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 アイツがここに入ってくる。
 革の拘束具で戒められたアタシは、その視線から躰を隠すこともできないまま羞恥と悔しさに身をよじる。
 けれど、ああ、なんてことだろう。
 アタシの躰は、そのイヤらしい視線に撫でられることを悦んでいる。
 アイツの視線が固く尖ったピンク色の乳首をはじく度、早くも汗の浮かびだしたおなかを舐める度に、何より口を開いたまま乾くことのないアソコをえぐる度にアタシの背筋におののきが走る。
 それは不快じゃない……ううん、はっきりとした快感だ。
 それが厭わしくて、アタシは見せまいとしていた涙をこぼしてしまった。

 「……っ」

 アイツはそれを見て一瞬躊躇したような素振りを見せる。
 ふざけないで。
 街でアタシを攫ったあげくこんな密室に連れ込んで、そのままアタシを陵辱した人間のとる態度?
 怒りが視線をあげさせる。
 それを迎えたのは、もう感情の見えなくなった黒い瞳だった。

 「……あ……っ!!」
 
 ぶたれる。
 アタシが余りに反抗的すぎるとこいつはアタシを容赦無く叩く……前回は、何度も叩かれてアタシが泣き出してしまったほど。
 けど……不思議なの。
 そうやって身も世も無くこいつの前で泣きじゃくったら、不思議に気持ちが軽くなったの。
 ごめんなさいって、何度もつっかえながら言うたびに、アタシを縛っていたものがほどけていく感じがした。

 それに代わって、アタシがこいつのものにされていくという実感。
 それはとても嫌な事……なのに……。

 アイツは戸惑うアタシに無頓着な風に近づくと、そのままアタシの胸を掴み上げた。

 「は……っく」

 甘いうずきがじんわり広がる。
 アイツがアタシを犯したのは6日前。
 アイツが最初にこの部屋に入って来てからの回数、時計なんてあるはずも無いから(時間感覚の剥奪、洗脳の基本だ)何日経ったか何てアタシには判らない。
 もしかしたら、ずっと長い時間が経ってしまったのかも知れない。
 だから、アタシの躰はコイツの手にこんなにも簡単に溶けだしてしまうのかも知れない。
 悔しさに身をよじった。
 そのはずだったのに、そっと……優しくといってさえ良い動きで胸を弄ばれ、益々固く勃起しだした乳首をねじられる度にアタシの動きは別のもの――まるで、愛撫を受けて甘えているかのようないやらしいものに変わってしまう。

 「はぁ……あ、はぅんっ!……い、ぃっ……くっ!」

 固定された鎖をがちゃ付かせて悶える。
 いつのまにかアタシは躰を預けるように胸を突きだし、コイツが与えてくる快感に素直におぼれだしていた。
 苦痛と、快楽と。
 二つの鎖でアタシはこいつに縛り付けられていく。
 自覚したせいか、今のアタシの感じ方はいつに無く激しく、深い。
 きっといつもと同じように、このまま丹念に下ごしらえされてから犯されたなら、アタシはそのままイってしまうだろう。
 クスリを使われもしないのにこいつのモノを膣内(なか)に受け入れてのオーガズムを味わってしまうだろう。
 言い訳のしようも無く、こいつのペニスだけでアクメに導かれてしまうのだ。
 
 もうアタシにはソレが嫌なことなのか、心待ちにしていることなのかの判別が付かなかった。