Requiem fur Schicksalskinder 第3話
著者.しあえが
「なんで私の2号機が封印されないといけないのよ!」 「知っているでしょうバチカン条約。それに貴方のパスと2号機はまだユーロの所属になっているわ。私たちじゃどうしようもないのよ」 4号機の消滅と、それに伴い3号機が半ば押し付けられるように日本に配備されることが決まっての2号機凍結処理。案の定、騒ぎ立てるアスカに辟易しつつ、ミサトは厳しくこれは決定事項だと告げた。口に出してから少しきつく言い過ぎたかもしれないと口に出してからミサトは思ったが、周囲にいる職員たちへの手前、アスカに対する譲歩やいたわりを見せるわけにはいかない。 「私以外の誰も乗れないのに……」 「エヴァは実戦兵器よ。すべてにバックアップを用意してあるわ。搭乗者も含めて」 リツコの事務的な物言いに「そんなこと!」と言いかけてアスカは口をつぐんだ。 (コネメガネは……まさかこのために?) 不安と焦燥、理不尽に対する怒りが沸き起こるが、それは当のアスカにとって思った以上に大きいものではなかった。もうアスカにとって2号機もエヴァパイロットであることも、一番の拘りではなくなっていたのかもしれない。当人が思ったほど怒りが沸いてこないことに驚きながら、ちらりと2号機があった場所を一瞥する。 以前なら、少なくとも3か月前までの自分なら納得できないと抗命したかもしれない。 「はーいはい。わかったわよ。セカンドチルドレンの式波アスカ・ラングレーはしばらく待機しますぅ」 「アスカ? え、嘘」 「あら、聞き分けが良いのね。意外だったわ」 意外な返答にリツコですら驚いた顔をする。 アスカ自身も驚いている。不思議と透明な気分のまま、2号機凍結の話を受け入れていた。 (私の居場所、他にもあった。だから、平気なんだ) ユーロ空軍のエースだとか大学卒業とかじゃ満たされなかった、心の空隙がシンジに、恥ずかしいけど愛で埋められた。 シンジと付き合うようになってから、嫌でも自分たちがまだ子供だって事を実感するようになっている。大人だったら、なにかできることはあったかもしれない。でも、まだ子供の自分では何をどうしたって無理だ。そのことは痛いほどわかっている。 しかし、やられっぱなしでいるのも癪に障るとアスカは思う。 だから聞こえよがしに呟いた。 「じゃあミサト。私、しばらくシンジの部屋に泊まるから。残ったメインパイロットのサポートに徹するわ」 「んんん?」 ミサトたちへの意趣返し、という意味合いも込めて今夜は久しぶりに「する」つもり満々でいたアスカだったが、彼女の期待と淡い興奮は、無表情でリビングのカーペットにぺたんと座りこむレイの姿を認めた瞬間、儚く散ることになるのだった。 「ぬわぁんであんたがここにいるのよ!?」 「赤木博士と葛城三佐が、碇君とアスカはいろいろあって大変だから様子を見にいって、と言ったわ」 (……それとなく邪魔させるつもりね。ミサトが考えそうなことだわ) アスカ以外の女性が来たことに照れているのか、「そうなんだ」と頬をかいてシンジが赤面している。お茶用意するね、とか言いつつ上げ膳据え膳で持て成そうとしているシンジに、イライラしてフラストレーションがたまって仕方がない。体を重ねるようになってシンジの考えていることが、よりハッキリとわかるようになったこともあるが、今は確実にレイの方を気にかけているのが分かって色々とむかつく。 「とどのつまり、レイは私たちのお邪魔虫に来たってわけね」 「……? お邪魔虫? よく、わからない」 小首をかしげた仕草がちょっと可愛くて、そういう他意はないんだろうなぁと当たりはついたが、その無垢な戸惑い顔を見てシンジがへらへらしてるのが本当にむかつく。もう文句を言わずにはいられない。 ちなみにお互いを「エコヒイキ」「2号機パイロットの人」という余所余所しい呼び方は、既に先だってエレベーターでひと悶着を起こした時に改善されてたりする。まあ、関係改善とは一概に言えないのだが。 「私たちがこれからすることを邪魔にし来たって、つまりはそういう事でしょーが」 「綾波、ごめん。ちょっとアスカ、言い過ぎ……」 「あんたは黙ってなさい」 「はい」 素直に聞くのは当然だけど、でもちょっとは言い返す気概くらい持ちなさいよ。と複雑な事をアスカは思う。普段は小動物っぽくて好きだけど、こういう時の気弱さはちょっと腹が立つ。なにより、すっかりその気だったくせにレイに遠慮して、恋人より優先して歓待しようとしているのがムカついてならない。人としては、そっちが正しい行動なのかもしれないけれど。 (私と一緒に過ごすってのに、私以外の女によそ見するのはどういう了見なのよ?) でも、邪魔なのは間違いないが、本気で分かっていないレイは大人に言われるがままにシンジを訪ねてきたのだろう。純粋な心配と好奇心がありありとうかがえる。むしろ責められるべきはレイを焚き付けたミサトたちにこそある。無垢なレイに罪はない。 (シンジは後で絶対〆るとして……レイをどうしたものかしら) アスカが他人と会話するのが楽しいと思うようになったのは実のところつい最近ではある。中でもレイとの会話は、独特のテンポや謎めいた言い回しとかイラつくことは多いけれど、何を言わんとするのか理解できるようになると、それはそれで結構楽しいと思うようになっていた。自分の気持ちに自覚がないレイは、アスカにとっては無意識にシンジの目の前をうろついて気を引く胡乱な女ではあるが……まだ恋敵じゃない。 (あ、なんとなくわかったわ。私がモヤモヤしてた理由が) そう、フェアじゃないのだ。 自分とシンジが関係を深めたのは、ほんの些細な切っ掛けだ。あの夜、シンジが普段よりスケベ心と勇気を出して振り返ったから。ただそれだけのこと。それだけだ。でも……天と地ほども才能に違いがある中学生の男女がくっついたくらいの些細な事でしかないのに、なぜか世界の成り立ちまで変わった気がする。 それはともかく。 レイには機会が与えられなかったのではないか? という思いがしてならない。シンジと関係を深めるようなことが対等にレイにもなければ、そのうえで自分が勝利者になるのでなければ、何と言うか面白くないのだ。例えばゲンドウを交えての食事会。だがあれはどちらかといえばシンジとゲンドウ、不器用な親子の関係改善イベントだろう。 レイにも機会がなければ不公平だ。でも、今更自分が身を引くとかそんなのはあり得ない。今の自分にシンジのいない生活、未来なんて想像もできない。 じゃあどうする? 「やっほー♪ 姫ー! 遊びに来てやったぞー」 とかなんとか思ってると、でっかい胸をゆっさゆっさ揺らしながらなんか来やがった。「Oh……!」と、思わず天を仰いで呻き声を漏らすアスカ。なんかもう、なんて言うかもう。 色々考え、悩み、迷っているのが面倒になった。 「ああもう! 面倒くさい! なるようになりやがれってーのよコンチクショー!」 「あ、アスカ? 急に叫んでどうしたのさ。えーと、このヒト誰? アスカの知り合い? って、確か前に……」 「ワンコくーん! 会いたかったよー」 「うわぁあぁぁぁ!? でかっ! じゃなくて、ちょっと、抱き付かないでよぉ! アスカ違うよ! 浮気とかそういうのじゃなくて!」 「どうしてそうなるんだよ?」 情けない声を漏らしながらもなすがままのシンジ。逃げようとするようにもじもじとするが、そんな動きではどうしようもない。 パンイチで横たわるシンジの上に、これまた下着のみになったアスカが馬乗りになっている。明らかに普通じゃない状態で顔どころか全身が真っ赤で汗もだらだら出て、状況が状況じゃなかったら風邪か何かを疑いそうだ。普段と違うのは、あり得ない事態に戸惑いつつも興味津々という眼差しで二人を見つめるレイとマリの存在だろうか。シンジがさっきまでの軽口も忘れ、食い入るように見つめるマリに引きつつアスカに子犬みたいな目を向ける。 「やっぱりやめようよアスカ。は、恥ずかしいよ」 「うっさい! だったらもっと前の段階で、死に物狂いの抵抗しなさいよ。マッパになった時点であんたが何を言っても、言い訳にしかならないのよ」 やけくそというか雰囲気に流されたというか。 大きな声を出すのは、そうしないと羞恥で動けなくなってしまうから。 (心臓が止まりそうなくらい恥ずかしい……! うう、だいたいなんでシンジも途中で止めないのよぉ!) アスカの顔も、トマトのように真っ赤で明らかに直前の自分の言動を後悔しているのがありありとわかる。 チラリと横眼で見てみれば、意味が分からなくともなんとなく雰囲気を察したのか頬を赤らめたレイが、アスカとシンジの顔を交互に見つめてくる。普段とは打って変わって無言になったマリが、瞬きを忘れて食い入るように剥ける視線の方が受け入れられる。無垢すぎる眼差しは朝日よりも眩しい。 アスカの「他の人間が立ち入る隙間なんかない!」という発言の真意を確認していたはずなのに、どうしてこうなったのだろう? 裸になってお互いの肌を擦り付けるように密着させる行為にどういう意味が? だが、わからないはずなのに二人を見ているとどうしようもなく興奮するのが分かる。 「姫、とっくに私より先に行ってたんだねぇ。は、ハハハ」 「不思議……。以前、碇君に裸で押し倒された時と似てるのに。二人と見てると、すごく、ポカポカする」 「ぬわんですってぇ!? レイを裸で押し倒したって、あんたどういうことよ!?」 マリは相変わらずうるさいし、レイの発言については後できっちり確認するとして。 だが、もう、外野は気にはならない。 集中していく。研ぎ澄まされていく。使徒と戦う時に匹敵する精神集中。ただ、シンジと愛し合うためだけに、アスカの全神経が振り向けられる。 「あれは事故というか、アスカと知り合う前の事というか……」 「うるさい! 言い訳するな! あんたは約束したじゃない! 抱きしめて、キスしてくれた! あんたの全部を私にくれたんだから! 私だけの物なんだから! だから私もシンジの物なんだから!」 シンジの言い訳を……言い訳になってない気もするが。 一切耳を傾けようとせず、この期に及んで往生際の悪いシンジの顔を両手で捉えて、噛みつくつくようなキスをする。 目を白黒させつつも、条件反射的な動きで唇と舌を受け入れ、むしろ浸食するようにシンジは舌を絡めた。 「んんんっ! んんっ、はっ、んちゅ、ちゅ……ちゅ、ちゅっ。ぷは……ダメぇ。途中でやめたら、ダメなんだから。シンジのキス、私、好き……。キスだけじゃなく、シンジは、シンジのしてくれることは全部好き……。だから、ね。ちゅ、ちゅっ。くちゅ、ん、ん、んふ。はっ……ちゅ、ちゅく、ちゅ」 たちまちアスカはとろんとした目つきでシンジの舌を受け入れ、より積極的に求め始めた。シンジもまたアスカの期待に応えるよう、さらに積極さを増したキスでアスカを貪る。クチュクチュと淫らな音を立てて、二人の舌が絡み合う。 視界の端にレイとマリの姿は映っていたが、それも気にならなくなったアスカは、目の前のシンジだけを見つめ、シンジだけを求めるのだった。シンジはアスカと違って、レイとマリの存在を完全に忘れることはできなかったが、彼女の期待に応えるようにアスカだけを見つめた。 (そう、そうよ。お願いシンジ。私だけを見て。私だけを感じて……) 「んんっ、シンジぃ」 すでにぐっしょりと下着が濡れているのが分かる。シンジの腕が伸び、ブラジャーをむしり取るように胸を揉まれ、堪らずアスカはしなやかに体をくねらせる。もはや用済みとなったショーツを脱ぎ捨てるのももどかしい。 シンジが力強く、強引に引き寄せてベッドに押し倒す。覆いかぶさるようにシンジがのしかかってくると、アスカは両手両足で持ってシンジにしがみついた。 「嘘、うわ、あんなのが本当に入るの? いやぁ、聞くと見るのとでは大違いだにゃあ。いやいやいや、無理、無理無理。無理でしょ。え、嘘、入る……の? ええ? えええええっ?」 「碇君……アスカ……。二人を見てると、息苦しくて、凄く、ポカポカ……ううん、ヒリヒリする。胸がモヤモヤする。これは……なに?」 レイが目を見開き、マリが絶句する中、凶悪な一物が潤んだ秘裂を押し割り、ズブズブと飲み込まれていくのをアスカは歓喜の叫びと共に受け入れるのだった。 溺れそうなくらい一杯一杯キスされて。全身を愛撫されて。 そのままシンジと愛し合い、汗で全身を濡らすくらい何回も絶頂して、2回も最奥に射精される。 数度の絶頂にすっかり満足し、シンジと抱き合ってそのまま暗く暖かい闇の底に沈んでいきそうになるアスカだったが、寸前で奥歯を噛みしめて意識を覚醒。 「シンジ、コネメガネを捕まえて!」 「え、ええっ、あ、うん!」 「うにゃぁぁ!? な、何するのよ姫ぇ!? あ、こらワンコ君もどこ触って!?」 瞬きを忘れて見入っていたマリに二人で掴みかかると、手早く押し倒して拘束し、衣服をはぎ取った。 体に力が入らなかったが、それ以上に腰砕けになっていたマリはあっさり二人に取り押さえられ、なんだったらレイもそれに協力し、そして……。 「いやああぁぁぁ! ちょっと、姫、謝るから許してよ! もうからかったりしないから!」 悲鳴を上げて身を捩るマリ。 全裸に剥かれて、そのアスカが思わず言葉をなくすほど豊満な胸が惜しげもなくさらされ、シンジの目の前で大きく揺れる。割と裸族気味な彼女だが、それでも異性のシンジの前にこうして裸体を晒すのは恥ずかしいを通り越して、筆舌に尽くしがたい。 「うわ……大きい。じゃなくて」 「シンジ、アンタ今なんつった? まあ、今は良いわ」 アスカ同様に白い肌がピンク色に染まり、彼女がどうしようもないくらいに興奮しているのがわかる。 口では嫌がるそぶりのマリをせせら笑いながら、アスカが問い詰めるように耳元で囁いた。 「な〜に言ってんのよ。普段、あれだけ人の事を上から目線でアレコレ言ってたくせに! だいたい察しがついてるわよ。あんた、本当は男の裸だって見たことがない耳年増なだけでしょ」 「う……それは、そうだけど。もし、姫が不愉快な思いを感じてたなら謝る。でも、これはやりすぎ! ねぇ、ワンコ君、お願い! 姫を止めてよ!」 「……えーと、マリさんが言うのももっともだと、僕思うんだけど」 「シャラップ! シンジは私の言う事を聞く! 特別に、これは浮気じゃないって認めてあげるわ。これは、お・し・お・き、よ! 私のシンジに変なこと言ってからかった泥棒猫に対するお仕置き。第一、シンジ、あんた口ではそう言ってるけど、さっきから手がイヤらしいんだけど」 懸命に抗う……否、抗おうとするマリだが背後からアスカに抱きすくめられ、押さえつけられてはどうにもできない。体術では決して引けを取らないつもりだが、先に二人の交合を見せつけられ、すっかり熱を持ったマリの体は自由が効かなくなっていた。さらに巧に肌を撫でまわすアスカの愛撫に加え、戸惑いつつもシンジがその巨乳を揉みしだいてくるため、ますますマリは体に力が入らなくなってしまう。 (き、気持ちいい! あううう、ワンコくん……ああ、シンジ、くんの、手……くすぐったい) 下から見上げてくるシンジの庇護欲を掻き立てる眼差しがさらにマリを腰砕けにしてしまう。これじゃ浮気になってしまう。シンジの為にも、アスカの為にもこのどうしようもなく狂った状況から逃げなきゃ、離れなきゃと思うけれど、アスカの二割……いや、三割増しに豊満な胸を思うさま嬲られて、抵抗なんてできる筈がなかった。 「くっ……はぁ、はぁ、はぁ。まだ、間に合うから。シンジくん、ダメだよぉ。あああ、やぁぁぁ!」 「ふっ、すっかり出来上がってるみたいね」 たっぷり5分以上かけて丹念に胸を揉みほぐされ、小さな痙攣を繰り返していたマリは脱力して肩で息をしている。 色っぽく普段以上に女を感じさせるピンク色に染まった裸体は、悔しいが自分よりも数段セクシーだ。大人の色気という奴だろうか、ある意味ミサトに匹敵する。 (でも、そんなあんたがこんな弱弱しくなって、シンジにアンアン泣かされるかと思うと……) 別に自分が格別サドっ気があるとは思わないが、マリのこんな姿を見てると何というかとにかく苛めてやりたくなる。 ペロリと舌を舐めながらほくそ笑み、ちらりとシンジに目を向けると、それで察したのか不承不承という感じだがうなずき返してきた。 もちろん、シンジが他の女を抱くのは言語道断なわけだが、一方であの気が狂いそうな快感を思い出すとそれはそれでサディスティックな感情が溢れてくる。あの苦痛寸前の強烈な感覚で焼き尽くされそうになる、小生意気なマリの姿を見てみたい。どれだけみっともなく泣いて、喘いでくれるだろう? 「ほら、シンジ……私が押さえてるから、その間に……マリを、抱いてやって」 初めて会った時から謎めいていて、なんとなくミサトよりも大人びた雰囲気を持った女性だと思っていた。が、こうしてシンジとアスカに組み敷かれたマリは、むしろ年齢よりも幼く感じられた。まるで10歳にも満たない幼女みたいな……。ゴクリと生唾と共に『背徳』という酒をシンジは飲み込む。 「姫、正気に戻ってよ! アスカの事もワンコ君のことも、好きだけど! でもこんな形で抱かれるのはやだってばぁ! お願いだから聞いてよ! アスカ! ワンコ……シンジ君ってばぁ! せめて二人だけの時にしてぇ!」 アスカだけでなく、シンジが完全にやる気になったのが分かったのだろう、本気の恐怖という仮面を張り付けた表情でマリが絶叫した。 「ふ〜ん、そんなに嫌だったらさ。私邪魔しないわよ? いつものあんただったら、シンジ一人くらい簡単にどうにかできるんじゃないの?」 「そ、それは……」 「本当はアンタも興味があるんでしょ。セックスって意味じゃないわよ。コネメガネ、あんたもレイと同じでシンジの事、気になってるでしょ。ポカポカしたいんでしょ。誤魔化したって無駄だから。女の勘ってやつ? なんでかね、わかるのよ」 「うう、ワンコ……シンジ、君のこと、私は……。でも、なんでなの姫? 抱かれちゃったら、私、シンジ君の事本気になっちゃうよ。そうしたら、私、なりふり構わなくなっちゃう。なのにどうしてこんな、自分が損する様な事するかなぁ」 「さあ? じぶんでもわかんないわよ。付き合うようになってからわかったけど、シンジは誰でも構わず、好きって言われたらフラフラするような奴なのよ。誰であっても人に嫌われるのが苦手で、私と付き合っててもアンタに言い寄られたらコロっといっちゃう八方美人なのよ。 たぶん、あんただけじゃなく、レイに迫られてもそうなると思う」 と言うかなってる。ジロリと半目になってシンジを睨むアスカ。 「アスカは僕の事なんだと思ってるのさ」 ある意味、的確過ぎる恋人の評価にシンジは顔を曇らせるが、肌身を重ねた関係だからこそアスカにはよーくわかっている。 「そうね、きっと私馬鹿なことしてるんだと思うわ。ライバル増やすようなことしてるんだもん。でもさ、冗談や誤魔化しは許すけど、シンジに対する恋心に嘘をつくのは許さない」 肩越しに振り返り、シンジに無言の合図をするアスカ。まだ戸惑いつつも、こうなったら逆らっても無駄だって事が嫌になるほどわかっているシンジは不承不承、でも内心はアスカとは違った肌触りと弾力の肉体に興奮を隠せないまま、押し付ける圧力を強めた。 押し当てられた肉の感触にマリは目を見開いて息をのみ―――。 「あっ、ああああっ! ひぃっ!? ちょっと本当に、挿入れて……無理、入んないって、ちょっ!? きついきついきつい! って、うそ、嘘嘘!? いまヌルってなった、ヌルって……! う……そ、あっ、あああ―――――っ!」 内臓を押しのけながら潜り込む、トンネルを進む電車のイメージが脳裏に浮かぶ。 まだ間に合う。止めないと。 アスカがシンジと別れて未練もないという状況なら、こうなるのも吝かではないけれど! 懸命に腰を引き、逃れようとするマリだったが、どこまで本気だったのだろう? 「ワンコ君、ワンコくぅん! ダメェ! ダメ、にゃあああああっ! だって、好きに、好きになっちゃうから! ああ、あああああっ! あっ、あっ、あっ、にゃ、ああっ、ああああっ! にゃぁぁぁ―――っ!!!」 刹那、蕩けるような甘さでコーティングされた嬌声が、シンジのプライベートルームに響くのだった。 「はぁん、あん、ああっ! だ、め。もう、ダメぇ」 「うう、マリ……さん」 対面座位で犯されながらシンジにしがみつき、手足の先までブルブルと勢い良く震わせて何度目になるかもわからない絶頂にマリは全身を痙攣させる。汗と愛液が飛沫になって飛び散る。想像したよりもたくましいシンジからほのかに漂う汗とそれに混じった雄の匂い。陶然とした表情を浮かべたマリの緩く開いた口許から、甘い吐息がわずかな涎と共に漏れこぼれた。 (こんなに気持ちいいなんて……。ああ、ワンコ君なんてもう呼べない。シンジ君の事、本気で……好きになっちゃった) 胸の大きい女は感度が悪い、なんていうけれど事、マリに関してはそれは間違いだったようだ。 アスカに比べたら数割増しで大きい胸を執拗に愛撫され、時には口と舌で舐めしゃぶられて乳首を可愛がられると、途端に甘い上ずった声を漏らして自分からシンジに抱き付き、しがみついてしまう。 今もまた、挿入されて下から突き上げられながら乳首を甘噛みされて、甘酸っぱい喘ぎ声と共に絶頂を迎えて全身をビクビクと小刻みにふるわせる。痙攣と共に締め付けられるシンジのペニスがまた一回り大きく膨らみ、ドクン、ドクンと熱い性の迸りをマリの体内にまき散らすのだった。 グッタリと脱力してシンジにしな垂れかかるマリの胸に、シンジに対する愛おしさがいっぱいに広がり、今自分は幸せなんだという事を艶めかしく体をくねらせながら思う。半ば意識がなくなってもなお接触を、人の肌と肌のつながりを求めるのか、懸命にしがみついてマーキングでもするみたいにしきりに体を擦りつける。 「こら! あんたもうおしまい! シンジとさせたのだって、特例中の特例なんだから、もう離れなさいよ! ええ〜い、往生際音悪い!」 「や、いやぁー! もうちょっと、もうちょっと抱きしめさせてよぉ! やぁぁ!シンジ君と離れたくない! アスカの意地悪! 嫌い!」 「気持ち悪い声出すなっ! シンジもいい加減離れなさいよ! いつまでコネメガネの胸掴んでんのよ!?」 どうにかこうにかマリを引きはがすと、アスカはフンっと鼻を鳴らしてシンジを睨む。マリを引きはがすのに手間取ったのは、シンジもそこはかとなく非協力的だったからだ。 「ったく、マザコンで巨乳好きなのはわかってたけど、だからっていつまでマリの駄肉を触ってんじゃないっつーの」 「そ、そんな風に言わなくてもいいだろ。だいたい、アスカがしろっていうから僕は……」 「なら私が止めろと言ったら即やめなさいよ」 まだマリはグズグズ言っているが、すっかり腰砕けになって指一本動かすのも一苦労という有様なので、このあと乱入して邪魔するような元気はなさそうだ。 (マリはまあ当分大丈夫ね。……シーツの染みって、やっぱりコネメガネも処女だったんじゃない) 言葉をなくして座り込むシンジに視線を向けると、だいぶ薄くなっているが、赤茶けた染みがシーツに広がっているのがわかった。遊んでるとか男遍歴がすごいとか悪い噂が結構あったが、この手の露骨すぎる噂ってのは信用ならないものだなぁ、と改めてアスカは思う。まあ、マリについてはもう良い。 肩をすくめると、アスカは真っ赤な顔をして瞬きを忘れたように見入っていた蒼銀の髪の美少女を見つめた。 (わかってるわよね。エコヒイキ……ううん、レイ) アスカの射貫くような視線を感じ、赤い瞳が戸惑い揺らめいた。 「二号機パイロットの人……いいえ、アスカ。これは、どういう、ことなの?」 何をしているのか、なぜアスカとマリとがあれだけの痴態を見せたのか、それすらもよくわかっていない。だが、途轍もない事が行われたという事だけはわかった。興奮しすぎて息がつまるのか、レイは途切れ途切れに言葉を紡ぐ。シンジに見つめられると、シンジが喜ぶと心と体が温かくなって嬉しい。だけど、シンジに触れられていると全身がカッカと熱くなって胸が痛いほど激しく高鳴って息が苦しい。 (うれしくて、くるしい。これは、なに? どうして、私は、碇君と……) さっきまでアスカ達は何をしていた? とても興味深いし、いろいろ知りたいと思う。 なぜ、アスカはこんなことをさせるんだろう? 先ほどまでのアスカ達と同じく、一糸まとわぬ生まれたままの姿になったレイは、彼女以上に戸惑いの表情を浮かべたシンジに抱きしめられている。抱きしめられながら、疑念の大渦に翻弄されていた。 「どう……して?」 「アスカ……やっぱりおかしいよ。なんで、こんな。僕、そんなに信用ないの?」 シンジとこうしているのはとても嬉しくてポカポカする。だけど、なぜアスカは唇を噛みしめるくらい不本意なのに、そうするのを認めているのだろう? レイの戸惑いと疑念がわかったのだろうか。 「……良い機会だったから。必要だからよ。ねぇシンジ。あなた、聞いてるでしょ。私が荒れてた時、夜の街中で何をしてたのか」 「それは……」 青ざめた表情で答えるシンジにアスカは項垂れる。 (やっぱり知ってたんだ) そう思うだけで、ナイフで刺されたようにアスカの胸は痛んだ。そう、だからこそ、ちゃんとやるべきことをやらないとフェアじゃない。フェアじゃないのは落ち着かない。与えられたものをただ受け取るだけ、そんなのは間違っている。少なくとも、アスカという少女はそれを是としない。 アスカは今まで、戦って戦って、数千にも及ぶ戦いにすべて勝ち抜いてきた。 式波アスカ・ラングレーという稀有な少女にとって、何かを得るというのは戦って勝利した結果でしかなかった。目を閉じると、思い出したくもない光景が瞼の裏に移る。自分と同じ顔をしたたくさんの少女たちと戦い、倒し、ただすたすらに己を苛め抜いて鍛えてきた日々。灰色の壁と固いベッド、勉強のための道具しかない机と本棚。心をわずかでも慰めたのは小さな人形だけ。その人形すら、戦いに勝ち、報酬として得たものだ。 日本に来て、それまでとはあまりにも異なるのんきな日常を過ごし……。 シンジに抱かれ、彼の好意を自覚すると同時に、過去の事を夢に見ることはなくなった。 自分は幸せだ、幸せになれる。そう思った。 しかし、ほどなく彼女は前以上に鮮明に過去の事を思い出すようになっていた。夜になって目を閉じるたびに、姉妹たちの断末魔が聞こえる。その都度、不安は物理的な重さを感じるほど強く内臓をかき回すような焦燥感で一杯になった。 (シンジは私じゃなくても好きになったんじゃないの?) 底抜けにお人よしのシンジなら、同じ顔をした姉妹にも好意を向け、そして、優しくしてくれるんじゃないか? 自分もそう。優しくして、名前を呼んで、頭を撫でてくれるなら……シンジじゃなくても良いんじゃないのか? それを確かめたくて、夜の盛り場で騒ぎを起こした。年上の男に身を任せようとしてみた。 実際、シンジじゃなくても胸が、なにかで色々と満たされるのを感じた。ただ、シンジの時とは何かが違って、ちょっと足りないとも思った。だから最後までは許さず、途中で逃げ出して……シンジに震える体を抱きしめてもらうため、彼の所に舞い戻っていた。 ギリギリで踏みとどまってはいたが、体を許す寸前にまで行ってしまったのは事実だ。年上の男性にされるがままに濃厚なキスをして、体をまさぐられた感触は覚えている。相手によるが、何人かのねちっこい責めと愛撫はシンジのよりも気持ちが良かった気がする。あのまま回数を重ねていけばいずれは抵抗感も薄れ、肉欲に塗れ、自堕落に堕ちるところまで落ちてしまったかもしれない。そうなる寸前にシンジが衝撃の告白をしたので、踏みとどまることはできた。 でも、そうならなかったら……? それからはミサトをからかう余裕もできたし、また悪夢も見なくなった。2号機が封印されても「ああ、そうか」としか思えないくらいだった。ただ、ほんのわずかな引っ掛かりがあった。小さな小さなトゲのような、ふと忘れてしまいそうなくらい小さなトゲ。気にする必要もないくらい小さな痛み。 理由は……今はわかっている。マリとレイに出会い、二人がシンジを見る視線にあるモノを感じとった瞬間に。 「私はシンジを裏切ってたのよ。シンジも他の女を抱かないとフェアじゃないじゃないわ」 「なんでそんなこと言うのさ。僕はアスカの恋人じゃなかった? 恋人ってのは、普通、お互いだけを」 言いあうシンジとアスカに困惑した視線を交互に向けて戸惑いつつも、彼の肌の温もりを感じてレイはうっとりとした表情を浮かべる。 (やっぱり、あんたシンジの事が好きなんじゃない) なら、対等にならないといけない。 レイとマリ達と対等の条件で、競い合って、そして勝つ。シンジだって比較対象としてアスカしか知らないんではフェアじゃない。レイとマリを抱いて、時たまデートしたりお食事会とかして、エヴァパイロットの同僚として戦って、お互いを今よりもっとよく知りあってもらった上で、そのうえでシンジの全てをもぎ取るのでなければ。 レイとマリについてもお互いをよく知ってもらったうえで、シンジに「やっぱりアスカが一番」と認めさせるのだ。あ、でも決定権がシンジにあるってのはやっぱりアレだから、そこんところだけちょっと修正しようと思うアスカ。 「私にとって勝利ってのは、与えられるものじゃないわ。戦って、奪い取るもの。そう、あんたと付き合うってのも例外じゃない。 レイとコネメガネがシンジを好きだって言うなら……! 二人と戦って、勝ち取った結果じゃないと落ち着かないの。ザワザワするのよ。全員に同じ機会が与えられないとダメなのよ。出会うのが遅かったとかそんな理由で機会すら与えられないなんて……そんなのあんまりよ。私が同居してなきゃ、あんなに早くシンジに抱かれなかったはずよ。第一、同居したのだってミサトの気まぐれだしね。要するに、私は運と偶然ってのが嫌いなのよ」 「アスカ、君が何を言ってるのか僕にはわからないよ……」 「……えーと、ああ、なるほどなるほど。そういうこと、ね。いやいやいや、それ絶対おかしいよ姫ぇ」 そりゃそーだ。自分でも何を言ってるのかよくわからない。 マリと、アスカの冷静で客観的な部分がツッコミを入れるが、それはそれとしてここまでお膳立てされてるのに、ウダウダ言い出すシンジにさすがにイラっと来る。マリが相手の時はあまり逡巡せずに抱いたくせに今更なに格好つけてるんだか。そんなに巨乳が好きか。それとも、それだけレイが特別って事なのだろうか。それはそれで腹が立つ。 「ああ、もうまどろっこしい! 見ててやるから、四の五の言わずにさっさとレイを……その女を抱けっって言ってんのよ! それとも何!? あんたレイの事が嫌いなの!? 抱きたいと思ったこともない、とは言わせないわよ!」 「それは、確かに……で、でも」 「第一おっきくしといてな〜に言ってんだか。さっきマリにしたみたいに! いつも私にしてるみたいに! ここで見ててやるからやれっつーの」 ここまで言われたら、さすがのシンジもカチンと来る。実際来た。 「ああ、もう! なんだよそれ! わけわかんないよ! そうだよ、僕は綾波の事も好きだよ! 抱きたいって……思ったことはあるさ。認めるよ。抱きたい、抱きたいよ! アスカとしたみたいに! 抱きしめて、キスして、触って……。学校でももっといろいろ話をして、お弁当食べてもらって、色んな事を一緒にして! 仲良くしたい、仲良くなりたい! 綾波が嬉しそうな顔したり、喜んだりすると僕もすごく嬉しいよ! アスカと同じくらい……好きだよ」 魂をむき出しにするようなシンジの感情の吐露に「やっぱり……」と苦虫を千匹位噛み潰したような表情を浮かべるアスカ、 目をパチクリと何度も瞬きを繰り返しながら、レイはわめくシンジとうつむくアスカの顔を交互に見返す。 アスカが辛そうにしているのは嫌な感じがしてこのまま身を引きたいと思う。でも、たぶん、そうしたらアスカはもっと機嫌が悪く、悲しい姿になるのもわかる。 それに、シンジが自分の事を好きだと言ってくれた。仲良くしたい、抱きたいっていうのを聞くと、体がポカポカを通り越して眩暈がしそうなくらいに熱くなる。それがちっとも嫌じゃない。 「碇くぅん」 「綾波……。 アスカ……そんなに言うなら、僕も正直に行動する。でも、絶対あとで文句言わないでよ!」 「言わないわよ。馬鹿……」 (じゃあなんでそんな泣きそうな顔してるんだよ。でも、僕は、確かに綾波の事も……) 甘える子犬のような表情で擦りつくように抱き付いてくるレイを抱きしめ返し、シンジは暴走した初号機さながらに色の薄い淡いピンク色の唇を奪った。レイの予想外に激しい舌の動きにおずおずと返そうとするレイだったが、脳天を突き抜けるような快感が唇からもたらされ、たちまちのうちに我を忘れてしまう。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁ……。碇く……ん。ああっ!?」 シンジの指先が胸元を這い進むたびに、レイは戸惑い、おびえたような声を漏らす。蜘蛛が這うように秘めやかに、ピアノの鍵盤を叩くように繊細に力強く。固い指先が柔肌を擦るよむず痒い感触にレイは耽溺した。腰がフワフワして浮かんでいるような、そんな不思議な感覚に包まれていく。 「もっと、もっと触ってほしい。碇君、碇君、碇君」 「綾波……口を」 「ああ、ん……ちゅ、ちゅっ。ちゅぷ、はぁ……んんっ」 シンジはレイの思ったよりもボリュームのある胸を愛撫しながら、唇を再び味わう。味のないはずの唾液が、たまらなく甘く感じる。 舌が唇に触れ、おずおずと差し伸ばされるレイの舌と絡み合う。二人の唾液がまじりあい、お互いに舐りあって飲み干していく。お互いどうすれば一番気持ち良くなるのか、わかっているかのように互いを貪る。シンジは経験から余裕をもって、レイは本能的に。 「ん……ぷはっ。はぁ、はぁ、はぁ、はっ、はぁ。綾波……ここ、触るよ」 「さわる……? んんっ! あっ、はぁっ!?」 シンジの指先が、淡い陰りさえない無毛な頂に触れた瞬間、レイの体が電流でも流したかのように跳ね上がった。 「んんんんっ!! い、碇君……! な、なに、ああっ、なにかっ、ああああああっ!」 初めての感触にレイは目を見開き、ぐ……っと背中をのけ反らせて悲鳴のように叫んだ。それは、バンシーの啼き声、ハーピィの叫び。最大出力状態で電源を入れたアンプの様な「キィ……ン」と耳鳴りがするような悲鳴だった。 一瞬戸惑うシンジだったが、無意識の内に慣れた動きで逃げ出そうとするレイを押さえ込むと、ぐっしょりと濡れそぼった恥丘に、右手の人差し指と中指が交互に連打するように刺激を加える。反射的にレイは歯を食いしばって息をのむ。 指が触れるたびに電流じみた刺激が股間から脳天まで突き抜ける。眼は血走り、目の端に涙を浮かべたレイは痛みをこらえるように首を左右に振る。 「あああああっ! きゃあああっ! あうううっ! あっ、うああぁ―――っ!」 巧みに愛撫を咥えながらも、まるで拷問されて悲鳴でも上げてるようなレイの反応にシンジは驚きに目を丸くしていた。第6の使徒との初戦で死にかけたときの自分が似たような感じだった思うが、レイにとってはアレに匹敵するということだろうか。 チラリと目を向けると、アスカも……そしてマリさえも、大声を出すレイの姿に目を丸くしているのがわかった。 やがて声は小さくなり、うめき声を漏らすだけになる例だが、なおも塗り重ねられる刺激に耐えきれないのか、ビクン、ビクンと断続的な痙攣をおこしている。そんなレイの姿に、なにか感じるものがあったのだろうか。シンジはどことなく父親そっくりな笑みを浮かべる。 「綾波がそんな声を出すの、初めて聞いたよ」 「ううう、わたし、声……出てた? わからない、わ」 (……やっぱりシンジって、スイッチが入るとちょっとサディストっぽいところあるわ) 背後から抱き付いて匂いを嗅いでくるマリを跳ね除けるのがいい加減面倒になって、今はされるがままになっているアスカはそんなシンジの表情に気が付く。先週、気絶するまで犯された時の事を思い出して僅かに寒気を感じる。その一方で、あの時の神経が焼き切れるような快感と、抵抗しつつも征服されるのを望んでいたような矛盾した感情も思い出すのだった。 「あああああっ! あっ! あっ! ひぁっ! はう、あああ―――っ!!」 遂に耳が痛くなるほどの絶叫と共に、レイは全身は激しく戦慄かせた。ビクン、ビクンと大きく痙攣すると同時に汗と愛液が飛び散り、シーツに新たな染みを付ける。そして、折れそうなほどに背骨をのけ反らせていたレイは、唐突に脱力して崩れるように倒れ伏した。曳きつけでも起こしたように体を震わせ、喉を蠕動させている。肩は大きく上下し、懸命に空気を求めて喘いでいる。 「大丈夫、綾波?」 「はぁ、はぁ、はぁ、ああ、いかり、くん……私、おかしい、の。体中が、熱くて、息が、できない。さっきから、なにか、凄いのが……」 「おかしくないよ、綾波。おかしいどころか……凄かった」 数度の絶頂を迎え、ぐったりと脱力したレイをいたわるようにシンジは抱きしめ、安心したのか少し呼吸が落ち着いた彼女の蠱惑的な唇を、そのまま貪るように口づけする。全身をピンク色に染め、湯気が立つほどに色気を匂わせたレイは、応えるようにシンジを抱きしめ返した。 「んっ、ん、んんっ、んちゅ、ちゅ、ちゅ……くちゅ。はぁ、ああ……いかり、くぅん」 甘えるように名前を呼んでくる。潤んだレイの瞳を見つめ返し、シンジは腰が密着するように押し付け、位置がずれないようにしっかりと抱きしめる。 「なに、するの。動けなくて、きついわ」 「綾波……抱くよ」 「抱く……って、どういう、こと? まだ、なにかするの?」 恐らく自慰もしたことがないだろうレイが、いきなり連続アクメというこれまで経験した事のないような快感にさらされたのだ。おそらく、使徒の攻撃を受けたとき以上の衝撃だっただろう。先程の絶頂を思い出したのか、少し怯えが見える表情でレイはシンジの顔を見つめる。 「大丈夫。僕に任せて。……さっき、僕とアスカが、僕とマリさんがやってたことを、これから綾波ともするよ」 「さっき……? 碇君の、私にはないものを、私の、中に……入れるの? 待って、お願い待って」 性知識なんて小学生どころか幼稚園児よりも下手したらないかもしれないレイだが、それでも先程の連続絶頂と、アスカとマリが見せた嬌態を思い出せばそれがただならぬ事だということは理解できる。思わず逃げ腰になるレイだったが、前述通りしっかりとシンジに抱きしめられていては逃れようもない。 「あ、ああ……い、碇君。待って、待って……ああ、こ、これは……なに? さっきから、胸が、胸の奥が」 それが『恐怖』だとレイが気付くのはもっと後の事になるのだが、怯えた表情を浮かべたレイは憐れみを請うようにシンジの顔を見つめた。シンジは「笑えばいいと思うよ」と言ったとき以上に優しい顔を見せ、レイの額に唇が触れるだけのキスを一度する。 「落ち着いて……。綾波、大丈夫だから、力を抜いて」 「わかったわ。力を、抜いて……く、ぁっ!!???」 レイが力を抜いた瞬間、シンジはこれ以上ないくらいにレイを抱きしめた。測った様に絶妙なタイミングだった。シンジの言葉にレイがこれ以上ないくらいに体を弛緩させた瞬間、医療用のカテーテル以外の何物も侵入したことのない秘所に大きく屹立したペニスが挿入された。 先ほどアスカとマリ相手に数度の射精をしたとは思えないほど固く、大きく屹立したペニスがズブズブとレイの体内に潜り込んでいく。 途中、強い抵抗を感じるシンジだったが、『ごめん』と心の中でつぶやくと、目を閉じたまま強く腰を押しつけた。 「いかりっ! くっ、んん―――っ!?」 何かが引き裂かれるような鋭い痛みが走り、ビクン、ビクンと体を震わせる。何かが裂け、鮮血が流れるのを感じる。 飛び出そうなくらいに目を見開き、唇を噛みしめながら反射的に痛みに耐えようとするレイ。 メリメリと音がしそうなくらい勢いよく、シンジのペニスがレイの胎内に埋没していく。処女膜という癒着が押し割られ、引き剥がされていく。骨折や打撲、裂傷とはまるで違う胎内に感じる鋭い、裂くような痛み。 「ああっ……あっ、あっ、碇君、いかり……くん! ああ……あ、くぅっ!」 「あ、綾波、綾波ぃ! すごい、きつくて、それだけじゃない、なんだ、これ? なにか、うわっ、なんだ。くぅっ!」 痛みと理解不能な感覚にレイは艶めかしく、呻くように喘ぐ。 そしてシンジもまた、単に気持ちが良いというのとは違う、これまた説明不能な感覚に戸惑い、女の子のように可愛らしい声で小さく悲鳴を上げる。 「碇君、碇君、碇君っ!」 「綾波、綾波、綾波ぃ!」 お互いの名前を呼びながら、温もりを求めるように互いの体をまさぐり、唇を求め痕が残るほど強く抱きしめ合った。産毛が立った二人の肌にはじっとりと汗が浮かび、触れ合う肌は吸い付くように張り付き、温もりを交換する。 「碇君、ああ、碇君……凄く、ポカポカ、する……の。これ……嫌じゃ、ない。碇君は、ポカポカ……してる? 碇君がポカポカ、してると私、嬉しい。碇君、碇君、碇君……」 「うん、僕も、凄く暖かいよ。綾波の事が、凄く……愛おしい」 「いとお……しい?」 「好きって、ことだよ」 「好き……これが、好き? ポカポカする……好き……。好き……。碇君、好き」 シンジが好き。 (好き……好意。これが、好き。碇君の事、わたし、好き) 自覚した瞬間、世界が無限に広がっていくのを感じた。 レイにとって何もかも色褪せて見えていたはずの世界が、鮮明に、輝いて見えた。 「碇君、もっと、もっとして……。私に、碇君を、感じさせて」 初めての感覚に戸惑い、泣き声をあげてはいるが苦痛には慣れているレイは、突き入れられるシンジ自身から痛み以外のものを感じ始めていた。そうするときっとシンジも嬉しくなって、自分も嬉しくなるのが分かっているから。少しでも深くシンジを受け入れられるように、無意識の内に合わせるように腰を動かしていく。シンジもまた、無意識の内にレイの動きに合わせ、少しでも彼女の負担が軽くなるよう、少しでも快感が増すように角度と力を調節して腰を動かすのだった。 「あっ……! あっ、あっ! 碇、くん! ああ、あ、あ、ああっ!」 グチュグチュと淫靡な音を立てながら、股間をぶつけるように突き動かすと堪らずレイが嬌声を上げる。 「綾波、大丈夫、だから。僕に、任せて。もっと力を抜いて、そう……どう、かな?」 「ああ、ああ……碇、君、あうっ……ん、あう、熱い……あぁ」 焼け爛れるような熱い感覚。粘膜同士がこすれる摩擦の感覚がシャボン玉のように膨れて、下腹部全体を包み込んでいく。 「んぁ、は、はふ、い、いぃ……あぅっ、くっ、はっ……はぁ、はぁ、はっ、はぁ、はっ、ひぅっ!」 聞いていたアスカとマリが思わずゾクリと背筋が寒くなり、次いでムクムクと性欲が高ぶるような声を上げるレイ。奈落へ落ちていくような切ない哀声が響かせながら、レイはピンク色に染まった純白の肢体を大きく仰け反らせた。 「僕、もう! あ、綾波! 綾波ぃ―――っ!!」 「あ、あはぁ……碇、くぅ……ん!!」 絶息する様な悲鳴が響くと同時に、レイの両足が激しく痙攣し、乳房が波を打つように激しく揺れる。シンジが呻き声をあげてレイにしがみつくと同時に、痙攣が二度三度と続いた。延ばされた両足がつま先までピンと延ばす様に反り返り、赤い瞳が見開かれる。その瞬間、ひときわ深く膣奥にペニスが突き込まれ、シンジは限界まで堪えた男の精を、弾けるように勢いよく迸らせていた。 「あ、あ、あ、あ、あああ〜〜〜〜〜っ!!」 絞るように上体をよじらせながら、美しい顔を切なそうにゆがめてレイは甲高いよがり声を響かせた。 ビクン、ビクンと断続的な痙攣を止められないまま、体内に満ちる精液の温もりを感じとった様に、白い腹が波打つように揺れ動く。 「はぁ、はぁ、はぁ……これ……好き」 胸いっぱいに空気を吸い込み、小刻みに震える肩をレイは抱きしめた。自分の意志でどうにもできない体の震えに不安を感じるが、シンジが与えてくれた『快感」でこうなってるのだと思うと、それがとても嬉しい。 自分の声が自分のものではないみたいに、レイにはどこか遠くから聞こえてくるような気がする。のけ反っていた白い喉にうっすらと汗が浮かんでいる。 「はぁ、はぁ、はぁ……。碇君の手、以前と違う。あの時はちょっと……嫌だった」 ゲンドウの眼鏡を取り返そうとして、もつれて転んだ時の事を思い出すレイ。 「でも、今日のは気持ち良いと思う」 温かい。 胎内に何かが満ちていく。 ぽかぽかして、ふわふわして。 シンジが上体を起こしたことで空気が動いて、火照った体が塩梅良く冷えていくのが心地いい。 うっとりと呟きながらシーツをきつく握りしめていた両の手から、ようやく力を抜いてレイは沈み込む様にベッドに体重を預けた。後を追うように脱力したシンジが横たわる。いわゆる、ピロートークの体勢になった二人はうっとりと至近距離で見つめ合った。 「碇君……すごく、ポカポカした。これが、好きって……ことなのね。碇君の手……暖かいわ」 「綾波、ありがとう」 満たされていく。無機質なコンクリートむき出しの住居の様な自分の中にシンジが入り込んでくる。もうシンジなしでは、いられない。シンジのいない世界なんてあり得ない。シンジが好き、シンジが欲しい、シンジと一緒にいたい。ずっと、ずっと……。 見つめ合う瞳に吸い込まれていきそうなくらいに。この感動とつながりを忘れないうちに、シンジは再びレイにキスをした。レイはちょっとだけ目を見開き、そのまま受け入れる。くちゅり、くちゅ……と湿った音を立て二人の舌が絡み合う。 「綾波……」 「碇く……んっ!?」 その時、ギシっとベッドが思いのほか大きな軋み音を立てる。それは2人が脱力したからだけではなかった。 ぎょっと目を見開くシンジの上にプロレス技でも掛けるようにとびかかったのは―――。 「シンジぃ―――っ!」 「う、うわっ!? アスカ!? なんだよ、なんなんだよ!?」 「嫌よ、イヤァ! やっぱりあんたが他の女とするのを、見てるだけなんて嫌ぁ!」 「え、ええっ!?自分で言っといていまさら何言って……んん――っ!!」 飛びついたアスカは強引にシンジを振り向かせると前歯がガキっとぶつかる勢いで唇を奪い、そのまま雪崩込む様にレイとシンジの間に割り込む様に倒れ込む。 「姫、ずるいーっ!! 私も混ざるニャー!」 「ちょっ、待って、うわぁあああっ! マリさんも、ダメだよぉ!」 「だーいじょうぶ! 元気、元気♪ シンジ君、まだまだ元気だって! ええ〜い、良いではないか良いではないか〜」 「イヤァァァぁ〜〜〜〜っ! か、母さ〜〜ん! ミサトさん! だ、誰か僕を助けてよぉ!」 シンジの女の子みたいな悲鳴が上がるが、すぐにくぐもった呻き声にとって代わり……。 その日、シンジの寝室の明かりは日付が変わって朝になるまで、消えることはなかったという。 そして。 ネルフ本部某所。電話の受話器越しに聞こえる言葉を、反芻するようにリツコが確認する。ため息とともに物憂げに首をかしげると、金髪がスタンドライトを受けてキラリと輝いた。うんうんと頷き返し、反芻するように相手の言葉を頭の中で何度もリフレインさせる。その結果から導き出される今後の予定、手順、段取りを想像する。電話の向こうにいるミサトの言葉を邪魔しないようにタイミングを計りながら、確かめるようにリツコは呟いた。 「そう。3号機のパイロット、決めたのね」 初出2021/07/04
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