グリーンマックス「旧型国電床下機器セット」あれこれ

先日発売になった「旧型国電床下機器セット」A及びB

 2月末頃に発売されたグリーンマックスの「旧型国電床下機器セット」A(クモハ、モハ用)及びB(クハ、サハ、サロ用)について、感じたことや加工例を載せていく。まず、製品の概要について簡単に説明すると、同社のエコノミーキットの旧型国電各種に対応する別売りオプションパーツといった位置付けになる(一部のセット商品については本品と同じものが付属)。従来の床下機器パーツよりもシャープな成形で、一部については「戦前型」を重視した形状となっている。実車の電動車であるクモハ、モハ用と付随車の2種類が発売され、どちらも4両分入りのパッケージだ。

説明書も詳しい
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 パーツがよりリアルになったのに合わせてか、説明書も詳しいものが添付されている。メインのランナーである「8596A」(クモハ、モハ用)、「8596B」(クハ、サハ、サロ用)はそれぞれ実物大、追加ランナーの「8596C」(両セットに同梱)は何故か実物よりもやや大きめの印刷でイラストが描かれており、それぞれの機器の名称まで記載されているという凝りよう。目を引くのは「モハ用」の主抵抗器が3種類入っていること。従来品は「大型4穴」に相当するものしかなかったが、新製品では「大型角穴」「小型角穴」の2種類が追加されている。主制御器、遮断機もカバー(?)の形状違いで2種、コンプレッサーやエアータンク類は厚み、奥行きを増すための追加パーツが「C」ランナーに収録されている。また、ブレーキシリンダーはメインランナーに「左向き」が、追加ランナーに「右向き」が入り、それぞれのブレーキテコが用意される。取り付けサイドに関わらず正しい向きでの設置が可能だ。
 正直な話、気合入り過ぎで、車体がそのままなのに床下機器だけこんなにリアルになっていいんだろうか、という思いも拭えない(笑)

従来品(下)との比較
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 従来品との比較では、全体的に機器類はやや小ぶりになっている他、よりリアルな形状となった。特に「何だかよく分からない物体」だったブレーキシリンダーがはっきりそれと分かる形になっている。従来品は、新製品とは違う形態の主制御器、遮断器が再現されているため、ここだけは今後も利用することになると思われる(さらなる新製品が出ない限り)。

ベースの厚みが薄くなった

 同社の完成品用床板に対応するためか、取り付けベース部の厚みが薄くなった。実測で従来品が1.2〜1.3ミリ程度だったものが0.5ミリ程度に。私はエコノミーキットを作るとき、動力ユニットにトミーテックの鉄道コレクション用を使用しているのだが、このベース部分が完全に余分な厚みになる。今までは機器を1つ1つベース部分から切り離していたのだが、今回は薄く削ればいけるのではないか?と思って挑戦することにした。

結果は失敗と言える

 手持ちの中では最も粗い180番の紙やすりをプラ板に両面テープで固定して、ひたすら頑張ってベース部を薄く削ったのだが……当然のように削りカスが大量に出るし、何より均一に削るのが難しかった。写真ではあまりわからないが、“片削れ”になってエアータンクの側を削り過ぎてしまうといったトラブルも。やはり今回も1つ1つバラバラにしないといけないようだ。

というわけでバラバラにしたところ(写真は3両分)

 先週完成させた「旧型国電大糸線 黒標記仕様」だけではなく、その前に作った白標記仕様の分もまとめて作業したため動力車は全部で4両。数も多いし細かい部品がたくさんできるので、かなり疲れた。大糸線以外についてもも徐々にアップデートしていきたいのだが、なかなかちょっと骨が折れそうである。
 なお、こうしてバラバラにすると、床面へ接する面積が小さくなり接着強度に不安が残る。この後1つ1つ裏側にプラ板を張り付けて、接着面積を稼いでおいた。

主抵抗器及び減流抵抗器
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 基本的に黒一色の中にあって明るめのグレーに塗られている主抵抗器及び減流抵抗器は、旧型国電の床下機器の中でひときわ目立つ存在である。今回3種類の作り分けが成されているので、実車に合わせて使い分けよう……と思って実車写真を見ていたらとんでもないことが分かった。先ほど書いた「大型4穴」「大型角穴」「小型角穴」の3種類が混在している車両がある。今までだったらパーツに「大型4穴」しかなく再現しようがなかったが、今回はなまじパーツがあるだけに手を抜きにくい。「1つの部品」だと思っていた「主抵抗器」をばらし、組み合わせる必要が出来てしまった。正直面倒くさくはあるのだが、模えポイントでもあるのでちょっとだけ楽しかった。

突然資料本の話

 去年の暮ぐらいに発売された本、模型工房アダージョの『旧型国電 模型工作控え帳』。どちらかというとHO用、それも原形の旧型国電を作るための資料だが、Nゲージに応用できないはずがないと購入。この本の中身がなかなか凄かった。さすが5500円もするだけのことはある。

今日は床下機器の話なので、床下機器のページを

 各車の詳しい寸法が描かれていて、特にガーランドベンチレーターの配置図があるのは今後力強い味方。そして床下機器の配置もかなり詳しく記されている。寸法は「1/80」だが、適宜「1/150」に戻せば問題なし……というか、床下機器はそこまで細かく配置しないので雰囲気で(笑) 各機器類の名称も記載されていて、これだけ読んでいても何だか詳しくなれたようなやっぱり全然わからないような。
 困ったことが2点。まず1つ目は、今回のGMの新製品でも旧型国電に使われている床下機器の全てが手に入るわけではないこと。機器そのものが省略されていたり、再現されていても別の形状だったり。2つ目、特に付随車がそうなのだが、実車の機器配置がやっぱりよく分からない。この本では実車の製造当初の状態が描かれているようだが、実車写真を見る限りそれは後になってかなり変更されているようでもある。結局のところ実物の写真を探す必要があり、そして両側の仔細が分かる写真がない車両については今まで通り「想像」で補うしかないようだ。

突然ですが、カトーの旧国飯田線シリーズ、クモハ53008より

 製品にない形状の機器については、無視するか、他の使える部品を探すか、自作するしかない。初期のころから気になっていたものがあって、ちょうどカトーの飯田線シリーズのクモハ53008に付いている機器だったので写真はそちらから。この2つ並んでいる箱、これがGMのパーツでは新旧共に入っていない。アダージョの本によると「元フューズ」になるようだ。「FS-52」という型番も出ていたが、これが模型の型番なのか実車のものなのかよく分からない(多分実車のものと思われる)。「ヒューズ箱」自体はGMの新製品でも再現されているが、アダージョの本で「FS-61」と記されている完全な別形態品しかない。サイズ的にも、2個並んで設置されているところも、無視できない存在であり、今回プラ板工作で作ってみることにした。

クモハ43810に設置してみた自作「FS-52」ヒューズ箱

 幸い形状としては真四角で、蓋っぽいパーツが表面に付くだけである。頑張るなら蝶番やら取っ手やらを付けるべきなのだろうけれど、あまりにも細かいので却ってシャープな部品の中で浮いた存在になりかねないと思って、手間も考えてシンプルな形状に止めている。

クモハ51025には「FS-61」のヒューズ箱2つ

 同じ「ヒューズ箱」なので形状は違えど役割は同じなのだろう。クモハ51025にはGM新製品で再現されている「FS-61」と思しきものが2つ付いていた。実車では製造時に2つ付けられていたようだが、後年の写真を見ていると1つになったものが多数派のように見える(床下の奥の方へ移設されて見えにくいだけかもしれないが)。

主抵抗器及び減流抵抗器(クモハ43810)

 先ほどばらして並べ直していた主抵抗器と減流抵抗器。写真はクモハ43810で、左から順に「減流抵抗器」「主抵抗器大型4穴」「主抵抗器小型角穴×6」となっている。主抵抗器はずっと6つだと思っていたが、こうして7つのもあるようだ。後から1つ追加されたのだろう。

クモハ600082の主抵抗器は5つ

 クモハ60082は逆に1つ少なく「主抵抗器大型角穴×3」「主抵抗器小型角穴×2」「減流抵抗器」という具合になっている。「大型×4」「小型×2」の車両も多く、アダージョの本を見ていると製造時にそういう組み合わせだった車両が多いようだ(その組み合わせでひと塊になったパーツが売られている)。

 なお、主抵抗器の色はクモニ83以降ガイアノーツの「ニュートラルグレーII」を使っている。最初期は「ねずみ色1号」で次は「白銀」と変遷があったが、今度はこのまま定着するのか、それともまた「ねずみ色1号」に戻ったりするのか。

17m級の床下機器はさらに良く分からない

 今回唯一の17m級となるクモハ12001の床下機器。17m級車体は機器の設置スペースが狭いせいか、2列配置になっている箇所が多い。主抵抗器は奥に配置され、手前に何かしらの機器がぶら下がっているようである。今回のアダージョの本には17m級車両は載っていないので、各種写真等を見て推測で取り付けた。主抵抗器の前には多めに作っておいた「FS-61(仮)」ヒューズ箱を設置してみたのだが、もうちょっと小ぶりの何かが正解だった……? うーん、よく分からない。

さらに良く分からないクハの床下

 よく分からないので諦めつつあるクハの床下機器。もうエアータンクとブレーキシリンダーだけ実車に合わせて、あとは適当でいいんじゃないかと思い始めている。せっかくの出来のいい新パーツではあるのだが、使う人間の知識がそれに追い付いていないので仕方がない。

トミックス製の床板と比べてみる

 「旧型国電大糸線 白標記」シリーズには、リトルジャパン製のクモハ40が混じっている。初期の床板がトミックス(の多分クモハ73用)の製品だ。というわけでちょっと見比べてみた。今回“立体的”になったGM製品だが、それでも部分的には足りない気もする……? 主抵抗器の奥行きが全然足りてない? とまあ、この辺りを追及しだすととてつもなく労力が必要になってくるので、今後も新パーツにちょっと手を加える、程度に留めておこうと思う。

 今後の悩みどころはクハ76とクハ86(及びクハ75やサハ87等)。モハ70とモハ80は新製品と従来品の組み合わせて行くとして、付随車をどうするか、だ。中間車はともかくクハについては明らかに戦前型とは様子違い、数が増えているのはもちろん大き目の機器がいくつか付いている印象。ここでも何度も書いている通り「詳しいことはよく分からない」ので、拘りだすと手間が増えるばかりであまりいい結果にならない気がする。GMストアで使えそうなバルクパーツが発見できればそれを活用するが、基本的には目立つ部分だけを自作することになるだろうか。その場合、新製品をどの程度採用するのか。究極的にはブレーキシリンダーさえあればいいのではないかとも考えている。1両分のパーツに左右各1つが付いているパーツなので、必ず左右どちらかが余るのもポイント。戦前型で余った分をクハ76やクハ86に使い、その他の必要な箇所を自作でまかなえたら、パーツのストック数が抑えられる。でも床下機器まで作り出すと、完成までの時間がまた長くなっちゃうなあ。

(2022.04.03)