【カラダから!  -04-】
 
俺たちはすぐに待ち合わせして会うことになった。
会ってどう話したらいいか分からない。どんな顔をすればいいのか分からない。
俺はちゃんと、あの人の前で笑えるだろうか?
会うのが怖い。
怖いけど会いたい。
複雑な思いを抱えたまま、俺は待ち合わせの場所へと足を向けた。
「サキちゃん!」
俺の姿を発見したオッサンは、笑顔を浮べて俺の傍に駆け寄ってきた。オッサンの笑顔に胸がどきんとして、俺って馬鹿だなあとまた落ち込んだ。辛いのに、やっぱり会えて嬉しいって思ってしまう。
こんなに切ない思いをしているのは俺だけなのだと思うと、無性に悔しくて俺は上手に笑えなかった。
「どうしたの? サキちゃん。なんだか元気ないね……」
オッサンは心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
俺はなんだかオッサンの目をまっすぐ見ることが出来なくて、視線を逸らしてしまった。
「……別に、フツーだよ……」
「やっぱり元気ない。気分でも悪いの? それとも、まだ怒ってる? この前、途中で帰っちゃったよね。電話も繋がらなかったし……」
「気分悪くなんかない。怒ってもいないよ。いいからホテル行こうよ」
久しぶりのセックスへの期待に体が疼く。
でも、心が痛い。自分だけが想っていて、自分のことを愛していない男に抱かれるのは辛い。
心と体がばらばらでおかしくなりそう。
「サキちゃん、今日はホテルじゃなくて、俺の部屋でいい?」
「え? 別にイイけど……」
俺はびっくりしてオッサンの顔を見上げた。オッサンの部屋に連れて行ってもらったことは今まで一度もなかったからだ。
俺たちはもっぱらラブホテルでセックスをした。
おかげで俺は、どこのホテルが安くてどこのホテルの設備が整っているとか、やけにラブホテルに詳しくなってしまった。
「よし、じゃあ行こう!」
オッサンは俺の手を握って、ぐいぐいと俺を引っ張って行った。
往来で男同士で手を繋いでいるのは恥ずかしかったが、触られるのは嬉しかったので俺は文句を言わなかった。



オッサンは綺麗なマンションに住んでいた。セキュリティもしっかりしていて、受付にはコンシェルジュも控えていた。どうやら24時間、常駐しているらしい。
……ここってもしかして、億ションってやつ……?
ロビーも広々としていて座り心地の良さそうなソファーが置かれている。中央には、でっかい花瓶があって、造花かと思ったら活花だったのでビックリした。
俺は高級な雰囲気にビビって、オッサンの後ろを恐々とついていった。
「ここに住んでるの」
「へぇ……」
初めて訪れたオッサンの部屋は、思ったよりもきちんと片付けられていた。物珍しくて俺はあたりを見回した。一人暮らしにしてはやけに広い。
……ひょっとして……誰かと暮らしてる……とか?
「……すごく広いね。部屋ん中、見ていい?」
「うん、いいよ」
オッサンからの許可を得て、俺はどきどきしながら洗面所を見に行った。
置いてある歯ブラシが一本だけだったから安心した。どうやら部屋は広くても、誰かと同居しているってわけでもないみたいだ。
「オッサン、店、儲かってるの? 一人暮らしにしては部屋広いね」
「店はそんなに儲かっていないんだ。実は、両親がちょっとした資産家でね。大学生のときに一人暮らしをしたいと言ったら、この部屋を買ってくれたんだよ」
「へぇ、賃貸じゃなくて分譲マンションなんだ。ここ」
『借りる』じゃなくて『買う』だなんて、オッサンの実家、金持ちじゃん。
そういやオッサン、ぽやぽやしてるっつーか、お坊ちゃまっぽいもんな。
激納得〜。
オッサンのマンションは駅から歩いて五分ぐらいのところにあった。近くにスーパーはあるし、住み心地よさそう。立地条件もよくて部屋も広くて、買うときさぞかし高かったに違いない。
「一人暮らししたかったのって、やっぱ遊ぶためだよね」
この部屋にオッサンは何人相手を連れ込んだのかな? 俺で何人目?
オッサンの過去の相手への嫉妬で顔が強張る。
ダメだ。こんな顔しちゃ。
もしオッサンに俺の気持ちがバレたら面倒なヤツだと思われて、もう会ってくれなくなっちゃうかもしれない。
都合のいい遊び相手でもいいから傍にいたいって思った。
だから、俺の気持ちは隠さなきゃ。
それに向こうはなんとも思っていないのに自分だけが好きだなんてカッコ悪い気がする。オッサンの前で、俺は無様な姿をさらしたくなかった。
「そうだね。家にいるといろいろと煩いこと言われるからね。でもそれよりも、自分の性癖が家族に対して後ろめたかったって言うのもあるかな。家にいるときはずっと気詰まりだった」
「オッサン、カムアウトしてないの?」
「うーん。あえて言ってはいないけど、姉には現場を押さえられてバレちゃってね。危うく殺されるところだったよ。包丁持って追いかけられて、土下座して許してもらったよ」
……ひょえーっ。オッサンのねーちゃん、こえぇなぁ……。うちにもねーちゃんいるけど、俺には甘いからなぁ……。
「両親はうすうす感づいているんじゃないかな? 以前はお見合い攻撃が激しかったんだけど、最近じゃさっぱりだよ。一応、女の人を抱けないわけじゃないんだけど」
「え? そうなの? じゃあ、オッサンってバイなの?」
俺はオッサンのことをずっと真性のゲイだと思っていたから驚いた。
ということは、俺は男だけじゃなくて女にまで嫉妬しなきゃいけないんだ。女を抱けるって分かってるってことは、女の人と寝たことがあるってことだ。
「サキちゃんは? 女の人は、どう?」
「俺、男にしか欲情しない。大人の男の人がイイの」
「そうなんだ。カミングアウトは家族にした?」
「したよ〜。高校に入る前ぐらいかな? すっげぇ怖かったけど、うち、家族の仲が良くて、隠しておくのが辛くなっちゃってさ……」
 親友の甲斐に受け入れてもらえたことが、俺に自信を与えてくれたということもあった。甲斐が俺の特殊な性的嗜好を知った後も、態度を変えないでいてくれたことで俺は随分救われた。
 もし、自分の大好きな家族に最大な秘密を打ち明け、それでも家族の一員として自分のことを愛してくれるのなら、どんなに自分は楽になれるだろうか?
 それが危ない賭けであることは分かっていた。場合によっては、俺は、家族の愛情を失ってしまうかもしれないし、家族を苦しめてしまうかもしれない。
 家族に打ち明けることは、怖かった。
それでも家族に自分の性癖を隠し続けることは毎日がキツくて、俺はとうとう家族にカミングアウトする決意をした。
両親に自分がゲイだと告白したのは夕飯の席でのことだった。
お父さんは仰天していたが、お母さんはちょっと驚いただけで、三つ年上の姉ちゃんは平然としていた。
「げ、げ、げ、ゲイだとぉ? か、母さん、美咲を病院に連れて行け! せ、精神病院に連れて行け!!」
「あら、お父さん。性的指向は生まれつきなのよ。病院に行ってどうなるわけでもないの。母親の胎内にいるときに母体にストレスがかかって、ホルモンバランスが崩れた結果だって聞いたことがあるわ。実際、戦争や内戦が起こっている土地の妊婦から生まれてくる子供はホモセクシャルが多いんですって。だから必要なことは病院に行くことじゃないわ。周囲の理解なの。社会ではまだ偏見が強いから、私たち家族が美咲を守ってあげなきゃ」
「人間の胎児は女が基本形になっているのだが、受精してから六〜八週間に男の胎児はアンドロゲンという男性ホルモンを大量に分泌して精巣ができはじめる。そのときに女を基本形にした脳にも変化が生じて女の脳から男の脳に変わるらしいな。ところが、この時期に男性ホルモンが不足した場合、ゲイかトランスジェンダーになることもあるそうだ。美咲の場合はあまり女性的な行動は見られないからトランスジェンダーというよりゲイに分類されるのだろうな」
美人で賢くてクールな姉ちゃんの口からは、いつもどおり、冷静で知的な発言が飛び出した。庇ってくれるのは嬉しいけど……姉ちゃん、俺と血縁関係があると思えないほど賢過ぎだよ。
「い、いや、だが、お前たち……」
お父さんはお母さんと姉ちゃん二人に理路整然と攻撃されてたじたじだった。
おそらく世間一般的には、お父さんの反応のほうが普通なのだろう。だが、我が家は違った。
「ホモセクシャルは生まれつきで本人の選択ではないのだから、美咲を責めるのはお門違いだ。育った環境がおよぼす影響は小さい。ホモセクシャル的な傾向を親が正そうとしても医学的見解から言って無理な話だ」
「し、しかし……」
「親が無知であることは子供にとって不幸なことだと私は思うが、父さんはどう思う?」
けっしてきつい口調ではないが、淡々と姉ちゃんに追い詰められ、父さんはとうとう口を噤んだ。
「カミングアウトすることは美咲にとって、勇気が必要なことだったと思う。しかしそれでも打ち明けてくれたのは、隠し事をすることに対しての精神的ストレスから解放されたいという思いもあっただろうが、なにより私たち家族への信頼が原動力であったと私は考える。その想いに私たちは応えなければいけない」
姉ちゃんはまだ十七歳だというのに、未成年とは思えないほどのド迫力だった。さすが現役で超レベルの高い国立大学の医学部に受かっちゃうだけのことはあるよ。姉ちゃん、カッコイイぜ……。
姉ちゃんの凛々しい横顔を、俺は頼もしい気持ちで見上げた。姉ちゃんは美人なのだが女らしい雰囲気には乏しい。口調も素っ気なく男っぽい言葉で話す。
強烈な個性を持った姉ちゃんだが、賢くて理性的で俺には優しくて、俺は姉ちゃんのことを尊敬していた。
大学が家から通える距離じゃないので、姉ちゃんは大学入学と同時に一人暮らしを始めてしまう。大好きな姉ちゃんと滅多に会えなくなると思うと、俺は寂しかった。
「美咲、ホモセクシャルは少数者(マイノリティ)に属するがゆえに、これから苦労することも出てくるだろう。社会の偏見の風はいまだ強い。だが、私たち家族は常に味方だということを覚えていておいて欲しい」
「姉ちゃん……」
「私は姉として、愛する弟の幸せを望む。美咲は心の望むまま、自分を曲げずに自由に生きていくがいい」
「姉ちゃん!」
俺は姉ちゃんの細い体に抱きついた。女っぽくはないけど、姉ちゃんはイイ女だと俺は思った。姉ちゃんだったら俺の秘密を受け止めてくれると思っていたけど、それでもカムアウトするのは怖かった。でも、思い切って言ってみて良かったと思った。
やっぱり俺の姉ちゃんは最高の姉ちゃんだ。
「そ、そ、そんな……。俺の息子が……ホモだったなんて……」
お父さんは虚ろな目をして呟いた。
……ゴメンね、お父さん……。
「ストレスの原因は、私がつわりで苦しんでいるときにあなたが外で浮気をしていたからでしょ? この場面でそんなふうに被害者面するなんて卑怯だわ」
お母さんはにべもない口調で言った。
「ええー? お父さん、浮気してたの?」
仲の良い両親だと思っていたので俺は驚いた。
「妻が妊娠中に浮気とは……最低だな」
姉ちゃんははき捨てるような口調で言った。
少々マザコン気味の姉ちゃんは、お母さんを裏切ったお父さんの行動が許せないみたいだ。
「ち、違う! あれは浮気とは違う! そりゃ誘われて、どうしてもと言われてメシは食いに行ったがそれだけだ! 浮気なんて絶対にしていない。信じてくれ、俺はお前だけを愛しているんだーっ」
お父さんは必死にお母さんに言い訳していた。お父さん、お母さんにべた惚れだもんね。だったら浮気なんて最初からしなきゃいいのに。
ご飯食べただけだって言っても、女の人と二人きりだなんて、お母さんが浮気だと感じたんなら、それって立派な浮気だと思う……。
「そうね。寛大な父親であることを証明してくれたら、あのときのことは不問にしてあげるわ」
お母さんは澄ました顔で言った。
「だ、だから、違う〜。俺は浮気なんて……」
「お父さん?」
笑顔。
けど、お母さん、目が笑ってない……。
「う。わ、分かった。俺も男だ、腹を決めた。美咲、お前が男の恋人を家に連れてきても俺は驚かん。人様に迷惑をかけない限り、恋愛は自由だ! 好きにしろ!」
「それでこそ、私のアナタよ」
お母さんは、満足そうな笑みを見せた。
俺は肩の荷が降りたような気持ちになった。姉ちゃんの言うとおり、男を好きになる人間は少数派で、これから先、苦労することもたくさんあると思う。
けど、家族が理解してくれたことに俺は勇気付けられた。
大丈夫。
俺は幸せになれる。
この家の子に生まれて良かったと、俺は心底思ったのだった。



「……サキちゃんの家族、すごい人たちだね」
俺の話しを聞いて、オッサンは感心した顔をした。
「そう。すごい人たちなの」
「サキちゃんが素直ないい子なのが分かった気がしたよ」
オッサンは床に胡坐をかいて俺を手招きした。俺はオッサンの首に腕を回し、横向きに抱きかかえられるような体勢でオッサンの膝の上に座った。
こうやって、好きな人にくっついていられるのは幸せなことだ。今だけはオッサンは俺のものだ。
オッサンの頬にキスすると、オッサンはくすぐったそうな顔で笑った。
……この目が、いいんだよね。
優しい目が好き。
柔らかな声が好き。
いつの間にこんなに好きになってたのかなあ。
なんだかとっても切ない。
「サキちゃん、俺と会わない間、何してたの?」
「えー? 何って、フツー。学校行ったり友達と遊んでたりした。日曜日は友達とバッティングセンターに行ったよ」
「そう」
オッサンは難しい顔をして黙り込んでしまった。何を考えているのか気になりつつも、真面目な顔もカッコイイなと俺はうっとりしてしまった。はしたなくも、俺の股間はじんわりと熱くなってきた。
……だって二週間えっちしてないんだもんー。
俺が下半身をむずむずさせてると、オッサンはそれに気付いて苦笑した。俺は恥ずかしくなって顔を赤くした。
オッサンは俺のズボンのファスナーを下げて、中からすでにがまん汁でべとべとになっている俺のちんちんを取り出した。
「サキちゃんのコレに触るのも久しぶりだなあ」
しみじみとした声で呟くと、オッサンは右手で俺のモノを愛撫し始めた。
「あんっ……あっ……はぅんっ……」
くぅ〜っ! オッサン、相変わらずすごいテクニックだぜ!
ちょっと弄られただけなのに、俺もう、メロメロ〜……。
体がふにゃーってなってる。
「可愛いね、サキちゃん。今日もいっぱい気持ち良くしてあげるね」
いっぱい気持ち良くして貰えるんだ! わーい、わーい。久しぶりのえっちだ。嬉しい!
いろいろフクザツなシンキョーだけどさ、とりあえず、この熱くなった体をどうにかして貰いたいな。
下半身に血が集まっちゃってるから、今は難しいこと考えられないよ。
あーっ。なんか、ケツの穴がむずむずしてきた!
「ねぇ、後ろも……触って……?」
やっぱぁ、前だけじゃ物足りないってゆーかぁ。
自分でもケツの穴に指突っ込んでオナニーしてたけど、やっぱりオッサンに触って貰いたいよぅ。
オッサンのちんこで思いっきり中を擦られた〜い!
「うん、いいよ」
オッサンは俺のズボンとパンツを脱がせてくれた。
上半身は制服を着たままで、下半身だけすっぽんぽんだ。この格好って超エロイ気がする。靴下も履いたままってのがなんだかマニアック。
「この格好って超エロイね。オッサン、こーゆーの好きでしょ?」
「うん、好き。あとででいいから、サキちゃん、その格好で足開いて、オナニーしてるとこ見せてくれる?」
「いいよ。あとでね」
ちょっと恥ずかしいけど喜んでくれるならそれぐらいしてあげる。でもその前に、オッサンのおっきいおちんちんで、思いっきり俺のこと気持ち良くしてよね。
「じゃあサキちゃん、続きは寝室行こうか」
「うん、行くー」
ズボンは皺にならないように、簡単に折りたたんだ。だって皺くちゃだと帰るとき恥ずかしいもん。
もたもたしてたらオッサンにひょいっと体を持ち上げられた。うわー。これってお姫様抱っこってヤツだ! すごい、オッサン、軽々俺のこと持ち上げてるよ。
「俺、重くない?」
「ぜんぜん重くないよ」
オッサンは俺の体をそっとベッドの上に横たえた。ホテルのベッドと違ってオッサンのベッドはオッサンの臭いが染み付いてて、その臭いを嗅いだだけで俺は欲情してしまった。
「サキちゃんのココ、元気だね」
オッサンはおかしそうに笑いながら、俺のちんこの先っぽを指でつついた。
「だってぇー。二週間ぶりのえっちなんだもん。オナニーはしてたけど、物足りないよ」
「そうなんだ? 俺と一緒だね。俺も二週間ぶりなんだよ」
「……え?」
俺はびっくりしてオッサンの顔を見つめた。だってオッサンはばりばりの遊び人で俺のこともただのセックスフレンドの一人でしかなくて、不特定多数といっぱいヤりまくってたんじゃないの? それがなんで二週間も禁欲なわけ?
「サキちゃん、あのね。この部屋に他人を連れてくるの、サキちゃんが初めてなんだよ」
「……え?」
なんか今、嬉しいこといわれたような気がする。それって俺はトクベツってこと? 自惚れてもいいのかなぁ?
「……オッサン、なんで二週間もえっちしなかったの? セックスする相手ならいっぱいいるでしょ?」
俺と違ってさ。
「サキちゃんが二度と会ってくれないって言うし、電話にも出てくれないからそれどころじゃなかった」
「えーっとぉ。それって……」
俺のせいで二週間禁欲生活送っちゃったってこと? 気のせいじゃなく、自惚れてもいいような気になってきた……。
「俺は貞操観念なんてないに等しいし、ちょっと好みの子がいたらすぐナンパして、上手くいったらセックスしての繰り返し。で、体の相性が良かったらまた会って、飽きたらバイバイ。もうほんとに体だけの関係で、いつの間にか連絡取れなくて自然消滅ってことも多いんだけど、また新しい子見つければいいやって感じでなんとも思わなかった」
オッサンは真面目な顔をしてとうとうと話し始めた。オッサンがこんなふうに自分のことを話すのは初めてだ。
「…………そうなんだ」
「うん、そうなの。恋人がいた時期もあったけど、一緒に乱交パーティーに行ったり女の子ひっかけてホテルで三人でヤったり、清らかな生活とは程遠くてね。恋人が他の人間と寝ても俺は全然気にならなかったし、それどころか恋人が自分以外の男とセックスしているところをワイン片手に観賞していたこともあった」
「ふ、ふぅん……」
俺なら絶対ヤだけどなー。他の男に犯されてるところをオッサンに見られるなんて。
それって俺がまだ子供だからなのかなぁ?
オッサンの恋人になるには、そーゆーこと出来なきゃいけないわけ?
だったら俺には無理って気がする……。
「その恋人とは性生活がぴったり一致してて一年ぐらいは続いたかな? でも向こうが好きな人が出来たからって別れることになって。それなりにショックだったけど、翌日にはもう俺はハッテン場に行って公園のトイレで男の子とセックスしてた」
オッサンは辛そうな顔で眉をひそめ、俺の体をぎゅーっと強く抱きしめてきた。
「オッサン?」
「でもね、サキちゃんをあの日怒らせちゃって、連絡も取れなくなって、自分でもみっともないぐらい焦った。今頃、サキちゃんが他の男に抱かれているかもしれないと思ったら、胸が苦しくて不愉快な気分になった。そんな気持ちになったのは初めてだったから驚いた。多分、これが嫉妬ってやつなんだろうね。サキちゃんが目の前からいなくなって、俺は自分がどれだけサキちゃんのことを大切に想っていたか気がついたんだ」
オッサンそれって、なんか俺のこと好きって言ってるみたいに聞こえるけど……期待していいのかなぁ?
「それって俺のことが好きってこと?」
 俺は思い切って聞いてみた。
「そうだね。好きなんだろうね。こんなオジサンに想われてサキちゃんには迷惑かもしれないけど、俺はサキちゃんのことが好きなんだ」
今、たしかに俺のこと、好きって言ってくれたよね。
……嬉しい……。
俺もって言う前に、オッサンはさらに言葉を続けた。
「俺には甥がいてね。真剣に恋愛をしている子で、俺はそれを見てキツそうだなあと思った。自分には誰かと真面目に恋をするなんて無理だと思った。でも、無理とかそういう問題じゃないんだよね。そこにいたら、惹かれずにはいられない。俺は今、サキちゃんに真剣に恋してる」
真っ直ぐな目で、愛の告白をされる。真剣な眼差しにどきどきする。
「嬉しい。俺も、俺もね。オッサンのこと、好きだよ」
俺は嬉しくなって、オッサンにぎゅっと抱きついた。嬉しくて涙が出てきた。
オッサンは俺に甘いキスをくれた。
「ほんと? サキちゃんも俺のことを好きなの? じゃあ、もう二度と、会わないなんてこと、言わないでいてくれる? 俺の恋人になってくれる?」
「うん、なる。あ、でも、恋人になるなら、浮気はしちゃダメだからね。この前オッサン、3Pしようとか他の男とヤってるとこ見せてとかヘンなこと言うし……。平気な顔して他の子抱いた話するし。だから俺、この前怒ったんだから。俺なんかとっくにオッサンのこと恋人だと思ってたのに、セックスフレンドだなんて言うから、すごく傷ついたんだから……」
あのときの悔しさと悲しみが蘇ってきて、俺はオッサンを睨み付けた。目には涙が浮かんできた。
前の恋人と俺は違うんだからなーっ。
浮気は絶対、許さないんだからなーっ。
「そっかぁ。俺はサキちゃんにひどいこと言っちゃったんだね……。サキちゃんは俺のこと、恋人だと思っていてくれてたんだ? ゴメンね。もう遊びで誰かとセックスするのは止めるよ。これからはサキちゃん一筋になるから許して」
「これから浮気しないなら許してあげる」
「浮気しない。サキちゃんがいれば満足だから」
「嬉しい……」
体をぴったり密着させてるから、オッサンのナニも臨戦状態に突入していることが分かる。俺なんかもうさっきからビンビンで、オッサンのズボンを先端から滲み出ている汁で汚してしまった。
「サキちゃん、好きだよ。今日はいっぱい愛してあげるから……」
オッサンは俺のモノに指を絡めながら甘く囁いた。
うん、してして! こんなに心が満たされたまま愛し合えるのって、至福って感じ。
俺はオッサンに促されるまま仰向けの状態で、折り曲げた足を大きく開いた。上半身はまだ制服を着込んだままなんだよね。皺になっちゃうかなぁ。
「ねぇ、上も脱いでいい?」
「そのままがいいなぁ。皺になったら、後でアイロンかけてあげるから」
「そう? じゃあいいや」
俺は安心してえっちに没頭することにした。
オッサンは指で俺のちんこを愛撫しながら、後ろの窪みを舐めてベトベトに濡らした。舌をぐっと捻じ込まれて中まで唾液を送り込まれる。
「はぅっ……あぁ……」
あーんっ。もう、たまりませんっ。
いつもにも増してオッサンの愛撫は丁寧で、俺、もう、イっちゃいそう……。
さっきから我慢してたし……。
二週間ぶりだし……。
「俺、もう、イっちゃいそう〜」
早すぎて恥ずかしいけどもうダメみたい……。
オッサンは俺のモノを根元まで口に咥えながら、ぐいっと指を突き入れてきた。その衝撃で俺はオッサンの口の中で射精してしまった。
「サキちゃんの精液飲むの久しぶり」
オッサンは嬉しそうに笑って、俺の精液で濡れた口元を拭った。そして再び俺の股間に顔を埋め、念入りに後ろの穴を指と舌とで解し始めた。
「ほんとはね、今日、サキちゃんのこと監禁するつもりでここに連れてきたんだよ」
「あふんっ……」
オッサンがしゃべると敏感なところに息がかかって俺はピクリと反応した。
……あれ? でも、なんか今、不穏なことを言われたような……。
「てっきり俺に飽きて他の男に走っちゃったのかなーって思って。でも俺はサキちゃんのことが好きだってことに気が付いちゃって、他の男に渡すのなんてイヤだったし、だから閉じ込めちゃおうっかなーって。手錠も鎖もちゃんと用意しておいたんだよ」
「ああっ……! はぅんっ……!」
オッサンが指で俺がイイところを容赦なくつついてくるから、俺の頭は快感でぼーっとしてなんかヤバイことを言われてる気がするけどオッサンの言葉の意味はあまり理解できていなかった。
「でもサキちゃんも俺のこと好きだって言ってくれたから、犯罪者にならずにすんで良かったよ。前科者になることも覚悟してたんだけど。サキちゃんが暴れたときのためにクスリも用意してて、すごくえっちな体になっちゃうクスリなんだけどシンナーと一緒で副作用で脳みそ溶けちゃうみたいだから使わずにすんでほんとによかった。所持しているだけでも犯罪だから、後で始末しておかなきゃね」
「あっ、あっ、ひぃっ……!」
「もしものときのために学生手帳も抜き取っておいたけど、住所も学校名も暗記したから返すね。学生証がないと学割で定期券が買えなくなっちゃうもんね」
「ああっ……イイ……イイっ……!」
「ビデオも用意してあるんだけど、今度セックスしてるとこ、撮影していい? 脅迫用に使う気だったけどその必要もないみたいだし、個人的に楽しむだけにするから別にいいよね」
オッサンが何しゃべってんのかわけわかんない。なんでもいいからもっと強い刺激が欲しい。
「も、もう……入れて……お願い、入れてぇ……! オッサン、お願い……」
「サキちゃん、恋人同士なんだから、オッサンじゃなくて、名前で呼んで欲しいな。俊介って呼んで」
「ヤっ……。は、はやくぅ……」
「俊介って呼んで」
「う、うん。呼ぶから……あふんっ……俊介ぇ……俊介のおっきくて硬いおちんちんが欲しいのぉ……入れてぇ……」
「可愛くオネダリできたね。いくよ、美咲」
「あっ……キテぇ……。あっ! ああっ……!」
オッサン……じゃなくて、俊介のおっきいちんこは一気に奥まで入ってきた。待ち望んだ熱に俺の体は悦びに震えた。
このずっしりとした存在感がたまらない。
自分で指で弄っても、これほどの充足感は得られなかった。
俊介じゃないと俺の体は満足できない。
「動いて、中を擦って! 俺をめちゃめちゃにして!」
俊介はなかなか動こうとせず、俺は焦れた。
「美咲、俺のこと好き?」
「うん、好き……」
「美咲、俺のおちんちんは?」
「す、好き……。大好き……」
「美咲は素直だね。美咲が好きなのは、俺のおちんちんだけなのかなあ?」
「そんなことない! 全部好き。俊介のこと、大好きなの……」
「もうちょっと意地悪しようかと思ったけどね。美咲は可愛いからご褒美をあげないとね」
俊介はくすりと笑い、ゆっくりと腰を使い始めた。
ああ、もう、なんでそんなに余裕なんだよ! 俺なんてまたイっちゃいそう……。
「はぅっ……!」
ちょっと動かれただけで俺はイってしまった。
うわーんっ。制服に精液が付いちゃったよ……。やっぱり脱げばよかった。
なんて冷静なことを考えられたのは一瞬だけ。まだ終わっていない俊介ががくがく揺するもんだから、俺はまた快楽の海に沈められた。
「美咲の中、熱くて気持ちいいね。最高だよ」
「ああんっ! ……俺も……気持ちイイ……ようっ……!」
「可愛いよ、美咲。もっと乱れてごらん」
「ひっ……そ、そんなにしたら……ああっ!」
俊介は容赦なく俺を責めたてた。俺はもう、ただひたすら俊介の体の下で喘ぎ続けた。
……ああっ……! きっ、気持ち良すぎっ!!
「ソコ! ソコ、もっとぉ……。あ…ひぃっ! ……イイ……イイ……!」
「そろそろ出すよ。美咲の中を、俺の精液で満たしてあげるね」
「あ―――っ!!!」
俊介はポイントを誤らず俺の前立腺をぐりっと先で擦りながら中を熱い液体で満たした。俊介を締め付けながら、俺も頂点を極めた。
激しいセックスが終わって、俺は荒い呼吸をしながらベッドの上で脱力した。
俊介が萎えたものを引き抜くと同時に、お尻の穴からたらりとぬるい体液が滴り落ちた。
……あれ?
「ひょっとして俊介、今日はコンドームしなかったの?」
「うん。ナマのまま入れて中出ししちゃった。美咲のここ、濡れて光っててえっちで可愛いよ」
俊介はにこにこ笑いながら、俺のアナルのふちを指でなぞった。
セーフセックスを心がけて俊介はいつもゴムを被せてから挿入するのに、今日はそのまま入れてくれた。
俺がトクベツだってことを態度で証明してくれたみたいで嬉しかった。
「さっきオナニーして見せてくれるって言ったよね。今からやって見せてくれる?」
「うん」
俺は壁に寄りかかって上半身を起こし、恥部が丸見えになるように足をおっぴろげて自分のお尻の穴に指を突っ込んだ。俊介が放ったもののせいで中はぬるぬるしていた。俊介の大きなイチモツを咥えていたソコは、簡単に指を飲み込んだ。
後ろを弄りながら俺は前も弄った。
俊介は俺の姿をうっすらと笑いながら視姦している。
「自分でお尻の穴を弄りながらおちんちんも触るなんて、美咲は淫乱だね」
俊介は冷ややかに笑いながら、侮蔑を含んだ口調で言った。
普段は優しいんだけど、俊介って、えっちのときはちょっとS入るんだよね。俺もM入ってるからぜんぜんOKってゆーかぁ……。
むしろめちゃ燃えって感じ……。
もっと苛めてーっ。
「あぁんっ……だってぇ……」
「まだ高校一年生なのに、どうしようもなくエロイ体だね」
俊介は俺の頬を平手で殴った。この弱すぎず、それでいて痛過ぎない力加減は見事としか言いようがない。
しかも今日の俊介、いつもよりワイルドじゃない? 恋人同士になって遠慮がなくなったのかなあ?
どうしよう、カッコよくてどきどきしちゃうー。
粗野な雰囲気がたまんないっ。
「美咲はこれが好きで好きでたまらないんでしょ。しゃぶりたい?」
打たれた頬を押さえてベッドの上に倒れこんだ俺の鼻先に、俊介は血管が浮き出るぐらい張り詰めたペニスを突きつけてきた。
……おいしそー。
思わず舌を伸ばして先端を舐めると、また頬を殴られた。
「誰が舐めていいって言ったの? お行儀が悪い子だね」
「やぁんっ……。俊介ぇ……意地悪しちゃ、ヤ……」
「美咲はいやらしい子だなあ。そんなに男のおちんちんを咥えたいんだ?」
「うん。俊介のおちんちんを咥えたいの。俊介をいっぱい味わわせて?」
「ちゃんとミルクを飲み干せるなら舐めさせてあげる。粗相をしたらお仕置きだよ?」
「ちゃんと飲むから舐めさせて」
俺はいまだに精液を飲むことに成功していない。今日こそはと気合を入れて、俺は俊介のモノを口で愛撫し始めた。
俊介のって、やっぱり立派! 大きくて太くて反り返ってて、色は赤黒くてグロテスクで、理想の大人の男のおちんちんだよ。
俺、持ち主も好きだけど、俊介のおちんちんも大好きなんだよね……。
うっとりと俊介を口に含んでいたら、いきなり俊介が喉の奥まで突き入れてきた。そしてたっぷりと俺の口の中に精液を注ぎこんだ。
「……んっ……」
量が多くて苦しかったけど、俺は頑張って飲み込んだ。
「いい子だね。可愛いよ、美咲」
俊介は褒めてくれて、しかもフェラチオまでしてくれた。俺も上手くなったと思うけど、俊介の舌使いには負けるな。
「あんっ……も……イクぅ……!」
あーあ。俺、もうイっちゃったよ……。もっともっと気持ちいい思いしていたかったんだけどな。今日はもう四回出したし、さすがに限界だよ。
「美咲、シャワー一緒に浴びようか。体と髪、洗ってあげるね」
「うんっ」
えっちモードから普通モードに切り替わった俊介はすんごく優しい。鬼畜っぽい俊介もいいけど優しい俊介も大好き。
「どうしよう。制服に精液付けちゃったよ……」
予想通り皺くちゃだし、これで家帰るのヤだなー。
「濡れたタオルで拭けば平気かな? アイロンもかけなきゃね」
一緒にシャワーを浴びてから俊介は俺の制服をキレイにしてくれた。俊介がアイロンをかけてる間、俺は裸のまま俊介ににゃんにゃん懐いていた。
背後から抱きついてたら、アイロンがかけにくいよと俊介は苦笑していた。
だってさ、久しぶりの俊介だもん。
しかも今日から俺たちは、正真正銘の恋人同士なんだー。
「俊介、好きー。大好きー」
「いつも可愛いけど今日の美咲は格別に可愛いよ。これ、合鍵だから、美咲が持ってて。平日に会うのは火曜日しか無理だろうけど、金曜の夜か土曜日の夜、出来れば泊まりに来て欲しいな」
「うん。泊まる」
すごいすごいすごい! 鍵まで貰っちゃったよ、俺!
ほんと特別じゃん。
めちゃめちゃ恋人じゃん。
「えへへ。俊介、好き」
嬉しくなって俊介の唇にちゅって音を立ててキスしたら、俊介は俺もだよって頬にキスしてくれた。
それから二人とも裸のままイチャイチャしてて、でもさすがに夜の九時になったので俺は家に帰ることにした。
俊介は車で俺を家まで送ってくれると言ってくれた。
「でも俊介、大変じゃない? 俺、電車で帰るよ」
「ダメだよ。最近は物騒だから、美咲みたいに可愛いコが夜遅くに出歩いたら危ないよ」
「えー。危なくないよー」
だって俺、南高校の『帝王』と同じぐらい強いらしいし。
でもこれは俊介には内緒ね。俊介の前では可愛い恋人でいたいのさー。
「いいや危ないね。お願いだから送らせて」
「うーん。じゃあ、送ってもらおうかな。ありがとう、俊介」
送ってもらえればぎりぎりまで俊介と一緒にいられるから嬉しい。
俊介は道に迷わず、最短距離で俺を送り届けてくれた。
「あれ? 俺、俊介に、自分のうちどこにあるか教えたっけ?」
「ん? 愛の力かな」
「そっかぁ……」
愛の力かぁ。そうだよね。俺たち恋人同士だもんね。
へへ。
また頬が緩んできちゃった。
「俊介、週末に泊まりに行くからね。浮気しないでね」
「しないよ。美咲だけでいいって言ったでしょ?」
「えへ。俺も俊介がいれば幸せ。すごくすごく週末が待ち遠しくなっちゃった……。今日、まだ、火曜日なんだよね。しばらく俊介に会えなくて寂しいよ」
想いがしっかりと通じ合った今、俺は毎日俊介に会いたかった。
「じゃあ早朝来る?」
「行きたい! あ、でも、迷惑じゃない?」
「週末まで会えなくて寂しいのは美咲だけじゃないよ。迷惑なわけないでしょ?」
「じゃあ、行くー」
明日は頑張って早起きしなきゃ。一晩寝たら俊介に会えるんだ。嬉しいな。
昨日までは最低最悪な気分だったけど、俺は今、ふわふわと幸せな気分だった。
……やっぱ恋っていいよね。
もう二度と恋なんてするものかと思ったことが、はるか遠い過去の出来事のように思える。
「俊介、おやすみなさい」
「おやすみ、美咲」
走り去る俊介の車を、俺は見えなくなるまで愛しい気持ちで見送ったのだった。

 
 
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