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 君の結果はどうあれ1日目は終了した。
 あとあったことはさほど特筆するようなことはない。会社に戻り、一つも契約が取れなかったことで嫌味を言われながら、君は長期の有休を取った。
 この時の課長の目を忘れることはできない。

 千の言葉よりも的確に彼の心情を吐露していた。

 さすがの君も一瞬言葉を失う。

 恐らく遠回しに君の言葉は退職願いのように受け取られたはずだ。
 実際、君はこんなちんけな会社に未練はない。君の計画が上手くいきさえすれば、安月給を有り難く押し戴く必要はなくなるのだから!

 もっとも、今はまだ利用できる限りは利用させて貰おう。
 少なくとも彼女を堕とすまでは身分の保障された会社員という立場を精一杯使うつもりだ。
 刺すような視線や言葉にならない罵倒を暖簾に腕押しと受け流しながら、君は退職金代わりに会社が扱っている、警察に見られたらどこか素敵なところにご案内されかねない幾つかの、小道具や薬を持つとそそくさと帰宅する。

 実際に使うかどうかはわからないが、いずれ役に立つときが来るだろう。
 その時を思い、君はほくそ笑んだ。





 君は帰宅した。







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