【カラダから!  -06-】
 
「美咲、俺たちもそろそろ行こうか。時間に遅れてしまったら大事だからね」
「うん!」
俺の家族と初対面ということもあり、俊介はブランド物のスーツを着込んでビシリと決めていた。スーツの上から羽織っている黒いロングコートも俊介によく似合っていた。
俊介のラフな格好しか見たことのなかった俺は、フォーマルな姿の俊介にうっとりと見ほれてしまった。
……ストイックな色気ってゆーか……。カッコイイ……。
このまま二人でホテルに入りたい気がしたが、親も待ってるし、えっちしている場合でもない。
しょうがないので俊介の腕に腕を絡ませるぐらいで我慢しておいた。
「俊介、スーツ姿似合うね。カッコイイよ」
「美咲は今日も可愛いね。あとでホテル行こうね」
「うんっ」
えっちするときは、どうせならスーツを着たままでシテ欲しいと思った。今日の俊介はまるでエリートサラリーマンのようだ。
いつもと違う雰囲気にどきどきする。
「おかーさーんっ。連れてきたよっ!」
「まあ。ようこそいらっしゃいました。いつも美咲がお世話になっております」
お母さんはにこにこ笑いながら、玄関まで俊介を迎えに来た。礼儀正しくお母さんが頭を下げると、俊介も丁寧にお辞儀を返した。
「こちらこそお世話になっております。つまらないものですが……」
スマートな動作で俊介はお母さんに紙袋を手渡した。いわゆる、手土産ってヤツだな。
ここら辺の気遣いが大人だよね。
ところで、あの紙袋の中身ってなにかなぁ? お菓子だといいな〜。と思っていたら、俊介は俺の心を読んだかのように、「美咲が好きなお店のクッキーだよ」と耳元で教えてくれた。
お母さんに聞こえないようにと小声だったんだけど、ちゃっかり聞こえていたらしく、お母さんにくすりと笑われてしまった。
「姉ちゃん、お父さん、連れてきたよー」
姉ちゃんとお父さんは、居間のソファーにかしこまって座っていた。俊介の姿を見て、お父さんは驚いた顔をしていた。姉ちゃんは相変わらず冷静だった。値踏みするような視線を俊介に向けている。
俺はちらりと俊介の顔を窺って見た。俊介はぜんぜん平気そうだった。俺のほうがよっぽど緊張してるみたい。
「三宅俊介と申します。美咲さんとお付き合いさせていただいている者です」
「森屋祥子(もりや しょうこ)です。美咲の姉です」
「森屋保(もりや たもつ)です。美咲の父です。……ところで失礼ですが、お年はいくつですか?」
「二十七です」
「二十七っ!!」
俊介の年齢を聞いてお父さんは固まってしまった。
そっかあ。考えてみれば俺と俊介、十二も年が離れているんだもんね。お父さんが驚くのも無理ないのかな?
「美咲とはどこで知り合ったんですか?」
一時的に口が利けなくなった父に代わり、姉ちゃんが質問した。
「んーとねぇ、ハ……」
ハッテン場といいかけて、俊介にこっそりお尻を抓られた。
う。イテっ。でもちょっと気持ちイイかも……。
じゃなくってぇ。そうだよね。ハッテン場で出会いましたってのも人聞き悪いよねぇ。
そもそもハッテン場といって通じるかどうかも謎だし……。
「私が道に迷っていたときに、助けてくれたのが美咲さんだったんです」
おお。俊介ってば、すごい。ナチュラルに嘘ついてるよ。
「そうですか」
姉ちゃんは口の端を少し吊り上げて笑った。
さては姉ちゃん、嘘だって気付いているな? 姉ちゃんもなかなか上手だ……。
「お茶をどうぞ。俊介さんからのお土産、さっそく頂きますね」
お母さんがお茶とお菓子を持ってやってきた。
わー。俺が好きな木ノ実屋のクッキーだ。俊介、ありがとうっ!
俺はさっそくほくほくしながらクッキーに手を伸ばした。
ううんっ。やっぱ、このお店のクッキーって最高っ!!
「俊介さん、お仕事はなんですか?」
柔らかい笑みを浮べながらお母さんは言った。
「ショットバーの経営をしています」
「まあ、ステキ。今度飲みに行かせてもらっていいかしら?」
「ええ。ぜひ、いらして下さい」
その後、一時間ぐらい延々と、俊介は身元について聞かれていた。
鋭い質問をするのは主に姉ちゃん。
姉ちゃん、もろにチェックモード入ってるよ……。
でも俊介だって負けてない。姉ちゃんの試すような言葉を楽々クリアー。
なんかこの二人の会話って、狐と狸の騙し合いみたい。
「その、あなたは美咲との付き合いを、どのように考えていらっしゃるんですか? 美咲とは年齢も離れているし、なにも美咲のような子供を相手にしなくても……」
ずっとフリーズしていたお父さんが、ようやく口を開いたと思ったらシツレイな発言をした。
なんだよそれ? 子供を相手にしなくてもって、まるで俺が俊介にお願いして一緒にいてもらってるみたいじゃんよー。
俺たちはラブラブな恋人同士なんだからなー。
愛があれば、年の差なんてたいしたことないんだ! ってゆーか俺、超年上好みだし……。
「結婚を前提に。……と言っても日本の法律では残念ながら、同性同士の結婚は認められていません。ですから私は、美咲さんと養子縁組させていただくつもりです」
「なにぃっ! 養子縁組だとぉっ!?」
驚きのあまりお父さんはカップを倒してしまった。お母さんは慌てて布巾を取りに台所に行った。
……お母さん、俺の養子縁組より零れたお茶のほうが大事なんだね……。
でも養子縁組の話は俺もたった今聞いたばかりだったから、めちゃめちゃ驚いた。俊介、そこまで俺のこと考えていてくれてたんだ……。
俊介の本気が分かって俺は目頭を熱くした。
「落ち着け、父さん。正式に結婚した夫婦の場合、もし夫が死亡したとき妻は遺産相続人としてその権利を主張できる。それによってそれ以後の人生が、経済的には守られる。だが同性同士のカップルの場合、結婚という制度で保障されていないため一方が死亡した場合に一方が遺産を相続することは出来ない。内情は夫婦であったとしても、法律上ではただの他人だ。そこでパートナーに遺産を譲りたいと考える場合は養子縁組制度を利用する。つまり俊介さんは美咲をお嫁に欲しいと言っているわけだ」
姉ちゃんは冷静に俊介の言葉の補足説明をした。
「だ、だが、美咲は俺の子だぞ?」
「普通養子の場合は特別養子と違って実の親との縁が切れるわけじゃない。父さんの遺産を引き継ぐ権利が美咲から失われることはないから安心していい」
「いや、しかし……」
「俊介さんは、美咲と一生を添い遂げたいとおっしゃって下さっているのだろう。めでたいことじゃないか。それとも父さんは、美咲とのことはたんなる遊びで若い体だけが目当てであり、性欲を満たすための相手に過ぎず、一生をともにする気など更々ないとでも言って欲しかったとでも言うのか?」
「そんなことはない!」
「だったらいいじゃないか」
姉ちゃんの言葉に、お父さんはまっとうに反論できないでいた。
姉ちゃんてば最強! 好き!!
「あらあ。美咲ったらプロポーズされたのね。ステキね!」
そうだよね。これってプロポーズってことになるんだよね。
えへへ〜。
俺は頬に手をあてにたにたと笑ってしまった。
「母さ〜ん」
娘に手厳しくやり込められたお父さんは、お母さんに泣きついた。
「でも俊介さん、美咲との養子縁組は、せめて美咲が成人するまで待っていただけないかしら? 私たちにとっても美咲は可愛い息子だし、もう少し手元に置いておきたいの。もし美咲が二十歳になっても俊介さんが同じ気持ちでいてくれたら、そのときこそ私達は、喜んで美咲を俊介さんのもとに送り出すわ」
「分かりました。美咲さんが二十歳になったときに、改めて美咲さんをいただきに来ます。今はただ、私が美咲さんとの将来を真面目に考えていることだけをご理解いただければと思っております」
姉ちゃんとお母さんを味方につけたのなら、うちの家族全員の了承を得たのと同じことだ。お父さんはいつだって女二人には最後まで逆らうことは出来ない。
俺の家族と俊介との対面が終わり、俺はそのまま俊介についていって、俊介の家に泊まることにした。
俊介の後を追って玄関を出ようとしたところで姉ちゃんに引き止められた。
「ずいぶんと食えない男のようだな」
「俊介さんのこと?」
「ああ。嘘のつき方も堂に入ったものじゃないか。天性的な詐欺師だな」
「……姉ちゃん、俊介さんとのこと、反対なの?」
姉ちゃんの俊介に対する人物評価に俺は不安になった。
反対されたからって俊介と別れることは出来ないけど、大好きな姉ちゃんに反対されたらやっぱり辛い。
「いや。どうやら美咲への気持ちは本物のようだから反対する気はない。それに見た目どおりの『いい人』だったら美咲を守ることなんか出来ないからな。逆に安心している」
「姉ちゃん!」
「俊介さんが待ってる。気を付けて行っておいで」
「うんっ。行ってきます」
姉ちゃんに太鼓判を押されて、俺はにこにこ顔で俊介のもとに駆け寄った。



てっきり駅に行くのかと思ったら、俊介はタクシーを捉まえてホテルの名前を運転手に告げた。聞き覚えのあるホテル名だ。どんなホテルだったっけ?
タクシーが到着してすぐに謎は解けた。
そのホテルは、俺と俊介が初めて体を繋げたホテルだった。部屋も、あの時と同じ部屋に通された。
俊介はどうやら予約していたみたいだ。
「わ。相変わらず豪華! スゴイ。どうして?」
「正式なプロポーズはここでって決めていたんだ。俺たちが初めて愛し合ったこの場所でってね」
「俊介……」
「美咲のご両親の意図を汲んで、美咲を俺の籍に入れるのは美咲が成人してからにするよ。でもね、俺の心の中ではもう、美咲は俺の一生のパートナーなんだ。これを受け取ってもらえる?」
俊介が差し出してきたのは養子縁組のための書類と小さな箱が一つ。促されて箱を開くと、中にはシンプルなデザインの指輪が一つ入っていた。
「俺のとお揃い。一応、婚約指輪、かな」
俊介はポケットから、サイズは違うけれど、俺が貰った指輪とまったく同じデザインのものを取り出した。
俺の指に俊介が指輪を嵌めてくれたので、俺も俊介の指に指輪を嵌めてあげた。
感動。
こんなに小さなアクセサリーが、俺たちの絆をより深くしてくれるような気がした。
「こっちの紙は、美咲が二十歳になったら一緒に役所に提出しに行こうね」
受け取った種類を見ると、俊介が記入する場所には全て記入済みだった。残りは俺が書いて完成させるだけだ。
俺は我慢できなくなって、ぽろぽろと泣いてしまった。
「ふぇえんっ……。嬉しいよぅ……」
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい!
愛情なんて形のないものだけど、それでもこうやってきっちり分かりやすいように証明して貰えるのは嬉しい。
「美咲、ずっと俺の傍にいてくれる?」
「もちろん!」
俺は泣きながら、俊介の胸に縋り付いた。
十二月二十一日。
俺が俊介からプロポーズされた日。
この日は俺にとって、きっと一生忘れられない記念日になる……。



「さあ、美咲。今日は特別な日だから、記念にビデオを撮っておこうね!」
「……はにゃ?」
 俊介のプロポーズにうっとりしてくらくらしていた俺は、俊介が何をビデオに撮る気なのか、あんまり理解していなかった。
 いそいそと鞄から八ミリカメラを取り出し、俊介は三脚を使ってベッドの前に設置した。
 そろそろ俺にも俊介の目的が分かってきた。
「もしかして俊介……えっちしてるトコ、ビデオに撮るつもりなの……?」
 俺は顔を引き攣らせた。
「うん。個人的に楽しむだけだからいいでしょ?」
「えっ」
個人的に楽しむだけでも、やだぁ……。
ものすごぉく、やだぁ……。
でも俊介はやる気満々だ……。
目がキラキラしちゃってるよ……。
「え。でも、ビデオ必要ないじゃん。俺、ずっと俊介と一緒にいるし……」
「うん。だから、単なる記念品」
「…………」
「持ってるだけで、俺は満足できるから。ね。いいでしょ?」
「ん……あんっ……」
俊介は俺の耳たぶを甘く噛みながら言った。手はさわさわと俺の尻を撫でている。
「お願い、美咲。俺の我が侭を聞いて?」
「…………他の人に見せたりしない?」
「もちろん」
「…………ほんとのほんとのほんとのほんとに、絶対、間違いなく、他の人に見せたりしない?」
 俺はくどいぐらい俊介に聞いた。
 俊介のことは好きだけど、なんて言ったって天性的な詐欺師だし、イマイチ信用ならないんだよね〜。
「当たり前だよ。美咲の可愛い姿を、他の人間に見せたりするはずがないだろ?」
 ……う〜むむむむ……。
 俺が悩んでいる間にも、俊介はどんどん俺の服を脱がせていく。
 あ。こらっ。俺、いいって言ってないじゃん。カメラの前で脱がすのヤメロよなー。
「ねぇ、美咲。いいでしょ? いいって言ってくれないと、ココに入れてあげないよ?」
 ココと言いながら、俊介は俺の後ろの穴を指でつついた。
 う。それってキョーハク……。
「もぅっ。しょうがないなあ、分かったよ」
俺はしぶしぶ承知した。だってえっちしたいもん。
「でもねぇ、もし約束破って他の人に見せたら、怒るからね」
北高校の『血のアリス』ちゃんの実力を、たっぷり思い知らせちゃうからね!
「分かってるよ」
 にっこり笑って俊介は俺の唇を優しく吸った。
 カメラの存在は極力意識の外に追いやり、俺はえっちに集中することにした。でないと、恥ずかしくていたたまれなくなっちゃうもん。
「俊介ぇ。一回はスーツ着たままシて欲しいな」
俊介のワガママ聞いてあげるんだから、俊介も俺のワガママ聞いてよね。
「スーツ姿、気に入ってくれた?」
「うん。俊介がそーゆー格好するのって珍しいから新鮮〜」
「いいよ。でも美咲は全部、服脱いでね」
「うん」
俊介の手によってすでに半分以上は服を剥ぎ取られていたので、俺はすぐに素っ裸になることが出来た。
俺はベッドの縁に俊介を座らせ、俊介の足の間に屈みこんだ。俊介のズボンのファスナーを下げ、中から半立ち状態の俊介を取り出した。
ふふ。いつ見ても、おいしそーなおちんちん。
にっこり笑って俺は俊介のモノを口に含んだ。舌を絡めて丁寧に愛撫すると、俊介のモノはむくむくと育ってくる。
フェラをしながらちらりと俊介の表情を伺う。
あ。俊介ったら、すごく色っぽい顔してる……。
眉をきゅっと寄せて、頬を上気させて。色っぽくて、カッコイイ……。
俊介のモノをしゃぶりながら、俺は自分のモノを自分で弄った。俊介の顔を見ているだけで、俺はすっかり興奮してしまった。
「美咲……もういいから、離して……」
 切なげな声と表情で俊介は言った。
「なんで? 俺、飲みたいよ?」
「ゴメン。でも、今日はすぐに美咲と繋がりたい気分なんだ。ダメ?」
「んー。いいけどぉ……」
解してあげるからと言われ、俺は俊介に後ろを向けた。すると、正面にカメラがあった。
げ。
ばっちり俺のハダカが映ってしまう〜。
「美咲、顔赤いよ? 恥ずかしい?」
「……うん。恥ずかしい……」
「美咲ってば、カ〜ワイイっ!」
 俊介はぎゅぅっと後ろから俺を抱きしめてきた。俊介の腕の中は心地よい。でもやっぱカメラは気になる……。
「ひゃんっ……あっ…んっ……」
俊介に後ろを捏ね回される。俺は唇を噛み締め、漏れそうになる声を押し殺す。両手で顔を覆い隠し、カメラに映らないようにする。
「こおら、美咲。声、出して。顔も隠さないの」
 くすりと笑って、俊介は俺の手を顔からどかしてしまう。カメラに顔が映ることを恐れて俺は顔を背けた。
「み・さ・き。ちゃんとカメラのほう向かなきゃダメでしょ?」
「ふえぇんっ。俊介、やっぱカメラやだぁ。俺、恥ずかしい。すごく恥ずかしい……」
「仕方ないなあ……」
 俊介は軽くため息をついた。俺はカメラをどけてくれるかと思って安心した。
 だが、俊介は、そんな甘い男じゃなかった。
後ろから体を引っ張られ、俺はバランスを崩してよろめいた。どすんと俊介の上に座ってしまった。俊介は俺の尻を掴んで体をちょっと持ち上げたかと思うと、手を離していきなり俺の中に入ってきた。
「あああああんっ!!!」
「まだちょっと早かったかな?」
ちょっとどころじゃないよー。いきなり奥まで入れないでよねっ。慣れてるからいいものの、俺がバージンだったら絶対出血してるぞっ!
「カメラなんか気にならないぐらい、気持ち良くしてあげる」
 俊介は俺の両膝の裏を持ち上げ、子供がおしっこをするようなポーズを取らせた。カメラにはばっちり、俊介のモノが俺の後ろに突き刺さっているところが映っているのだろう。
 俺の体を引き上げ、俊介は一気に落とした。
「ひやぁんっ!!」
 自分の体の重みのせいで、俊介がこれ以上ないほど深くに侵入してきてしまう。俊介がいっぱい詰まってて、お腹がぱんぱんってカンジだ。
 気持ちいいよりも苦しくて、俺は涙ぐんでしまった。
「ひぃっく……うっ……。俊介、やだぁ……」
「すぐに気持ち良くなるから。美咲、カワイイ……」
 俺が俊介の大きさに慣れるよりも早く、俊介は激しく動き始めた。ベッドのスプリングを利用し、下から情け容赦なく突き上げてくる。
 俊介から与えられるものを快感に昇華するため、俺は自分で自分のモノを弄った。
「美咲、好きだよ。俺の可愛い子……」
「あっ……俊介……」
 俊介の言葉と声に、体が蕩けていく。
俊介に突かれるたびに柔軟になり、ソコは俊介を上手に呑み込み始める。苦痛は完全に、快感へと変わった。
 俺の体の中には大きな快感だけがひしめいている。
「あんんっ……イイっ……イイよぅっ……!」
 俊介の目論見どおり俺はカメラのことなどスパンと忘れ、俊介をたっぷり味わってしまった。
喘ぎ、よがり、痴態を晒す。
理性なんて消し飛んでしまった。
「ひぃんっ」
俺は勢いよく白い液を吹き上げた。垂れ落ちた汁が、俊介のスーツのズボンにシミを作る。
「あ。俊介、ズボン、汚れちゃう……」
「別にいいよ。後で拭くから」
 でもそのスーツ、多分、ン十万はするよねぇ……。なのに俊介、あんま気にしてないし……。さすが俊介、お坊ちゃまだ……。
「そろそろ体位を変えてみようか。後ろからだとスーツ姿がよく見えないだろうしね」
 後ろからずるりと俊介が引き抜かれた。俊介は硬度を保ったままである。感じすぎて、俺はぽやややんとなってしまっているのに、俊介はいまだ一回もイっていない。
 ……ちょっと悔しい。
「ふにゃ?」
 ごろりとベッドの上に転がされた。
 俊介は肩にカメラを担いで戻ってきた。
 ……カメラっ!?
「わ。しゅ、俊介、なんでカメラ担いでるのさっ」
「こうすれば美咲の色っぽい顔をアップで撮影できるだろ?」
「や、やだよ、俊介っ! やだってばあっ!!」
 イヤだって言ってるのに、俊介はカメラを肩に担いだままもう一度俺の中に入ってきた。正面から俊介に深々と貫かれる。
「やっ……!」
「美咲、イイ顔だね」
「やぁっ!」
 ヤダって言ってるのに、俊介の、ばかぁっ!
「恥らってる美咲の顔、すごく、ソソる……」
 俊介は掠れた声で囁き、俺の体を激しく揺らし始めた。そんなふうにされたらカメラで撮影されてるって分かってるんだけど、でも……。
「あっ……ひんっ……ソコ、ソコぉ……!」
 俺は髪を振り乱して泣いて体をくねらせた。
 気持ちイイよーっ。
俊介はエロの天才だよっ。エロの神様だよっ。
なんでそんなに俺のイイところを見つけるのが上手いんだよーっ。
「イイっ……俊介ぇ……し、しんじゃうぅ……」
 気持ち良すぎて頭がくらくらで体はぐにゃぐにゃで、どうにかなっちゃうー。
 カメラを担いでいるから手を使えない分、俊介は微妙に角度を変えリズムを変え抜き差しし腰を回し、俺を自由自在に翻弄する。
 スゴイスゴイスゴイスゴイ。
 スゴイ気持ちいぃーよぉーっ!
「あふぅんっ……俊介のおっきいおちんちん、気持ちイイの……」
「目がとろんとして、美咲、カワイイ」
 そして俊介は、一度緩めた律動を早いものに変えた。
「あっ……はぁっ……ひっ……アンっ……!」
俺はもうただ、俊介の体の下で喘ぐことしか出来ない。
浅ましく男を求める俺の顔は、すべてカメラに収められたことだろう。
でも、そんなのどうだっていい。だってこんなに気持ちイイ……。
まるでお漏らしをしているかのように、俺はとろとろと先端から白濁した液を垂らし続けた。
 ようやく内部が俊介のもので濡らされたときは、俺は精も根も尽き果てた状態だった。
 う〜。気持ちよかったけど疲れたよぅっ。
「美咲、ステキだったよ。ビデオを見るのが楽しみだよ! 一緒に見ようね!」
 …………………………え。
 …………………………一緒に…………?
「や、やだよ! 見るんなら俊介一人で見ればいいじゃんっ。俺は絶対イヤだからねーっ!」
 ……と、俺は反対したのにっ。
絶対イヤだって言ったのに!
絶対見たくないって言ったのに!
俊介のばかばか〜っ!
後日、俺がすっかりビデオのことを忘れ油断しきったころに、俊介はそれを持ち出してきたんだ。


 
 
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