【恋ってね! 十夜編  -06-】
 
「宮城先輩、どうもすみませんでした」
「……すみませんでした」
武藤と東雲くんは、二人で仲良く二年生のクラスまで謝りに来てくれた。
――すみませんって、えーと、なんかあったっけ? あ、そうか。俺、東雲くんに足、引っ掛けられたんだっけ? すっかり忘れてたなあ……。
萩原は東雲くんの姿を見て、不愉快そうな顔をした。じろりと萩原に睨まれ東雲くんは慌てて武藤の後ろに隠れた。小動物っぽくて可愛い動作だ。武藤は仕方のないヤツって感じで呆れた表情をして見せたけど、目には愛情が溢れている。心温まる光景だ。
「ぜんっぜん気にしないで! 俺、すっかり忘れてたし、傷ももうほとんど治ってるし!」
と、当の本人である俺が許しているのに、萩原はまだ不服そうだった。
――こら、萩原。小さい子を苛めちゃダメだぞ! そんな怖い顔で睨まないの!! 東雲くん、怯えちゃってるだろう? 俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど、俺たち、今は幸せだから許してあげようよ。
東雲くんの大暴走のおかげで、萩原と俺との誤解も解けたんだしね!
「あ、そうだ。武藤も東雲くんも、今日の放課後、時間ある? ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「聞きたいこと、ですか?」
武藤は不思議そうな顔で首を傾げた。
「うん。ダメ?」
「俺は大丈夫ですけど……。東雲、お前は?」
「ん。俺もへーき」
どうやら二人ともとくに用事はないらしい。
「良かった! じゃあまた放課後にね!」
笑顔で一年生二人を見送った後、教室に戻ると萩原はMAXに不機嫌な顔をしていた。
「あの二人に一体どんな話があるんだよ」
拗ねたような萩原の口調。ははーん。鈍い俺でも分かったぞ。さては萩原、ヤキモチを焼いているな! ふふふ。ほんとーにかーいらしーヤツめ!
でも、心配ご無用。俺が二人に話を聞きたいのって、お前のためでもあるんだからな?
「ん。二人に聞きたいことがあってさ」
「……何をだ?」
――ああっ! 拗ねた萩原ってば、なんて可愛いんだっ!!
そのまま放っておきたい気もするけど、それもかわいそうかなーって思って、教えてあげることにした。一応、周囲に人がいないことを確認して、さらに用心深く萩原の耳元に唇を寄せ……。
「セックスの方法」
「………………!」
俺の言葉を聞いて、萩原は顔を真っ赤にした。萩原ってもっと大人かと思ってたけど、意外と奥手だよなー。俺も人のこと言えないけど。
「……十夜、お前、んなおキレイな顔でそんな卑猥な言葉を使うなっ!」
なんだよぅ。俺だって男だぞ? それって差別じゃないか?
「えー。だってほんとのことだもん。ちゃんと萩原とできるように、武藤たちにやり方教えてもらおうと思ってさ」
「……やり方なら俺が叔父さんから聞いてくる」
「うん。だから、萩原は萩原の叔父さんに聞いて、俺は武藤たちに聞く。ほら、これで完璧」
「………………………………………」
萩原、まだ不服そうな顔。子供っぽくって可愛い。
――ああっ! ここが教室でなかったら、ぎゅーって抱きしめてあげるのに!!
「そんなに心配なら、萩原もこればいいじゃん。二人で仲良く、武藤たちのレクチャー受ける?」
それも恥ずかしい気がするけどね。
「いや……。あいにく今日はバイトがある」
「そう?」
そうかな、とは思っていたけど、でも残念。だって出来るだけ俺、萩原と一緒にいたいから。
「明日は金曜日だから、泊まりに行ってもいい?」
「……それって……」
「昨日のリベンジ! 週末こそ頑張ろうね!」
拳を握って、頑張るぞ! というポーズをした俺を見て、萩原は神妙な顔で深く頷いたのだった。


「そりゃ、先輩、濡らさないままヤったら痛いよ」
俺の質問におもに答えてくれるのは東雲くんだった。
えっちをするときに受け入れる側になるのは俺と東雲くんなわけで、当たり前といえば当たり前のことかな。けど、顔を合わせた回数が片手で足りるほどの相手とこんなすんごい話をするのは不思議な気分だ。
武藤はほとんど口を挟まず、うっすらと笑みを浮べながら、俺と東雲くんとの会話を聞いている。
「え!? ぬ、濡らすって……」
「だからあ、女のアソコと違って濡れないわけじゃん? だからなんかクリームみたいなの使うとか、舐めてもらうとかして濡らしておくの」
「な、な、な、舐めるって……」
――も、もしや! あの場所を舐めてもらうわけですか!???
――うぎゃーっ。イヤだっ! あんなとこ汚いじゃんっ!!
「……東雲くんも、その、舐めて貰ってるの……?」
俺の質問に、東雲くんは顔を真っ赤にした。そしてちらりと武藤の顔を伺ってから、こくりと小さく頷いた。
――ごめんよ、東雲くん。ものすごく答えにくい質問をして。でも、ショックだ……。そうか……。あそこを舐められちゃうのか……。
えっちの前にはしっかりキレイに洗っておこうと、俺は固く決心した。
「あ、あと先輩、ナマのまま入れさせるのはやめたほうがいいよ!」
「え? どーして?」
俺も萩原も男だから、男女のセックスと違って妊娠する心配はない。なのにどうしてわざわざコンドームを付けなきゃいけないわけ?
「中出しされると後始末が面倒だし、放っておくとお腹痛くなって下痢になっちゃうんだ」
「そうなんだ!? 分かった。気をつけるよ」
「それと、入れるときは濡らすだけじゃなく、十分ほぐしてからじゃないとすげぇ痛い」
「ほぐすって?」
「え。えーと、指で弄ってもらうとか……。その、アソコって狭いから、広げないとダメなんだよ」
「……そうなんだ……」
経験者のみが知っている豊富な知識を披露して貰えて、今日はとっても勉強になった。これで萩原との初体験は、ばっちりだ!
出来の悪い生徒に、恥ずかしそうな顔をしながら丁寧に教えてくれた東雲くんには大感謝! 武藤が選んだだけあって、東雲くんもとってもいい子だ。ちゃんと萩原にフォローしとくからね!
東雲くんがお手洗いに立ったとき、俺は武藤に一枚の写真を手渡した。例の萩原の誤解の原因となった写真だ。あんなことがあった後に持ち歩くのもなんだし、捨てるのも心苦しいし……。そこで俺は本人に返すことにした。
「可愛かったからつい買っちゃったんだけど、そしたら萩原が焼きもち焼いちゃってさ。申し訳ないんだけど、受け取ってもらえるかな?」
「うわ。恥ずかしいなあ。宮城先輩、この写真、買ったんですか?」
赤頭巾ちゃんの格好をした自分が写っている写真を見て、武藤は照れくさそうな顔をした。気持ちは分かる。俺だって、自分が女装したときの写真なんて見たくないぞ!
「それじゃあお返しに、俺からはこっちの写真をプレゼントしますよ。俺が持ってると東雲が妬くんで、正当な持ち主にお渡しします」
武藤から手渡されたのは萩原の王子様スタイルの写真だ。
あ。嬉しいかも。
学園祭の頃はまだ、俺の萩原への好意はそーゆー意味とは違っていて、だから写真を持ち歩こうなんて思わなかったんだ。でも今は違う。生徒手帳に萩原の写真を忍ばせておくのって幸せかも。ふふ。
「嬉しい。ありがとね、武藤」
満面の笑みを浮べて礼を言うと、武藤は頬を染めて視線を辺りに彷徨わせた。
「……宮城先輩の美貌って犯罪的ですよね」
「ええー。そんな大げさな……」
「宮城先輩ってほんと自覚ない。そこが先輩のいいところでもあるんですけど……」
武藤は俺の顔を見ながら深々と溜息を付いた。なんかこれと似たような会話、以前にもしたことがあるような……。
キレイ、ねぇ。俺はそうとは思わないけど。
でもまあ、萩原が俺のこと「キレイ」だと思ってくれてるんなら嬉しいかな。
東雲くんが戻ってきてすぐ俺たちは店を出た。駅で二人と別れたとたん、俺の気持ちは週末へと向かっていた。
――今度こそ成功させて見せるから!
――萩原、頑張ろうね!!


そして、待ちに待った週末がやってきた。
金曜日は、俺は一度家に帰って着替えてから萩原の部屋に向かった。萩原は今日はバイトなので、これを使って部屋に入っていて欲しいと合鍵を渡された。
家の鍵って、特別な意味があるよね。キーホルダー付の鍵をプレゼントされたとき、俺、嬉しくて泣きそうになっちゃったな。
俺はうきうきしながら早速それを使って、部屋の中で萩原が帰ってくるのを待った。
ようやく萩原がバイトから帰ってきたとき、俺は仔犬のように萩原にじゃれ付いてしまった。……だって、ずっと部屋に一人きりでいて、寂しかったんだもん。
「おかえりなさい、萩原。バイト、お疲れさま」
「ああ。待たせて悪かったな」
萩原は俺の顎に手をかけ、そして軽いキスをしてきた。外から帰ってきたばかりの萩原の唇はひんやりとしていた。
萩原に促されるままクッションの上に座っていたら、萩原は部屋の隅から紙袋を取り出してきた。そして中のものを次々とテーブルの上に並べていった。
萩原が並べた物体たちを見て、俺は顔を引き攣らせた。
――これってもしや……。大人のおもちゃってやつ……???
俺ってこういう知識って乏しくて、どんなふうに使うかは、具体的にはよく分からない。でもなんとなく雰囲気がいかがわしい。
目の前にあるのは男性器を模した緑色のグロテスクな棒とか。怪しげな色と形をした瓶とか。などなど。
――東雲くんや武藤は、こんなの使うって言ってなかったぞ!
せいぜい使うといっても、水溶性のローションとコンドームぐらいしか俺は聞いていなかった。
「萩原、これって……」
俺は顔をこわばらせたまま、注射の形をした道具をこわごわと手に持ってみた。
「直腸を洗浄するための浣腸器だ。こっちの瓶に入っている液を、肛門から注入させるらしい」
萩原は俺の動揺を知っているのか知らないのか、淡々とした口調で説明した。
説明書が付いていたので、俺は隅々まで読み使用方法を理解した。
「洗浄……。そ、そうか……。そうだよね……。アソコ、やっぱり汚いもんね……」
――普段は排泄している場所に、萩原のアレを入れるわけで……。
――う。た、たしかに、このままヤったら汚いかもしれない……。
――でもでも、東雲くんたちはそんなこと言ってなかったのにぃぃぃぃぃぃぃ〜っ。
俺はちょっと半泣き状態だった。
「……十夜、やっぱ、やめとくか……? 無理しなくていいぞ」
萩原はショックを受けている俺を労わるような口調で言った。今度も萩原は俺を気遣って、繋がることを諦めてくれようとしているのだ。
その言葉を聞いて俺は決心した。
「……いや、やる!」
「十夜……」
「俺も男だ。今日はなにがなんでも萩原と最後までいくって決めた。この程度で怖気づいてたまるか!」
仁王立ちで堂々と言い放った俺に、萩原は俺の勢いに気圧されたような表情で、ぱちぱちと拍手を送ってきた。
「ただし! 俺がちょ、ちょ、直腸を洗浄している間は、萩原はその場から一歩も動くな! 動いたら、しばらく口きかないからな!!」
――だってさあ。浣腸ってことは……アレだし。そんなとこ絶対、萩原に見られたくないしさ。悪いけどしばらくトイレ借りるからね〜。
萩原は残念そうな顔をしていた。
だが、俺の言葉に頷いてくれた。
「分かった。お前がいいというまで俺は絶対に動かない。もし約束を破ったら殺してくれても構わない」
「殺し……そんなもったいないことはしないけど……。じゃあ、俺、トイレとシャワー借りるから。待っててね」
俺は萩原の唇にちゅっとキスしてから注射型浣腸器と瓶を持ってトイレに篭った。
説明書を再度読み直してから、俺は早速作業をした。
「我慢、我慢っ! これも萩原とのえっちのためだ! 今日こそ成功させるんだもん!!」
俺は冷や汗だらだらになりながらもなんとかトイレでの儀式をクリアし、次はシャワーで体を清め始めた。満足いくまで自分の体を……外も中も……磨き上げた頃には、俺はもうよれよれになっていた。
「萩原〜、お待たせ〜」
まさかこれからえっちをするのに、わざわざ服を着直す必要はないだろう。俺はバスタオル一枚を腰に巻きつけバスルームを出た。
「大丈夫か、十夜?」
疲れた様子の俺を見て、萩原は心配そうな顔をした。
「ん。へーき。ちゃんとキレイにしたから、舐められても平気だよ〜」
平気と言いつつ、俺はぐったりとベッドに倒れこんだ。萩原はそんな俺を、気遣うような眼差しで見下ろしていたが、やがてシャワーを浴びに行った。
――萩原、今、シャワー浴びてる……。いよいよ俺、萩原と最後までイくんだ……。
心臓がどくどくと速いテンポを刻む。
緊張。
今度こそ、上手く出来るかな?
俺は自分の後ろにそっと指を入れてみた。一本ならなんとか入る。でも、二本入れるには狭そう。
「……こんな狭いトコに、ほんとに入るのかなあ……」
いろいろアドバイスを受けたものの、俺は不安だった。
――やっぱ、痛いよね。この前、多分、ちょっぴりしか入っていなかったと思うのに痛かったもん。なんてゆうか、鈍くて重い痛みだった。いかにも、入らない場所に力尽くで入れようとしてるって感じで。
「でも我慢する! 今日こそは最後までいくんだもん!!」
俺がぐっと拳を握り締めて決心を固めていると、シャワーを浴び終わった萩原が、髪をタオルで拭きながら出てきた。ついつい視線は萩原の股間に向かってしまう。隠していないのでばっちりソレの大きさ目に入り、俺はちょっとビビった。
――うえ〜んっ。あんなおっきいの、ほんとに入るのかなあ〜。やっぱ怖い〜。
「十夜、足開いて」
「うん」
俺はどきどきしながら、萩原の言われたとおり足を開いた。
萩原は俺の足の間に座り込み、俺の尻を両手で押し広げた。さっき俺が一番熱心に洗った部分が、萩原の目の前に晒されている。
――ひぃーっ。恥ずかしいっ!!
「わっ」
萩原はなんと、俺の尻に顔を埋め、アソコを舌でなぞり始めた。
――ぎゃああああああああっ。そんなトコ、舐めるなよっ!!!
けど、恥ずかしくても、俺は我慢した。東雲くんも舐めて貰うこともあるって言ってたし……。
綺麗に洗ってよかったなあってしみじみ思った。……恥ずかしいことには変わりはないけど。
「〜〜〜〜っ」
「痛くないか?」
「う、うん。まだ、大丈夫……」
萩原はたっぷりアソコを舐め上げてから、指を一本挿入させてきた。痛くはないけど気持ちが悪い。
後ろでヒヤッとした感触がした。多分、唾液だけじゃなく、滑りを良くするためローションも使って濡らしているのだろう。
萩原は慎重に指を動かした。探るように念入りに、俺の内部を掻き回している。
「ああんっ! あっ……あっ……!!」
ビックリした。
中を萩原の指で弄られているだけなのに、全身に大きな快感が走った。俺の体は顕著に反応し、自然にびくびくと動いた。
――なにこれなにこれなにこれ! 体が勝手に反応するよぅっ!
「あっ……ヤ……なに? あんっ……」
未知の快感に戸惑いながらも、俺の腰は淫らに揺れていた。オネダリするように萩原に向かって腰を突き出していた。
――ひぃんっ。恥ずかしい……でも、イイよぅ……!
「あっ……萩原ぁ……」
「十夜はココがイイんだな」
冷静な声で萩原は呟き、俺が感じる場所を容赦なく攻めてきた。
――やだやだやだやだっ! 気持ちイイけど、気持ち良すぎて怖いっ!
自分で始末するときの何百倍もの快感が俺を襲う。俺はひぃひぃ喘ぎながら、萩原の指を締め付けた。
「十夜、俺、顔見たい。仰向けになって」
「やぁんっ……。ヘン……ヤダ……」
もう俺の体はくにゃくにゃになっていて力が入らない。
萩原は強引に、うつ伏せだった俺の体をひっくり返した。
「あああっ!」
指を入れたまま体勢を無理やり変えさせられ、その瞬間、萩原の指が俺の中をぐいっと抉った。強い刺激に耐えられなくて、俺はとうとう悲鳴を上げながらイってしまった。
――信じられない。お尻の中を触られただけなのに!
俺が呆然とする暇もなく、萩原は指を動かし続けた。おかげで俺は、再び深い快楽の中に沈められた。
「んっ……やぁっ……ああっ……!」
萩原は指を二本、三本と徐々に増やしていった。三本の指をばらばらに動かされ、俺は一層身悶えた。
後ろだけでなく、萩原は前にも触れてきた。
「いやっ……萩原……怖いっ……。気持ちよすぎて、怖い……」
気持ちイイのに体の中がぐちゃぐちゃで怖くて、俺は萩原に泣きついてしまった。目からぼろぼろ涙を流しながら懇願すると、萩原は前への刺激を諦めてくれた。
だが、代わりに唇で、俺の首筋や胸元を愛撫し始める。後ろを弄る指の激しい動きとは裏腹に、萩原は俺の体を優しく唇でなぞる。たまにきゅっとキツク俺の肌を吸って、所有の証を残していく。
ますます熱くなる体と裏腹に、胸の奥がジンと疼いた。
好きな人に、こんなに大切に愛してもらえるなんて、幸せすぎる。
萩原は俺の中から指を引き抜いた。
「……今から、入れるから……」
「う……んっ……」
とうとう萩原と一つになる瞬間が来たんだ。
先端を俺の後ろにあてがい、萩原は焦らずゆっくりと腰を進めてきた。
――あ。萩原が……入ってきた……。
ものすごい圧迫感だ。快感は一瞬にして吹っ飛んだ。
十分解してから入れたので、耐えられないほどの痛みじゃない。
それでもほとんど初めて男を迎えるソコは、軋んで痛みを訴えた。
「んっ……」
萩原の一番太い部分が入り口を通過すると、痛みの中にほんの少しだけ快感が混ざり始める。
俺のアソコは萩原の存在をリアルに感じてる。
背中にぞくぞくと甘い痺れが走った。
この快感は、肉体的なものというより、メンタル的なものだ。
好きな人間と体を繋げているというだけで、それだけでもう、満足してしまう。俺が大好きな萩原は、こんなにも俺を求めている。俺に、欲情している。
その事実が俺の心を満たした。
「十夜……平気か?」
自分だって余裕のない状態なはずなのに、俺を気遣うことを忘れない。愛されてるなあって実感する。
「へ……き……。もっと……きて……」
「ああ。今日は、全部入れる。今度こそお前を俺のものにするから」
「うん。俺を萩原のものにして……。ああんっ……!」
最後はぐいっと強引に突き入れられ、俺は嬌声を上げて背をしならせた。
「十夜、全部、入ったぜ。俺達繋がってる」
「あ。すごい……」
萩原の手に導かれて俺は結合部分を指でなぞった。
ほんとだ。
ほんとに俺と萩原、繋がっちゃってるんだ。
俺の目からは自然と涙が溢れ出てきた。
この涙は苦痛の涙じゃない。
嬉しくて、泣けた。
俺はたった今、萩原を俺のものにしたんだ。
俺はたった今、萩原のものになったんだ。
萩原が俺の中に入ってきた瞬間を、俺は一生、忘れない。
体じゃなくて心で味わう快楽。
体の中が萩原でいっぱいになる。夢のような一時。
――でも、これは、夢じゃないんだ。俺は今、萩原と一つになっているんだ……。
俺はばかみたいに感動してしまって思わず泣いてしまった。俺の泣き顔を見て、上からのしかかっていた萩原は慌てた顔をした。
「痛いのか!? 十夜?」
「ううん……違う……俺、嬉しくて……」
嬉しくて嬉しくて、涙はなかなか止まらなかった。
「萩原、好き。だから、嬉しい……」
「十夜……俺の十夜……」
萩原は繋がったまま、狂おしく俺の唇を奪った。苦しい体勢だったがキスが気持ちよかった。
「俺も嬉しい。俺のものだ。十夜……」
萩原も泣いていた。俺は萩原の涙を、手を伸ばして指でそっと拭った。
そして萩原はゆっくりと腰を使い始めた。俺の反応を窺いながら、優しく優しく動く。萩原は自分の欲望より俺のことを優先してくれた。
「んっ……あっ……ああっ……」
萩原の大きさに慣れて俺の口から甘い声が漏れ始めると、萩原は少しずつ腰の動きを速いものに変えていった。
解放は萩原のほうが早かった。
「ごめん……俺、早かったよな……」
俺の上で荒い息を吐きながら、萩原は恥ずかしそうに言った。萩原以外の誰ともセックスを経験したことのない俺は、萩原が早いかどうかは判断しかねた。
――そういえば萩原、童貞だったよな。童貞は三擦り半ってゆーけど、それよりはもったんじゃないかなぁ? あ。俺がたった今、萩原の童貞を奪ったことになるんだよね? それってめちゃめちゃ嬉しい……。
「ごめん、十夜。口でやってやるから」
俺の欲望を置き去りにして自分だけ先にイってしまったことを恥じた萩原は、硬くなった俺のモノに丁寧に舌を這わせ、俺を気持ちよくしてくれた。
挿入されたときは精神的な満足感があったが、やはり直接刺激されたほうが肉体的な満足感は大きい。やっぱ、初めて後ろを使われて、ちょっと痛かったし。慣れると後ろだけで射精出来るようになるらしいけど……。
萩原の口中で果てると、急速に眠気が襲ってきた。入れるまでの過程が長かったので俺はすっかり疲れきっていた。うとうとしかけたところで、衝撃で目が覚めた。再び萩原が潜りこんできたのだ。
「わるい、十夜。でも俺、もっとお前を抱きたい。我慢できない……」
好きな男にここまで言わせてイヤと言えるはずがなかった。俺は大人しく尻を差し出し、萩原に揺さぶられた。
結局、萩原は俺の中で四回もイった。好きな人間がそれほどまで自分を欲してくれているのかと思い、単純に嬉しいと思った。
お尻の中に入れられても、そんなに気持ちよくはなかった。まったく感じなかったわけじゃないけど、行為が長引くにつれて入り口の部分が擦れ、快感よりも痛みのほうが強調されていった。
だが萩原が満足してくれるのなら俺も満足だ。それに俺が後ろの刺激でイけないぶん、萩原は口や手を使って俺のモノを直接愛撫してくれた。
初めてのセックスに俺は大満足だった。
「ごめん、俺だけ夢中になって……。お前の中、気持ちよくって……。俺、下手だったよな」
セックスが終わったあと、萩原は落ち込んでいた。悄然としたようすの萩原が可愛くて、俺はにんまりしてしまった。
俺は萩原の唇に、ちゅっと音を立てて軽くキスをした。
「萩原だけじゃないよ。俺も気持ちよかった。俺、まだ、後ろの刺激だけじゃイけないけど、代わりに手と口でやってくれたし」
俺の言葉を聞いても萩原はまだ気にしているようだった。
「あのさ、後ろの穴を使ってのえっちって、慣れないと気持ちよくなれないものらしいよ。だから萩原のせいじゃないよ。俺が慣れてないせい」
最初のセックスは最悪だったって東雲くんも言ってたし。……あれは特殊な例ではあるけど。
俺は最低ってほどでもなくそこそこ気持ちよかったから、萩原、そんなに下手じゃないんじゃないかな?
東雲くんは、三度か四度目ぐらいから気が狂うほど気持ち良くなったって言ってたな。
「早く慣れるように、いっぱいえっちしようね」
俺は萩原の耳元で、カワイイ声を作って囁いた。
萩原は顔を真っ赤にし、それでも力強く頷いてくれた。


翌朝、俺は萩原の腕の中で目を覚ました。すぐ間近にある萩原の寝顔。俺はくすりと笑って、愛しい男の唇に、自分の唇を重ねた。
――萩原の寝顔、か〜わいいっ。
萩原が寝ているのをいいことに、俺は萩原の顔中にキスを落とした。
萩原の体にきゅっと抱きついたら、腰の辺りに固いものが当たっていることに気がついた。
――ひょっとして、萩原、立ってる……?
朝元気になっちゃうのは、男の生理なんだけど。でもなんか、どきどきしちゃう。
――触っちゃおうかな……。
俺は掌で、布越しに萩原のモノに触れてみた。持ち主はまだ眠ったままなのに、それはむくむくっと大きくなってきた。
――なんか可愛いかも。
萩原の寝巻きのズボンの中に手を突っ込み、直接触ってみた。掌にべとつく感触がした。萩原の先端から零れ出た液で、俺の手はべとべとになった。しばらく俺は手の中で萩原を弄んでいたが、それでも萩原が起きる気配はない。だんだんと俺は大胆になってきた。
――えへ。舐めてみちゃおっかな〜。
俺はがさごそとお布団の中に潜り込んだ。そしてさきほどまで手で可愛がっていたものに、今度は口で触れてみた。赤黒くてグロテスクだけど、萩原のモノだと思うと愛しくて、俺はいろんな角度からソレにキスをした。竿の部分を手で固定し、唇を窄めて軽く吸う。生臭い味が口の中に広がる。
俺は思い切ってソレを口の中に頬張った。舌を絡めたり、頭を激しく上下に動かしたり、誰も見ていないかと思うと俺は安心して大胆に振舞うことが出来た。
愛しい人の性器を口で愛撫するという行為に興奮した。
――萩原、好き。
逞しい肉棒だけじゃなく、根本に付いている袋にも指や唇で触れてみた。
愛しいと言う気持ちを込めて愛撫を続けた。とうとう萩原が果てる瞬間が来た。
俺の口の中で、ソレは勢い良く弾けた。萩原の出したものを、俺は躊躇わずに嚥下した。
唾液や他の汁で汚れた口元を拭い顔を上げると、じっとこちらを見ている萩原の双眸と目が合ってしまった。
「は、は、は、萩原っ。起きてたの!?」
――ひ、ひええええええええっ。い、い、一体いつから見てたんだーっ!?
俺は激しく動揺した。
羞恥で顔が赤い。
まさか、浅ましく萩原のモノを咥えていた姿を見られていたなんて!
「ごめんっ! 俺、先に目を覚まして! 萩原まだ寝てるし、ついっ!! ごめんっ!!」
――ひぃーんっ。どうしようっ。呆れられちゃったかなあ??
俺は心配になったが、すぐにその心配は杞憂だったと分かった。
萩原はにっと笑い、強引に俺を体の下に引き込んだ。
「おはよう、十夜。十夜は今日もキレイで可愛いな」
強くて優しい光を湛えた瞳にどきどきする。俺をあまやかに押さえつける力強い腕に縋り付きたくなる。
――昨日、俺、コイツに抱かれたんだよな……。
すごく不思議だ。
どうしてこんなにもカッコよくて綺麗な男が、俺を恋人にしたいって思ってくれたんだろう。
「おはよう、萩原。……萩原はすごくカッコイイ……」
俺は夢見るような乙女の顔で、萩原を見上げた。この男が自分の恋人だなんて、信じられないほど幸せだ。
萩原はくすりと笑って、俺におはようのキスをした。そして俺の着ていたものを、一枚一枚剥いでいった。俺はもちろん逆らわない。萩原に協力して、さっさと全裸になった。
「……萩原も脱いでくれなきゃ……ヤダ……」
俺だけ裸で、萩原は着たままって言うのは恥ずかしいし寂しい。
萩原と、肌と肌を触れ合わせたい。
萩原のぬくもりを、しっかりと感じたい。
萩原はばさばさと床の上に着ていたものを脱ぎ捨てた。男らしい脱ぎっぷりだ。あらわになった萩原の厚い胸に、俺は無意識に手を伸ばしていた。
筋肉で覆われた、硬い、男の体……。
「十夜、好きだ」
「うん。……俺も、好き……」
好きすぎて困る。
胸がどきどきして心臓が壊れちゃいそう。
萩原は唇や指先で、優しく俺の体を愛撫し始めた。
「あ……萩原……」
俺の乳首を柔らかく噛み、舌でちろちろと刺激してきた。俺は感じてしまって、体をびくびくと振るわせた。萩原は左右とも同じようにたっぷりと口で可愛がってくれた。萩原が口を離すと、俺の乳首はピンク色から鮮やかな赤に変わっていた。まるでよく熟れた果実のようだった。
敏感になっている乳首を萩原は指でつついてきた。
「ひぃんっ!」
鋭い痛みと快感とが混ざり合ったものが、電流のように体を駆け抜けた。
俺は甲高い悲鳴を上げた。萩原は左右の乳首を執拗に捏ね回し、俺はただ喘ぎ続けるしかなかった。
さんざん胸をイタズラした後、なんと萩原は、今度は俺の足の指を一本一本丁寧に舐め始めた。
「やだっ……。萩原、汚いよ……」
――ヤダ! そんなとこ、汚いっ!
俺は泣きそうになった。
――一応、足も綺麗に洗ったけど、でもそんなとこ舐めないでよ〜。
イヤだって思っているのに、萩原がしっかり足首を握っているから、俺は逃げられないでいた。
――ひえええええっ。萩原の、ばかあっ!
目に涙を滲ませ、俺は萩原を睨みつけた。俺の視線を無視し、萩原は俺の足の指を口に含んでしまう。
「あんっ……」
――あっ。な、な、なに、今の!? う、嘘っ……。
信じられないことに足の指を舐められ、俺はしっかり感じてしまった。
――ヤ。ヤなのに、気持ち、イイ……。
指の間を舌でなぞられ、俺の体は自然と振るえた。
「萩原ぁ……」
たまらなくなって俺は萩原の名前を呼んだ。萩原は俺がなにを求めているのか察してくれて、隠しようもなく反応し、先端から雫を零している俺の中心に指を絡めてくれた。
「あ…んっ……ああ……」
直接触れられ、俺は甘い声で喘いだ。萩原の手淫は巧みだ。まだ数えるほどしかこーゆーことしてないはずなのに、どうしてこんなに的確に、俺のイイとこを責めてくるんだろう?
萩原は俺の前を刺激しながら、後ろにも触れてきた。昨日と同じようにローションをたっぷりとつけ、指を後ろに入れてきた。前を弄られながらだったので、指が潜り込んできても気にならなかった。萩原の指は俺が感じるポイントを覚えていて、俺は二箇所から追い上げられ、とうとうイってしまった。
俺の息が整うより早く、萩原は俺の体をひっくり返した。そして背後から指じゃなく、もっと熱くて太いものを挿入してきた。
「あっ……ソコ……!」
「…………ここだな」
萩原は奥まで無理に入れたりせず、浅い部分で出し入れを始めた。萩原の先端がちょうどよく俺のイイ部分にあたり、俺は髪を振り乱して悦んだ。腰が自然と揺れていたが、それを恥ずかしいと思う余裕なんてない。
――イイ……スゴイ……!
「ああっ……あっ……ああっ……」
これ以上はないと思うたび、さらなる快感が俺を襲う。前を触られてもいないのに、俺は後ろだけで感じて、萩原の思い通りにベッドの上で善がり続けた。
ゆっくりかと思えば速いテンポで突かれ、翻弄される。
「ふっ……ああ……あんっ……」
めちゃめちゃに感じていたときに突然引き抜かれ、俺は思わず泣いてしまった。
「やっ……。萩原、抜いちゃイヤ……」
萩原は目に激しい欲望を滲ませたまま、安心させるように俺に微笑みかけた。
「十夜、今度は仰向けになって。十夜の顔を見ながらイきたい」
「……うん」
――どうしよう。すごくすごくすごく萩原が欲しい……。
俺は萩原の言われたとおりに仰向けになり、挿入しやすいように足を大きく開いた。
「萩原……早くぅ……」
口から自然とオネダリの言葉が漏れる。
――恥ずかしい。
でも、萩原のことが欲しくて。萩原の熱を内部に取り込みたくて、俺は我慢できなかった。
「早く……お願い……」
「ああ。分かってる」
萩原は俺の体をキツク抱きしめながら、もう一度、俺の中に入ってきた。足りなかったものをやっと得ることが出来て俺はほっとした。
「んっ……萩原の……気持ち……イイ……」
俺の言葉に萩原は嬉しそうな顔をした。そしてゆっくりと動き始めた。
「ああっ……イイ……イイ……!」
俺の後ろがすっかり馴染んだことを見て取り、萩原はだんだんと腰の動きを激しいものに変えた。浅い部分で抜き差しいている萩原が、たまに奥までずずっと入り込んでくる。
俺は萩原の背中に爪を立て、とめどなく快楽の声を上げた。
「もっ……ダメぇ……。俺、イク……!!」
内部の萩原をきゅぅっと締め付けながら、俺は強烈な快楽の中で欲望を吹き上げた。
萩原も同時にイったみたいだった。
欲望の波が去り正気に戻ると、俺は不安になった。
「どうしよう……。まだ二回目なのに、俺、スゴク感じちゃった……」
――俺って……ひょっとして淫乱?
それとも俺の体、どっかぶっ壊れちゃってるんじゃないだろうか?
さきほどの尋常とは思えない自分の痴態を思い出し、俺は怖くなった。
「俺は十夜が感じてくれると嬉しいぞ。十夜、すげぇ可愛かった」
萩原は俺の不安を取り除くように、俺の頬に唇を寄せてきた。指先は愛しそうに、俺の体を撫でている。
萩原が俺のことを、本気で可愛いって思ってくれていることが分かった。
唇にもキスしてくれた。
俺は嬉しくて笑った。
「ねぇ、萩原は? 萩原は気持ちよかった?」
「俺もめちゃめちゃ良かった」
萩原は真剣な顔で、秘密を打ち明けるように囁いた。
「えへ。…………嬉しい」
萩原はもう一度キスをくれた。今度はちょっと長めのキス。
――俺、萩原のこと、好きだな。萩原とえっち出来て良かった……。
「萩原は運動神経がいいから、えっちも上達するの、早いのかなあ? 気持ちよすぎて、俺、頭の中がぼうっとなっちゃったよ」
「体の相性がいいんだろ」
俺たちは顔を見合わせてくすくすと笑った。
昨日よりも萩原を近くに感じた。
恋人たちがどうして抱き合うのか、その理由を身をもって知った。
――スゴイ、俺。萩原とえっちしちゃったんだ!
萩原と体を繋げたという事実を再確認して、体の奥から喜びが沸きあがってきた。
――俺ってほんと、スゴイことしちゃったんだな……。
俺を愛しげに見下ろす萩原の視線がなんだか恥ずかしくて、俺は目をそらしてしまった。その途端、テーブルの上に乗っていたモノが目に入った。
「結局アレ、使わなかったね」
アレって言うのは、萩原が用意した大人のおもちゃのアレコレ。結局、半分以上は未使用のままだ。
「……あの、さあ。萩原が使いたかったら、使ってもいいからね?」
俺は顔を真っ赤にして、小さな声で言った。
――萩原、アレを用意したってことは、使いたかったってことだもんね。
「俺、萩原にだったらなんだってされてもいい……」
「十夜、そんなに可愛いいこと言うと、また襲うぞ?」
萩原は男らしい笑みを浮べて言った。
――やだな。またドキドキしちゃった。また……萩原のことが欲しくなっちゃった……。
俺は萩原の言葉に小さく頷いた。
「うん。……襲って。俺ってスケベかなぁ? 昨日からいっぱいしたのに、まだ萩原が欲しい……」
――こんなにスケベだと、萩原、呆れちゃう? でも、あんなにいっぱいシたのに、まだ体の奥が疼く……。
「……そんなに気持ちよかったか?」
萩原は俺の体を再びベッドの上に押し倒した。俺の上に伸し掛かってくる萩原の体の逞しさに俺は陶然としてしまう。
「気持ちよかったし、それに、俺、萩原のことが好きだし……。俺の上で動く萩原、色っぽくてカッコよくてどきどきした……」
「俺もいつもどきどきしてる。十夜がキレイで可愛いから」
「……嬉しい」
自分のことを綺麗だとか可愛いとは思えない。
でも。さ。
萩原の目に『俺』が綺麗で可愛く映ってるなら、すごく嬉しいと思う。
俺のことを愛してくれて、優しい恋人がいて、幸せだなあって思う。
俺は萩原の体にしがみついた。はしたないことに足を開き、萩原の腰に絡めた。
すぐに萩原が潜り込んできた。
そして始まる律動。
萩原に揺さぶられながら、俺は何度も己の幸福を噛み締めた。
「萩原、好き、好き、好き……」
「俺もだ。俺の十夜。愛してる……」
限界まで混ざり合って、俺たちは互いの体を貪りつくしたのだった。


俺は以前、萩原以外の人間が好きだった。
後輩の武藤のことが好きだった。
そのことが今では、遠い昔のことのように思える。
――萩原のことを好きになれてよかった。
萩原を幸せに出来てよかった。
萩原を愛して幸せになれてよかった。


――恋って、なんて素晴らしいものなんだろう。


萩原と愛し合って、そのことを俺は実感していた。
一度目の恋は叶わなかったけど、そのおかげで萩原と一緒にいられるから、無駄じゃなかったって思える。
二度目の『恋』の成就を祝って、俺は萩原の腕の中でにっこりと微笑んだのだった。


十夜編 終わり 萩原編へ続く
 
 
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