調教記録
by Corwin
「アスカが見つかったって本当ですか?!」
「……ええ」
息せき切って駆け込んできた少年を迎えたのは、沈みきった少年の保護者の声だった。
彼女の顔は痛ましさと、言い出しかねる事実を前に眉間にしわが寄せられている。
「それで、アスカはどうなったんですか!」
少女の安否を気遣うその様子から見て、明らかに彼はその少女の――アスカのことを酷く気に掛けているのが伺えた。
彼の、シンジの前からアスカが姿を消したのはほぼ3週間前。
彼にとっての少女は、騒がしい同居人、我が儘な姉、そして守りたいと思う妹というものであった。
……いや、もはやそれはあたらないだろう、この動揺を、見つかったという事に対しての喜びを見れば。
そんな大切な存在の失踪が彼にもたらした影響は小さいものではなかった。
少女の失踪に気づいた彼が、連日のように第三新東京市全域を探し回っていたのはミサトも知っている。
彼女が帰宅するのにあわせるように、疲れきった身体を引きずり帰宅し、それでもなお彼女に食事を作ろうとさえしていたのだから。
皮肉にもアスカの失踪に対しては役に立たなかった諜報部は、ことさら彼の行動を逐一報告してきてもいた。
その、徒労ともいえる捜索の総てを。
走り続けていたのだろう、荒く乱れた息を整えようとするシンジの呼吸が室内の沈黙を乱す。
やがて治まり……なお一拍の沈黙。
彼の視線を受ける女性は眉を寄せたままで俯いたままだ……と、顔を上げて決意したようにシンジを見つめる。
「……こっちよ」
誘われて彼が見たのは変わり果てたアスカの姿。
いや、外見そのものはさ程の変化は見られない、むしろ彼が知る少女の姿よりも肉感を増したきらいすら有る……ただ、その蒼い瞳が濁ったまま空を仰いでいるのを覗いては。
ベッドの傍らには白衣を纏った女性が、入ってきた女性、ミサトとよく似た表情を浮かべている。
「来たのね、シンジ君」
「リツコさん……一体、アスカはどうしちゃったんですか?こんな、こんな……」
言葉を失い口ごもるシンジにリツコが事実を伝える……痛ましい、だがそれだけにシンジが選ばなくてはならない問題を。
「アスカは……陵辱されたの」
「え?」
「失踪している間に、どこかの男にさらわれてしまったらしくて、諜報部が発見したときには……」
「……どうなったって云うんですか」
「この状態。
正確には投薬して意識を凍結するまでは違ったけどね」
「どういう、こと、ですか」
「アスカは、処置するまでは、ただ性交……いいえ、犯されることしか望まないにん「リツコ!」
そこまでで、どんなことが起こったかを理解したシンジの顔が青ざめるのを見てミサトを言葉を遮る。
しばしの後に言葉が形作られる。
「……いえ、きちんと教えて下さい……これからどうするにせよ、きちんと知って置かなきゃならないことのはずですから」
青ざめつつも、受け止めようとする毅然とした態度に二人の女性は頷くと、話を続けていった。