【カラダから!  -02-】
 
「……あ?」
頬に冷たい感触を感じて、俺はようやく正気に返った。
……セックスってすげぇ。あんなになっちゃうんだ……。
思い切ってハッテン場に行ってみて良かったなとしみじみ思った。こんなにイイ気持ちにさせて貰えるなんて。
「大丈夫? サキちゃん」
「おう。へーき」
頬に当てられた冷たいものの正体は缶ビールだった。
……だから俺は未成年だっつーの。
と、内心で思いつつも、俺はちゃっかりビールをおいしくいただいた。運動後の一杯は美味い。
「もう夜の九時だけど、家、大丈夫?」
「どーなるか分かんなかったから、もしかしたら友達の家に泊まるかもって言ってあるけど」
「泊まりOKなんだ? じゃあ朝までセックスできるね」
……オッサン……マジ?
朝までという言葉に俺はぎょっとなった。すげぇ良かったけど、朝まであんなにされたら、俺、死んじゃいそうだぜ……。でもなー。このオッサンとはもう二度と会えないかもしれないしなー。
考えた挙句、俺は家に電話をかけて友達の家に泊まると告げた。
平日の夜だけど、今は試験休みの最中だ。もともと放任主義の家庭だし、母親も煩いことは言わなかった。
「じゃあサキちゃん、今度は目隠しして貰おうか」
「……え?」
オッサンの言葉に俺は顔を引き攣らせた。
「大丈夫だから、心配しなくてもいいよ」
そんなこと言われたって、心配するよ。一応、俺とオッサン、今日が初対面だし。目が見えなくなるのは怖いよ。
「どうしても怖くなったらはずしていいから。手足は縛らないでおいてあげるから。ね?」
「……それって気持ちイイの?」
「うん。気持ちイイよ。視覚が失われる分、触覚が敏感になるんだよ」
「……じゃあいいよ」
ちょっと怖かったけど、俺は目隠しされることを承知した。目隠しをされると真っ暗で不安で怖かった。
「サキちゃん、どう?」
「どうって……怖いよ」
俺は正直に答えた。
「怖かったらオジサンの首に掴まってていいよ」
「うん」
オッサンの首にしがみつくと、やっと安心できた。
目隠しをしたのはオッサンなんだけど、暗闇の中ですがりつけるのがオッサンの体温だけかと思うと、俺はオッサンのことを愛しく感じた。
オッサンは両手で優しく俺の体中を愛撫した。オッサンの言うとおり、さっきよりも敏感になっているようだ。
「あふんっ……ウンッ……あっ……」
オッサンの手が俺の内股を滑る。
……だ、だから、ソコじゃなくて……。
オッサンは俺の体の隅々まで触れたけど、肝心な部分だけには触れなかった。
……あ〜、くそぅ。焦らしてやがるな、オッサン……。
「……ねぇ、入れて……」
……とにかく、可愛く、オネダリだな?
「……おちんちん……お尻の中に入れて欲しいの……」
手探りでオッサンのちんこを触ると大きくなっていた。
俺はごくりと喉を鳴らした。
「これ……欲しい……」
「サキちゃんはほんとに覚えがいいね」
オッサンは俺の耳元でくすくす笑った。そしてぐぐっと俺の足を折り曲げると、一気に俺の中に挿入してきた。
最初は苦しかったがすぐに気持ちよくなった。
「あっ……あっ……ひぃ……」
オッサンは俺の上で容赦なく動いた。
あまりにも激しく動くので、目隠しがはずれてしまった。
オッサンは真剣な顔で俺の体を揺らしていた。オスの顔をして俺を犯すオッサンに、俺はどきどきしてしまった。
「あーっ!!!」
悲鳴を上げて俺は達した。先から勢いよく飛び出してきたものが、自分の頬にべったりかかった。
オッサンも色っぽいうめき声をあげて俺の中でイった。
「サキちゃん、可愛かったよ」
オッサンは満足そうに笑って俺にキスしてきた。
「ねぇ、ほんとに朝までするの? 俺、もう、疲れちゃった……」
気持ちよかったけどいっぱい出したので体がだるい。俺の言葉にオッサンは笑った。
「じゃあ、シャワー浴びて一眠りしようか」
「うん」
取った部屋はツインだったので、片方のベッドはまだ使われていなかった。しかも大き目のベッドだったので、男二人で抱き合って寝てもそんなに狭くはない。
これもオッサンの計算のうちだったのかな? 精液やらローションやらでべたべたになったベッドでは眠りたくないもんね。
ホテルの部屋に備え付けられている浴衣を着ようとしたら裸で寝ようと言われたので、俺たちは二人とも全裸のままベッドに入った。
人肌の温かさを感じながら、俺はすぐに眠りに落ちた。


翌朝起きたらオッサンの顔が目の前にあった。
オッサンは俺より早く起きてたみたいだ。寝顔をずっと見られていたんだろうか。
俺、涎垂らしてなかったかな?
ちょっと心配になって思わず口元を拭ってしまった。
「おはよう、サキちゃん」
優しく微笑まれてどきりとした。
「……っはよー」
「一晩寝て元気になったみたいだね」
オッサンはさっそく、俺の体にやらしい手で触ってきた。首筋をやんわり噛まれて俺は体をくねらせた。
「サキちゃん感度イイ。可愛いね」
「んっ……」
オッサンは俺の首筋をべちょべちょに舐めながら、すでに先っちょから液を垂らしている俺の中心に触れてきた。巧みな手淫にすぐにイってしまいそうになる。
「おっと。まだイっちゃダメだよ。もっと楽しもうね」
オッサンはイきそうになる寸前で手を止めてしまった。俺はイきたいのにイけなくて泣きそうになった。
「ああ、もう。そんな可愛い顔しないの。困ったなあ。サキちゃん、ほんとに可愛いんだもん」
オッサンはほんとに困った顔をしていた。そして手の代わりに口で俺のムスコを可愛がってくれた。
「あっあっあ……!」
俺は呆気なくオッサンの口の中で射精した。
「オッサン、すげぇな。よくあんなまずいの飲めるね」
そのまずさをすでに知っている俺は感心してしまった。
「サキちゃんみたいな可愛い子のミルクなら、いくらでも飲めるよ」
オッサンは丁寧に舌を這わせ、俺のモノをキレイにしてくれた。
「今度は俺が舐めてやるよ」
オッサンの大きさに感動しながら、俺は手と口でオッサンのモノを可愛がってやった。こんなデカチンにはもう二度とめぐり合えないかもしれない。しっかり目に焼きつけ、手と口で味わっておかないと。
「どう? 気持ちイイ?」
「うん。気持ちイイよ。サキちゃん、上手になったね」
フェラをするのはまだ二回目だしそんなに上手くもないと思うけど、オッサンが喜んでくれてるみたいなので良かった。
「吐き出しちゃっていいから、口の中でイっていい?」
飲まなくてもいいなら別にいいかなと思った。オッサンは俺の口の中に大量のザーメンを注ぎこんだ。
昨日あんなにヤったのに、オッサン、何者だよ……。
やっぱりまずかったので、俺はオッサンの手のひらにぺぺっと吐き出した。それでも口の中が気持ち悪くて洗面所でうがいした。体が精液臭くなったような気がしたので、俺はそのまま簡単にシャワーを浴びた。
「オジサンもシャワー浴びてこようかな」
俺と入れ替わりにオッサンはシャワーを浴びに行った。その間、俺は服を身に付け、帰る準備をした。
チェックアウトの時間が何時だか知らないけど、時計を見ると、もう朝の九時だ。そうのんびりしている暇はなさそうだ。
「なんだ、サキちゃん。服着ちゃったんだ」
オッサンは残念そうな顔をしたが、自分もすぐに服を着始めた。
「はい、サキちゃん、これ」
オッサンは財布から数枚の万札を抜き取り、俺に手渡そうとした。
なんのつもりなのか分からず、俺は無言でオッサンの手元を見詰めてしまった。その態度をオッサンは誤解したようだった。
「あ。少なかった? そうだよね。サキちゃん、バージンだったもんね」
オッサンは再び財布から万札を何枚か取り出した。オッサンが俺の手に握らせた札は十枚以上はあるようだった。
「…………」
「まだ足りない? サキちゃん、すごく可愛かったもんね。うーん、申し訳ないけど、分割払いでいい? これ以上は一括払いはキツイなあ」
 ……………………ひょっとして、これって………………。
 …………………………………………。
「ふざけるなーっ!!」
俺はオッサンの顔を思いっきり殴った。
オッサンはバランスを崩して絨毯の上に尻餅をついた。オッサンは殴られた頬に手をあて、呆然とした顔で俺を見上げた。
その顔に俺は金を叩き付けた。
「俺は援助交際も売春もする気なんざねぇ!!」
せっかくいい気分でいたのに、昨夜の思い出が汚されたようで悔しかった。
別に俺たちは恋人同士ってわけじゃないけど、俺は初めての相手がオッサンで良かったって思ってたんだ。
「そりゃー、ホテル代ぐらいは出して貰おうとか思ってたけど、お互い気持ちイイ思いしたのに、なんで俺だけがお金を貰うんだよ! そんなのおかしいじゃねぇか!!」
俺はめちゃめちゃ腹を立てていた。なんだかオッサンに裏切られた気がした。
腹が立って無性に哀しかった。不覚にも俺は泣いてしまった。
泣き顔を見られたくなくて、俺は慌てて部屋を出ようとした。
これでもう二度とこのオッサンに会うこともないだろう。
「待って、サキちゃん! 俺が悪かったから……」
オッサンは慌てて俺を引き止めた。ドアを出る直前で、俺はオッサンに捕まった。
「離せ! ちくしょーっ! 離しやがれ!! ……んっ……」
オッサンは無理やり俺の唇を奪った。くそーっ。こんなことで誤魔化されるもんか!!
……でもオッサン、キス上手いし……。うっ……。腰が抜けそう……。
「ごめんね、サキちゃん。許して」
情けない顔をして、オッサンは俺の顔を覗き込んで謝ってきた。あまりにもみっともない表情だったので、とりあえず俺は暴れるのは止めた。
オッサンは俺を抱きしめながら、もう一度俺にキスをした。
「ううーん。困ったなぁ。サキちゃん、ほんとに魅力的な子なんだもん。お小遣いいっぱいあげれば、また会ってくれるかなって思ったんだけど。ごめんね。サキちゃんのこと、傷つけちゃったね」
「それって俺とまた会いたいってこと?」
そーゆー理由なら、許してあげないこともない。
「うん。会いたいってこと。ダメ?」
「……ダメでもない」
だってオッサンえっち上手いし。顔も体も好みだし、優しいし。俺だってまた会いたいって思うし。
「いいよ。また会ってあげる」
「ほんと? 嬉しいなあ」
オッサンはほんとーに嬉しそうな顔で笑った。その顔を見て俺も嬉しくなった。
「そういえばオッサン、名前、なんていうの?」
「三宅俊介(みやけ しゅんすけ)って言うんだよ」
「ふうん。いい名前じゃん。俺は森屋美咲」
本当の名前を教えてやると、オッサンはまた嬉しそうな顔をした。


オッサンはショットバーのマスターをしているらしい。
定休日は火曜日で、土日は残念ながら休みじゃないんだとか。
必然的に、俺たちは火曜日に会うことになる。学校が終わってから会って、いつも夜まで一緒にすごした。
そのサイクルは試験前とか特別なことがない限り崩れることはなかった。
会えば当然のようにセックスした。レストランに行って夕食をとってから、ラブホテルに入るのが俺たちの定番のデートコースだ。
俺が夏休みの間は、オッサンは店を休みにして旅行にも連れて行ってくれた。山にキャンプに行ったのだが、俺はそこでアオカンというものを経験してしまった。
「ちょ、ちょっとオッサン……人が来る」
「大丈夫だから」
ちょっと待てオッサン。その大丈夫に根拠ねぇだろ?
「蚊がいっぱいいるし……」
「そのためにさっき、虫除けスプレー使ったでしょ?」
そ、そうか……。このためだったのか……。
うーん、まあ、いっかぁ。外でってのも開放的で気分良さそうじゃん?
俺は木の幹に手を付き、大人しくオッサンに尻を差し出した。立ちながらするのは嫌いじゃない。楽に腰を動かせるからだ。
オッサンはさっそく潤滑剤を俺のケツの穴に塗りたくった。
「サキちゃんのお尻、ぷりぷりでカワイイね」
オッサンは俺の尻に頬擦りした。髭が当たってじょりじょりして痛かった。
「もう、オッサン。いいからさっさと入れてくれよ」
「いいよ」
外でのセックスにオッサンも興奮しているみたいだった。今日は焦らさずすぐに入れてくれた。
「んっ……あんっ……」
森の中に俺の喘ぎ声がこだまする。鳥のさえずりを聞きながら、俺は思いっきり乱れた。オッサンのちんこの先が俺のイイところをつつく。
……はぅん。たまんねー……。
「サキちゃん、すごい腰使いだね。どんな男でもサキちゃんに夢中になるよ……」
……俺をここまで仕込んだのはあんただろーが。自画自賛か?
オッサンの言葉につっこみを入れつつ、俺は腰をふりふり快感を貪った。
……もーすっげー気持ちイイっ!!
「あっ……やんっ……ソコ……もっとぉ……」
「サキちゃんのココは締りがいいね。ちょっと待ってて。危うくイっちゃうところだったよ」
「やっ! やぁっ! 動いて! もっとしてぇ……!」
「サキちゃん、そんなにオジサンのおちんちん好き?」
「うん。好き。大好きぃ! ね、お願い、お願い……」
「よぉし。じゃあ、いっぱいあげるからね」
オッサンはいっぱい動いていっぱい気持ち良くしてくれた。ちんこだけでこれだけ人を気持ち良くさせるオッサンはほんとに凄いと思う。
あまりにも激しくて立っているのが辛くなったら、オッサンが腰を支えてくれた。
「やぁんっ!」
オッサンが思いっきり奥を突いた瞬間、俺は悲鳴を上げて精を吐き出した。オッサンが中にいる間に何度も出したので、木の根元は大量の白い液で汚れていた。
「ふー。オジサンもイっちゃったよ。もっと喜ばせてあげたかったのに、ゴメンね」
「とりあえずは満足したから大丈夫」
俺はティッシュで後始末をしながら言った。
俺のほうが若いだけあって、オッサンよりイく回数は多い。オッサンは回数が少ない分、精神力でイくのを堪えて長引かせているようだ。
エロのテクの向上に努力を惜しまない人である。
「もうちょっとたったら回復するだろ? 帰りにラブホ連れてってよ」
「カーセックスっていうのはどう?」
「あ。いいね。狭くて動きづらいところがまた燃えるんだよね」
「よし、じゃあ、それで決まりだね。ウェットティッシュもちゃんと用意してあるから」
「さすがオッサン、気が利くじゃん」
オッサンから愛していると言われたこともないし俺も言ったことはない。
でも体の相性はいいし気も合うしオッサンは俺に優しいし、俺はオッサンのことは恋人だって思ってた。俺は理想の恋人を手に入れることが出来たのだと信じていた。夏休みはこうして一緒に旅行できたし、俺ってシアワセだなーなんて、ふわふわした気分に浸ってさえいたのだ。
ところが、間抜けなことに、そう思っていたのは俺だけだった。全ては俺の独りよがりだった。
恋に目がくらんだ愚かな俺は、オッサンの心のうちになど気がついていなかった。
しかし、夢から覚める日はいつかはやってくる。
突然俺は、幸せな絶頂から、地獄へと叩き落された。
オッサンは俺のことなど、恋人だとは思っていなかった。
いつもの優しい笑顔を浮かべたまま、オッサンはざっくりと、俺の心を傷つけた。
思いもよらない方法で……。


「あふんっ……やあっ……ああっ……イイよぅ……ひっ……!」
俺は手足を縛られ目隠しをされ、オッサンに深々と貫かれていた。
出会ったばかりの頃は目隠しをされるのすら怖かったが、もう俺たちは付き合い始めてから半年たつ。
俺は安心してオッサンに体を預けることができた。
乱暴にベッドの上に突き飛ばされて、バックから受け入れさせられた。
オッサンは一言もしゃべらず、荒々しく俺を突き上げている。聞こえるのはオッサンの荒い息遣いだけだ。
……こーゆー……ワイルドなのも……イイ……。
いつもと違うシチュエーションに俺の体はいっそう燃えた。
オッサンは優しい風貌をしていて、愛撫の手もそれに見合って優しく繊細だ。
それはそれで気持ちイイのだが、今日みたいに大人の男に力づくで抑えつけられて犯されるってのも悪くない。
オッサンはいつでもこうやって趣向を凝らして俺を楽しませてくれる。
おかげで、オッサンとのセックスに飽きることはない。
「あっ……イクっ……イクぅ……!!」
俺が何度目かの精をシーツの上に吐き出すと、オッサンはようやく一度目の射精をした。
俺の体の上からどくと、オッサンは手足を縛っているロープを解いて目隠しも取ってくれた。
「素晴らしいセックスだったね」
オッサンは満足そうな笑みを浮べた。俺も素晴らしいセックスだったと思った。だからにっこり笑ってオッサンの唇にキスをした。
俺はソフトMでオッサンはソフトSなので相性はばっちりだ。
ほんとーに俺たちは最高のカップルだ。
「すごい。手足あんなにキツく縛ってたのに跡が残ってない」
「そんな下手な縛り方はしないよ。大切なサキちゃんに傷がついたら大変だもの」
俺たちは見詰めあってまたキスをした。
オッサンの髭があたってチクチクしたけど、それもオッサンとキスしている証拠なので俺は気にならなかった。
「オッサンと初めて会ってから、もう半年だぜ。時がたつのは、はえぇよな」
「そうだね。サキちゃんも成長したねぇ」
オッサンは俺の腰をやらしい手つきで撫でながら言った。『成長』の意味を知って俺はくすくすと笑った。
俺たちは一戦交え、二戦目に向けて小休止を取っていた。セックスの合間のトークが俺は嫌いじゃなかった。
会えばセックスばかりしている俺たちは、ベッドの上で話をすることが多かった。
「サキちゃんのココ、さっきまでオジサンのおっきいチンポ咥えてたのに、もうきゅっと締まってる。すごいなあ」
俺のケツの穴に指を突っ込みながらオッサンは言った。
そりゃそーさ。ゆるゆるになるのイヤだから、俺は普段から括約筋を鍛えるのを忘れていないのさ。毎日ケツの穴を締め付ける運動をしているんだ。
俺だってオッサンに負けないぐらい努力家なんだぜ?
「やっぱサキちゃんはいいなぁ。昨日の子もよかったけど、サキちゃんには叶わないなあ」
…………………………………………?
…………………………………………?
…………………………………………?
…………………………………………?
………………………………昨日の子?
俺は、ものすごく嫌な予感がした。
聞いてはいけない気がしたけど聞かずにはいられなかった。
「オッサン、昨日の子って……」
「ん? サキちゃんと会った映画館でナンパした子」
「…………………………………」
オッサンはあっさり浮気の事実を告白した。俺の頭の中は真っ白になった。
「そういえばサキちゃんとはあそこでは会わないね。時間帯が違うのかな? 俺が行くのはね、お店が終わってからだから深夜なの」
「…………………………………オッサン………………あの映画館に……………………行ってるの………………?」
「うん。火曜日はサキちゃんと会う日だから行かないけど、週五日は行ってるかなあ」
…………………………それってほとんど毎日じゃん。
「あ。心配しなくてもいいよ。不特定多数とセックスしてても、ちゃんと俺、セーフセックスを心がけてるからね! サキちゃんとも、ナマでヤったことないでしょ?」
「……………………………」
…………………………不特定多数と、ヤってるんだ……。
「サキちゃんはどれぐらいの頻度であそこに行ってるの?」
「……………………………」
「たしかサキちゃん男子高校に通ってたんだよね。学校で相手を探してるのかな? サキちゃんは可愛いからモテるだろうね」
「……………………………」
「そうだ。今度は3Pでもしてみようか。そしたらサキちゃんのお口にもお尻の穴にも同時にペニスを入れてあげられるよ」
「……………………………」
「ひょっとしてもう経験済み? サキちゃん淫乱だもんね。そこが可愛いんだけど」
「……………………………」
「俺も複数でヤるのけっこう好きだよ。二人きりも悪くないけどね。先週はタチ五人で一人だけネコで、輪姦ごっこをしたんだよ。ネコの子に「いやっ! やめてっ!」って叫んでもらうの。あれは燃えたなー。ホントにやったら犯罪だから、あくまでもフリね。ネコの子も大満足してたよ」
「……………………………」
「今度一緒にヤり部屋に行こうか。サキちゃんが他の男の人とえっちしてるとこ見せてよ。興奮するだろうな」
「……………………………」
オッサンの言葉が次々と俺の胸に突き刺さってくる。
……イッタイ、コノヒト、ナニイッテルノ?
「………………ねぇ、オッサンと俺の関係って……………………何?」
俺は、恋人同士だと思っていたけど…………………………オッサンは?
「セックスフレンドじゃない?」
オッサンはさらりと残酷な言葉を口にした。
冗談ではなくオッサンが本気でそう思っているのは明らかだった。
悪びれない表情で、オッサンは口元に笑顔さえ浮かべていた。
「…………………………………………っ!!!!」
咄嗟に俺は、オッサンの顔にパンチをくれてやった。一発だけでは満足できず、二・三発ぶん殴ってやった。
オッサンは突然の俺の暴力に驚いていた。
オッサンの鼻から血が流れ出た。
俺はオッサンをベッドから蹴落とした。
「サ、サキちゃん?」
「あんたとは、金輪際会わねぇ!!!!」
俺はオッサンを残し、服を身に付けてすぐに部屋を出た。惨めな気分でホテルを後にしたのだった。

 
 
TOP 前頁 次頁