「あんっ…ああっ……」
自分の甘ったるい声が恥ずかしくて最初は声を堪えていたが、すぐに羞恥を感じる余裕はなくなった。ラインをなぞる誠司の唇と指の動きにあわせて、優也は甘くあえぎ続ける。好きな人と触れ合うことが、こんなに気持ち良いことだとは思わなかった。始めに強固に拒んだ理由が、今ではあやふやになってくる。 腹立たしいという思いはあるけど、誠司が恐ろしく強引な人で良かったかも知れない。そうでなければ、自分はきっといつまでも、先に踏み出すことが出来なかったと思う。 誠司に促されるまま、足をゆるく開く。足の付け根の辺りをきつく吸われる。 「んっ……」 茂みからひょっこり顔を出し、先っぽから溢れ出る液でぬるぬるになった優也のモノを横目で見ながら、誠司は優也の足首を掴んで持ち上げ、足の指一本一本を丁寧に舐め始めた。ちろちろと舌先で指の間を舐められるたび、優也の下腹部はますます熱を帯びていった。だがそれは、イけるほどの大きな快感ではない。ぬるい愛撫に優也は焦れる。しかし、自分からこうして欲しいなどとおねだりすることははしたなく思えて、ただ黙って眦(まなじり)から悦楽の涙を零した。 誠司は優也の脛(すね)に音を立ててキスをしてから、とうとう優也の中心に触れた。根元にある袋ごと、誠司は荒々しく愛撫する。きつい刺激にイきそうになる。 「っ……!」 出る、と思った瞬間、ぱっと手を離され射精の波が引いていく。優也はがくがくと膝を揺らしながら、情欲に染まった顔を誠司に向ける。 「……〜〜〜っ」 ぽろぽろと涙を零しながら、目だけでどうにかして欲しいと訴える。 誠司は優也にわざと見せるように、大きく舌を出して優也の昂ぶったものを舐め上げる。 「ひぃっ……」 ねっとりと舌が絡みつく感触に、たまらなくなって悲鳴を上げる。生まれて初めて知る快感だった。手でされたときも良かったが、口に含まれたほうが愛しまれているという気がして、はるかに気持ちがいい。 誠司がぴちゃぴちゃと音を立てて優也を味わう。躊躇いのない舌使いが、優也をどんどん追い上げていく。 「ああっ……イイっ……」 自分の体がこんなになるなんて信じられない。セックスがこんなに気持ちがいいものだなんて知らなかった。奥手な優也はあまり興味はなかったが、同級生たちがナンパや合コンに励む気持ちが良く分かる。女の子とヤルことに必死になっている同級生を、かつて優也は冷ややかな気持ちで眺めていたが、これからはもうバカには出来ない。 この快楽を一度知ってしまったら、自分だってきっと必死になる。 けれどきっと、こんなに気持ちよくなれるのは誠司が相手だからなのだろう。大好きで大好きでたまらない相手だから、こんなにも気持ちよくなれるのだ……。 「あっ…やっ…!」 誠司がぱくりと優也を咥えた瞬間、止めるまもなく誠司の口の中に勢いよく吐精してしまった。達したあともすぐには放さず、誠司は舌で丁寧に清めてからようやく優也を解放した。 優也はしばらく口が利けず、胸を上下させて荒い呼吸を続けた。 「勝手が分からなかったから思うままにやったが……気持ちよかったか?」 「……うん。すんげぇ、よかった……」 さんざんよがりまくった後では隠しようもなく、優也はあっさり認めた。 「気持ちよすぎて、俺、死んじゃうかと思った……」 単に気持ちよかったというだけでなく、体で愛しいヒトの存在を感じられて、とても幸せだった。 「……優也」 「何?」 「色っぽい顔をして凄いセリフを吐くな。脈拍数が上がったぞ」 極めて冷静な声と顔で誠司が言った。自分はさんざん乱れたというのに、誠司は変わらず淡々としているように見える。 誠司の欲望の証拠は再び力を取り戻した男性器だけで、それ以外は普段と変わったところはない。この行為に溺れているのが、自分だけだと思うと無性に悔しい。 ……本気で言ってるようには見えないんだよね。 優也は眉間にしわを寄せ、真剣な眼差しをしで誠司の心臓の辺りにぴたりと耳を付けてみる。 「……ドキドキしてる」 誠司が自己申告したとおり、心臓は普通より早い鼓動を刻んでいる。 「当たり前だ。好きな相手と初めて肌を合わせているんだ。こう見えても俺は緊張している」 「全っ然、緊張してるようには見えないけどね」 くすくす笑いながら、優也は誠司の唇にちゅっと軽いキスをした。お返しのように誠司は優也の顔にキスの雨を降らせた。優也は幸せそうに笑いながら、うっとりと誠司の優しいキスを受け止めた。 恋人らしい甘ったるい雰囲気に、優也は大いに満足していた。今日という日は優也にとって、忘れられない日になるだろう。 優也は夢見心地で誠司と口付けを交わした。 ……誠司さん……好き。 しかし優也は満足していても、誠司のほうはまだ満足していなかった。 いきなり後ろの穴に指を突き入れられ、優也は驚いて目を見開いた。 「わっ、なっ、なんだよっ! 今日は入れないっつったじゃんっ! 触るだけ!」 誠司の逞しい胸を両手で押しのけようとしたが、びくともしない。誠司の指はめりめりと優也の中に忍び込んでくる。きっと、紗那からのプレゼントを使っているのだろう。誠司の指はぬるぬるしていて、容易に優也に呑み込まれていく。 「ばかっ。約束破る気かよっ。今日はもうお終い! とっとと俺を放せーっ」 甘い気分は一気にぶっとんだ。優也は誠司を睨み付けた。誠司の胸元に爪を立て、猫のように引っ掻いた。 「嘘つきっ! さっき、入れないって言ったろ!」 指を優也の中に入れたまま、誠司は優也にベッドサイドにあった時計を突きつけた。泣き濡れた目で見てみると、時計の針は夜中の0時1分を指していた。 「今日……いや、すでに昨日だな。約束どおり、触っただけだったろう? 約束を守った褒美に、今日は、入れさせてもらうぞ」 誠司は指を中でぐりぐりと動かしながら言った。 「〜〜〜卑怯者―っ」 叫ぶとぎゅっと誠司の指を締め付けてしまう。リアルに自分の中の異物を感じて、優也は眉を寄せた。 「可愛い優也の姿を見て、すぐにでも入れたいのを耐えていたんだ。俺の理性を褒めてくれ」 「何が理性だ! このケダモノっ!」 誠司ははなからこのつもりだったのは明らかである。手玉に取られているようで、悔しくてたまらない優也だった。 ……確信犯め! 「恋人と二人きりで、ケダモノにならない男がいるか?」 誠司は、それはもう楽しそうに笑いながら、優也の額にキスをした。挿入した指も一本から二本に増やす。胸元に何筋か、優也のつけた赤い傷跡が残ったが、誠司はまったく気にしていなかった。 誠司は自分の体の上に優也を乗せた。誠司の体を挟むように足を開き、膝を立てて腰を浮かすような格好で尻を弄(いじ)られる。この体勢なら、恥ずかしい部分を誠司に見られないのがまだ救いだ。大人しく後ろの穴を押し広げられながら、優也は不快そうな唸り声を発した。 優也は憎憎しい敷布団に向かって、かぷりと歯形を付けてみた。 「無理。絶対に、無理! だってあんたの大きいもん。ぜーったい入らないもん」 いくら文句を言ったところで、誠司が自分の意志を曲げることはないだろう。自分勝手な男なのだ。それでも優也は文句を言わずにいられない。 「大丈夫だ。心配するな」 「根拠なく大丈夫とか言うな!」 あの巨大なモノが優也の中に入ってくるのだ。無事で済むはずがない。 「根拠ならあるぞ」 「……何?」 「愛」 ばかばかしくて、脱力してしまった。その隙をついて誠司は三本目の指を挿入した。 「ズ、ズルイっ!」 「ずるくない。しっかり解しておかないと優也が痛い思いをすることになる」 「ヤらなければ、もっと痛くないと思うよ」 誠司は、往生際が悪いヤツとでも言うように、声を立てて笑った。 「可愛いよ、優也」 優也を乗せたまま、誠司は腹筋だけで上半身を起こした。驚いて慌てて優也は、誠司の首にしがみついた。 誠司は優也の耳たぶを甘噛みしながら、本格的に指を動かし始めた。 「ふっ…やんっ……」 突如、強烈な快感が背筋を駆け抜け、優也は背を反らして達してしまう。誠司と自分の腹を汚したものを、優也は呆然と眺めた。 「あっ…。何……? 今の……」 「なるほど。ここが優也のイイところか」 やけに冷静な声で呟くと、誠司は的確に優也の感じるポイントを攻め始める。 「ひっ……。あっ……」 イったばかりにもかかわらず、優也の前はビンと反り返り、誠司のモノにぶつかった。 「やだっ。……やぁっ……怖い……」 優也はぽろぽろと涙を零しながら、心細げな顔で誠司を見上げた。舐められたときも死にそうなほど気持ちが良かった。だが、まだ優也の想像の範囲内にあった気がする。 でも、こんなのは違う。自分の体の中で、大きな熱が暴れまわっている。深い快感に溺れながら、優也は不安を感じていた。 「お願い…怖い…怖いよ……も、もう、抜いて……」 身をよじりながら優也は誠司に懇願した。今度こそ本当に限界だと思った。誠司の手によって引きずり出される、自分の体の反応が恐ろしくてたまらなかった。 優也の背をあやすように撫でながら、誠司は体勢を変える。優也を仰向(あおむ)けにして、足を目いっぱい折り曲げさせる。腰の辺りに枕を差し込み、指をはずしてたっぷりローションを優也の後ろに注ぎ込んだ。 自分のモノにも惜しみなく塗りつけ、優也の後ろに押し当てた。紗那のもう一つのプレゼントは使う気はないらしい。ゴムを付けずに優也の中に入れるつもりなのだ。 「やっ……お願い…まだ入れないで」 優也は囁くような声で言った。怯えた様子の優也を見下ろし、誠司は少し困った顔をして、優也の唇に優しくキスをした。 「優也、怖がらなくていい。俺はお前を傷つけたりしない」 「お願い、許して……」 優也は首をゆっくりと横に振った。誠司は次々とこぼれる優也の涙を舌で拭った。 「そんなに泣かれると、悪いことをしている気分になる……」 誠司は優也のこわばった体を解すように、唇で優しく愛撫し続ける。優也が泣いている間は、絶対に挿入してこなかった。恐ろしいほどの忍耐力である。 誠司のモノは腹に付くほど反り返り、その存在を主張している。同じ男である優也は、誠司がどれだけ辛い状況か分かっている。 力づくでこられれば優也は敵わないのに、最後の最後で誠司はけっして無理強いしない。 「そんなに怖いなら、今日はもうやめるか」 「……え?」 まさか本当に止めてもらえるとは思ってなかったので、優也は驚いた。 「また何か企(たくら)んでる……?」 「……信用ないな」 「前科があるから」 身を起こした誠司に合わせて、優也もベッドの上にぺたりと座った。尻がべったりと濡れていて気持ちが悪い。 誠司は優しい瞳で微笑んで、優也の手に自分の手を重ねた。 「どんな手を使っても、優也の全てが欲しいと思ってる。だが、傷つけたくないんだ」 「誠司さん、でも……」 「体はまだ満足していないが、必死で俺を受け入れようとしている優也を見ていたら、心は満足してしまった」 「……」 優也はじっと探るように誠司の顔を見た。どうやら本気で言っているようだ。もっとも、誠司が本気になれば、優也などころっと騙されてしまうが。 ……でもきっと、俺を傷つけたくないと思っているのは本当のことだ……。 愛されていることを優也は実感していた。 「優也、俺のことが好きだろう?」 優也は迷いなく頷いた。初めて出会ったときから、誠司の一挙一動に目が離せないでいた。誠司がとんでもない性格の持ち主だと知った後も、優也の想いは消えなかった。 この恋が終わる日を、優也は想像出来ないでいた。 「だったら、もう十分だ」 誠司は心底満足そうに笑った。優也が誠司の本気を知りたかったように、誠司も優也の本気を知りたかったのだ。 「誠司さん、俺にめちゃめちゃ惚れてるでしょ」 「ああ。一目惚れして、一緒に暮らしてますます惚れた。俺は優也が可愛くてたまらない」 「……ふーん、じゃあ、俺たちってラブラブな恋人同士なんだ」 「そうだな」 少し照れくさそうに誠司が笑った。 しみじみ、この人のことが好きだなぁと、優也は思う。 理想の容姿(かたち)をしていて、冷静で感情の起伏に乏しくて。大人で包容力のある人だと思っていたら、けっこうずる賢いところもあって。腹が立つほど強引なくせに、優也を傷つけたくないと言う。 ……もっとこの人のこと、知りたいな……。 愛しいという想いが、どんどん優也の中で降り積もっていく。 「だったら、さ。フツー、ラブラブな恋人同士って、セックス、するよね」 今まで男を好きになるなんて考えたことなかったし、後ろの穴で受け入れるなんて当然想像したことすらない。 それが誠司の腕の中でめろめろにされて、心と体がばらばらで、泣いてしまうほど怖かった。 怖くて怖くて、今だって怖い。 男同士の関係なんて、一般的に認められるものじゃない。一線を越えてしまえば、もう後戻りできなくなる。学校の友人たちや父親の顔が脳裏に浮かぶ。優也の恋人が男と知ったら、みんなどんな顔をするだろう。気味悪がられるかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。 それでも、心の中にある、強い声を消すことが出来ない。 ……俺も、この人のすべてが欲しい。 優也は真っ赤な顔をして、誠司の手と重ねていないほうの手を伸ばし、誠司の昂ぶりにそっと触れた。 「誠司さんのコレ、俺の中に入れてよ。……ちゃんと、最後までやろう」 「…優也」 「何?」 「俺は今、間違いなく宇宙で一番幸福な男だ」 大真面目な顔で言われて、優也は赤い顔をさらに赤くした。優しくゆっくりと、ベッドに押し倒される。閉じてしまった蕾を誠司は根気よく解し始める。 今度こそ優也は与えられる快感を甘受し、誠司の体の下で甘く喘いだ。 十分後ろが柔らかく蕩(とろ)けてから、ゆっくりと誠司は自身を優也の中に沈めた。 優也の前を弄りながら、じりじりと慎重に押し入ってくる。 「痛くないか?」 「ん……へーき……」 痛いというより苦しかった。あの巨大な男根が、ずっぽりと優也の中に埋まっているのだ。ものすごい圧迫感だった。 「あっ……」 中の誠司が動き始めて優也は悲鳴を上げた。痛いし気持ち悪いし苦しくてたまらない。けれど自分の上で荒々しく動く誠司の快感に染まる顔を見ていたら、やめて欲しいとは言えなかった。自分の男が、自分の体で気持ちよくなってくれる。全身で自分の体を求めてくれる、満足感。 誠司がせつなく眉を寄せて自分の中でイったとき、優也はばかみたいに感動してしまった。 「優也、優也、優也……」 誠司は優也の中に入れたまま、優也の体にしがみついてきた。強い力で抱きしめながら、優也の唇を激しく奪う。 「どう? 気持ちよかった?」 キスの合間に尋ねると、サイコーだったと赤面ものの答えが返ってきた。誠司を失望させずにすんで、優也は安堵の笑みを漏らした。 「んっ……あぁっ……」 何度もキスをしているうちに、中の誠司が大きく育ってきた。回復の早さに驚く。余韻に浸るまもなく2回戦に突入していた。誠司は優也から一度引き抜き、優也の体をうつ伏せにしてから覆いかぶさってきた。 前からよりも、後ろからのほうが挿入が深い。臀部に誠司の根元にある袋が当たっているのを感じる。 この体位だと、誠司の顔が見られないのが寂しいと思った。 「優也の中は、狭くて熱くて気持ちがいいな」 誠司は結合部分を指でなぞりながら言った。まじまじと局部を見られているかと思うと恥ずかしい。 「やだっ。へ、変なとこ、見ないで……」 「今、ぎゅうっと締め付けてきたぞ。凄いな」 感心したように呟いてから、誠司はゆるやかなテンポで腰を使い始めた。一度優也の中で出した後なので、だいぶ余裕があるようだ。優也の中を掻き回すように誠司は動いている。優也の白い双丘をむにむにと揉みながら、誠司はぐるりと腰を回した。優也の体をじっくりと愉しんでいる誠司のようすに優也は羞恥の念を覚える。 「ああんっ……」 誠司の先端がある場所を擦ったとき、優也の体は敏感に反応した。誠司の手に包まれていた優也の性器が、ぴくぴくと悦びに打ち震えている。 圧迫感は相変わらずだ。だが、その苦しさよりも遥かに大きい快感が優也を包む。 「ひぃっ……あっ…ああ……」 優也を追い詰めるように誠司は律動を速めていった。誠司の肉棒が優也の内壁を擦るたびに優也は乱れていった。 「イイ……誠司さん…もっと……」 誠司は両手で優也の腰を掴み、期待に沿うように激しい抽挿を繰り返した。ねちゃねちゃと濡れた淫(みだ)らな音があたりに響く。 「んっ…もう、出るぅっ……」 誠司をきつく締め付けながら、優也は胴震いしてシーツの上に白濁した液を飛ばした。少し遅れて誠司も優也の中で果てた。 「……疲れた……」 優也はぽつりと呟くと、目を閉じてそのまま気を失ってしまった。次に目が覚めたのは早朝だった。恐ろしいことに、誠司はまだ優也の中にいた。 「…? あれ……?」 体が振動している。 おかしいなと思ったら、誠司が優也の後ろの穴にイチモツを突っ込み、優也の体を激しく揺さぶっていた。片足を誠司の肩に乗せた体位で正面から貫かれていて優也は驚いた。 「起きたか?」 優也の体をぐりぐりと熱い棒で突き上げながら、誠司はにっこり微笑んだ。 「あっ……何? 何?」 混乱しながらも、優也は快感の渦に巻き込まれていく。 「あぅんっ……あんっ…あっ……」 誠司は優也に挿入したまま体位を変えた。軽々と優也の状態を持ち上げ、向かい合う格好で自分の上に座らせる。自身の重みで体が沈み、誠司が深々と中に入ってくる。優也は嬌声を上げて背を仰け反らせる。優也の腰を掴んで回すように動かしながら、誠司は優也の白い首筋を強く吸った。 「やんっ……やだっ……やぁんっ…」 ぐいっと持ち上げられてはずんと勢いよく下に降ろされる。優也は誠司の動きを止めるように、きつく誠司の体に抱きついた。 「お、俺が寝てる間も、やってたの……?」 「すまん。離しがたくて、ほとんど入れっぱなしだった」 誠司を受け入れている場所の入り口が、ひりひりと痛む。恐る恐る繋がっている部分を触ってみる。誠司をぎっちり咥え込んでいるのが分かる周囲はとろりとした液で汚れている。血かと思って怯えて指ですくってみると、それは不透明な白い体液だった。おそらく誠司の精液だ。 あたりにはそれと一発で分かる濃厚な匂いが漂っている。自分が知らない間に何度犯されたのだろう。 「ひどいっ。俺、初めてなのに……」 優也は誠司の首筋に顔をうずめ、恨みがましい声で言った。さほど怒っているわけではないが、自分の意識のない間にやられていたと知ってショックを受けた。 「奇遇だな。俺も初めてだ」 「……平然と嘘つかないでよ……」 子供もいるやもめ男が、童貞であるはずがない。独身だったとしても、36の男が未経験だったらそのほうが怖い。 誠司のテクニックに優也は乱れた。それは一朝一夕に身に付けたものではないだろう。たしかに男相手という意味では優也が初めてかもしれない。誠司はホモでもバイでもないと言っていた。 だが女性とならば、誠司は無数に経験しているに違いない。優也は過去に誠司と肌を重ねた顔も知らない女たちに嫉妬した。 「……いいよ。俺、誠司さんになら何されてもいい」 「優也?」 「いつでもどこでもいくらでも、好きなだけえっちしてもいいよ。俺の体、好きに抱いて。……だからお願い。もう二度と他の人間を抱いたりしないで……」 涙交じりの声でそのセリフを言った途端、優也の中の誠司がビクンと動いた。優也はせつなげに身を捩(よじ)った。 「頭のてっぺんからつま先まで、どこもかしこも優也は可愛い」 誠司は優也の中に収めたまま、優也の体を乱暴にベッドの上に押し付けた。急に変わった体位に優也は驚く。 「え……? な、何……??」 優也の心の準備が整う前に、誠司は切羽詰ったようすで動き始めた。サカリの付いた獣のようにガムシャラに腰を打ち付ける。欲望にぎらついた牡の目をして、夢中で優也を求めている。 優也もまた一匹の獣になって誠司を受けいれながら、この人に抱かれて良かったと思っていた。 体の奥で誠司を受け止めることで、どれほどの深い想いで求められているのかを知った。 「……誠司さん、好きっ……」 ありったけの想いを込めて叫びながら、優也は濁った液を飛ばした。さんざん出した後だったので、その量は少なかった。 誠司も優也の体をきつく抱きしめ、優也の中にどくどくと生暖かい体液を注ぎ込んだ。 ……はぁぁ……。なんか、いっぱいしちゃったな……。 ほんの二日前までは、自分はキスすらしたことなかった。たった一晩で、ずいぶん遠くに来てしまった気がした。 |