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目が覚めると、アタシはベッドで宙吊りに両手を固定され、膝立ちにされていた。
肩と手首でハーネスが取り付けられて支えているので、辛くはないけど鎖を少しがちゃつかせるくらいしか出来ない。
「ご主人様……?」
名前を呼ぶと、条件反射のようにお尻が疼きだした。
熱く痺れたようになって、ジンジンと刺激を待ち焦がれてアタシを苛み出す。
と、扉の開く音。
「ご主人様!」
喜びを声に乗せて呼びかける。
からからと何かを転がす音。
答えがないままなのが不安を掻き立てるけど、その空気……ご主人様の気配がそれをなだめる。
何かをセットするカチャカチャという音が済むと、ようやく顔を合わせてくれた。
「待たせたね、アスカ」
「ご、しゅじんさま……それは?」
台車の上に乗せられているのは、カメラと……三角柱のような抱き枕……?みたいなもの。
「これ?」
言いつつカメラを先にセットする。
後ろのも多分カメラなんだと思う……正面から、アタシの顔も、声を聞いただけで物欲しげに愛液を零しているあそこも外さないようにセットされる。
そうしてから、楽しげに顔を寄せて囁きかける。
「何だと思う?」
「抱き枕……みたいですけど」
「近い、かな?」
そう言うとそれを抱え降ろす。
わりと、重いみたい。
表面は、ぬめっとした感じの……シリコンゴム、かな、そんな材質で覆われている。
緩やかな三角の(120°くらい)頂点には、なんだか……ちょっといやらしい感じのぷつぷつがびっしりはえている。
片方の端に近いところには二つ穴があいていて、そこには何かを挿し込むようなアタッチメントがある。
その穴の周りのぷつぷつは、ひときわ密集していて更に毛足?が長い。
……もしかして。
「なんとなく、分かったみたいだね」
言いつつご主人様は手にしていた棒のようなものをその穴に取り付けた。
5ミリから25ミリまでの球体が数珠のように繋がったもの。
もう一つの穴には、同じ材質で出来たパッチ……といっても少し盛り上がっていて、表面にはその周りと同じように毛足の長いぷつぷつが生えてるんだけど。
準備を終えると、ご主人様はアタシのあそこに手を当てる。
クチュリ……
湿り粘ったいやらしい音がする。
「期待して、こんなにしてるんだ……」
その言葉に、アタシは恥じらい以上に快感を得て、もっとというように腰をいやらしくくねらせて開いたヴァギナを擦り付けた。
それに応えるようにひとしきりぬめりを手に纏い付かせてから、お尻へ。
「はぁんっ!」
疼いていた場所を浅くちゅぽちゅぽと弄られ、アタシの零したいやらしい粘液を塗り付けられると、ゾクゾクする快感が背筋に走る。
そうやってアタシの躰に火をつけると
「でも、今日はあおずけの日なんだよ」
そんな事を言って離れてしまう。
「やぁ……」
むずがるアタシの腰の間にさっきの器具――鞍馬がぴったりかな――を滑り込ませて、跨らせた。
ちょうどお尻の穴にさっきの棒の先端が触れる。
こくり、と唾を飲んで腰を下ろそうとする、けど
「駄目だよ」
ご主人様の声で止める……どの道、鎖につるされているせいでこれ以上腰は下ろせないんだけど。
もどかしげに見上げると、固い視線でアタシを見つめてきた。
「アスカはおぼえがいいけど……でも、快感に溺れるだけじゃ駄目なんだよ。
アスカはもう自分では自分の欲望を律する事が出来なくなっているから、僕がそうしてあげるから……だから、僕に従う事を憶えなくちゃ駄目だよ」
じっと、真剣に見詰められる。
言われたように、アタシは自分に歯止めが無くなってしまっているのに気づいていた……そして、アタシはもうすっかりご主人様を信じるようになっていた。
だから、答えた。
「はい……ご主人様の、望む通りに」
そんなアタシに微笑んでそっとキスしてくれる。
「じゃ……」
ヴゥ……ンン
手元のリモコンが捻られると、アタシのお尻に触れているものが振動し始めた。
「ふぁ、ん……これぇ、いいのぉ……」
振動が伝わり、そこから皮膚がじりじりと甘く蕩けだしていく。
揺すると、まぶされた愛液でシリコンゴムが滑り、舌でそこを舐められているような感覚が湧き起こる。
同時に、疼くアナルが触れているバイブを食い締めようとするみたいにぱくぱくと口を開くのが判った。
けど、触れているだけで入りはしない……だから、それを求めていやらしく腰をゆすり、くねらせた。
こうすると、プルプルとアナルを弾かれるようになる。
「あく……は、いいよぉ……もっと、もっとぉ……」
でも、やっぱり足りない。
昨日されたみたいに意識をぐちゃぐちゃに熔かし壊してしまうような快感に比べると小さすぎる。
懇願の視線を向けると、しばらくご主人様は黙ったままで居たけど、望み通りにスイッチを捻ってくれた。
鎖が緩む。
「あぁ……そうなのぉ、これぇ、はいってくるよぉ……あぁ、んぅ」
ゆっくり、ゆっくり。
ちゅぷちゅぽと球を呑み込んでいくたびにアタシのアナルが快感に震える。
だんだん大きく広げられていくたびに、その拡張感がアタシの精神に後戻りできない感覚を憶え込ませる。
「は……あんっ!」
最後の一個が飲み込まれると、同時に疼くラヴィアが盛り上がった部分に押し広げられた。
快感で震えているアタシに、ご主人様がキスしてくれた。
丹念に舌を絡ませ、たっぷり唾液を交換して飲み下す。
甘い液体で脳がくらくらと揺れる。
「は……ふ」
キスが終ると、宣告された。
「一回だけ、イかせてあげる……今日はそれで終わりだよ」
言葉と同時に、アナルとヴァギナに触れているものがびりびりと激しく振動し始めた。
ヴイィ……ィンン……
「はあぅっ?!」
溶け合い交じり合った振動が、腰骨と子宮の辺りで共鳴する。
ご主人様の、血の通った指や唇や舌、そしてペニスとは違う、無慈悲な容赦の無い快感にアタシは怯えてしまう。
けど、そんな心にお構いなしに機械はアタシの快楽の中枢を責め立て嬲り続ける。
「あ……あっ、や、ああっ……こんな、こんなの、ちがう……やぁ……ちがうのぉ……っ!」
アタシのそんな様子を見て取ったのか。
ご主人様が覆い被さった。
「いやなの?」
「あぁ……だって、こんなの……アタシ、あたしぃ……ごしゅじんさまでないと……あぁ……いやぁ……」
嫌々をしながらも、アタシの躰は意志とは無関係に無機質な振動に快感の頂点へと追い上げられていく。
縋るように視線を向けた……そしたら、キスされた。
キスされて、バイブのあいだに割り込むように指が滑り込んできた。
「んふぅ……んん、んっ!」
優しく柔らかく、熱い舌の感触。
そして、ずっとされ続けてしっとり馴染んだご主人様の指。
それがもたらす快感に、アタシは安心して意識を委ねた。
「んんぅっ!ふぅっ、ンンッ!んんんぅぅぅーーっっ!!」
絶頂の吐息を、ご主人様の口の中に吹き込んで、その腕の中で躰を震わせる。
全てを委ねている事に幸福感を感じた。
やがて、アタシに絶頂の余韻をじっくりと感じさせるみたいに合わせられ、優しく擦られていたご主人様の唇がそっと離れた。
「はぁ……ん、ふぅ……」
ため息にも似た甘い息を一つ吐き、昇りつめた後の剥き身になったような視界の中で、ぼんやりとご主人様の黒い瞳を見詰めかえす。
と、あのマスクが掛けられた。
7センチほどの栓が口の中に割り込んでくる――今なら、ご主人様のペニスを何度もしゃぶって舌がその形を憶えた今なら、その部分がご主人様のものの先端を模っているのが判る。
けど、これは匂いも味も熱さもない……ただ、形だけ。
物足りなさをせめて埋めようと、いつものように舌先を絡ませる。
「んく……んむ、ん……」
そんなアタシの行動を見て、ご主人様は苦笑しながらアタシの頬を撫でた。
指をぬるぬるにしている愛液がアタシの頬に塗り広げられた後で、バイブの振動が弱められる。
「じゃあ、今日はここまで」
「?!んぉ……くぅ?」
背を向けたご主人様に頼りないうめき声を掛けてしまう。
戸口まで歩いていった後、肩越しに答えが返される。
「そのまま、我慢するんだよ」
イった直後の敏感な性感に、微弱とはいえ確かな振動、性的な嬲りの震えを思い知らされているアタシの耳に、扉の鍵が閉まる音がした。