【アルカロイド -04-】
 
…………ない……。
……許せない……。
……神々の王たる尊きあの人を、地へと引きずり落とした……。
……自分から……を奪った……あの者を……。



出会ったのは、絶望的な恐怖の中でだった。
親も兄弟も、住んでいた家も村も、なにもかも失った。
目の前の魔物がひちゃひちゃと音を立てて血と肉を啜っているのは、自分の七つ上の姉の体だ。自分はそれを、なすすべもなくぼんやりと見つめていた。赤い眼をした醜くて大きな化け物。きっと自分の家族全員を呑み込んだだけでは、まだ満腹にはならないのだろう。
次は、自分の番だ。
不思議と恐怖は湧いてこなかった。恐怖という感情は、とうの昔に使い果たしてしまった。幼かった自分はただ呆然と、迫り来る死を眺めていた。
そこに、あの人が現れた。
綺麗で美しく、誰よりも強いあの人が。
――ザシュッ。
真っ二つに裂かれた魔物の体の向こう側に、あの人はたたずんでいた。たった剣の一振りで自分を死の運命から救ったあの人は、怯える子供を見て痛ましそうに目を細めた。
「すまん。もっと早くに私がこの地にたどり着いていれば、そなたの親や兄弟も救うことができたのに……」
あの人は堂々とした足取りで、自分の前までやってきた。
地につくほど長い艶やかな黒髪。美しくて冷ややかな濃紺の瞳。肌は白いが貧弱という印象はない。鍛え抜かれた立派な体躯をしている。
突如現れた救いの神は、硬質的な美貌を誇っていた。
……まさか、この方は……。
「この辺りはいまだ危険だ。私とともに来なさい」
有無も言わさず、あの人は自分の体を軽々と抱え上げた。その瞬間、自分にとってあの人が、唯一無二の存在になったのだった……。



「キス、しちゃった……」
教科書やノートを開いているものの、ちっとも勉強ははかどらない。
優也は自分の唇にそっと指で触れてみた。まださっきのキスの余韻が残っている気がする。
避けようと思えば避けられたと思う。だが迫ってくる美しい顔に見とれて逃げ遅れてしまった。
紗那は、綺麗だ。
顔立ちは誠司によく似ているが、その美しさの種類はまったく違う。紗那には誠司にはない危うく不安定な部分があった。最初はただ強くて優しい人だと思っていた。けれど一緒に暮らし始めて、紗那のいろんな面を知った。考えてみれば誠司よりも、紗那とともに過ごした時間のほうが長いのだ。
誠司が仕事でほとんど家にいないので、必然的に紗那と二人きりの時間が多かった。紗那といて苦痛を感じたことはなかった。穏やかで、優しい、母に見守られているような温かな時間だった。
そして、ときおり紗那が見せる、寂しげな表情に惹かれた。紗那の中でどんな苦しみと葛藤があるのか優也は知らない。自分の中で辛さを抱えたまま人に優しくすることができる紗那は、本当の意味で強い人なのだと思う。
優也が好きなのは誠司だが、誠司には得体の知れないところがあってイマイチどんな人間なのか掴みきれないでいた。年が近いせいか、紗那のほうが優也にとって理解しやすい存在だった。
「……どーゆーつもりで、俺にキスしたのかなぁ……」
普通に解釈すれば、紗那は優也のことが好きということになる。しかしそう簡単に結論付けるには、紗那の目に浮かんだ色が気になった。そこにあったのは、愛情だけではなかった気がする。観察するような冷静な瞳。初めて紗那が怖いと思った。怖かったから怒ったフリをして、冗談にしてしまった。
紗那の本心が知りたくて……知りたくない。
「これって浮気になるのかな?」
キスはイヤじゃなかった。
触れるだけでなく、吐息までも交換するような深い口付けだったけど、それでもイヤじゃなかった。気持ちいいとさえ思った。けれど、誠司と触れ合ったときのようにどきどきしなかった。
「誠司さん、早く帰ってこないかな……」
時計を見るとまだ夜の十一時だ。誠司が帰ってくるまで、あと数時間は待たなければいけない。優也はがっかりしてテーブルの上に突っ伏した。
「あ〜あ。なんかえっちしたいな……」
……俺ってやらしーかも……。
昨日も一昨日(おととい)も誠司と繋がったのに、まだ誠司が欲しくてたまらない。後ろがジンと疼く。誠司の熱い肉棒で、掻き回して欲しいなどと思ってしまう。
紗那のキスに触発されたのかもしれない。
……今日だったら、口でやってあげてもイイナ……。
好きで好きでたまらなく愛しい人だから、喜んでくれるならなんでもしてあげたい。
「早く帰ってきて俺を抱いてよ……」
優也は誠司の帰りを待ちわびながら、いつしか眠りこけてしまった。



「優也、起きなさい。こんなところで寝ると風邪をひく」
「ん……。おかえりなさい……」
眠そうに目をしばたかせながら、優也は誠司からのキスを受け止めた。触れるだけの口付けだったのに、どきどきした。
……どうしてこんなにカッコイイ人が、俺みたいなガキを相手にしてくれるのかなぁ。
自分のどこに誠司を惹きつける要素があるのか分からなくて、優也は不安になる。大人の男としての魅力を滴るほど身に付けているこの人が、自分の恋人であることをしっかり確認したい。
羞恥で頬を染めながら、優也は震える手で誠司のズボンのベルトを緩めた。
「優也?」
誠司の戸惑うような声を無視して、ファスナーを下げて中から誠司の性器を取り出す。まだうなだれていたが、それでも十分な大きさだった。膝立ちしているので、ちょうど目の前に誠司のモノがある。優也はソレをそっと手で握った。頬擦りすると、手の中でピクリと反応して容量を増した。
「……誠司さんの……舐めたい……」
甘く媚を含んだ声で囁き、優也は誠司の顔を見上げた。
……やらしーコだって、呆れられたらどうしよう。……でも、すごく、誠司さんが欲しい……。
初め誠司は驚いた顔をしたが、ついで嬉しそうに笑った。
「可愛いよ、優也……」
柔らかな笑みを見せ、誠司は優也の頭を優しく撫でた。許可を得ることができて優也はほっとした。誠司をソファーに座らせて、自分は誠司の足の間にしゃがみこみ、思い切ってぱくりと口に含んだ。優也が舌を絡ませると、ソレはますます大きさを増した。
自分の施した愛撫で誠司が反応を見せることに、優也は感動していた。誠司にされたときのことを思い出しながら、優也は一生懸命口で誠司を愛撫した。ひちゃひちゃと音を立て、舌を大きく動かしては唇で誠司を挟み込み、頭を上下に激しく動かす。
誠司のモノをしゃぶっているだけで、触れられてもいないのに優也のモノもすっかり硬くなっていた。
誠司の先端を含んで舌をちろちろと動かしながら、優也は自分のズボンを下着ごとずり下げた。
「優也、挿れて欲しいのか?」
さっきから後ろの穴がうずうずしている。誠司を待ちわびて、ひくひくと淫猥な収縮を繰り返している。誠司の熱くて大きいモノで、限界まで満たして欲しい。
だが、今はそれよりも……
「俺、誠司さんのせーえき飲みたい。……ダメ?」
「優也がそうしたいのなら構わないよ。優也の望むことならなんでもしてやろう」
……このキレイな人を、自分の好きなようにしていいんだ。
優也は嬉しくて、期待で胸が高鳴った。もう一度優也は誠司の男性器を口に咥えた。色っぽい呻き声とともに、優也の口中で誠司の欲望が弾けた。量が多く少しむせてしまったが、優也はなんとかすべて飲み下した。さらに物足りなそうに萎んだ誠司をぴちゃりと舌で舐めた。残りの一滴まで残さず誠司の精液を飲み込む。
上の口を満たした後は、下の口も満たして欲しい。
「今日の優也はえっちだな」
「えっちな俺は、キライ?」
「いや。大歓迎だ」
優也はくすくすと笑いながら、誠司の唇に自分からキスをした。誠司の口の中に舌を忍ばせ、誘うように官能的な口付けを施す。唇を合わせながら、優也はさっさと自分の衣服を脱ぎ落として全裸になった。
「優也、次はどうして欲しい?」
「……挿れて欲しい」
「何を? どこに?」
優也の臀部(でんぶ)を淫らな手つきで揉みながら、誠司は口元にいやらしい笑みを浮かべて言った。
「分かってるくせに。いじわる……」
「優也の可愛いお口から、えっちなセリフが聞きたい」
もう、しょうがないなぁなどと思いつつ、のりのりな優也は誠司に逆らったりしなかった。
「誠司さんのおちんちん、俺のお尻の中に挿れてぇ……。誠司さんが欲しくて、さっきからむずむずしてるの……」
誠司の耳を甘噛みしながら、体をすり寄せ、できる限り色っぽい声を作っていった。誠司の下半身に手を伸ばすと、誠司のモノは回復して堅く立ち上がっていた。
「ああんっ」
後ろの穴に指を入れられ、優也は甘い悲鳴をあげた。
「大丈夫か? 痛くはないか?」
「へーきだから……早く……早く誠司さんと繋がりたい……」
「……もう少しだけ待っててくれ」
誠司は余裕のない表情で、優也の中を乱暴に指で掻き回した。少し痛かったがそれを上回る快感があった。
指を入れたまま腰を揺らし、優也は誠司にねだった。
「ね。もう、イイ? 誠司さんの、俺に挿れても、イイ?」
「まだ狭いぞ」
「痛くてもいいの。俺、我慢できない……」
誠司を煽るように、優也は誠司のぬるりとした先端を指で擦った。
「早くぅ……。誠司さんのおちんちんで、俺の中を擦ってよ……。ぐちゃぐちゃにしてぇ……」
「…………耐えられん」
誠司はポツリと言うと、優也の体を手荒くソファーの上に押し倒した。そして優也の両足を割り開き、いきなり奥まで突き入れてきた。
「やあんっ……ああっ……」
ようやく望みのものを与えられ、優也は悦びの声を上げた。誠司の言ったとおりまだ十分解れていなかったのか入り口のあたりがピリリとする。しかしそれ以上に気持ちがよくて、優也は入れられた瞬間にイってしまった。
「……イイ……あっ……ん……」
「すごい……な。締め付けてくる……」
自分の中で、誠司がピクリと痙攣したのが分かった。射精が近いのだ。
引き抜こうとする誠司の腰に足を絡ませ、優也は引き止めた。
「お願い。俺の中で出して……誠司さんのでいっぱいにして……」
「……鼻血が出そうだ」
誠司はぐぐっと奥まで挿入してから欲望を吐き出した。誠司が果てるのを感じながら、優也も再び先端から白い蜜を零した。
「まだ、抜いちゃダメ!」
「優也……だが、明日……いや、すでに今日だな……学校があるだろう」
「やぁん。いじわる言っちゃやだぁ……。俺の望むことならなんでもしてくれるって言った……」
「いや、だが、しかし……」
乗り気ではない誠司に優也はむっとした。自分の誘いを断られて、優也のプライドは傷ついた。
「いいもん。誠司さんがしてくんないなら、自分でするもん」
「自分で……?」
優也は誠司の体の下から抜け出すと、誠司に見えるようにわざと足を大きく開き、片方の手で自分の後ろの穴に指を差し込みながら、もう一方の手で自分のペニスを扱き始めた。
「……あんっ……あっ……」
優也は自分の唇をぴちゃりと舐めながら、淫らに腰を揺らした。誠司の名を呼びながら先端から吹き上げ、出した白い液を自分の体に塗りつけた。
優也のそんな姿態を誠司はじっと眺めている。
「……絶景だ。生きててよかった」
「ねぇ、誠司さん。まだその気にならないの?」
仕上げとばかりに優也は誠司に背を向け四つん這いになった。自ら禁断の穴を指で広げ、誠司が中まで見られるようにした。
「ココ、誠司さんが欲しいってピクピクしてるの……。お願い。い・れ・て……」
「……ここは極楽浄土かもしれない」
感極まったような声でそう呟き、誠司はずっぽりと優也の可憐で淫らな蕾に自身の昂ぶりを差し込んだ。
「あーんっ……。イイ……」
優也は満足げに体を震わせた。始まった誠司の激しい律動に合せ、優也は腰を振った。誠司を中に入れたまま何度も射精した。誠司のも何度も搾り取った。ソファーは二人の垂らした体液でぐちゃぐちゃに濡れている。ビニールのソファーでよかった。布製だったら、間違いなく買い換えなくてはいけないところだった……。
「あんっ。いいよぉ……気持ち、イイ……」
サカリのついたメス犬のように、優也は尻を振り続けたのだった。


夜中に、目が覚めた。
懐かしい夢を見ていたような気がする。だが、どんな夢だったか思い出せない。喉に魚の骨が刺さっているような、どうもすっきりしない気分だ。
紗那は乱暴に自分の長い髪をくしゃりと掻きあげた。気付けば汗をびっしょりかいている。気持ちが悪い。喉がからからに渇いている。
「……水が、欲しい……」
面倒だったが喉の渇きに耐え切れず、紗那は台所に向かった。たしか冷蔵庫に、冷えたミネラルウォーターが入っていたはずだ
「…………?」
階段を下りている途中で妙な物音を聞いた。
普段の紗那だったらすぐにそれがなにか気が付いただろう。しかし、夢の余韻で頭がぼんやりとしていた紗那は、判断力が鈍っていた。
「……!」
闇の中で響く獣のような荒々しい呼吸音。耳を打つ、淫らな濡れた音。絡み合う二つの白い姿態……。
「あんっ……。あ……もっと……ああっ……」
紗那が目にしたのは二匹の獣の肉の饗宴。
恍惚とした表情で、悦んで男をむかえる淫乱な少年。媚びた目をして男の体にすがりつき、大きく股を広げ、男に貫かれるたびに甘い声をあげている。
そして、若い体を思うままに蹂躙する己の父親の姿。欲望に満ちた表情で、猛った凶器を優也の中に突き入れる。初めて見る父親の『男』としての顔に紗那はぎくりとする。
すでに何度も優也の中で果てているのだろう。出し入れするたびに、ぐちゃぐちゃと淫猥な音があたりに響いた。
二人は紗那の存在に気付かず、互いの肉体を貪り合っている。
剥き出しの肉欲に、紗那は気分を悪くする。
醜悪な光景だ。
吐き気がする。
紗那は口元を押さえ二人に気付かれないように、そっとあとずさった。
優也と自分の父親が精神的だけでなく、肉体的にも繋がっていることはすでに紗那も承知していたはずだ。それに対して自分は何も感じていない……と思っていたはずだ。
なのに、二人が実際にセックスしている場面を目撃して、紗那は動揺した。激しい嫌悪を覚えた。そんな自分に紗那はショックを受けた。
嫌悪。嫉妬。憎悪。殺意。
負の感情が胸の中で暴れまわっていた。
「……なんで、だよ……」
二人は紗那にとって大切な存在であるはずだった。
誰よりも自分を理解してくれた父と、その父が選んだ、素直で可愛い恋人……。
以前の自分は、父の幸福を心から祝福することができていたはずだ。
そのはず、なのに。……今、自分の心にあるのは……。
相手の消滅を望む、殺したいという、強烈な想い。
「…………なんでだよ……」
紗那は自分の心に突然湧き上がった殺意に怯えながら、闇の中で涙を流した。
……怖い……。
これほどの恐怖を感じたのは、生まれて始めてのことだった。
自分を信じられず、紗那はベッドの上で膝を抱え、静かに泣き続けたのだった……。



「……紗那、どうしたの? 具合が悪いの?」
「別に」
とりつく島もない冷ややかな声と、憮然とした表情で紗那は答えた。優也が傍にいるだけで、紗那はどうしようもなく苛ついた。優也が自分を心配する声さえ、媚びを含んでいるように聞こえて胃の辺りがむかついた。
……具合が悪いんじゃない。気分が悪いだけだ。……男に抱かれて悦ぶ淫乱が……気安く……声をかけるな。
油断すると、優也を傷つけるためのひどい言葉が口から飛び出しそうだった。
……出会ったばかりの頃は、ただ可愛いと思っていたのに……。
「え。でも、ほんとに顔色悪いよ……」
差し伸べられた手を、紗那はとっさに振り払っていた。乱暴に手を叩き落され、驚いた優也の顔を見て紗那は内心舌打ちする。
「……紗那?」
優也の震えた声。可哀想なほど怯えた表情。
自分のつれない態度を謝罪するように、思わず紗那は優也の体を優しく抱き締めていた。
……傷つけたい。
……優しくした。
「紗那?」
腕の中の優也が、戸惑ったような声をあげる。紗那の脈絡のない行動に困惑しているようだ。
紗那自身、自分で自分の感情と行動をコントロールできていなかった。
「頭がおかしくなりそうだ……」
愛しさと憎しみで、心が引き裂かれそうだった。
「あの、紗那? どうしたの?」
「……仕事、行ってくる」
紗那は優也の体を静かに離し、無理やり笑顔を作って言った。優也の問うような眼差しが痛かったが、紗那はそれを無視した。
……家を出よう。優也を傷つけてしまう前に。
根本的な解決にはならないと知りつつも、紗那は二人から物理的な距離を取ることを決意したのだった。


このごろ、紗那のようすが変だ。
以前に比べて自分への態度が冷たくなった気がする。自分は紗那に、何か悪いことをしてしまったのだろうか? 気が付かないうちに、紗那を怒らせてしまったのだろうか?
「どうした優也。元気がないな?」
いくら弄り回しても反応のない優也の中心を見やりながら誠司は言った。いまだ新婚気分の二人は、一緒にお風呂に入っている最中だった。寝室に備え付けられているバスタブではなく、一階のほうを今日は使っていた。男二人がゆったり入れるほど大きな浴槽だった。
「……あのねぇ。ヘンなとこ見ながら言わないでよ」
ちょっとむっとした表情の優也に、誠司は宥めるようなキスをして、再度、同じ問いを口にした。
「優也、なにがあった?」
誠司は湯の中で優也の体を抱き締めながら言った。太ももにあたる硬い感触で、誠司が臨戦態勢であることがうかがえた。しかし心配事のある優也は、誠司に触れられてもその気にはなれなかった。
「……紗那がこのごろ冷たい」
「そうか」
「そうかって……それだけ?」
「ああ」
「心当たりとかないわけ!? 誠司さん、父親でショ!!」
「まあな」
おざなりな返事しかせず、いやらしい手つきで優也の全身を撫で回す誠司に、優也は本気で腹を立てた。
「誠司さんは、自分の娘と自分の恋人との仲が上手くいってなくても、心配じゃないわけ??」
「仲が良過ぎるよりも安心だ。浮気の心配をせずにすむ」
「誠司さんの、バカーっ!」
相談にまじめに乗ってもらえず、優也は怒って風呂から出ようとした。しかし誠司の逞しい腕にさえぎられ、再び湯の中に連れ戻されてしまう。
「落ち着け、優也」
「落ち着いてられるかっ。離せ、このエロオヤジっ」
優也は湯を飛ばし、誠司の腕の中でばたばたと暴れた。
「そんな可愛い顔をされると、ますますその気になるな」
「なるなっ! 俺は、今日は、絶対にあんたとえっちしないからな!」
「心配するな。紗那のことなら大丈夫だ」
誠司は自信満々に言い切った。
「……なんでそんなこと分かるんだよ」
「分かる。あれは、俺の娘だからな」
誠司の口ぶりに紗那に対する絶大的な信頼を感じ、優也はほんの少しだけ嫉妬した。誠司にこれほど信用されている紗那が、優也は羨ましかったのだ。
「……ふぅん。紗那のこと、信頼してるんだ……」
「ああ。この世の中で一番信頼しているな」
「……そう」
「妬くな。一番信頼しているのは紗那だが、俺が恋人として愛しているのは誰かは……知っているだろう?」
くすくすと笑いながら、誠司はぐいっと下から突き上げてきた。誠司の先端が、優也の蕾にわずかにめり込む。
「んっ……やっ。知らな……い」
「……可愛いよ、優也」
とうとう耐え切れず、誠司は自分のモノをすべて優也の中におさめてしまった。直接触れられても反応しなかったのに、後ろに誠司を入れられ内部で脈打つ熱い棒を感じ、優也は性器を硬くした。きつく目を瞑り、ぽろぽろと両目から悦楽の涙を零す。
誠司は優也の腰を掴んで激しく揺すりながら、なんども愛していると優也の耳元で囁いたのだった。
 
 
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