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 「あの……何故こんな?アタシ、何も抵抗なんて……」

 ご主人様がアタシに拘束具を着せる。
 奴隷の証明のようなごつい首輪。
 少しあばらを締め付け、胸を強調するような黒革のコルセット、それと繋がる首から胸までを覆うボディースーツのようなもの、二の腕の半ばまでを覆う革の手袋、そして後ろ手に戒める手枷。
 コルセットに繋げられた股まである革のブーツは、内股の柔らかい性感帯だけは隠さないデザイン。
 こうして身体を覆われて、でもあそこ――セックスをする為の器官だけ剥き出しにされていると、恥ずかしさがよみがえってくる。
 
 足枷を棒――ストレートバーって言うらしい――に繋ぐと、ご主人様はこう言った。

 「今日は、こっちでも感じられるようにしてあげるよ」

 そう言うと、うつぶせに腰を上げているアタシのお尻の中心、アナルをやわやわとくすぐってきた。
 
 「っ!」

 抵抗は……無かった。
 ううん、こうして拘束され、物のように扱われて、アタシの躰を更にいやらしく……お尻の穴でもセックスして快感を感じられるような淫らなモノに造り変えられるという事に、たまらなく興奮していた。
 でもまだくすぐったくて、ちょっと腰を捩ってしまうの。
 
 「……嫌だろうけど、止めるつもりはないからね」
 「嫌じゃ……ありません……」
 
 アタシの呟きに手が止まる。

 「アタシ、ご主人様になら、どんな風にされてもいいの……だから、もっといやらしく、アタシを変えて、ください」
 
 その言葉にご主人様が息を呑む、と

 「ひんっ?!そ、そんなぁっ!」

 チュッ、て、ご主人様がアタシのアナルにキスしたの。
 いつもアタシとキスする時みたいに、すぐに舌が滑り込んでそこをぬろぬろと愛撫しはじめる。

 「ひぁ……あ、そんな、きたな、あぁっ!ひぃん、だめぇぇっ!!」

 キュッてすぼめたところを、くすぐるように舐められ、皺をなぞるみたいに突つかれ、音を立ててチュッ、チュッて吸われる。
 そうされるたびに戦慄が脊髄を駆け昇ってきて、脳の底でアタシの意識を蕩け出させていく。
 アタシ……奴隷なのに。
 ご主人様のセックスのおもちゃなのに。
 なのに、こうして舌でお尻の穴を愛されてる、綺麗にされてる。
 その想いが声も出せないほどの快感をアタシに叩き付けてくる。

 「はぁ……あ……あぁ……こん、なぁ……こん、らめぇ……あひ、ひゃひ……ぃ……」

 ろれつの回らない舌が感動の幾分かなりとを音にかえる。
 そんなアタシに気づいているのか、ご主人様は舌の動きを緩めない、もっと細やかに、アタシの知らなかった性感を暴き塗り込め、アタシの心と躰に憶え込ませていく。
 どれくらいそうされていたんだろう。
 チュルって、引き抜かれた舌を惜しむようにお尻の穴がひくついて、ペッティングの終了をアタシに教えた。
 ぼんやりと霞んだ目を向けると、キスされた。
 アタシのアナルを愛してくれた舌を、唇で吸い舌でしゃぶり少しでも愛し返してさしあげようとするの。

 「んふぅ……んぅ、んっ、ンンッ!……んく」

 ちゅる……

 惜しむように突き出された舌がようやく離れ、唾液が糸を引いた。

 「凄いよ、アスカ……お尻をしただけで、こんなに感じたんだね」

 みればこしのしたにはみずたまりになるほどあいえきがしたたって
 あたしはおもうおしりでこんなにかんじたことなんかなかったって
 しっているのはいたみとくつじょくとそれをごまかすくすりと……

 「アスカ?!」

 ……

 心配そうなご主人様の声。

 「あた……し?」
 「大丈夫?」

 そっと覗き込む真摯な黒い瞳。

 「はい……きっと、感じすぎたせいです……その、だから」

 恥ずかしげに視線をずらしてしまう。

 「……ん、じゃあ続き、してあげるよ」

 アタシ、はしたないの。
 造り変えられてるはずなのに、心の底からそれを望んでしまっている……ご主人様に、ご主人様だけのものにされたいと思ってしまっている。
 それがたまらなくキモチイイの、快感なの。
 いつのまにかご主人様は何かを手に戻ってきていた。

 「そ、れ?」
 「浣腸だよ……お腹の中、ちゃんと綺麗にしないとね」

 排泄を見られる、汚い物を見られるというのは抵抗がある。
 でも、抵抗なんかできないから観念してじっとしている。

 「そう、おとなしくしてないと傷つけちゃうからね……この液は、特別なんだ」

 いいつつシリンダーに薄黄色の(LCLみたいな色ね)液体を満たしていく。

 「とく、べつ?」
 「うん……これね、ほんとは塗るだけでもすごく効果のある、媚薬なんだ」
 「それ、って……」

 つぷ、って先端の嘴が、舌でたっぷり練られたアナルに潜り込んだ。

 「そう、今からアスカのお尻の穴は、性器に造り変えられるんだよ……ヴァギナと同じくらいに感じられる、いやらしい場所にね」

 そして液体が腸内に染み込んでくる。
 じりじりとせり上がってくるその感触に、アタシ、背筋がびくびく震えてる……嬉しさで。

 「あは……は、入って、くるぅ……いっぱい……や、アタシ、あたしぃ……」

 いったんシリンダー内の液体を注入し終えると、浣腸器が抜かれた。
 そのまま親指で栓をされる。

 「ふぁ?」
 「しばらく、我慢だよ」

 早くもぎゅるぎゅると鳴り始め、痛みを訴え出した腸の蠕動を感じつつ、アタシはその言葉に従った。


 
 どれくらいになっただろう。
 アタシ、全身に脂汗をかいて必死に耐えてる。
 革の下でぬるぬると汗が滑る感触。

 「まだ、いけるよね?」

 耳元で優しく囁く声。
 涙を目尻に滲ませながら必死でそれに応える。
 と、ひょいって身体が持ち上げられた。

 「ぁ?!」

 指が深く入り込み、その衝撃から気を取り直せば、アタシはご主人様の胸に抱き上げられていた。
 そのまま部屋の隅、カーテンで仕切られた場所へ連れて行かれる。

 「ご、しゅじん、さまっ?」

 そのまま無言ですとんと便座に下ろされる。
 でも、前から回す形でアタシのアナルは指に塞がれたまま。

 「あの、なにをっ?」

 黙れ、とでも言うようにそっと唇がキスで塞がれる。
 いよいよ切羽詰まってきたお腹の痛みにかぶさり、舌を絡めあう快感が流れ込み混じりあう。
 ご主人様は更に、アタシのヴァギナを残った手で弄び始めてしまった。

 「んおぅぅ……んふ、むぅっ!んんぅっ!くふ、むうぅぅっっ!!」

 苦痛の高まりにあわせるように注がれる快感も激しくなって。
 アタシの心はぐちゃぐちゃに掻き回されて芯の部分からとろとろと壊れていく。
 我慢しきれず緩み、僅かに漏れたもので手が汚れたのに合わせ、指が引き抜かれた。

「んんんぅぅぅ〜〜っ!!んぐっ、ふぐぅぅっ!!ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅーーーーっっっ!!」

 でも、キスも愛撫も停止されない。
 慄く舌をしゃぶり、掌底でお腹を押し込むようにしながらクリトリスを愛撫され、アタシは激しいオーガズムによって自分の脳に、排泄の開放感を性の快楽として認識する狂った快感回路が灼きつけられていくのを感じていた。

 「はぁ……あ、あぁ……はっ、はっ……はぁぁーー……」

 激しい排泄に、解放された口で息を整えていると、

 「気持ちよかったみたいだね」

 嬉しそうに言われてしまった。
 否定も出来ずにうつむいていると、鼻を突く悪臭。

 「あ、あの、早く流して……」
 「確かに、凄い臭いだね」
 「だ、だから、早「でも、これを出したのもアスカだしね」
 「え?」
 「僕は、アスカの綺麗なところも、汚いところも否定する気はないもの……アスカを僕のものにするっていうのは、そういう事だから」
 「っ……!」

 予期せぬアタシへの、アタシという存在全てに対する全肯定。
 激しい排泄のショックの直後のこの不意打ちに、アタシの心は防壁を立てる間もなく飲み込まれてしまっていた。
 ぽろぽろと涙が零れる。
 泣きじゃくるアタシの髪を梳きつつ、ご主人様はアタシを抱え上げてもとの場所へ。
 しばらくそうされて落ち着いてくると、アタシに宣言した。

 「じゃあ、もう一回」

 アタシを受け入れてくれるひとを受け入れる。
 だから、アタシは素直に頷いてお尻を差し出した。

 チュッ

 「ひぁ?」

 浣腸されると思ったら、また初めから、と舌でアナルを愛された。
 汚れているはずの場所を再び舌で清められる。
 その想いと、注入された液体のせいだろうか。

 「ふぁ?や、は、ああっ!アタシぃっ、お尻でイクッ、イっちゃ、くううぅぅぅーーーっっ!!

 ヴァギナが熱いものを求めて収縮する本格的なオーガズム。
 がくがくと体を震わせていると、ご主人様が舌を離した。

 「もう、イけるんだ……感じやすいね、アスカは」
 「あはぁ……ごしゅじん、さまぁ……」

 甘えるアタシにキスが与えられる。
 抵抗感無くご主人様の舌を受け入れて、絡めあう……と、すぐに離れられた。

 「ぁん……やん」

 媚びた声で不満気に。

 「(くす)まだ、浣腸してないよ」

 言われていそいそとお尻を委ねて、冷たいガラスの嘴を受け入れる。

 チュウゥ……

 「あ、はぁ……は、あぁぁ……」

 冷たい媚薬液が腸内に染みとおってくる。
 そうやって、アタシの内臓が性器にと造り変えられていく。
 いったん抜かれ、すぐにもう一回。

 「はぁ?あ、ばい、いれるん、です、か……はあぁぁ……」
 「そうだよ……腸内洗浄は、一回だけじゃ駄目だからね」

 更に奥まで。
 圧迫感と、破滅的な快感。
 それに怯えそうになるアタシを抱きしめ抱き上げるご主人様の腕。
 腕が拘束されてる、だから抱き着けない変わりにすぐ近くのご主人様の首筋に何度も何度もキスを繰り返す。

 「ふっ……ちょっと、くすぐったいよ、アスカぁ……」

 嬉しそうな声。
 アタシも、ご主人様が嬉しいとうれしい。
 気づけば、アタシさっきと同じように便座の上で愛撫されてる。
 意識を腸の苦痛で揉まれながら、ご主人様の与えてくれる唇とヴァギナへの快楽を積極的に貪る。
 革衣装の下の肌はピリピリ張り詰めて、きっと直接撫でられたらそれだけでイってしまうかも。

 「じゃ、いくよ」
 「はっ、はぃ……ひぃ……っ、んっっ!」

 ご主人様の合図で排泄。
 こうやって、快感だけでなく排泄行為までも支配されてる……それが、嬉しいの。
 その喜悦のせいか、おしっこまで一緒にしてしまう。

 「うわ?……そう、我慢できなかったんだ……」

 開かれた足の間で、アタシのあそこからおしっこが吹き出すのをつぶさに観察されてしまう。
 恥ずかしい、恥ずかしくてたまらないのに……たまらなく、キモチイイ。

 「あはぁ……みてる、みられちゃってるのぉ……こんな、ああぁ……」

 身体の底からゾクゾクする冷たくて熱い塊が満ちてくる。
 尿が途切れると、軽くキスされ

 「可愛かったよ、アスカ」

 と囁かれる。
 嬉しさに感極まり身を震わせるアタシを抱えると、また戻る。
 そして、またお尻へのペッティング。
 宣言されたとおり、アタシのお尻は早くもヴァギナのように感じられてしまうようになっていた。
 舌先が突き込まれるのをするりと受け入れ、ぷるぷると穿り返すようなその動きに腰骨を溶け出させ、吸われ、舐め上げられる事で子宮を疼かせてしまう。

 「あひぃ……あ、アタシ、もう、だめぇ……くるっちゃう、死んじゃう……あはぁぁ……」

 ひいひいとよがり泣きながら、さっきよりもゆっくり目の愛撫に絶頂寸前で狂わされる。
 顔が離れ、唇に近づいたので、物欲しげに舌を突き出してしまう……けど、そのおねだりにそっけなく軽いキスで答えてから、ご主人様は浣腸器を挿し込んできた。
 朦朧とする桃色に染まりきった意識で、三本注入されたのだけ感じ取る。
 と、仰向けにされた。

 「ふぁ?」

 ご主人様は、アタシの足の間に潜り込んで持ち上げると……今までの行為で蕩けきったどろどろのヴァギナにペニスを挿入てくれた。

「はあぅっ!はく、ひいぃぃんっっ!!」

 その一突きでアタシは弾けてしまった。
 たまらず緩みそうになるお尻の穴に、何か太いものが挿しいれられて栓される。

 「はく、ぁくぅ……な、なにぃ?これぇ……」

 アタシを抱きしめる左腕と、ご主人様のペニスとお尻に挿しいれられた棒と。
 それだけにアタシの体重が掛かり、深く突き入れられたお尻の棒とペニスの先端とで子宮がいっぱい捏ね回される。

 「あひぅ……やは、またぁ……っ!も、う、とまんないよぉ……ずっと、すごいまんまだよぉ……っっ!!」

 イきっぱなしになって、はしたないよがり声を涎と一緒に垂れ流しているアタシを抱えたまま、ご主人様は便座へと歩き出す。
 その振動で何度もイって、三倍量の浣腸で苦痛に満たされているはずのアタシはそれをキモチイイと感じて。
 時々、意識にご主人様の気持ちよさそうな声が聞こえて、それが嬉しくてまたイって。
 アタシは便座の上で座位でセックスしているのも気づいていなかった。

「ふぁっ、はひぃ……ん、すごいのぉっ!おしりも、おちんちんも、すごすぎるのぉ……っ!しぬぅ、アタシぃっ!しんじゃう、ばらばらになっちゃうぅっっ!!」

 お尻の棒が出し入れされるたびに、恥骨の間でクリトリスが揉まれてくじられるたびに、ペニスの先端とアナルの棒とで交互に、一緒に子宮を突かれ捏ね上げられるたびに。
 アタシの意識はますます高いところへ否応無しに駆け昇らされていく。
 お腹の痛みだけがアタシの意識を現世に止めているようなものだった。

 「っく……アスカ、イくよ……っ!」
「はぁっ?!ふぁ、ひゃ、あは、してぇっ!いっぱいぃぃっっ!!」

 声にあわせてお尻の栓が引き抜かれ、同時にアタシの膣内(なか)深く、子宮頚に密着して射精が始まる。

「はぎっ!ひきいいぃぃっ!!あたしぃっ!でるぅ、でちゃううぅぅっ!!はく、あひいいいぃぃぃーーっっ!!!」

 熱いものがオンナの器官に吹き掛けられる快感と、我慢していたものが噴き出す快感と。
 溶け合ってもっと大きくなった快感の濁流に、アタシの意識はそのままぷつりと途切れてしまった。