肉体決済 〜レイが全てを売り渡した放課後〜



12.間章〜クライアントR、クライアントA

 綾波レイ。この裸にさせた無口な美少女を、部長席として使っている古机に押しつけ、背後から存分に嬲る――
 たった今、この写真部室で契約は結ばれた。覆い被さったケンスケの腹の下になっている小振りなヒップも、机との間で圧し潰されているのだろう青白い乳房も、もはや彼の所有する物だ。
 思うさまに弄ぶのに、なんの躊躇いも要らなかった。
 チャックを開いて取り出したペニスはとっくに臨戦態勢。押し当てて味わう肉付き薄い不健康そうな尻朶の感触は、心持ちひんやりとしている。とうに先走りをぐじゅぐじゅ噴きこぼす亀頭には気持ち良い。すべすべした――手触りならぬ逸物触りは、これだけで射精できそうな位だ。
「へ、へへ」
「……っッ」
 丸出しの尻肉に直に擦りつける。
 牡の獣欲を露骨に表す器官は、少女には焼け火箸のように感じられたことだろう。
 びくりと華奢な肩を震わせた表情は見えなかったが、まさに初々しく生娘同然に怯えてみせたその背中だけで十分だ。
 しかも、こんなに清楚そうな顔をしていて、もうこの寡黙な少女は一度だけながら男を知っている。
 レイの肩胛骨に舌を這わせられそうな間近の位置から、下目遣いに視線を動かし背骨のラインを辿っていった先。見えるのは机の端で踏ん張る二つの小振りな臀丘までだが、その下。目で確かめられない代わりにくいくいと腰をしゃくれば、いきり立ったペニスでもって確認できる、この、濡れた秘肉に。
 咥え込んだ事があるのだ。
 
 ―― にちゅり。
 
(ここっ、これっ、綾波の……マンコ! マジだぜ、おい俺っ。うぉぉおお……!)
 常に冷め切った態度でいる少女のくせに、嘘のように熱を帯びていた。湿りきっていた。
 間違い無く、レイのそこが沁み出させた汁液。つまりいわゆる、ラブジュース。
 いじらしくも『こんなこと、何でもないことだわ』なんて振りをしているレイの、「そうではない」証拠だ。
 嘘つきめと、ケンスケの口元はにやけきった。
 堪らない高揚、堪らない血の滾りを覚える。
 男として生まれたのなら、当然のことだろう。
 俺はこんなにも飛びっきりの獲物を手に入れてやったんだぜ、と。
 普段は仮性包茎気味なペニスの先は、完全にめくれかえって亀頭自体の赤黒さが増した状態。レイのそこに直に押し付けているというギリギリの行為のせいで、興奮しすぎて痛みに近い疼きぶりだった。
(やった、やったぜ。今俺っ、チンポで、俺のチンポで綾波のマンコ小突いてやっちゃってるじゃん……!)
 このまま突っ込んでやりてぇと、抗うのが苦行のレベルの誘惑に駆られる。
 だが、それはまだだ。まだ、そこまでの同意は取り付けていない。そこまで追い込め切れてはいない。
 それでも、あのとりつく島もなかった綾波レイをようやくここまでと思えば、感慨もひとしおだった。
 思わず、くにゅくにゅと、
「……ぅぅっ、うっ、んんっ――
 先端を揺らして粘膜同士による際どい摩擦を堪能してしまう。
「どこに、当てているの……っ」
 偶然の接触を装ってだったが、回数が過ぎればさすがに看過はしてもらえない。険悪な声が、振り返らずに。
「おっと、失礼」
 しかし、しかしだ。ケンスケはついつい、にやけた笑みを深くする。
 羞恥にまみれた、か細い声だった。
 こうまでされて、それでも、自分のバストとヒップの両方を売り渡した後の彼女は本気の抵抗を見せずにいる。
 或いは、見せられずに。
 実際として見せてはいないし、見せないだろうと高をくくってもいた。
 ケンスケの見立てでは、羞じらいのおそらく半分以上は、先ほど脅迫じみた言葉で散々追い詰められながら感じさせられてしまったことへの屈辱。こともあろうに尻穴を嬲られて淫らな反応を示して―― 秘唇を濡らしてしまったことへの、情けなさ。そんなところだ。
 あくまで自分自身に向けられたもので、どこかの別の美人さんのように誤魔化し紛れの怒りに転じさせて、こっちへ牙を剥いてくる類とは違う。ケンスケは背後の床に放置している、いま一人の「取引相手」の素顔を思い浮かべた。
 彼女とは違うタイプなのだ。綾波レイにはここで今更抗いだしたり、逃げ出そうとする気概はもう残っていまい。
(半落ち、いや七割方かな。こいつを連れてきて見せつけてやろうってのは、当たりだったな)
 そしてその、レイをうなじまで真っ赤にさせた羞恥の根源。ポーズ的にはまさしくケンスケに向かってどうぞと突き出されている場所。
 彼が約束を破ろうかと思うだけで今すぐに男女の粘膜同士、結合を始めるのも可能なそこは、『きっと恋もしたことのない』、『氷の無愛想女』というレイの校内での印象を見事に裏切って、既に破瓜儀式を通過済みなのである。
 それも、名も知れぬ、行きずりの中年サラリーマンによって。

「……っ、っっ……」
 殆どインサート寸前の格好で、男性器による嬲りを直接肝心な部分に受けたレイは、大きく胸を喘がせていた。
 胸の内に覚えたものを隠そうとしているらしいが、吐く息がはっきり震えている。
 一度その可憐な花園の守りを突き破られ、胎の奥を踏み荒らされているからこそ、具体的な怯えがわき起こった筈だ。
 このビクビクと脈動する剛棒を、また深々突き立てられてしまったら……と。
 ケンスケに仕向けられての泣く泣くながら、拙くも自ら指をねだって誘った電車内痴漢。校内でも一、二の人気のクール系美少女が一旦タッチを許したなら当然だろうという、相手の暴走を引き金に、レイプでセックスを知ってしまった―― そんな無様でいやらしい女の子なのだから、処女よりも危機感の程はよほど生々しかろう。
 
(あの、綾波がよ……)
 ケンスケの胸には、感無量の思いがあった。
 中一の時に転校してきてからのレイに対する感情は屈折している。
 普通ではない赤い瞳。色素の欠けた髪の色。肌も血色が悪いもののあり得ないほどに白く、整った顔立ちと相まって幻想的な雰囲気を漂わせていた。
 そして性格も推して知るべし。決して人と交わろうとしない、孤高の花。
 すぐ身近で同級生として過ごしていながら、あらゆる意味で遠すぎる別世界の住人だった彼女。綾波、レイ。
 向こうは学校生活自体に無関心な様子で、こっちもその並外れた見かけを商売のネタにさせて貰おうかというぐらい。関わるつもりなんてさらさら無かったのだが。
 実は当時噂の的だった人型巨大兵器、エヴァンゲリオンのパイロットだったのだと知った時の驚きは忘れられない。
 あれで、本当に別の世界のお姫様なのかよという苛立ちが深まった。
 ―― それを、俺がここまで穢してやったのだという、どす黒い感慨。
 首をがくりと折って伏す、弱々しいばかりの背中を組み敷いていると、あの冷たく乾いた眼差しが思い出される。
(もう、あんな目で俺を見たりとか、無視したりとか、出来ないだろ)
 まさか、あのネルフに黒服達をずらり付けられて守られていたVIP、綾波レイが、価値で言えば世界最大級のダイヤモンドにも匹敵しよう処女を、そこらのうだつの上がらないオヤジに与えてしまうお膳立てをし、今や今度は、アナル処女を食ってしまえる立場になれるとは。
 まさかあの、人のことを視界に入っただけのゴミかと無関心に眺めていたエヴァンゲリオンパイロットを、自分みたいな腕っ節も論外なヲタク兄ちゃんに怯えるばかりの、負け犬娘にしてしまえるとは。
(……へへ、へへへっ)

 ケンスケは改めて教えてやった。
「忘れるなよ、綾波ぃ」
 確かに契約上、レイの怖れる膣へのインサートはまだ実行できない。
 であっても、彼女も今日もう一つの性器なのだと知ったばかりのアヌスへは、挿入も可能なのだと。
 それこそ今からだって。
 この相田ケンスケは、綾波レイの尻穴を好きに出来る権利を、他ならぬ彼女自身から買い取った男、なのだから。
「…………」
 カタカタと、机に俯せる肩の線が震えだしていた。
 しかし、ケンスケが選択したのは、彼としてはこの期に及んで我ながらと思うほどの、寛恕を示すことだった。
「ゆぅ〜っくり、教えてやるからな」
「……ッ」
「なにせここは、壊れやすい“穴”だからさぁ」
 『ここは』の言葉と同時に、突き出したいきり立ちでつんっとまさに脅かす。
 『……ひうっ』と情けない悲鳴を上げかけたところに、猫撫で声で優しくいやらしく囁いてやる。
「今日からはいつも綺麗〜にしとけよ? 帰る時に渡しておくから、毎朝ガッコに来る前にトイレで浣腸済ませとくの、義務な。義務。出来ないってなら、これ俺のもんなわけだし、こっちで毎日“メンテ”もしちまうぜ?」

 レイは言われている内容も碌に検分できずに、こくこくと必死の頷きを返していた。
 でなければ、直ぐにもアナルレイプされてしまうことになる。
 この上また何か、嫌で嫌で堪らない相手から体をどうにかされてしまう事も嫌なら、一言分でもケンスケに長く口を開かせて、こんな時間が伸びてしまうのも願い下げだった。
 だからレイは、俯かせた顔でぎゅっと目を瞑ったまま、とにかく首を縦に振った。
 (早く……終わって……!)
 そんな従順さは、脅迫しているも同然で尻のあわいに突きつけられている不気味な感触も、理由の一つだったろうか。
 レイの怯える菊花の皺のすぼまりを、くにっ、くにっとこねくり回すケンスケの先っちょ。嫌だと返したなら、すぐさまにそれで後肛を犯されてしまうのではと青ざめていれば、無理もない。

(あ、あの人みたいに――
 この時、アヌスを脅かされるレイが意識していたのは、背後の床に横たわっているはずのもう一人の少女のことだった。
 暗幕を外套としてまとって正体を隠し、レイの眼前で女の子というものが尻穴でであろうといかに淫らに狂えるのかと、実演してみせた少女。
 やはり相田ケンスケの悪辣さの被害者なのだろうに、あの少女はいかにも嬉しそうに貪欲に、ケンスケの命じるアナルオナニーで愉悦を貪ってみせていた。
 自分という第三者だっている前で、ああも淫らに。
 実際、強制的に観客役をさせられたレイの背後に立って、緊張するヒップの中心を延々と嬲ってきたケンスケの指は、おぞましくも圧倒的な何かを、何かの感覚を、レイの体から引き出そうとする手管を示していた。
 それが官能だったとは、死んでも認めたくない。
 けれどまた、今度は指などで済まない本物の性器でもって、抉られたなら。
 ましてや、ついさっきのように圧倒されるまま声を上げさせられ、彼女と同じに尻の穴で感じてしまっているかの如く、すすり泣かされでもしたら――
(それは、嫌っ……)
 だから今、この場で、相田ケンスケと肛門で繋がる行為に及んでしまうなどという事は、恐怖そのものなのだった。
 レイにはもう、ここを逃れられるのならと、頷き続けるより他に無かったのだ。

「わかっ……分かったわ。言うとおりに、するわ……」
 人の間に入っていこうとしない態度を疎んじられ、そのくせに並外れた美貌を妬まれ、それで誰に何を言われた時だって、いつも冷め切った目でいた面影もどこへ消えたのやら。
 レイは毎朝の腸内洗浄、つまりケンスケに嬲らせるための支度を整えておくことに同意し、更に加えて後で渡されるというアナルプラグを常に装着し、来るべきアナル処女喪失への訓練を積むことにまで、頷かされていた。
 デスクに俯いた下では、長い睫毛が震える目尻に涙をもかすかに滲ませている、弱々しさ。
 そのことがある意味幸いしたのか、
「ふぅん……。そいつは結構」
 捨て鉢ですらあったレイのこの態度は、ケンスケの征服感をくすぐる一方、面白くないと不満を感じさせるものでもあった。
(脅かしすぎたな……)
 どうせなら、あのきついルビーの視線で睨み返してくる本来の綾波レイのまま屈服させて、漏らされる悔し泣きを堪能しながら犯してやりたいな、と。
 なれば故に与えることにした、猶予だった。
 しかし、そういったある種の贅沢を思い浮かべてしまうのは、ここまで十指に余る女の子達を毒牙に掛け、余裕を培ってきていればこそ。
 既にケンスケの思考は、15歳の少年のそれではなくなっていた。

 だからこの日、証文代わりに取られた乳房の拓本、ヒップの拓本による汚れ―― 墨汁と精液の混じり合った嫌悪すべき痕跡―― をティッシュでぬぐい取るのも中途半端に、ブラウスを羽織りなおしてスカートを履き、よろよろと部室の戸を開けて出ていったレイは、愚かに安堵さえしていられたのだった。
 立ち去るその背に突き刺さっていた、相田ケンスケからではない強烈な視線に、気付きもせず。



◆ ◆ ◆



―― 何だよ、えらく機嫌が悪そうじゃないか」
 
 つかつかと歩み寄った少年が、いつの間にか体を起こしていた彼女から、裸身を隠す暗幕を剥ぐ。
 一瞬宙に広がる黒いカーテンと共に、内側に押し込まれていた長い髪がふわさっと舞った。
 夕焼けよりも鮮烈な茜色の輝きが刹那、撒き散らされたようだった。
「…………!」
 そのまま床に落ちようとする暗幕を、盛大なアナルオナニーの最中からずっと少女の唇に噛み締められている一箇所が引き留める。
 黒布は完全には床に落ちきらず、彼女の口元から右肩、右肩からずるずると背中へ流れる形に。
 しどけなく肩に引っかけられたその格好は、情事の後のベッドシーツじみた風情だ。
 黒い色合いを羽織ることで、露わにされた若い全裸はいや増して白く、磨き上げられた大理石のように暗がりで浮かび上がった。
 そうして、双つの張り出したバストの先端に尖っている乳首は赤い。
 見下ろしてにやりと、ケンスケが笑った。
「コントみたいだぜ。その格好。悔しくて、キーッってハンカチを噛むとか、普通現実でやるやつ居ないだろ」
 そんなつもりじゃ無いんだろうけどさ、と。
 ぎり、と一度奥歯で力んでしまってから、彼女はたっぷり唾液を吸っていたそこから口を離した。

 時刻は、夏の陽ももうあらかたが遠くの山々の稜線に沈んだ頃。先刻まで夕焼けに染め上げられていた校舎は、夜の気配に包まれつつある。
 遮光カーテンを引ききった部室の中は尚更に暗い。
 それでも、爪先から胸の頂までも、少女のさらけ出した白い素肌は眩かった。
 部屋の反対側では、服を脱がせたレイを撮影していたブースがこれ一角のみまだ明々と過剰に照らされており、不満足にながら全体の照明を兼ねている。
 一つの傘の中に複数の電球が仕込まれた強力なライトが林立し、スタンドで固定されたレフ板が更に反射を散らす。大きなパラソルを開いたスタジオライトもあった。
 そういった、天井からではなく、横向きにからのみの光が伸びていれば、明るさと同時に濃い陰影もがそこらに産まれるものだ。
 蹲る少女と少年の間の床にも、彼女自身の長い影が落ちていた。
 光源を背負って、黒い影の中に顔を沈めて、
「…………」
 ケンスケを睨む、蒼い瞳。
 あの綾波レイのルビーの瞳と対なすような碧眼が、惣流・アスカ・ラングレーの双眸が、強烈な不満を訴えてケンスケを見上げていたのだった。

「そういう顔も美人だとは思うぜ? さすが、俺が専属モデルにって見込んだ天才美少女様だよな」
 言いながら、嬲る目付きでもってしげしげ不躾に、蹲ったアスカの股ぐらを見やる。
 そこに本来あるべき赤毛のヘアは無い。正体が悟られるのを避ける為、つい先日に自分で剃ったのだ。ケンスケの構えるカメラの真正面で。
「スイッチ、入れてたのか」
「……っ」
 厳しく引き締められていた美貌が、途端に紅く染まった。
 床に手をついて体を起こしたまま、崩れた形の座り方だったのが、急に取り繕った女の子座りを。ぎゅっと力を込めて、内股を閉じ合わせる。
 それでも。
 『ジジィ……、ジ、ジジィ……ィィィ』という、くぐもったモーター音。それは間違い無く、この金髪美少女のお尻の下にされている―― 突き挿さっている、バイブレーターが発生源だろう。
「スイッチ入れてしろ、なんて演技の注文は出して無かったと思うんだけど。モデルさんのアドリブってやつ?」
「う、うるさいわねっ。偶々よ! こんなの、底にスイッチが付いてるんだから、弾みで動き出しちゃっただけじゃない……!」
 こっちは迷惑、かえって気持ち悪いだけだわという、それは所詮、無理のある言い訳。
 遂に後肛を脅かされようとする綾波レイの泣き悶える、同性の目にも官能的な姿を前にしていたからか。それとも、折り合いの悪い同僚が立ち会う場所で肛門自慰を演じてみせねばならなかった惨めさに、マゾヒスティックな昂ぶりが止まらなくなってしまっていたからか。
 とどのつまり、一度アクメを極めたぐらいでは収まらなかったA感覚の疼きに我慢しきれず、この性欲にだらしなくなった女の子は、ひそかにスイッチを入れて愉しんでいたわけなのだ。
「へへぇ……」
 そんな風な躯に開発した当人であるのだから、ケンスケにはお見通しでしかない。
 じっくりと含み笑いの視線を浴びせられる当のアスカにしても、実際にはそれが言い逃れにもなっていない台詞だと、自分で分かっていた。
(ムカつく、やつっ……!)
 苛立っても、であっても、もうどうにもならなくおかしくなってしまっている少女の躯は、この卑劣な少年を求めてしまっている。それこそが事実だった。

「い、いやらしいわねっ。変な……勘ぐり、してっ!」
 視線から背けられ、横を向く羞恥の顔。
 高い鼻梁の洋風の美貌は、ますます頬を熱くさせていた。
 気持ち悪いだけだの、不本意よだのと口にしながら、なんでじゃあさっさと抜かないでいるのやら。
 アスカは口ごもったまま、そっぽを向いているだけだ。
(期待してやがる)
 ケンスケの股間が脈打った。
 忙しなく瞬きを繰り返し、気もそぞろに腰をもぞもぞ。尻穴の中を尚もじわじわ刺激し続けているバイブレーターと、そんなA感覚に浸っている姿を男に視姦されることとで、このネルフの高飛車お嬢様は、また自分に犯して欲しくて堪らない気分になっているのに違いない。
 その癖強がって、自分からは素直に言い出さず。
 一方で、契約した「モデル」としての要求もしていないのに、胸も庇わず丸出しにし続けて。
 こっちが欲情して襲いかかってきてくれれば良いのにと、誘っているわけなのだ。

「変な、勘ぐり、ねぇ……。いやいや、折角一仕事してもらったってのに、気分悪くさせちゃって済まないね」
 もう誰よりも、あの碇シンジ―― かつてのアスカの同居人よりも自分こそが近しい存在なのだと、自信を持って言い切れるケンスケだ。さんざん躯を重ねた男としては、強情を装うその裏の声を察してやるのも実に容易い。
 じりじりとしているアスカの、膝を揃えて閉じ合わせる太股の付け根で、お預けも限界だと涎を垂れ流している「下の口」が目に浮かぶようだ。
「うん、お陰様で今日の“取り引き”も上手くいったよ」
 良い気分になったケンスケは、コツコツ、コツコツと足音をさせて、アスカの周りを歩き回った。
 右肩からだらりと下まで暗幕の掛かった背中に回って、アスカにも分かるようじっくりとっくり、リノリウム床に直につけられたヒップを眺める。
 完全に下敷きにされて姿の見えないアナルバイブがモーター音を唸らせている辺りに、にやけた視線を注ぎ続けた。
 肉付き薄く、いかにも青い果実といった綾波レイの尻も良い感じだったが。あの儚い少女とは好対照に健康的な肌色で、プリプリとした、桃のようなヒップも実に美味そうな眺めだ。
 そして実際、蕩けるような使い心地。
 見ての通り、この尻肉は既に十二分に裏門をほじくられる良さを覚えていて、中学三年生の癖に素晴らしい変態っぶりだときている。
 相田ケンスケが味わってきた尻穴の持ち主は何人も居るが、特にこの気位の高いお嬢様との場合は、ただ片方が貪るだけに留まらない双方大満足のアナルセックスになるのだから、お気に入りだった。
 今日の仕込み、下準備で犯ってやった一発も、もう少し時間を掛けて味わっていたかったくらい濃い内容だったなぁと反芻する。
 ほんの一、二時間前のことだ。
 どうせ、本人だってあれだけでは不満足で、きっちりとどめを刺して貰いたがっているのだろう。
 ド淫乱に目覚めた相田ケンスケ専用ポルノモデル嬢、惣流・アスカ・ラングレーが、バイブ如きで何回か気をやろうと、満足できるわけがない。
(こいつに必要なのは、俺のこれってわけさ)
 確信しつつ放置していれば、見る間にこの素裸の同級生は、落ち着きを無くしていっていた。
「……はっ、はっ、はぁっ、はっ、はっ――
 部室のそこかしこにさりげなく置いてある小物の鏡。その一つで窺う。
 笑えるとはこの事だ。
(焦れてんなぁ……。あれだけ気位クソ高くて、ツンツンしてやがった惣流がまぁ、こうも男に媚び媚びのエロ女になりやがって)
 唇を噛んでじりじりとしている顔。むこうを向いたまま、ちらっ、ちらっとこちらを意識しているいる目を見れば、どんな気持ちで頭の中をいっぱいにしているかは一目瞭然。
「ま、良いや」
 含み笑いを隠して、ケンスケは声を掛けた。
「じゃ、惣流、ケツを上げろよ」

「は、……はっ?」
「こっちに向けて、ケツ上げろってさ」
「な、何言ってんのよっ」
 努めて尖った言い方で返してみせても、その実は早く言え早く言えと焦れていた一声。
 アスカの腰は、もう軽く浮き掛けていた。
 そこへ続けざまに付け足されて、ケンスケが意地悪を言う。
「お仕事ご苦労ぉー様でした。今日はもう良いからさ、備品返してよ」
「……えっ?」
 と、不意を突かれたように固まってしまう。
「それだよ、アナルバイブ。抜いてやっから。……あ、俺になんかされたくないってなら、自分で引っこ抜いて渡してくれても良いぜ?」
 愕然として、アスカは瞬時に悟った。
 またこいつは、わたしを苛めに苛めて、悔し泣きさせる気なんだ―― と。
 自覚できていながらも、どうしても媚びた態度をこの下衆な男の前で垣間見せてしまう自分に嫌悪しつつ。けれども既に二人きりになった部屋の中、邪魔者もおらず―― この色欲魔のことだから、今からまたあの節操の無い股間を振り立て襲いかかってきて、めくるめくる官能の一時を過ごさせてくれるのに違いないと胸高鳴らせていれば、
(その気も無さそうな振りなんかしてっ。どうせまた、これでこっちが本気でホッとなんかしてたら、逃がすつもりなんか最初から無かったぜって顔で反故にしてくる癖に……!)

 まさに、まだ自分がこんな風におかしくなってしまう以前のことが、受けた仕打ちが思い出される。
 はじめに結んだ契約は、ヌード写真のモデル。まだ、ありきたりに裸になって写真を撮らせる程度で済んでいた、それだけの取り引き。
 そんな、今言えば手ぬるい仕打ちにであっても。あの頃は、録画スイッチが入ったカメラの先で服を脱ぎ落としていくのが心底嫌で、悔しくて。歯を食いしばって堪えるのも限界で。何度もさりげなくを装って目元を拭わねばならない位、辛かった。
 初心だったとさえ、言える。
 よく、一旦全部のカメラからフィルムやメモリーカードを回収するなどして撮影の終わりを錯覚させてきたケンスケの手に、素直に引っかかっていた。
 やっと解放されると思い込んだ直後、くるりと言葉を翻すケンスケのやり口に、弱った心をズタズタにされていた。
 心も躯もズタズタにされて、ボロボロに穢し尽くされて、作り変えられてしまった。
 今みたいな、淫乱で変態のアスカに。
 恥知らずで卑屈な、奴隷根性の染みついた、惣流・アスカ・ラングレーに。
 言われれば結局はどんな内容の命令だろうと、従ってしまうのだ。
 それがこの期に及んで、こんな風につれない台詞を聞かせてくるのは、またとんでもなく破廉恥なことを要求しようと思いついたあたりか。ただ、いたぶりたいだけか。

(畜生……っ、なんでアタシ、こんな奴なんかに……!)
 だのに、それが全部分かっていても、だった。
(アタシ、は――
 固めた拳をふるふると震わせていようと。選ぶ選択肢は、最もケンスケの期待に添うだろう所を推し量っての物。
 くうっと悔しく、歯噛みをしてみても、矜恃も何もあったものではない。
「なんなのよ、アンタ!」
 良いわよ、言う通りにしてやるわよ! と。そうアスカは、殆ど自棄っぱち気味に、暗幕を放り捨てて床へ四つん這いになってみせた。
 洋モノのポルノビデオみたいに腰を振り振り這い蹲って、ヒップの真ん中にバイブなんか突き刺しちゃってる馬鹿な格好。そんな「絵」がお望みなんでしょう―― と。
 両手を付いた間に顎を下ろし、その分高く双臀を掲げ上げて、少年の目によく見える向きで、足幅を広げる。
 混血の全裸美少女のしなやかな両腿が、膝から上で作る三角形の頂点に、黒い外見のバイブの底を突き出していく。
 赤い色に軽く腫れ上がった性器の部分も、丸見えだ。
「ンぅっ、くぅ……っ、っ」
 同年代の日本人の女の子では及びも付かぬ発育ぶり。であっても、まだまだ腰つきの華奢さなどにも「若い」というよりは「幼い」という風情が濃い中学三年の女の子である。
 そんな子が、無理矢理に見えるぐらい菊皺が引き延ばされているアナルで深々、異物を飲み込んでいるのだから、息苦しそうな声も出ようというもの。
「んぅ、ぅ」
 牝犬のポーズに姿勢を変えるだけでも、内側深くで思わぬ場所を抉られてしまう。
 まして、この杭型の性具はモーターによってうねうねと身を震わせているのだ。
 けれど、呻きはただ苦しそうなだけではなかった。
「ぁ、あぅっ。あぅ、ンンン――
 そもそも、そうやって腸壁越しに子宮を刺激してくるモーターにしたって、こっそりスイッチを入れていたのはさっきのアスカ自身の指。
 噛み殺し損ねた声の跳ねが、甘ったるい掠れ方をする。
「くぁ、ぁ、ああ……」
 アスカはこれで、こんなことででも、また新たな発情の涎に肉の割れ目を潤してしまっていた。
 つい先日に、今回の「モデル」の内容として、股間に剃刀を当てる羽目になってしまうまでなら、こんなポーズで撮影されようものなら、露呈されたラヴィアと共に、しとどに濡れそぼつ赤い毛並みが写っていた所だ。
 惨めなポーズを取っていても、こうやって陰湿な視線に体中を嬲られているのだと意識する程、背筋がゾクゾクとしていく。
 きっと、少年が薄笑いで見つめている先では、自分の開ききった肉裂が丸分かりの呈でひくひくと疼いていよう。
 ご主人様のくれた餌を前に、お預けの口の中で唾を溜め込んでいる犬と同じだ。
(ああ……、ぁ……)
 惨めさに呻きつつ、アスカは思い浮かべたポルノ女優がしていた通りに、ゆっくり尻を振った。ゆっくり、ゆっくり、左右に揺らめかせてやった。
 尻穴にバイブを突き刺したままの、今晩からでも辻に立って十分売春婦がやれる淫猥なおねだりの仕方で。股ぐらから飢えた涎をたらたらと垂らしながら。
 ―― 惨めだわ。
 そう思うだけで、ますます脳裏が痺れた。

 ケンスケがレイに対する駄目押しとして部室に控えさせていた惣流・アスカ・ラングレーとは、もはやそのような女の子なのだった。




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Original text:引き気味
From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(4)