「飛鳥、食堂に行こうか」
「うんっ!!」 約束どおり、渚は昼休みにわざわざ俺の教室まで迎えに来てくれた。 嬉しくて、久々に飼い主と会えた子犬みたいな気持ちで、俺は渚に駆け寄った。もし俺に尻尾が生えてたら、すごい勢いで振っちゃってると思う。 「おい、ちょっと待てよ『王子』。今更『公認』って、どういうつもりだよ? ライバル登場で焦ったってワケ?」 教室を出ようとしたところで、翔太が割り込んできた。口元が笑っているから、本気で理由が知りたいというよりは、渚の反応が見たいだけなのだろう。 ……翔太ってば悪趣味〜。 とか思いつつ、俺も渚の答えが気になって、思わずじぃっと渚の顔を見つめてしまった。 翔太の言葉に渚は冷ややかに笑った。 そのまま無視するのかなと思ったけど、意外にも渚は翔太の問いにまともに答えた。 「心底、手放したくないと思うのなら、なりふり構っていられないのは当たり前のことだと思うけど?」 「ほほう。『王子』はそこまでして手放したくないほど、飛鳥に惚れてるって認めるわけだ?」 「悪い?」 渚は『王子』に相応しい優雅な笑みを浮かべ、それとはそぐわない男らしい強引さで俺の肩を抱き寄せた。 ……ええーっと、今、スゴイこと言われた気がする……。 ……手放したくないって……。 ……なりふり構っていられないって……。 ………………………………………………。 「〜〜〜〜〜〜〜っ」 「わっ! 何泣いてんだよ、飛鳥っ!」 「〜〜〜〜〜〜〜っ。だって、嬉しいんだもんっ」 「そこまで号泣されるほど、スゴイこと言った覚えはないけど?」 俺が両目から滝のように涙を流していると、渚は呆れたようにつぶやき、俺の濡れた頬をハンカチで拭ってくれた。 「そんなことないもんっ。スゴイことだもんっ!」 ……手放したくないってコトは、渚だって、俺とずっと一緒にいたいってことだよね? ……嬉しい。 「う〜〜〜っ。嬉しいよぉっ…………ううっ……」 「……いい加減、泣き止んでくれる? 目立ちすぎ」 渚は呆れたように呟くと、俺の手を引き、その場から連れ出してくれた。俺はえぐえぐと子供のように泣きながら渚の後を付いていった。 連れて行かれたのは図書室の傍にある、第二資料室だった。その部屋には古めかしい本と自習用の机が並べられていて、第一資料室よりも狭くて汚いから、人気がない。今日もいつもどおり、誰もいなかった。 「まだ泣く気?」 「うううっ……だって……」 「泣き顔も可愛いけどね」 俺を椅子に座らせ、周囲に人がいないのをいいことに、校内だというのに渚は俺の頬を両手で包み、ちゅぅっと口付けてきた。 一年生の頃は人目を盗んでは、トイレで休み時間中にエッチなんてことはしょっちゅうだった。けど、二年になってからは校内で、渚がそういう意味で俺に触れてくることはなかったのに珍しい。渚は俺を慰めるように、唇だけでなく顔中に優しいキスをしてきた。 渚から与えられる甘い感触に、俺は陶然とし、ようやく泣き止むことが出来た。 「飛鳥、好きだよ」 「うん、俺も好き。渚のこと、好き……」 俺の言葉に渚は小さく笑い、再び俺の唇に唇を重ねてきた。今度は、軽いキスじゃなくて、体がとろけるようなディープなキス。 「……うっ……んっ……」 キスの合間に、声が漏れる。自分でも恥ずかしくなるような、甘ったれた声。 俺は渚からの巧みなキスに夢中になった。 だが、戸が開く音に、俺は驚き一気に血の気が引いた。誰かが入ってきたらしい。 慌てて渚から離れようとするけど、渚は俺の首の後ろに手を回し、俺が離れることを許さなかった。 仕方ないのでおそるおそる、渚の腕の中で少しだけ頭をずらし、闖入者の顔を確認した。 ショックを受けたような顔で立ちすくんでいるのは草壁だった。 「す、すいませんでしたっ!」 公共の場でイチャついてた俺たちのほうが悪いのに、草壁は頭を大きく下げ、慌しく出て行った。 ……えーっと……。 「……もしかして渚、コレ、狙ってた??」 「………………」 俺の言葉に、渚はばつが悪いような顔をした。やはり確信犯だったらしい。 渚の珍しい表情に見とれつつ、俺ってすごく愛されてるなあって思って、また嬉しくなってしまった。 思わず頬が弛んでしまう。 でも、嫉妬なんてする必要ないのに。 俺の心は渚にしか向いていないのだから。 「えっと……。俺、心変わりなんて、しないよ?」 「分かってる。飛鳥のことを疑っているわけじゃないよ」 渚は深々と溜息をついて床の上に跪き、俺にぎゅっとしがみついてきた。ちょうど俺のお腹のあたりに渚の頭が当たり、小さい子に甘えられているようで、なんていうか……スゴク可愛い。 弱った感じの渚の姿を見るのは初めてだ。可愛くて可愛くて、俺は思わず渚の頭を撫で撫でしてしまった。俺様でクールな渚もカッコ良くてステキだけど、「恋人だけにさらけ出す無防備な姿」も胸がきゅぅんとなって、ますます惚れ直してしまう。 渚のことが、愛しくてたまらない。 「飛鳥が、俺のことを好きでいてくれてることは分かっているよ。……ただ、俺が勝手に不安になっただけ」 普段は弱音なんて零したことのない渚の言葉に、俺は驚いた。 ……渚でも、不安になることがあるんだ。 渚も自分と変わらないってことに、俺はこのとき初めて気がついた。 俺は自分の辛さにばかり目を向けていて、どれだけ渚が想ってくれているか、分かっているようで分かっていなかった。自分だけが不安なのだと思い込んでいた。 ……そうか。渚も……俺と同じなんだ。俺と同じように、不安なんだ……。 「ぐ――――っ」 状況を考えず、突如俺のお腹がなった。 そういえばまだ昼食がまだだった……。 ……でも、よりによって、このタイミングで鳴らなくってもいいじゃないか! 俺の腰に抱きついていた渚にはしっかり聞かれてしまったに違いない。 ……恥ずかしいっ! 「ご、ごめん……。お腹鳴っちゃった……」 俺が真っ赤になって半泣きで謝ると、渚は立ち上がり、くすりと笑って俺の唇に軽く触れた。 「俺も腹減ってるし。食堂行こうか」 「う、うん」 手を繋がれて、一緒に食堂に向かいながら、せっかくだから進路のことも聞いてみれば良かったと後悔した。あのタイミングでなら渚に問いただす勇気がもてた気がする。 ……俺のお腹の、バカっ! 訊けば案外、あっさりと、渚は教えてくれるかもしれない。 「進路、どうするの?」と、一言問えばいいだけの話だ。 けれど自分の進路が定まっていない状態で、渚の進路を訊くことになんとなく躊躇いがあった。 渚のことだから、卒業後の進路はしっかりと決めているのだろう。 一方、俺はまだ漠然と、専門学校に行きたいとしか考えていなかった。しかもその理由が、勉強が嫌いだから受験勉強をしたくなくって、かといって高校卒業してすぐ社会に出ることも躊躇われて、大学進学と就職という選択肢を外して残ったのが専門学校……という、きわめて消極的なものだった。 逆に、渚に進路のことを問われたとき、俺は自信を持って答えることが出来るのだろうか。 答えは否だ。 ……将来のこと、もっと真剣に考えよう……。 渚がどれだけ本気で俺のことを想ってくれているか分かったから。 だから俺も、渚の隣に居続けるためになにをするべきか、しっかり考えよう。 手放したくないからなりふり構っていられないと渚は言ったけれど、俺だって同じ気持ちだ。渚の傍にいられるのなら、なんだってする。なんだって出来る。 渚とともにいられることが、俺の幸福なのだから。 その日、家に帰ってから父親に操作方法を教えてもらって、インターネットで専門学校の情報を集めてみた。夕貴に相談したら、「やっと飛鳥も本気で進路を考える気になってくれたんだね!」と喜ばれ、ネットで調べると簡単だと勧められたからだ。 PCは得意じゃないけど、やっぱり便利だ。目に留まった何校かに資料請求もしてみた。 ……俺の進路が決まったら……渚に訊こう。この先、どうするのか、ちゃんと話し合おう。 ようやく真剣に進路を考え始めた俺に、父親は安心したようだった。今まで両親から進路のことについて訊かれたことがなかったけど、俺にプレッシャーを与えないようにあえて訊いてこなかったのだと、俺は気がついた。 ……俺って、甘やかされてるなぁ……。 甘やかされていると気がつかないほど、甘やかされている。 それほど子供っぽい自分だから、渚が寄りかかることができないのだろう。 でも、俺だって渚に頼ってもらいたい。渚の支えになりたい。 進路を決めるのは、その第一歩だ。 ……夏休みに入る前までには、絶対に決める! それだって遅いぐらいだけど、俺は俺のペースで頑張るしかないと思う。 なにが自分に向いているのだろうと悩みながら、俺は眠りについたのだった。 渚は、朝の補習を受けているので、今日は登校は別々だった。一緒に登校できた、昨日が特別だったのだ。 補習を受ける生徒は進学……しかもレベルの高い大学を受験する生徒に、対象がほぼ限定されている。一応、希望すれば誰でも受けられるけど、難度が高過ぎてついていけないのだ。結果的に、特進クラスの生徒が受講することが例年の慣わしだった。 ただ、他の教科で足をひっぱられているものの一科目だけは得意……なんて生徒もいて、一般クラスだけど特定の科目だけ受講している生徒もいた。 夕貴は中学校の頃から英語がやけに得意で、他の教科は平均点そこそこなのに、英語だけは、学年で10位以内に毎回入っていた。そのため今朝は、夕貴は渚と同じ朝の講習を受講するため早朝に登校していて、俺と翔太の二人はいつもどおりの時間に供に登校した。 「またかよっ! ふざけた真似しやがる……」 翔太は俺の下駄箱を覗き込み、投げ込まれたゴミ……しかも今回は生ゴミ……を見て、激怒した。 「…………」 俺は朝から人の悪意に触れて、落ち込んでしまった。 これで、2回目。 1回だけだったら、つい魔がさして……なんてことも考えられたけど、2度目ともなると明確な意思と執着を感じる。これから3度、4度と続くことを考えるべきだろう。 それに嫌がらせがエスカレートする可能性だってある……。 そして、ありがたくもないことに、予想は的中した。 その日から連日、下駄箱だけでなく机の中にもゴミを詰め込まれたり、教科書に『バカ』と落書きされたり……。幸いなことにクラスメートたちは優しくて、一緒に片づけを手伝ってくれたり憤慨してくれたりしたから、あまり惨めな気持ちにならずにすんだ。それでも毎日、人の悪意に触れ続けるのは心にダメージが積もっていく。 初めは、余計な心配をかけたくないからと渚には黙っていた。けれど俺の落ち込んでいる様子にすぐ気がついた渚に問い詰められ、精神的にもまいっていた俺は、一週間後に全てを白状させられた。 ……俺の根性なし。 俺の話を聞き終わり、渚はうっすらと口元に笑みさえ浮かべていた。 だが、目は笑っていない。 渚の得意技、“氷の微笑み”。 王子様は大層ご立腹のようだった。 その証拠に渚は優雅に微笑んだまま、手にしていた空き缶を、片手で握りつぶした。 ……ええーっ。その缶、スチール缶だよねぇ? 握力強い……。でもそんなに握り締めて、手、怪我したりしないかな……。 俺は心配になって、渚の手にそっと手を添えた。 「あの、ごめんね? 勉強で忙しいのに、余計な心配かけて……」 俺の言葉に、渚は微笑んだ。さっきみたいな冷たい微笑じゃなくて、優しい微笑み。 愛しいものに触れるように、残ったほうの手の指先で俺の頬を撫でるから、どきどきした。 「恋人の心配をするのは、当たり前のことだと思うけど? 飛鳥が謝ることじゃないよ」 「渚……」 渚の言葉に、俺は嬉しくて泣きそうになってしまった。 ……ああ、どうしよう……。渚のことが、とても好きだ。今すぐキスしたい……。 俺はキスをねだって、そっと瞼を伏せた。 「飛鳥……」 「だあああああああっ!!!!! そこまでだバカップルどもっ! 公衆の面前でイチャつき過ぎっ!!!!!」 突然の大声に驚き、俺は目を見開いた。 ……そうだった。ここは食堂だった……。 「真野こそ、公共の場でうるさいよ」 渚は冷ややかに言い捨てた。 「公共の場で不純同性行為に及ぼうとするお前らよりマシっ!!!」 翔太はぷりぷりしながら紙パックのオレンジジュースを音を立てて飲んだ。 放課後、食堂の隅のほうで俺は渚に今まで遭った嫌がらせの数々について説明したが、その補足のために翔太と夕貴も付いてきてくれたのだった。 「今のところは、飛鳥、怪我はさせられてないけど。このままさらにエスカレートしたら怖いから、武藤、いい案ないかな?」 心なしか顔を赤くしながら、夕貴は渚に尋ねた。 もともと夕貴は、「早めに武藤に相談したほうがいいよ」と言っていたので、ようやく俺が渚に打ち明ける気になり、ほっとしたようだった。 「草壁のファンの仕業なら、解決するのは簡単だと思うけど?」 「待てよ。草壁のファンだとはかぎらないんじゃねぇの? “王子様”のファンかもしれねぇじゃん? “公認”にしたからかもよ?」 翔太の言葉に渚は鼻先で笑った。 「自分のファンの動きぐらい把握してるさ。……去年だったら、ヤバかったかもしれないけどね」 「……あっそ」 呆れたように肩をすくめて、翔太は椅子の背もたれにもたれかかった。 「武藤、解決するのは簡単って……どうすればいいの?」 「草壁の強烈なファンの、嫉妬が原因ってことでしょ? だったら他に妬みの対象を作ればいい」 「あのなぁ。作ればって……。そいつに被害がいくだけじゃねぇか……」 「まあ、そういうことになるかな。だから女の子は危ないから止めたほうがいいね。囮になってもらうのは、そこそこ周囲も納得する程度のレベルで、なおかつ丈夫じゃなくちゃね」 「囮って……。お前、本当に性格悪いよな……。それに、そんな都合のいい人間簡単に見つからないし、第一、草壁が協力するかよ」 「するさ。草壁は。飛鳥のために協力せざるを得ないだろうし、もし仮に嫌がっても俺が説得するよ。それに、“そんな都合のいい人間”も目の前にいるしね」 「……?」 翔太は最初、渚の言葉の意味を理解できていないようだった。きょとんとした顔で、渚のことを見返していた。俺も、渚の言ったことがよく分からなくて、首をかしげた。 ……ええーっと。それって……? 「武藤、翔太に草壁の恋人のフリでもさせる気?」 夕貴がおそるおそるといった口調で、渚に問いただした。 渚はにっこりと笑って肯定した。 「!!!! 俺かよっ!?」 翔太は自分で自分を指差し、食堂中に響き渡るような驚きの声を上げた。 俺も驚いた。 ……なんで翔太? 俺は思わずまじまじと、翔太の顔を見つめてしまった。 ……ううーん……。体格は……普通だし……顔は……俺は見慣れちゃってるけど、それでも整っているほうだって言っていいと思うけど……。翔太は美少年って感じじゃないし……。 ……渚はどうして翔太を……? それに自分の身代わりに、友達を辛い目に合わせるのってイヤだし……。 「もちろん、ずっとってワケじゃないよ。情報集めて犯人を割り出してみるから、その間、相手の目を引き付けて欲しいってだけ」 「〜〜〜っ。わざわざ囮なんて用意しなくても、てめぇがさっさと犯人探しすりゃいんじゃねぇの? その優秀な頭でさ」 「……ばか? 飛鳥が被害に遭うかもしれない状況で、俺が冷静に、犯人探しが出来るとでも?」 「俺が危険な目に遭ってもいいのかよ!」 「当たり前じゃないか。飛鳥が怪我をするぐらいなら、普段から目障りだと思っている元同級生の真野が怪我をしたほうがいいに決まっているだろ?」 渚はきっぱりと言い切った。 「っ!! お前、本当に、性格わりぃよな!!!」 「嫌なの? ふぅん、真野は飛鳥が怪我しても平気なんだ?」 「〜〜〜っ。飛鳥、今からでも遅くない!! この性悪の男と別れろ! すっぱり縁を切れ!」 「ええーっ。やだぁ。だって俺、渚のこと愛してるもん」 ……いくら翔太に頼まれたって、自分から別れたりなんか絶対しないよ! 俺は別れないという意思表示に、両腕で渚の右腕にすがりついた。 渚の発言は問題アリだと思うけど、俺は渚のそういう意地悪いっぽいところも好きなんだ。 翔太には悪いけど。 「やだ、じゃない! それに公共の場でイチャつくなっつーの!」 「……えっとぉ、翔太、別に囮とかしなくていいよ? 俺の代わりに翔太が嫌な思いをするのもヤだしさ。俺、我慢するし……」 渚に相談できて、ちょっと心のもやもやが軽くなったし。 翔太と渚は仲悪いかもだけど、俺は翔太のこと大切な友達だと思っているし。 迷惑は掛けたくない。 「〜〜〜っ。ああ、もう、分かったよ! やりゃいいんだろ、やれば! 俺だって飛鳥に怪我させたくねぇよ! けど、上手く相手が釣れなくても、責任とれねぇからな!」 「翔太……。いいの? 翔太だって危ないんだよ?」 夕貴は翔太の短気を宥めるような口調で言った。 「そうだよ、翔太。俺、自分の代わりに翔太が怪我したらやだよ?」 「俺は別に構わないけど」 渚が冷たい声でぽつりと言った。 「渚ぁ〜。翔太は俺の大事な友達だよ? 俺のせいで迷惑かけるのイヤだよ」 「飛鳥に迷惑掛けられるのなんざ、子供の頃からだろーが。今さら気にすんじゃねぇよ。それより武藤、お膳立ては全部お前がしろよな? 発案者!」 「別にいいよ。放課後までに草壁には話し通しておくから」 渚はあっさりと答えた。 ……でも、本当に大丈夫なのかなぁ……。 草壁が協力してくれるかどうかも謎だし、そもそも可愛いというよりカッコイイ系の顔立ちの翔太が、あの草壁と恋人のフリなんて出来るかどうか分からないし、俺の代わりに翔太がヒドイ目にあったりするのもヤだし……。 色々なことが心配で、俺は思わず深々と溜息をついてしまった。 すると渚は俺を安心させるように、俺の頭を撫でてくれた。 渚は他の人には冷たいのに、俺には優しい。 翔太には申し訳ないけど、それがとても嬉しかったりする。 特別扱いみたいで。 「大丈夫。飛鳥は何も心配しなくていいから」 「うん」 ……渚がいるから……きっと、大丈夫……。 頼りがいのある恋人に、俺は見惚れてしまった。 そしてさっそくその日の放課後から、渚立案の計画をスタートさせた。 |