってしまった。十夜の精液を、俺は当たり前のように飲み下した。 「ん……ううん……」 2回目の射精を終えた十夜は、しどけない格好のままうとうととし始めた。無垢な十夜の寝顔を見てこのまま寝かしてあげるべきだとも思ったが、俺は我慢し切れなかった。 十夜をうつ伏せにして先ほどまで自分を受け入れていた場所を眺めていると、つい、もう一度あの快感を味わいたくて、俺は再び十夜の中に挿入してしまった。 ……うっ。……やっぱイイぜ……。 眠っていた十夜は挿入の衝撃で目を覚ました。 「悪い、十夜。でも俺、もっとお前を抱きたい。我慢できない……」 怒られるかと思ったが、十夜は素直にこくりと頷き、俺が動きやすいように尻を浮かすような体勢を取ってくれた。 後ろからの挿入は、前から挿入するより奥まで入れることが出来た。 ……イイ……。すげぇ、イイ……。 俺は十夜にガンガン腰を打ちつけた。 十夜の反応が指で弄ったときよりも鈍い気がして気になった。頭の片隅で十夜のようすを観察しながら、しかし、今更止めることもできずに俺は十夜の上で動き続けた。 十夜の体に溺れて、俺は十夜の中で何度も射精した。 体の熱がようやく冷めると、俺の心に苦い思いが残った。 ……くっそー。十夜をメロメロにしたかったのに、俺がメロメロになっちまったぜ。かっこわりぃ……。 「ごめん、俺だけ夢中になって……。お前の中、気持ちよくって……。俺、下手だったよな」 自分だけ快感を追い、なんて身勝手な男だと十夜は呆れているかもしれない。十夜の視線が怖い。 だが、俺の言葉に十夜はふわりと笑い、俺の唇にキスしてくれた。優しいキスに泣きたいような気持ちになる。 十夜の心地よい優しさに、俺は繰り返し感動させられる。 「萩原だけじゃないよ。俺も気持ちよかった。俺、まだ、後ろの刺激だけじゃイけないけど、代わりに手と口でやってくれたし」 「…………」 「あのさ、後ろの穴を使ってのえっちって、慣れないと気持ちよくなれないものらしいよ。だから萩原のせいじゃないよ。俺が慣れてないせい」 俺が下手なせいじゃなくて、十夜が慣れていないせいもあるんだろうか? 十夜の言葉に俺は慰められた。 「早く慣れるように、いっぱいえっちしようね」 可愛い声で、十夜が俺の耳元で囁く。 ……と〜お〜や〜。んなキレイな顔と可愛い声で、そんなえっちなことを言うんじゃない! また勃ってきちまうだろうがっ!! だが、今度こそ十夜を眠らせてやらねば。初体験だというのに俺はハードなセックスに十夜を付き合わせてしまった。 週末はまだ終わらない。どうせ、すぐにリベンジする機会はやってくる。 俺は眠っている十夜の体を軽く拭き、寝巻きを着せてやった。 十夜が風邪をひいてしまったら大変だ。 しばらく十夜の寝顔を眺めていたが、俺は指導を仰ぐため、叔父に電話することにした。十夜の慣れの問題もあるが、俺の技術不足のせいもあると思う。今度こそ俺を中に入れたまま、十夜を盛大によがらせてやろうと俺は固く決心していた。 十夜を起こさないように携帯を持って、俺は部屋の外に出た。外は寒かったが十夜のために我慢する。電話の声で起こしてしまったら可哀相だ。 携帯電話のディスプレイには3:12と表示されていて、俺は一瞬躊躇ったが5回コールして出なかったら諦めることにして、叔父の家に電話をした。叔父は2回コールしただけですぐに出た。しかしお楽しみの最中だったらしく、BGMに甘ったるい喘ぎ声が聞こえた。 「ごめん、叔父さん。またかけ直すよ」 「ん? 賢司か? 別に構わないよ。丁度、今、焦らしている最中なんだ」 「……そうなんだ」 焦らされている“彼”には悪いが、俺は叔父に挿入するときのコツを聞いてみた。 一応は脱・童貞に成功したが、十夜が後ろだけでイけなかったと報告すると、叔父は丁寧に解説してくれた。 「慣れないうちは、挿入はバックからのほうが楽だよ。あと、入り口付近の浅い部分で出し入れしてあげると気持ちよくしてあげられる。亀頭の部分で前立腺を擦るようにしてやるんだ。ほら、こんなふうに」 叔父はこんなふうにといいながら、本当にこんなふうにしたのだろう。受話器の向こうからは盛大なよがり声が聞こえてきた。俺もあんなふうに十夜を啼かせてみたいものだ。 ……あんな呑気そうな顔してるけど、叔父さんってひょっとしてテクニシャン? 「俺がフリーだったら、賢司の体に直接イロイロと教えてあげるんだけどねぇ。うちのハニー、焼もち焼やサンだから! ごめんね!」 「………………………………」 ……体に、直接……? 焼もち焼やサンとかそーゆー問題じゃなくて……。近親相姦はやばくないか!? たとえ叔父にハニーがいなくても、力いっぱい俺がイヤだ。そのイロイロとやらは十夜と一緒に手探りで学んでいくことにする。 「一番大切なのは相手にたいする誠意と愛情だよ。テクニックは自然と身に付いてくるさ。じゃあ、そろそろハニーを悦ばせてあげなきゃいけないから。またね、賢司! 頑張れよ!」 「うん。ありがとう」 十夜に対する誠意と愛情には自信がある。それだけは誰にも負けない。 明日も頑張ろうと、俺は拳を硬く握った。 部屋に戻り、眠っている十夜の横に静かに滑り込む。十夜は無意識に、俺のほうに体を寄せてきた。可愛い。 シングルサイズのベッドに男二人は狭苦しいが、俺はあまり気にならなかった。十夜の唇にそっとキスをして、俺も眠りについたのだった。 ……ん……気持ち……イイ……。 ゆるやかな快感に身を委ねたまま、俺はゆっくりと意識を浮上させた。 ……俺、今、すげぇ気持ちイイ……。イっちゃいそう……。なんでだ? 寝ぼけながら下半身に視線を移すと、なんと、驚いたことに、十夜が俺の下着の中から俺のイチモツを取り出し、真剣な顔でそれに舌を這わせていた。 ……おいおい。嘘だろ? これって幸せな夢じゃないだろうな? 十夜は口を大きく開けて、俺のモノを奥まで咥えた。清楚な顔立ちの十夜が男のモノを咥えている姿はあまりにも不似合いで、だからこそ興奮する。 俺はじっくりと、十夜が俺を頬張る姿を堪能した。 十夜は夢中になって俺を舐めている。ペニスの根元に付いている二つの袋を指で優しく愛撫しながら、俺を唇に挟みこんで頭をゆっくり上下させる。 正直、ほとんど初心者である十夜の舌使いはあまり上手ではなかったが、十夜が俺を愛(いと)しそうにしゃぶってくれているというだけで、下半身に血が集まった。 「んっ……」 俺の精液を飲み込んだ十夜は顔をあげた。そのとたん、俺とばっちり視線が合ってしまう。 「は、は、は、萩原っ。起きてたの!?」 俺に見られていたと知って、十夜は顔を真っ赤にした。 「ごめんっ! 俺、先に目を覚まして! 萩原まだ寝てるし、ついっ!! ごめんっ!!」 耳の先まで赤くして、十夜は俺に謝った。気持ちよかったし、俺のモノを口に咥えて一生懸命愛撫する十夜の姿は可愛かったから別に謝らなくていいのに。 しかし十夜。その行動は、誘っていると取ってもいいんだよな? 俺は躊躇(ためら)うことなく十夜を体の下に引き込んだ。 「おはよう、十夜。十夜は今日もキレイで可愛いな」 「おはよう、萩原。……萩原はすごくカッコイイ……」 十夜はうっとりした顔で、俺を見上げて言った。俺の精液で濡れた唇が卑猥だ。 これは誘われているのだと確信した俺は、十夜の寝巻きを一枚一枚剥いでいった。もちろん十夜は抵抗しない。下半身を脱がすときは、腰を浮かせて俺の作業を手伝ってくれた。 「……萩原も脱いでくれなきゃ……ヤダ……」 十夜は頬を染めながら、ちょっと拗ねたような口調で言った。自分だけ裸になっているのが恥ずかしいのだろう。俺はくすりと笑い、十夜の要望通りに全裸になった。 イったばかりの俺のナニは、すっかり柔らかくなっている。おかげで俺は、十夜の快感だけを優先させ、ゆっくり十夜を愛撫することが出来た。 「あ……萩原……」 十夜の乳首を柔らかく噛み、舌でちろちろと刺激する。左右、同じようにたっぷり可愛がって口を離すと、十夜の乳首は赤くなってぷくりと立ち上がっていた。指でつつくと十夜はびくりと体を痙攣させた。さんざん指で弄ったあと、次に俺は十夜の足の指を口に含んだ。 「やだっ……。萩原、汚いよ……」 十夜は泣きそうな顔をした。だが十夜の中心は甘い蜜を垂らし続け、誤魔化しようがないほど十夜が感じていることが分かった。指の間を舌でなぞると、十夜はせつなそうに身を振るわせた。 「萩原ぁ……」 十夜が甘えるような声で俺を呼んだ。十夜が何を求めているのかを知って、俺は十夜自身に指を絡めた。 「あ…んっ……ああ……」 十夜の色っぽい声と姿に刺激され、俺のモノも徐々に力を取り戻してきた。 昨夜、さんざん俺を受け入れたのにもかかわらず、十夜の後ろの窪みはすでに固く閉じてしまっている。前を扱きながら、辛抱強く、俺は十夜の体を開いていった。指三本が楽に内部で動けるようになってから、俺は十夜の体をひっくり返した。正面から繋がりたかったが、俺は叔父の忠告どおり後ろから挿入することにした。奥まで挿入せず、入り口付近で抜き差しし、俺は十夜の前立腺を捜した。 「あっ……ソコ……!」 「…………ここだな」 十夜が強く反応を見せた部分を俺は小刻みに突付いた。すると俺の望みどおり、十夜はベッドの上で激しく乱れてくれた。 「ああっ……あっ……ああっ……」 無意識に十夜は腰を振り、貪欲に快感を求めた。動きが単調にならないように、たまに奥を突きながら、十夜の前立腺を擦る。 「ふっ……ああ……あんっ……」 この調子なら、正面から入れても大丈夫かもしれない。体位を変えるために俺は十夜から一度引き抜いた。 「やっ……。萩原、抜いちゃイヤ……」 十夜は目を潤ませて、背後の俺を振り返った。俺のモノを欲しがる十夜は、一生このまま閉じ込めておきたいほど激可愛かった。 「十夜、今度は仰向けになって。十夜の顔を見ながらイきたい」 「……うん」 恥ずかしいのか十夜は天井の辺りに視線をさ迷(さまよ)わせながら、自ら俺を受け入れるために足を大きく開いた。 「萩原……早くぅ……」 甘い声で十夜がオネダリする。俺は焦らすことなく十夜に先端を埋めた。 十夜の前は触れていないのに、先のほうからだらだらと白濁した液を零(こぼ)している。十夜の下半身はローションと体液とでどろどろになっていた。 「ああっ……イイ……イイ……!」 俺の背中に爪を立て、十夜は惜しげもなく声を上げた。 「もっ……ダメぇ……。俺、イク……!!」 十夜が射精すると同時に、俺のモノはキツク締め付けられた。堪えきれずに俺も欲望を放った。 「どうしよう……。まだ二回目なのに、俺、スゴク感じちゃった……」 俺が後始末をしていると、十夜は不安そうな顔で言った。 「俺は十夜が感じてくれると嬉しいぞ。十夜、すげぇ可愛かった」 頬にキスしながら囁くと、十夜は笑顔を見せてくれた。 「ねぇ、萩原は? 萩原は気持ちよかった?」 「俺もめちゃめちゃ良かった」 「えへ。…………嬉しい」 心底嬉しそうに微笑む十夜が愛しくて、俺は十夜の唇に唇を重ねた。 「萩原は運動神経がいいから、えっちも上達するの、早いのかなあ? 気持ちよすぎて、俺、頭の中がぼうっとなっちゃったよ」 「体の相性がいいんだろ」 叔父に夜中に電話して、コツを聞いたことはもちろん内緒だ。 今日も夕方にはバイトが入っている。叔父に会ったら、よくお礼を言っておかなければならない。 「結局アレ、使わなかったね」 無邪気な顔で、十夜はテーブルの上に並んでいる『大人のおもちゃ』を指差した。叔父から貰ったプレゼントの一部だ。 「……あの、さあ。萩原が使いたかったら、使ってもいいからね?」 十夜は顔を赤くして、小さな声で言った。十夜は今、体に毛布を巻いて、ベッドの上に座っている。立てた膝に顔を埋めて恥らう姿は愛らしい。 「俺、萩原にだったらなんだってされてもいい……」 「十夜、そんなに可愛いいこと言うと、また襲うぞ?」 俺が冗談めかして笑いながら言うと、十夜は小さく頷いた。 「うん。……襲って。俺ってスケベかなぁ? 昨日からいっぱいしたのに、まだ萩原が欲しい……」 十夜は次々と、俺を喜ばせる言葉を口にした。 「……そんなに気持ちよかったか?」 恋人の希望に沿うべく、俺は十夜を再びベッドの上に押し倒した。二人が放った体液のせいでベッドのシーツは濡れていて気持ちが悪い。だが、シーツを代える時間も惜しかった。 「気持ちよかったし、それに、俺、萩原のことが好きだし……。俺の上で動く萩原、色っぽくてカッコよくてどきどきした……」 「俺もいつもどきどきしてる。十夜がキレイで可愛いから」 「……嬉しい」 十夜はふわりと笑い、俺にしがみついてきた。朝から第二ラウンドの開幕である。 使ってもいいと十夜は言ったが、ディルド、アナル調教用バイブ、電動アナルポンプの以上三点は、未使用のまま叔父に返すことにした。必需品だと渡されたが、使わなくても十分セックスが出来ることは証明された。俺としては、こんなものを十夜に突っ込んでいるぐらいなら、自分のモノを十夜の中に入れたい。 よってこれらの品々は、叔父のハニー相手に使っていただくことにしよう。 俺は勝手に結論付け、十夜を調理することに専念したのだった。 |