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『ふぁ……いい、いひぃっ!!もっと、もっとぉ!ああぁぁーーっっ!!』
オンナの淫声が室内に響いている。
見たくないと目をつぶっても、その卑猥な喘ぎ、媚びきった嬌声、そして絶え間無く響く淫らな水音は否応無くアタシの耳を犯す。
認めまいとしても、アタシのあそこはじっとり濡れている。
だって
『や、はぁ、あ、おちんちんぬいちゃやぁっ!あ、ああっ!そう、そうよおっ!もっといっぱいぐちゃぐちゃってして!めちゃくちゃにかきまわしてよおぉっ!!』
ビデオの中で、のしかかるアイツの腰に靴下を履いたままの足を絡ませてはしたなく涎を振りまき、セックスの快楽に溺れきっているのは、紛れも無く、アタシだから。
『ひぁ、やは、また、またぁっ?!またイくぅっ!くううぅぅぅーーーっ!!』
はしたない声でイった事を訴えるアタシ。
でもわだかまるスカートの下の腰の動きは収まらない。
昇り詰めたのに、もっともっとっていやらしくかくかくと腰をくねらせ続けてる。
こんなに狂ったのは、薬のせい。
薬のせいで、初めてのはずなのに全然痛くなかった。
薬のせいで、理性を失ってよがり狂った。
薬のせいで、今も、こんなにあそこが疼いているの。
『……や、やぁ……こんなの、こんなの違う……アタシ、だめに……なっちゃう……』
いつのまにか微かな作動音とともにテープが何度目になるかも判らない冒頭に戻った。
薬を打たれて、ざわめく性欲に怯えるアタシ。
怯えながらも、性器を弄り回すアイツの手に腰ごと擦り寄るようにしてもっと愛撫されようとしている。
それに丁寧にアイツが応えるたびに、鼻に掛かった甘えた吐息を漏らしている。
「……っ、ん……っ、ぅ……」
じっと見詰めるアタシの前で、モニターの中のアタシは更なる痴態を示す。
『やぁ……そこ、いいからぁ……もっと、おく、クリトリスもぉ、ぐちゃぐちゃに弄ってよぉ……もっとぉ……』
ほどかれて自由になった手でアイツの手を引き寄せ、媚びきった声でもっととねだっている。
もう一方の手は、もどかしげにシャツをはだけてブラをずらし、剥き出しになった乳首をせわしなく弄り回している。
アイツはアタシの懇願に無言で応じ、自然な動作で顔を足の間に埋めた。
「ふぅ……っ!は……はぁ……あっ」
いつのまにかアタシは画面に見入り、同時に自分で昨日の行為をなぞるように自分の身体をまさぐりはじめている。
手枷で戒められた腕で、抱きしめるようにして胸を揉みしだく。
本格的にアイツに弄られるより気持ちよくない、けど、疼いているアタシの胸はそんな行為からも快感を汲み上げる。
きっと、まだ昨日の薬が残ってるの。
たったあれだけでこんなに長く持つなんて、よほど強力なものだったに違いない。
アタシの知る限り、そんな薬物はないけど……きっと、新しい何かなの。
『あひぃん!あ、も、もう、もぅっ!は、あああぁぁぁーーーっっ!!』
気づけば画面の中のアタシはあそこを丁寧にしゃぶられて最初の絶頂に駆け昇っていた。
足をアイツの首に絡め、腰を卑猥にかくかくと揺らしている。
そう、昨日はこうしてクリトリスをしゃぶられ、イかされて、でも離してもらえないまま立て続けにイかされてしまったの。
『あひ、やは、いやぁ……またあっ!や、は、ふあぁぁぁーーっ!』
嫌、その言葉と裏腹に、肩に回した足はがっちりと組まれて、アイツの頭を逃すまいとしている。
うそつき……。
嫌、嫌と甘ったるい声で叫びたてながら、躰全体で与えられる絶頂を貪ってる。
アタシはその自分に嫉妬しつつ、なおも自慰に没頭する。
与えられた唯一の服である男物のシャツ――匂いでアイツのものだと分かる――の裾をかき分け、既に愛液を零しはじめているクレヴァスをなぞり上げる。
「ふぅ……んっ!」
ゾクリと走る戦慄に声を漏らしつつ、割り込ませるように、やがて割り広げるように指を使う。
暗い室内――ビデオの画面が放つちらちらした明かりだけ――なのに、そこの卑猥なピンク色だけは判る気がする。
理由はすぐ分かった。
『あぁ……それぇ、おちんちん、はやくぅ……』
切羽詰まった声でねだるアタシのヴァギナに、アイツのペニスが今にも挿入られようとしている。
遠景からそこのズームに切り替わったせいで、ピンク色の光が溢れ出しているのだ。
ひくつくラヴィアも、震えと共に押し出される発情を伝える白濁した愛液も、膨れ上がり顔をだしているクリトリスも全てが鮮明に映し出されている。
いつ編集したのか、とも思ったけど、それより気になるものにすぐに意識が奪われた。
『あはぁぁ……すごい……ふといのぉ……いっぱい、アタシいっぱいだよぉ……っ!』
焦らさず挿入られるペニスをヴァギナが嬉しそうに飲み込んでいく卑猥な光景。
溢れ押し出される愛液がお尻の谷間へと伝うのまではっきり映っている。
「ん、あ、アタシ……」
同じようにアタシも指を入れる……けど、到底足りない。
だから、目をつぶって少しでもその感覚を思い出しながら慰め続ける。
ヂュプ、グチュ
肉が絡み合い液が爆ぜわれる卑猥な音に、同じ音がアタシのあそこから聞こえて混ざり合う。
そう、実際にセックスされているように錯覚しながらアタシの快感は上昇を始める。
昂ぶりが増し、膝を立てる……開いて固定されている両足に引きずられて、お尻の穴まで空に晒してしまう。
気づけば、まるで正面に居る誰かを迎え入れるようにアタシは腰を突き出し、しゃくりあげるように振っていた。
『いいっ、あ、アタシぃ、も、もうっ!イくっ!あああぁぁーーーっ!!』
その声に目を開けば、アイツの身体の下で最初の、生まれて初めての、男のペニスで迎える本当のオルガスムスに、喉を仰け反らせて悦びに震えるアタシの顔が映っている。
唇の端から涎を垂らし、舌を突き出して震わせている……とても、いやらしい。
でも、このアタシは、この後もなお責め続けられる事を知らない。
だから
『ひぁ、やは、また、またぁっ?!またイくぅっ!くううぅぅぅーーーっ!!』
変らず突き上げられて、更なる高みを教え込まれて怯えと、それと等量の快感の極みを貪っている。
ここでテープに映っている部分は終わりだけど、アタシはこの後どうされたか知っている。
『あひい?!あ、やぁ、もうイったのにぃっ!や、やめえっ!アタシぃ、また、またとんじゃ、あっ!あああぁぁぁーーっっ!!』
イきっぱなしになっているのに、変わらないペースで貫かれてめちゃめちゃにされて、熱くて固くておっきいペニスをキュウキュウ締め付けて、高いところでお手玉にされてしまったの。
「ああっ!いい、いいのぉ……っ、もっとめちゃめちゃにし、き、ひぃんっ!!」
左手でクリトリスを摘まみながら、右手の二本の指でじゅぷじゅぷとヴァギナを犯し続ける。
昨日には足りないけど、でも目の前がちかちか瞬き出す。
昨日は、何度もイかされて意識が飛びそうになった瞬間
『ふあぅ?!や、ひぃっ!き、あつぅっ!ひいいぃぃぃーーーっっ!!』
「あ、は、ああぁぁぁーーっ!!」
熱い精液を子宮に叩き付けられて、それでもっと高くオーガズムの絶頂に追い上げられて気絶してしまったの。
認めたくない……けど、でも、とても気持ちよかったの。
イった後の気怠さに、一人でした事の切なさがかぶさってアタシを苛む。
「……シンジぃ……」
それが、アタシに呼ぶ事を避けさせていた名前を呟かせてしまう。
滲む涙を自覚しつつ、アタシはそのまま眠りの海に沈んでいった。