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 君は工事現場にいる。周囲には人気という者が全くなく、工事途中で放置された鉄筋の柱が白骨のように立っていた。注意深く観察したところ、工事の基礎はあらかた終わっており、階段を使えば上の階にだって行けそうだ。

(上の階の人間も容易に覗けると言うことか)

 しかし、まったく人気が無いというのがかえって君には気味が悪い。少なくとも雨露を凌げる環境だ。浮浪者の1人2人が住み着いていてもおかしくはないと思うのだが。なにか…そうできない理由でもあるのだろうか。

(そう言えば、ここには夜中に人魂が見えたとか言う変な噂があったりしたな)

 簡単なオカルト話が原因だろうか?
 それはいくら何でも話が簡単すぎる。案外、夜中に肝試しでもしていた人間の持っていた明かりを、粗忽な奴が見間違えたとかかも知れない。

(浮浪者が住み着かないように、工事責任者が定期的に見回りをしているのか?)

 そう考えた方が無難だ。よく見れば資材や重機がまだ置いてある敷地内は、意外に管理が行き届いているように見える。そうだとすると、覗きに夢中になって他の人間の接近に気付かなくなる可能性がある。必然的に上の階に位置することになるだろうが、それはますます逃げづらい。

(それよりなにより、俺のカメラはここまで遠くから監視するのには向いてない)

 しかし、人気のないここは監視をするのに格好の場所と言えなくもない。

 さてどうするべきか。


 覗きを実行

 ここはまずい






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