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 とにかく君は走って走った。
 久しぶりにする全力疾走に体全体が悲鳴をあげるが、今は足を止めるわけには行かないのだ。捕まれば留置所という名のホテルで素敵なディナーが待っている。そして明日は有名人だ。なにしろ今自分が持っているのはカメラと、営業商品の避妊具に大人の玩具。キリストだって疑うに決まってる。そもそも周囲一帯を彷徨いていたことは事実なのだし、逮捕されるようなことをしてやると考えていたことも事実なのだ。

(逃げるんだ…走るんだ…とにかく、人気のないところへ…)


 そしてもう走れないと…足を止めたとき。ようやく君は今自分がどこにいるのか気がついた。



 ここは?






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