−5


 「んんん……はむ、ふぅ……むん……っ!」
 
 意識がピンク色に霞んでる。
 あれからずっと拘束されて、アタシ、頭の中がとろとろの、セックスを欲しがる何かだけになっちゃってる。
 お尻の穴にはそれをほんのちょっぴりだけかなえてくれるバイブ。
 けど、全然足りない。
 膝はベルトで昨日の鞍馬に跨らされて固定されてるし、両腕は宙に磔にされたように横に伸ばされたままハーネスと鎖でがんじがらめ。
 だから、いやらしく腰を振ってアナルの粘膜を抉る事も、指を挿しいれて掻き回す事も出来ないでいるの。
 
 いっそ眠ってしまえれば、そう思うけど、剥き出しの内股には、シリコンゴムのひだひだが無数の舌が押し当てられているような感触をアタシに伝えてくるし、意識を集中しなければ感じ取れないけど、アタシのアナルを犯しているプラグは僅かに振動している。
 ラヴィアを押し広げているものも、同じように振動してアタシの性感をその繊毛で苛んでいる、お尻の穴の周りと同じように。
 これでは熟睡できっこない……ううん、こんな状態でうとうとしよう物なら、卑猥で淫らな夢を見て、きっとその中でも焦らし狂わされてしまうに違いない。

 「んんぅ……んっ、んっ、んんぅぅ……ふむっ、んんぅっ!」

 だから、アタシはその微弱な快感にしがみつきながら、固定された腰で少しでも滑るシリコンゴムの鞍と膨らみにももの肌を、あそこを、バイブを咥えたアナルをこすり付けて、追加の快感を得ようとする。
 けど、計算されたベルトの配置が僅かな快感しかアタシに与えてくれない。
 襞の谷間を幾つもの細い先端がくすぐり、会陰の部分でぷつぷつが弾け、お尻の穴の皺がちろちろと舐められる。
 けど、それだけ……快楽の火は煽られるくせに相変わらずのとろ火のまま。
 正面、そして背後にはそんなアタシを写し出すビデオカメラ。

 「んぉう……んく、くんぅ……んんぅっ……!」

 そのレンズにご主人様の視線を重ねて、アタシはますます昂ぶっていく。
 潤んだ視線で卑猥な流し目を送り、不自由な腰で鞍馬をぎしぎしと揺すりたてながら自分の躰を焦らし狂わせていく。
 きっとこれも全部折り込み済みなのだろう……こうしてアタシが自分で自分の心を快感のとろ火で煮込んでぐずぐずに溶かしていくのも。
 轡をはめられた唇から涎をふき零しながら、アタシはいつしか覚醒とも睡眠ともつかない夢の中に滑り込んでいた。

 最初のうち、夢は形を成さなかった。
 ちがう、はっきりしたディティールを持たないというだけで、アタシの欲望自体は素直に反映されていた。
 卑猥なピンク色をしたぬるぬるの触手に全身を舐り上げられ、繰り返しよがり声を上げながらその口内、喉を押し広げて内臓さえもその狂った快楽で犯し尽くされる。
 全身いたるところに性器が口を開け、物欲しげなそれを数え切れないほどのご主人様のペニスで貫かれてよがり声代わりに愛液をしぶかせる。
 そして、お尻を犯した熱くて固いものが突き抜け、口から飛び出したそれを気の狂いそうなほどの悦びとともに指を絡ませ扱き、逆向きにフェラチオする。

 それは快感に満ちていたけど、でも本当の満足には程遠くて。
 だから絶頂を求めるかアタシの精神は、いつしかその源をアタシの記憶に辿ろうとしていた。
 
 

 かろうじて使徒を撃退。
 薄暗い非常灯の中、満足げに見詰め合う……と、そのままシンジに抱きしめられる。
 アタシ、拒否するはずなのに……なのに、そうしない。
 嬉しそうな笑みを――とてもいやらしい笑みを浮かべると、シンジに抱き着き返す。
 そのままシンジの手が、プラグスーツの上からアタシの躰をまさぐり出す。

 パッドがいっぱいあるから、生地ごしで胸を揉んだりあそこを弄り回したりは出来ないはず……なのに、シンジの手はたやすくアタシの肌を愛撫し、アタシの意識を快感で満たしてしまう。
 身を捩って満足げなため息をシンジの耳に吐き掛けるアタシ……ちょっと弄られただけなのに、溢れ出すラブジュースが非浸透性のスーツの内側をぬるぬると満たしていく。
 アタシ、いやらしい自分の愛液に全身の毛穴を塗り込められてもっといやらしくなっていく。
 たまらずシンジにお尻を向け高く突き上げ、シンジの目の前に股間を見せ付ける。

 本当のプラグスーツは、ここの部分もパッドが入って急所を保護してる、なのに夢の中のそれは……。
 コンドームみたいに薄く透ける生地に、ぴくぴくといやらしく物欲しげに口を開いたヴァギナがはっきりと浮き出ている。
 アタシ、初めてのはずなのに、なのにシンジのものが欲しくて仕方ない。
 熱いペニスで卑猥に口を開いているあそこを、膣内(なか)を思い切り掻き回して欲しがってる。
 シンジはその行為に笑顔で応じて、同じようにスーツが延び密着してコンドームのようになっているおちんちんを当ててくれる。

 ギュ……チュッ!

 愛液や先走りで濡れていない生地が、LCLと絡んで湿り渇いた妙な音を立ててこすれあう。
 体液の交換はない、けどそれ以外のセックスが産むすべての快感がアタシに襲い掛かる。
 アタシ、獣みたいなよがり声を上げながらバックでアタシを貫くシンジに足を絡めてる。
 突かれるたびにアクメを貪って、なのにもっともっとっていやらしく腰を振ってシンジの腰を打ち付けてる。
 ずっと続くかと思われたそんな行為も、ひときわ強くシンジが腰を突き上げ、深く繋がったところでがくがくと痙攣した時に終わりを告げた。
 それに併せて、アタシも最後の、最高のオーガズムに達する。
 現実には無いプラグスーツの極薄の生地ごしに脈動するシンジのペニスと、吐き出される熱い精液の触感を心に刻みながら、絶頂で吐き出された愛液が溢れかえってとうとう首から吹き出すのを淫らな満足とともに受けとめ、快感の濁流に意識の全てを委ねた。



 黒板に名前を板書。
 元気良く朗らかに紹介……けど、その間もシンジを卑猥に潤んだ瞳で熱っぽく見つめつづける。
 他人には見えないスカートのなか。
 そこでは、シンジに言われた通りに下着を着けず、代わりにテープで止めたローターがその振動でアタシの淫唇から愛液を溶かし出させている。
 待ち合わせて紹介前の僅かな一時でシンジとセックスして、注いでもらった精液を逃すまいと締め付ける――それで、ますます感じて瞳が淫蕩に潤む。
 それを見つめるシンジの視線……全身を、この場所で裸に剥いていくような視線。
 羞恥と、それでますます激しくなる快感に唇を舐め回し、アタシはこのすぐ後にでもまたしてもらえる事を期待して全身を疼かせていた。



 ユニゾンの特訓。
 そう言われてアタシとシンジはネルフの一室に閉じ込められた。
 重い音を立てて閂が掛けられた部屋には、大きな――優に五人は乗れるだろう――ベッドだけがある。
 軽く微笑むと、一糸纏わぬシンジはアタシのそのベッドに連れて行こうとする。
 アタシ、格闘訓練を積んでる。
 だから、こんな行為を中断させて沈黙させるなんてわけない……わけないはずなのに、アタシは反り返るシンジのペニスに目を吸い付かせて怯えたようにされるがままになってる。
 ううん、アタシ、怯えた振りをしてる。
 ほんとは、期待して胸がどきどきいってる、シンジのものが揺れるたびに生唾で喉を鳴らしてる。
 着ていた服を奪われたアタシが身につけているのは、実際には持っているはずの無い卑猥な下着。
 極端なハーフカップのブラ、胸の三分の一も無くて、極薄のレースだけで構成されたそれは、先端でいやらしく期待に尖っている乳首をくすぐるように挟むだけで隠していない。
 パンティにしたってそう。
 ほんの少し捻じるだけでぷつりと切れてしまいそうな細い紐で繋がれた、申し訳程度にある極端なハイレグの股布、色こそ清楚な純白なのに、かろうじてクリトリスを、もうすっかり興奮で顔を覗かせてるそれを隠すかどうかくらいで、白い陰阜も、うっすら茂った下生えだってまるっきり隠されていない。
 それどころか、身動きのたびにもう溢れ出してる淫液ですっかり透けてしまっている極薄のレースの股布が、アタシの慎ましい、初々しいピンクのラヴィアを刺激する。

 そう、アタシはこれから、ユニゾンの為にとシンジに犯されるのだ、5日間ずっと。
 
 お口でシンジの熱いものを愛して上げる事も、お尻の穴でシンジのおっきなペニスを受け入れる事も、ありとあらゆるいやらしいセックスの仕方を全部憶え込まされるのだ。
 アタシはその間中、気が狂うような快感の中で何度もオーガズムを極める……そうやって、使徒を倒す為のユニゾンを達成するのだ。
 覆い被さりぎゅっと抱きしめるシンジの体重を感じながら、アタシは淫らな微笑みを浮かべていた。

 口移しの食事と繋がったままで体を洗われセックスされるお風呂とベッドの中での淫ら極まりない嬌態と。
 絶え間無い快楽と、それでもまだ足りないと貪欲に叫ぶ心。
 そして最後の日、延々と流れていた音楽と共に幾度めかも知れない絶頂をカメラに見せ付けながら――4日目に見つけた、そのせいでますます感じるようになってしまった――シンジの精液をお尻のなかに感じ、アタシたちは繋がったまま泥のような眠りに落ちた。
 遠い意識に、完全にユニゾンしている鼓動を子守り歌にして。
 
 
  
 アタシはシンジと温泉に入っている。
 本当は混浴のお風呂なんて無かった、だけどこのアタシはこうして一緒に入っている。
 身を隠す無粋なタオルはない……恥ずかしいけど、これはお礼だから。
 隣にいるシンジが、そっとアタシの手を取った。
 それをお湯から持ち上げると、そっと愛しげに頬擦り……アタシを助けてくれた手、アタシの大好きな、シンジの手。

 そのままアタシを抱きしめようとするのを押し止める。
 そして、いったんお湯から上がってもらってアタシの前に寝そべってもらう――温泉に似つかわしくない、いつ用意されたのかも判らないバスマットに――そして、アタシはシンジに見せ付けるように全身にボディーソープを塗りたくる。
 泡にまみれた肌を重ねながらシンジに囁く、これはお礼だ、と。
 どんないやらしい事でも、何でもして上げる、シンジに満足してもらう為に、アタシはこれから淫乱で卑猥で、どんな行為も受け入れるシンジ専用の娼婦、性欲処理の道具になる、と。
 シンジは一瞬躊躇したけど、それでもそっと唇を合わせてそれを受け入れてくれた。
 そのまま仰向けのシンジの身体の上で何度も往復する。
 ぬるぬるの肌の間で、固く張り詰めたペニスがアタシの欲望を煽る。
 でも、だめ。
 アタシはシンジの性欲を処理しなくちゃいけないの。

 シンジの足に跨るように挟み込んで、あそこにだけお湯を掛ける。
 剥き出しになったシンジのものにそっとキスを捧げる。
 それだけで溢れる先走りをちゅるちゅると啜りながら、ぺろぺろと全体を舐め回す。
 ぴくりと震える肌、漏れる喘ぎとアタシの名前……嬉しい。
 見下ろすシンジの視線に目を合わせ、両手の指先でシンジのおちんちんの先の切れ目――鈴口を割り開く。
 まるでちっちゃなヴァギナみたい。
 そこに、卑猥な角度で上目遣いに、見せ付けるように舌先を差し入れる。
 震え、それでも目を離せないシンジに淫らな微笑みを返し、繰り返しぴちゃぺちゃとペッティングを繰り返す。
 滲む先走りの味がどんどん濃くなる。
 その味に、頭の芯をジーンと痺れさせながら、ぱっくりとペニスを咥える。
 どくどく脈打つ熱い塊を、えずきもしないで喉の奥まで飲み込み、締め付け、舌を絡ませながら引き抜き、また飲み込み……。
 これは夢だから、どんな事でもしてあげられる。
 きつめに吸い上げた瞬間に弾けたシンジの精液を舌先でかきわけて、開いて痙攣している精道を舐め回してあげる事も、溢れるザーメンを息継ぎ無しで全部飲み干してあげることも、零れる精液をもったいないとばかりに追いかけて袋の方までしゃぶってもう一回勃たせてあげる事だって、できるの。
 
 快感で震える、でも優しく髪をかき分けてくれるシンジの手にうっとりと浸りながら、アタシはなおも奉仕を続けた。

 

 初めてのキスを思い出した。

 加持さんがあんな女――ミサトのところに行ってしまい、アタシを見てはくれなくなったのを実感した今。
 ううん、昔から「アタシ」を見てくれていたわけではない事が解ってしまった時。
 アタシはこいつを……シンジを誘っていた。
 加持さんでなければ誰でもいいと、そう思っていたはずなのに、結局思い付いたのはシンジだけだった。
 近くにいただけ……でも、それだけじゃない。
 それが解ってしまうので、アタシはことさらにきつくシンジを挑発した、死んだお母さんの命日の事まで持ち出して。
 
 でも、こいつはそれでも嫌だといった。
 こいつはアタシの事などなんとも思っていない、あの女がいいのだ、と……そう思いそうになった瞬間、こいつは確かに言った。
 暇つぶしでなんて嫌だ、と。
 他の誰でもない、アタシだから、だから本気でしたい、と、そう言ったの。

 気づけばアタシはシンジと唇を合わせていた。
 どっちから、なんてのは意味が無かった。
 アタシも、こいつも、互いを求めている……それが解っているだけで充分だった。
 
 絡み合う鼻息がくすぐったい、それが嬉しい。
 角度を変えるたびに涎が零れ顎まで伝う、それが嬉しい。
 何より、こうして唇と舌とを絡めあうととてもキモチイイ、溶け合って一つになってしまうほどに……それが、たまらなく嬉しかった。
 
 そのまま床に倒れ込んで――シンジが下でクッションになってくれたの――ずっとキスに浸って、いつしかうとうととまどろんで……そして、ミサトの帰宅のベルで起こされるまでうっとりと唇の交接に浸っていた。
 
 でも違うの。
 夢の中のアタシたちはそのまま互いの服を脱がせあった。
 合間合間に時間が惜しいとばかりにキスを交わし合いながら、互いの肌を直に感じあう。
 そして、キスとじゃれあいだけですっかり濡れそぼったあそこを、シンジが丁寧に口で愛してくれる。
 それで何度も昇り詰めてしまうアタシ……でも、貪欲になおその先を求めてしまう。
 それに応えてシンジが深々とアタシを貫く。
 夢だから、痛いけど痛くない、だから、たちまちアクメに達してしまう。
 でも、シンジも同時にイく。
 熱い精液で膣内(なか)をいっぱいに満たされて、でもアタシたちはそれだけでは足りないと何度も何度もセックスする。
 
 そして、精液と愛液まみれのアタシたちをミサトが見つけるの。
 
 それが、嬉しいの。
 


 アタシ、エヴァの中にいる。


ダメ


 照準には、なかなか手の届くところに来ない使徒。


ダメ、ダメ


 光、歌声、ココロを這い回る何か。


イヤ、イヤ!


 悲鳴を上げる、そして、誰かの名を呼んだ。


ダメ!オモイダサナイデ!


 それに応える影、遮られる光、開けっぴろげの、幼児みたいな微笑みでそれを見あげるアタシ。


チガウ!アタシハえりーとナノ!コンナフウニタスケラレタリナンテシナカッタノ!


 場面は変わる、屋上、座って膝を抱えるアタシ。


ダメ!


 その側で、アタシの頭を慰めるようにそっと優しく撫でるシンジ。


チガウ……アタシ、チガウノ……


 アタシ、涙に濡れた目で見上げて、そのままシンジに抱き着く。


チガ、ウ……デモ……


 力強く抱き返される、好きという囁き、そしてそっとキス。


デモ……嬉しかったの、好きだって言われて、幸せだったの……


だから、アタシはシンジに同じ言葉を囁きかえした。


 ただシンジの名を呼んで、手首のスイッチを入れるアタシの手。
 驚いた風になるけど、シンジも同じようにする。
 もう一度キス、そして、震える手がアタシの胸を探る。
 少し痛い、と、シンジが手を引いて謝る。
 見つめ返し、ふと笑ってしまう。

 またキス、キスしたままでシンジの手がアタシの身体を下っていく……ちょっと性急に、あそこまで辿り着く。
 その感触にびっくりしたように止まる、けどすぐに、今度はその手触りに取り憑かれたように執拗にそこを探り……ううん、愛撫し出すの。

 いつのまにか、アタシ仰け反って喘ぎはじめてる。
 開けたビルの屋上で、一糸まとわぬ姿で……でも、この時のアタシにはシンジだけしか意識されなかった。
 シンジが切なげにアタシを呼ぶ、見かえすと、いい?と聞かれた。
 もうろうとする意識、でも何を言っているのかが解るから、一瞬だけ躊躇って……小さく肯いた。

 侵入、激痛。
 背に突き立つ爪に怯むけど、シンジは最後まで押し切った。
 そのままじっと抱きしめ合う、苦痛が少しだけ小さくなる、けどシンジの身じろぎでまたぶり返す。
 終るには動かなきゃならなかったけど、シンジはアタシの苦痛を前に自分の快感を優先なんて出来なかった。
 だから、酷く苦痛が長引いた……けど、繰り返しのキスでなだめられていたし、何より初めて結ばれたという想いがアタシの意識を支配していたから耐えられたの……この時は。
 やがてシンジの体温が膣内(なか)いっぱいに弾けたところで、アタシの記憶はふっつり途切れている。

 

 気づけば、アタシは病室のベッドの上。
 傍らではシンジがベッドにもたれるように、アタシの手を握りながら椅子で眠りこけていた。
 
 そして、アタシはそのシンジの寝顔を見た瞬間、幸せを感じ……感じてしまい、酷い恐怖を覚えた。
 今までのアタシが無くなってしまう、エヴァではない頼る事のできる何かを見つけてしまう。
 何より、その何か――シンジに、全てを委ねて頼り切ってしまうのではないか、そのことに怯えてしまったの。

 腰の奥に疼く幸せな痛みを感じながら、アタシはそのままそこから逃げ出した……手近の制服だけを身に纏い、なるべくシンジを見ないようにして。

 
 
 これは、夢なの……全部、夢。
 でも、もしかしたら…………?



 ふと、ドアの軋みで目が醒めた。
 夢を見ていた気がする……なんだか、大事で、そして幸せな夢を。
 でも、思い出せない……それに、もういいの。
 
 アタシは入ってきたご主人様に媚びる視線を向ける。

 「アスカ」

 その視線を笑顔で受け止めて、ご主人様がアタシを呼ぶ。
 轡でしゃべる事の出来ない分を、汗と涙でぐしょぐしょの顔を向け、潤んだ瞳で必死に訴えかける。
 ご主人様はアタシと視線を合わせたままで後ろ手に扉を閉じた。
 逆光が収まると、ご主人様は身に何も纏っていない……股間で、逞しく反り返るアタシの大好きなおちんちんを隠すものは、何も無い。

 「んふぅ……っ?!んん、ふ、むんんぅぅーーっ!!

 アタシ……それを見た瞬間、イってしまっていた。
 ご主人様のペニスを目にしただけで、イってしまったの。
 それは精神だけのオーガズムで、置いてけぼりにされた躰はますます酷く悲鳴を上げたけど、それでもアタシは幸福感を感じていた。
 ご主人様が近づいてくる……と、優しい手つきで轡が外された。

 カチッ……ヂュル、ポ……

 長時間の欲情でいやらしいぬめりを増した唾液が絡まり滴り落ちた。

 「あはぁ……あ、ごしゅじんさま……ごしゅじんさまぁ……」

 舌っ足らずな甘えた声で、目の前で揺れるおちんちんに魅入られたままそう呟き続ける。
 それに無頓着な風に――でも、アタシがやらしく呼ぶ度にペニスはピクンって反応してくれるの――作業が続けられる。
 腕を戒めていた4つのハーネスが外された時、アタシは自分を慰めるのではなく、ご主人様の腰を抱え込んでそのペニスを唇に咥え込む事を選んでいた。

 「あ、アスカ……?」

 右腕でしっかり腰に抱き着き、その勢いを利用してえずきそうになるのもかまわず喉の奥まで呑み込む。
 突き当たるペニスの先端を、そこの粘膜で擦り上げて刺激して差し上げる。

 「うぁ……はっ!」

 ご主人様のものの熱さで唇を痺れさせつつ引き戻し、雁首をもごもごと揉みくすぐりながら舌先で敏感な切れ目をちろちろと舐めたくる。

 「く……っ、いきな、り……はぁっ!」

 そうやっておちんちん全部を唇と舌だけで愛しながら、催促するみたいに下の袋へ左手を伸ばす。
 まるで詰まっている精液を絞り出すみたいに、でも丁寧に優しくその玉を揉み転がす。

 「は……だ、め、そこは……あぁっ!だめ、だよぉっ!」

 ビクンって震えて、口の中にご主人様の先走りの味が広がる……濃くなる匂いに頭を痺れさせながら、一層奉仕に熱を込める……と、頭を掴まれて引き離された。

 「はぁ、は……アスカ?いきなり、どうしたの?」
 「だってぇ……して、さしあげたかったんです……」

 上目遣いで言う。
 併せて言う言葉にご主人様が顔を赤くする。

 「一晩中、焦らされていたのに?」
 「はい……あ、見て、くださってたん……ですか?」
 「全部、撮ってあるよ」

 それに恥じらいが戻ってきてしまう……一晩、どんなに物欲しげな顔つきをしていたかが想像できるから。
 動きを止めたアタシに主導権を取り戻したのか、ご主人様はアタシの膝のベルトもほどいた。

 「あふ……」

 密着していたものが緩む感覚。
 思わず漏れたため息に、ご主人様が質問をぶつける。

 「これ……気きにいらなかった?」
 「あ……その、ずっと、焦らされっぱなしだったから……」

 だから。
 これがイかせてくれるくらい強かったら……そしたら、ご主人様が居ない時の代わりにはなるかもしれない。

 「そう……まあ、抱き枕として使うのはやっぱり問題あるかな……シーツ、こんなになっちゃうんじゃね」
 「っ!」

 見下ろせば、シーツに水溜まりが出来るほどに愛液が零れてる。

 「これ、手枷を後ろに回して、抱き着かせて固定するのがほんとなんだって……そうやって、眠っている時でも抱き着くくせをつけさせるものなんだってさ」

 抱きつくの?こんな、両方の穴を犯し続ける卑猥な機械に?
 怯えと戦慄と……もしかしたら、期待みたいなもので体が震える。

 「アスカはどう?抱き着いて眠るなら……」

 答えは決まってる。

 「ご主人様がいいです……絶対」
 「ん。
  ならこれは、もういらないね」
 「……それ、って……!」

 眠る時は、ずっとそばにいてくれる。
 そういう事だから。
 目から何か零れそうになる前に、ご主人様はキスしてきた。
 ひとしきり舌を絡めあってから離れると

 「じゃあ……これ、抜かないとね」

 腰が抜けてしまっているのが分かっているのか、後ろから抱え上げるようにアタシを持ち上げる。
 力が足りない風を装って揺すりながら持ち上げられるので、アナルを捏ね回されながら引き抜かれる事になるの。

 チュポ……チュポ……

 球体が一つ一つ抜け出るたびにアナルに心を蕩かす刺激が加えられ、火がつけられていく。
 その刺激に、腰の奥が小さく痙攣して愛液を零し、物欲しげに半開きになっている唇からは勝手に喘ぎ声が漏れる。

 「あふ、は……ンンッ、んっ……あぅっ!は、あん……っ」

 チュル……

 最後の一つが抜け出る頃には、アタシの躰はすっかり準備が整ってしまう――あの焦らし狂わされた感覚が戻ってきてしまっていた。
 いったんベッドに横たえられる……革衣装ごしにも、ベッドのシーツをぬめらせるアタシのはしたない液の感触が判る。
 そのことにゾクゾクするような倒錯した感覚を覚えている間、鞍馬――抱き枕がベッドから下ろされた。
 期待が高まる。

 「じゃ、お尻を上げて」

 言われるままに四つんばいに……でも、腕はもう自分を支えられない、だからアタシの零した淫液のプールに顎先が浸かる。
 生乾きの、自分で分泌したものの卑猥な欲情の匂いがますますアタシを狂わせる。

 「うわ……凄い事になってるよ、アスカ」

 さらけ出した股間がどんな風になっているかを想像させる言葉。
 からかうような、笑みを踏んだ柔らかい声。

 「あ……言わないで、ください……」

 こういうと、きっとご主人様はことさらに克明にそこの様子を口にしてくれるに違いない。
 アタシは言って欲しいのか、勘弁して欲しいのかがよく分かっていなかった……けど、ご主人様の行動はその上を行った。

 「じゃあ、言わないよ……見せてあげる」
 「え?」

 アタシの声にかぶせてスイッチが入れられると、今まで気づかなかった正面の壁がモニタになった。
 映し出されているのは、リアルタイムの画像……アタシの、後ろからの映像。

 「あぁ……こんな、いやら、しい……」

 お尻を高く上げ、足を開いているからあそこもお尻の穴も丸見え。
 太股までの肢やお腹が黒い革で覆われているせいで、その白とぬらついたピンクの、セックスをする為の部分だけが卑猥に強調されている。
 焦らされ続けているヴァギナはすっかり開いて、ひくつきを繰り返しては濃く粘り付いた白濁した愛液を絞り出している。
 そして、アナル。
 ずっとバイブを挿入られ続け、注がれる微弱な快感で焦らし練り上げられたそこはすっかり開ききり、ピンク色の直腸の粘膜が淫らにひくつくさまを見せ付けている。
 それを見て発情したアタシの反応がダイレクトに現れる。
 映像の中の腰がかくかくと物欲しげにくねり、何かを咥え込みたがるようにアナルがきゅう、とすぼまった。
 押し出されるように濁った腸液が零れしたたる。

 「あ、あっ……は、ごしゅじんさまぁ……ねぇ……っ!」

 切羽詰まる感覚を声に乗せて必死で訴える。
 同時に、お尻に手を回して引きはだける……映像の中では、黒皮で覆われた手が再びいやらしい内臓をさらけ出させ、アナルがぱくぱくとひくつきを繰り返していた。

 「これが、欲しいんだ?」

 画面のお尻の穴に、逞しいおちんちんが近づく。
 今にも触れそうな距離で止められる。

 「は、はいっ!それ……それぇっ!」
 「なら、キチンと言葉にして言って」

 いわれるままに、快感でとろけた脳が産む卑猥な言葉を紡ぐ。

 「あぁ……アタシの、いやらしいアナルを、早く、そのおっきなコックで、ファックしてくださ……い」
 「全部、日本語で」

 言われるままに言葉を思い浮かべ……そうやって、母国語以外の、なじみの無い卑猥な単語を思い出す行為がアタシの理性を僅かによみがえらせた。
 そのせいで……言うのを躊躇うほどではなく、でも言っている内容の卑猥さははっきりと自覚されながら、アタシは言葉を並べる。

 「あ……あの、アタシの、いやらしくて、物欲しげにひくついてる、おしりの穴を……あぁ……ご主人、さまの……固くて、おっきな……お、おちんちんで……ぐちゃぐちゃにして……犯して、ください……っ!!」

 羞恥が極まり軽く昇り詰めそうになった瞬間。

 「良く出来ました」

 ズブ……ゥッ!

 ご主人様のペニスがアナルを貫き、その感覚でアタシはずっと高いところへと跳ね上げられてしまった。

「あは……あぁぁっ!!ああああぁぁぁーーーっっ!!」

 仰け反る視界に、太いおちんちんで押し広げられているアタシのアナルが見えた。
 その下では、潮を吹いてぱくぱくと震えるヴァギナが見える。
 アタシ……なんて、いやらしい……!

 「ふぁ?!やは、やぁ、なんっ!あああぁぁぁーーっっ!!

 その光景を意識した途端、跳ね上げられた絶頂にまた蹴り戻されてしまう。
 引き伸ばされてるアクメに全身ががくがくと震える……それを、ご主人様がのしかかり抱きしめて抑えてくれる。

 「イった、みたいだね?……そんなに、良かったんだ」

 嬉しそうな声。
 アタシの舌は言葉が上手く形作れそうに無いので何度も肯いて答える。
 耳元に軽いキス、イってすぐの肌にはそれだけでも凄い快感。

 「でも、まだ全部は入ってないんだよ?」

 胸の前で握り締めていた両拳ごと抱えるように支えられ、右手で顎を上向けさせられる。
 ほんと……まだ、半分くらいしかはいってないの……。

 ゾク……ン

 冷たい戦慄が淫らな期待に変わりながら背筋を這い登ってくる。
 このまま、全部挿入られたら……アタシ、どうなってしまうんだろう。
 わからない……でも、一つだけはっきりしている。
 アタシの全てが完全にご主人様のものになってしまう、それだけは分かった。

 だから、アタシはご主人様の手に縋って最後の正気をかき集めて言った。

 「全部、ください……それで、アタシをぜんぶ、ご主人様のものに、してください……!」

 自分の言葉に震えるアタシの顔をそっと手で引き寄せると、優しいキスが。
 唇を絡ませ、舌先でじゃれあって。
 離された至近距離から、ご主人様の黒い瞳がアタシの目を覗き込む。

 「うん……これからずっと、アスカは全部僕のものだよ」

 ずぅ……ブッ

 「ふぅっ!うぁ、おく、くるの……ひろが……っ!ひぃ……んっっ!!」

 ゆっくり、でもとどまることなく挿入され、おなかいっぱいにご主人様を満たされる。
 モニタでは、だんだんと腰の間の隙間が無くなっていき……

 「ほら……いっぱいに入ったよ」

 お尻の肌に密着したご主人様の体温、そしてアナルをくすぐる毛の感触。

 「は……あぁ……ごしゅじんさま……ぁっ……しん(んっ)」

 呼びかけの途中で唇を塞がれて。
 そのまま舌とペニスで上下を犯される。
 頭の芯は痺れて、与えられもみくちゃにされる快感にただただ嬉しいって叫び続けてる。
 造り変えられてしまった腸は、突き入れられたご主人様のものをヴァギナ同様にその全体で感じ取れて……だから

 「んふぅっ!!くん、んぅぅっ!!んんんぅぅーーっっ!!」

 小刻みに小さく前後されてアタシの意志を離れて貪欲に絡み付く粘膜全体を擦られても

 「んは、やはぁ……こんな、ひろがっちゃ!うぁ、こねちゃあっ!ああぁぁぁーーっ!!」

 密着したまま、食い締めるアナルを基点に中を捏ね回され、触れた部分を毛で擦りたてられても、

 「うああっ!や、まえ、まえもぉっ!ひびくのっ!は、や、おかしくなっ!ひいいぃぃーーっっ!!」

 お腹を押さえ付けられて、子宮を裏側からこねくられても、全部はっきりわかるの、狂っちゃいそうなほどキモチイイの。
 そうやって、アタシは意識を高みで好きなように弄ばれて、すぐ近くでご主人様がアタシのいやらしい表情を見つめているのに、漏れ出る喘ぎを止められない……でも、いいの。
 恥ずかしいけど、そんなアタシを見るのを嬉しいと感じてくれているのが判るから。
 
 「あぁ……ごしゅじん、さまぁ……このままじゃ、アタシだけ……」
 「……一緒に、いきたいの?」

 その問いに、アタシの中で何かが弾けた、だから

「は、はい……アタシ、いきたいです……ごしゅじんさまと、ずっと、いっしょに……ぃっ!」

 アタシはそうさけんでいた。

 「……!は……っ、あ、アスカ……あすかぁっ!!」

 息を呑む気配、切なげに潤む声。
 息が止まるほど強く抱きしめられ、ご主人様の動きが変わる。
 密着してアタシを高めるのではなく、自分の欲求をぶつけて、アタシと一緒に燃え尽きる為の激しいものに。

 ズルゥッ!!

 「ひいぃっっ!はく、あ、こすれっ!ぬけちゃ……あああぁぁぁっっ!!」

 絡み付いた粘膜ごとなにもかもが引き抜かれるような、それに抵抗して擦られ弾かれる快感。

 ズブッ!!

 「あか、は、おくっ!おくぅっ、すごいのぉっ!ひぁ、あはあぁぁぁっっ!!」

 圧倒的な熱と質量が押し込まれ、それを受け止め受け入れる事で生まれる圧縮された快感。
 その一つ一つでアタシの意識は真っ白にスパークする。
 それが、続く、何度も、なんども。

 「ひぃんっ!あ、は、し、んうぅっ!くは、あああぁぁっ!!」
 「くぅ……あ、アスカ……アスカ……っっ!!」

 快感に炙られた舌で呼びかけようとするけど果たせず、それでもご主人様が名前を呼んでくれるのが嬉しくて。
 アタシ、もっともっと高いところへ連れて行かれる。

「ひぅ……っ、ああっ!あたしぃぃっ!もう、もうぅっ!ああっ、ひ、うああああぁぁぁぁーーーっっ!!!」
 「くは……あ、あああぁぁっっ!!」

 ドクンッッ!!

「ひあ!あ、あついぃぃ!いいのぉっ!あひ、は、やけるぅっ!とけちゃうぅぅっっ!!」

 アタシがひときわ高いオルガスムスに昇り詰めたのと一緒にご主人様のものが弾けた。
 熱い精液がお腹の中で広がって、その衝撃で意識が飛び掛かる……けど

 ドクンッ!

「ふぁ!あひ、ああっ!また、またあぁっっ!!」

 弾け続ける射精の衝撃で叩き起こされて、意識を沸騰させ続けるその熱い快感を逃れようも無く感じさせられ続ける。
 ご主人様、射精の間も腰の動きを止めない……ううん、違うの。

 「は、あ……アスカ……あすかぁ……!」

 絡み合わせた手を縋るように握りしめながら、快感で熔けた泣きそうな切ない声でアタシを呼び続けているから。
 だから、それが反射的なものだと……蠕動を繰り返して締め付け、ペニスから更に精液を絞り取ろうとしているかのようなアタシの躰の反応と一緒だって判るから。
 だから、アタシの意識を蹂躪するようなそんな快感の中でも、アタシはそれを拒否することなく受け入れ、感じ続ける事が出来たの。
 やがて射精がやむと。

 「あはぁ……は……好き……だいすき、です……しん…さまぁ……んん……」

 覆い被さる体重を愛しいと思いながら、アタシは幸せな眠りへと遠ざかる意識でそう呟いた。