【恋ってね! 萩原×十夜 バカップル編 -01-】
 
 
【十夜視点】

俺、宮城十夜(みやしろ とおや)は、一本のビデオテープを呆然と眺めていた。
黒いケースに入っていた、ラベルも何も貼っていないビデオテープ。
ひっそりと箪笥の後ろに隠されていたのを偶然、掃除している最中に発見した。見覚えのないビデオテープに俺は首を傾げた。
……なにこれ?
不審に思った俺はビデオデッキにセットして、早速中身を確認した。
「これって……どういうこと?」
目にはまだ、先ほどのビデオの映像が焼きついている。
ビデオの出演者は二人。逞しい体をした俳優と、ほっそりとした、だが、胸だけは豊満な美しい女優。女優は裸の上に直接エプロンを着けていて、その女優の背後から俳優が……。
『あはんっ。イイ……スゴイっ! もっとめちゃめちゃに奥を突いてぇ!』
演技か本気かは分からないけど、女優のアノトキの声にびっくりして、俺はすぐにビデオを止めた。思いがけず男女のアレのシーンを見てしまって、俺は顔を羞恥に染めた。
つまり、このビデオテープは、アダルトビデオだったんだ。
「なんでこの部屋にこんなものがあるわけ???」
俺は当然、持ち込んだ覚えなんかない。
だったらもう一人の同居人がってことになるけど……。
でも、なんだって、こんなものを見る必要があるわけ?
俺は腹立たしいような哀しいような気持ちになった。



俺は高校を卒業してから、家を出て二人暮しを始めた。
 俺の同居人の名は萩原賢司(はぎわら けんじ)。高校時代の同級生だ。嬉しいことに、萩原とはずっと同じクラスだった。
高校生活の三年間のうち、最初の一年半は、萩原は俺の親友だった。そして最後の一年半、そして今、萩原は俺の恋人と呼ばれる存在になっていた。
萩原に最初告白されたとき、俺は困ったなあって思った。だってそのとき、俺には他に好きな人間がいたんだ。萩原とは全然違うタイプの子で、すっごく可愛い後輩の男の子のことが俺は好きだった。でもその男の子はなんと、萩原のことが好きだった。
いろいろあって、俺は他の人間に想いを残したまま、萩原と付き合うことになってしまった。
で、いろいろ悩んだんだけど、最後には萩原の激しい愛情に負けた。あのカッコよくて強い男が、俺が欲しいって泣くから、突き放せなくなった。俺の気持ちはゆっくりと、でも確実に、萩原のほうに振り向かされていった。
今では俺は、自信を持って萩原のことを好きだと言える。萩原も俺を大切にしてくれて、自分で言うのもなんだけど、俺たちは仲の良いカップルだ。
男同士だし将来のことを考えて不安になることもあるけれど、それでも萩原と一緒にいるのは幸せで、ずっとこのままでいられたらいいのにと思っている。
今年の春には二人して無事、同じ大学に入学し、同棲生活をスタートさせた。
大学生になってからまだ半年しか経っていないから、まだ新婚みたいなものだと思う。昨日も……その……すごかったし……。
え? なにがすごかったって? う。そ、それは……そのう……え、えっちが……。……萩原って、もう、なんだって、あんなにカッコイイんだろう……。萩原の力強い腕の中で愛されて、俺はもう、メロメロだった。萩原の胸に縋り付き、恥ずかしいぐらい喘いで善がって、最後のほうはワケが分からなくなっていた。いつものことなんだけど。
萩原とえっちするのって好き。
肉体的な快楽だけじゃなくって、萩原に愛されてるなあって実感できて、精神的にも満足できる。
昨夜も俺は、体の隅々まで愛されて、大満足だった。
「なのになのになのに! なんで萩原はこんなの見るのさーっ!!!」
………………………………………………………………。
………………………………………………………もしや。
…………………………………………考えたくないけど。
…………………………………………………まさか萩原。
…………………俺とのえっちに…………満足してない?
………………………………………………………………。
………………………………………………………………。
俺は萩原に気持ち良くして貰ってて、すっごく満足してるけど、萩原のほうはそうじゃないとか? ……うう。その可能性、俺、否定できないよ。萩原も「すげぇ良かった」って言ってくれるけど、萩原、優しいから、俺を気遣って言ってくれるだけかもしれないし。
「そ、そ、そういえば俺、体力続かなくて、途中で寝ちゃったことがある!」
しかもそれって、一回や二回じゃなかった気がする! 目を覚ましたら萩原が心配そうな顔をしてて、逆に謝られちゃったけど……。……この前、萩原に上に乗って動いて欲しいってお願いされたのに、恥ずかしくって断っちゃったし……。
………………………………………………………………。
…………………………………………………どうしよう。
「どうしよう、萩原、俺とのえっちに満足してなくて……それできっとこんなの見てるんだ!」
俺は慌てた。
だってさ、だってさあ。
疑うわけじゃないんだけど……もし萩原が、ビデオでも満足できなくて、他の人と浮気しちゃったら? しかも浮気相手のほうが俺よりぜんぜん良かったりしたら? ……俺、捨てられちゃう…………??
「そんなのイヤだっ!!!」
萩原は俺の恋人だ。
萩原は俺のものだ。
他のヤツになんて、渡したくない!!!
「俺、頑張る! 絶対に萩原を満足させて見せるから!!!」
萩原に、絶対に、浮気なんてさせない!
決意した俺は必需品を手に入れるため、即座に外出したのだった。



……よおし! これで萩原の心をしっかり繋ぎ止めておける、はず……?
買ってきたときは自信満々だったんだけど、実際、衣装を身に付け鏡で自分の姿を確認すると、自分の選択が間違っていたんじゃないかなって思い始めてきた。
だって……似合わない。
ものっすごく似合わない。
レースをたっぷり使ったフリフリエプロン姿の自分にがっかりして、俺は溜息をついた。エプロンの下は裸だ。つまりアダルトビデオの女優さんと同じ格好。裸エプロンってやつ。
あのビデオ見てたってことは、萩原、こーゆー趣向が好きなのかなあって……。
でもさあ、男の俺がこんな衣装を着ても、似合うはずがなかったんだよね。
我に返った俺はだんだんと恥ずかしくなってきた。男のクセにこんなの着てたらヘンタイさんじゃん? 萩原に見られたら、軽蔑されるか笑われるかのどっちかだよ!
俺は慌てて着替えようとした。
でもそこに、タイミング悪く萩原が帰ってきちゃったんだ!
「……十夜、その格好は……」
「わ。は、は、は、萩原っ」
俺は萩原の目から自分の体を隠そうとしたけど、狭い部屋だから隠れる場所なんてない。
……えーとえーとえーとえーとえーと。……ど、ど、ど、どうしよう……。
言葉が思いつかず、俺はただバカみたいに萩原の顔を見つめてしまった。
萩原も無言で俺の姿を眺めている。
きっと呆れちゃってるんだ。
……う〜。恥ずかしいっ。
俺はいたたまれなくなって服を身に付けようとした。
だが、そのとき、萩原がぽつりと呟いた。
「……すっげぇ色っぽい」
「…………え?」
萩原は乱暴に靴を脱ぎ捨て、大きな足取りで俺の傍までやってきた。そして俺の体をキツク抱きしめた。
「十夜、その姿は、俺のためだと理解していいのか?」
「あ。うん。そうだけど……」
……萩原を喜ばせるためだから、一応、萩原のためなのかな?
「こんな色っぽい格好して……。俺を誘ってるってことだよな?」
「あ。うん。そうなるのかな……」
……えーっと。そうだよね。萩原をその気にするために、俺って今、こんな格好しているんだよね?
そうだ。
俺はなんとしてでも、萩原に俺とのえっちで満足して貰おうって思ったんだ!
ようやく俺は、本来の目的を思い出した。
「あのね。俺、今日、萩原の言うこと、なんでも聞くから……」
「十夜……」
「俺を、好きにして?」
「十夜っ!」
萩原は俺の後頭部に手をやり、俺に深いキスを仕掛けてきた。俺は萩原の首に縋りつき、激しすぎる口付けを受け止めた。
「ああんっ……あっ……」
口付けの合間に俺の口から甘い声が漏れた。
……萩原ったら、キスしながら、俺のお尻の中に指を入れて来るんだもん。ヤダ。すごく気持ちいい……。
……あ。ダメダメダメダメ! 今日は俺が気持ちよくしてあげるんだから! 俺が気持ちよくなってる場合じゃないんだ!
俺はキスをしながら萩原のズボンの前に手を伸ばし、中からすっかり昂ぶっている萩原のモノを取り出した。そして萩原の愛撫に負けないように、俺も萩原のモノを手で扱いた。
「……十夜。今日は積極的なんだな。信じられねぇぐらい、可愛い……」
「お願い、萩原。萩原がして欲しいことなんでもするから、俺になにして欲しいか言って……?」
唇と唇が触れ合うぎりぎりのところで俺が囁くと、萩原はたまらないという顔をした。
「……舐めてくれよ。十夜が俺のを舐めるとこが見たい」
「……うん」
恥ずかしかったけど萩原に喜んでもらいたくて、俺は萩原の前に跪(ひざまず)いた。そして口を大きく開き、萩原を含んだ。全部入れるのはキツイから萩原の亀頭の部分だけを咥え、竿の部分は右手で擦った。
手を素早く前後に動かしながら、先の部分を念入りに愛撫する。残った左手では萩原の根本に付いている袋の部分を弄った。
同じ男だから、どこをどうすればいいか分かるんだよね。
男が感じる裏筋にも、俺はねっとりと舌を這わせた。
……萩原、ちゃんと気持ちよくなってくれてるかな?
俺は舌を出して萩原のモノをぺろぺろ舐めながら、上目遣いで萩原の表情を窺った。
「うっ……」
萩原は切なげな呻き声を上げた。目元は快楽のためか朱に染まっている。
……萩原の感じてる顔って、色っぽくて可愛いっ。もっと感じてもらいたいな。
俺は右手での愛撫をやめ、代わりに萩原を喉の奥まで咥え込んだ。そして激しいディープスロート。
「十夜……」
萩原は俺の後頭部をぐっと手で押さえ、喉の奥に突き立ててきた。そして俺の中にたっぷりと欲望の証を吐き出した。量が多くて苦しかったけど、俺はなんとかソレを飲み干した。
そして萩原のモノを軽く吸い、最後の一滴まで飲んだ。
……今日は口でヤるの頑張ったけど、どうかな?
俺はどきどきしながら萩原の顔を見上げた。
……ねぇ、どうだった? 気持ちよかった?
「すっっっっげぇ良かった」
俺の無言のプレッシャーが聞いたのかもしれない。俺の汚れた口元を手で拭いながら、萩原は力強い声で言った。
「ほんと? 良かった? えへ。萩原に気持ちよくなってもらいたくて、俺、頑張っちゃった」
「マジで良かった。十夜、可愛くてサイコーだぜ」
……えへへへへ。そこまで褒められると、とっても嬉しいかもしんない……。
俺はにこにこ笑いながら萩原に抱きついた。
よおし。もっと頑張って、萩原にヨくなってもらうんだ!
「あのね、萩原」
「ん?」
「あのね、あのね。今日は、俺が上に乗ってもいいかなあ?」
「…………え?」
「えっとね、恥ずかしくてずっとダメって言ってたんだけど……。その、騎乗位ってヤツ? 萩原のために、俺、頑張っちゃおうかな、なんて……」
萩原は信じられないものを見る目で俺を見た。
俺は心配になった。
……俺のほうから言い出すなんて、はしたなかったかなあ……。
「…………ダメ?」
「ダメじゃない! ぜんぜんダメじゃない! すぐヤろう。十夜の気が変わらないうちに!!」
「そ、そう?」
萩原の勢いに俺は驚いた。
……でも、どうやら萩原、喜んでくれてるみたいだし……。めちゃめちゃ恥ずかしいけど、頑張っちゃおっと! 上手く行くといいけど……。
押入れから布団を取り出し、萩原はいそいそと敷いた。
これからする初めての体位にどきどきしながら、俺は自分で自分の後ろにローションを塗りつけた。



……大丈夫かなあ。こんなふうにするの、初めてだし……。
ドキドキしながら仰向けになって寝転がっている萩原の体に跨った。萩原は全部服を脱ぎ、逞しい体を惜しげもなく晒している。萩原の体の中心に視線を流すと、ソレは雄雄しくそそり立っていた。
恥ずかしくて萩原の顔を見ることが出来ず、俺は視線を逸らしたまま腰を降ろそうとした。萩原のモノに手を添え、俺は自分の後ろにあてがった。だが、どうしても照れが勝って、それ以上の行為に俺は進むことができなかった。
「…………」
「…………十夜?」
萩原が焦れたように俺の名を呼ぶ。
「う、うん…………」
……………………………………………どうしよう。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………だめっ。や、やっぱり、恥ずかしいっ!!!
…………やっぱダメェェェェェェェェェっ!!!!!
…………だってやっぱ、恥ずかしい………………。
俺がやっぱり無理だと思って萩原の上からどこうとしたとき、萩原が下から突き上げてきた。
「あっ……」
萩原の先端が俺の中にめり込んできた。さらに腕を強く引かれ、俺の体はバランスを崩して萩原の上に座り込んでしまう。最奥まで萩原が一気に侵入してきた。
「――――――っ!!」
衝撃に俺は声にならない悲鳴を上げた。鈍い痛みが体中を支配する。何度も萩原を受け入れたことのある俺の後ろは傷つくことはなかったが、強引に押し広げられて軋んでいた。
「〜〜〜〜〜〜っ」
目を閉じて俺は痛みに耐えた。じんわりと涙が滲んだ。
何度も浅い呼吸を繰り返し、ようやく内部が萩原の大きさに馴染んできた。俺はそっと目を開けた。
「っ!」
萩原の強い眼差しとぶつかった。ずっと見られていたかと思うと恥ずかしくなった。
俺はエプロンの裾をきゅっと握り締め、羞恥に顔を赤くした。目には再び涙が浮かんできた。
……………………………………………恥ずかしい。
「十夜、動いて」
萩原が少し苛立ちを含んだ、急かすような口調で言った。
動かなきゃって思うんだけど、俺の体は強張ったままだ。恥ずかしさで頭がくらくらして死んでしまいそうだった。緊張で足が震えてきた。
萩原のことを気持ちよくしてあげたいと思ったのに、今、俺はこの場から逃げ出したくてしょうがなかった。
………………………………ヤダ。恥ずかしい……。
「……ごめん、萩原…………ダメ。俺、恥ずかしい……」
自分が情けなくて、俺はぽろぽろと涙を零した。自分から言い出しておいてなんて様だろう。バカだ。俺は。萩原もきっと呆れてる。
萩原に嫌われたかもしれないと思うと、涙が止まらなかった。
……何やってるんだろう……。俺って、バカ……。頑張ろうって思ったのに……。萩原、きっと、俺のことなんてイヤになった……。きっと嫌いになった……。
さっきまで幸せな気分だったのに、今はすごく哀しかった。
「……十夜」
腹筋だけで起き上がり、萩原は俺の体をそっと抱きしめた。そして慰めるように俺の頬に唇を這わせた。
「ごめん……萩原……俺……」
「十夜……可愛い……」
萩原は俺と体を繋げたまま体位を入れ替えた。布団の上に寝かされ、上から萩原が覆い被さってくる。萩原は俺の唇に唇を重ねながら、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「ん……あんっ……」
「十夜……俺の十夜……すげぇ可愛い……」
「ああんっ……あっ…あっ……ああっ……!」
だんだんと萩原の律動が速くなり、俺は追い上げられていった。
……ああ……。イイ……。気持ち……イイ……。
最初の目的も忘れ、俺は無我夢中で萩原を感じた。萩原は俺の内部を容赦なくえぐり、突き上げる。激しく揺さぶられ、俺はひっきりなしに甘く啼いた。新品だったエプロンは、俺の出したモノでべとべとに濡れ、よれよれになってしまった。だが、それを気にしている余裕なんてあるはずがない。
萩原は一度俺の中でイった後、今度は俺の背後から貫いてきた。俺は結合部に擦り付けるように腰を振ってしまった。萩原に犯されながら、自分も動くと信じられないほど気持ち良かった。
萩原からの攻めに体は燃え、萩原への愛情が俺の心を燃やした。
……熱い……。
熱で脳みそが蕩けてしまいそう。
快楽で体が蕩けてしまいそう。
「ひぃっ……んっ……アンッ……」
何度も極みに押し上げられ、最後に俺は、気絶するように眠ってしまったのだった。





【萩原視点】

「くそっ。遅くなっちまった……」
俺はイライラしながらバイトからの帰り道を急ぎ足で歩いていた。いつもならバイトが終わってすぐ帰宅するところなのだが、帰り際に同じバイトの女の子に引き止められたのだ。
「あの……萩原さん。ちょっと待ってください」
「…………なに?」
なんのために彼女が俺を引き止めたかはすぐに分かった。彼女の俺への態度はあからさまで、恋愛事に疎い俺でも、彼女が俺にバイト仲間以上の好意を抱いていることには気が付いていた。
「あ、あの、私……………………」
彼女には悪いが告白の気配を漂わせつつ、一向に口を開こうとしないことに俺は苛立った。
なにせ家には最愛の恋人である十夜が待っているのだ。一刻も早く十夜の元へ帰りたい。
「用があるならさっさと言ってくれないか?」
我ながら凍てつくような冷ややかな口調だった。彼女は怯えたように、びくりと肩を震わせた。泣く一歩手前の顔をされてさすがに良心が痛んだが、どうせ彼女の気持ちには応えられない。
「わ、私、萩原さんのことが好きなんです……」
「俺、他に好きなヤツがいるから」
俺は即答して彼女に背を向けた。後ろから泣き声が聞こえたが、知るものか。
他の人間に親切にしている暇があったら今以上に十夜の事を大切にしたい。
……十夜……。すぐに帰るからな。お前の元へ……。
十夜。
愛しい愛しい俺の恋人。
高校時代、俺は一年以上も十夜に片想いしていた。けっして叶わない恋だと思っていた。好きで好きで好きでたまらないのに、この想いが報われないことが哀しかった。苦しくて辛かった。それでも十夜と出会えたことを悔やんだことなどなかった。傍にいられるだけで良かった。
だが、今は傍にいるだけでなく、十夜に触れることの出来る権利を手に入れ、俺は最大級の幸せを手に入れた。
初めて十夜が俺に好きだと言ってくれた日のことを、俺は一生忘れないだろう。
十夜との思い出はどれも掛け替えのないものばかりなのだが……。
十夜の笑顔を思い浮かべるだけで、俺の胸は温かいもので満たされる。
……十夜、早くお前を、俺の腕の中に抱きたい。麗しくて愛しい俺だけの天使……。
俺の脳裏には、さきほど決死の告白をされたことなど微塵も残っていなかった。頭の中を占めていたのは十夜のことだけだった。
最後のほうは駆け足で、俺は自分と恋人との愛の巣に戻ったのだった。



家に帰ると信じられないことが起こっていた。
……おいおいおいおいおいおいおいおい。一体これはなんなんだ? 夢か? 夢なのか??
……うおおおおおおおおっ。なんつー幸せな夢なんだっ!!!!!
……いやいやいやいや。これは夢じゃねぇ! 現実だ!! だが……幸せ過ぎて信じられん……。どんな心境の変化なんだ、十夜!? なにがあったんだ???
表情には出ていなかったが、俺の心の中では歓喜の嵐がごうごうと吹きまくっていた。
「……十夜、その格好は……」
清楚なデザインの、レースの白いエプロン。
それを十夜は身に付けていたのだ。
………………………………裸の上に、直接っ!!!!!
「わ。は、は、は、萩原っ」
激烈えっちくさい格好をした十夜は、顔を真っ赤にして恥ずかしがった。
……やべぇ。可愛すぎる……っ!!!!!!
楚々とした顔立ちの十夜に可憐なエプロンはひじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉに似合っているのだが、なんといっても下は裸。
ハダカ・エプロン。
ハダカエプロン。
裸・エプロン。
裸エプロン。
男の永遠の憧れっ!!!!!
それを、愛しの十夜がしているんだ!!!!!
「……すっげぇ色っぽい」
………いや、こんな言葉じゃ足りねぇな。
………………………………………………。
………………………………………………。
………………………………………………。
………………………………………………。
………………………………………………。
………………………………………………。
……くそう。十夜の可愛さと艶(つや)やかさを上手く表現する言葉が出てこないぜ!
……とにかく! 俺が今、どれだけ感動しているか分かるか!?
……くうううううううううううううううっ。幸せ過ぎて死にそうだぜ……。
「…………え?」
俺の言葉に十夜は軽く首をかしげた。
その仕草もめちゃめちゃ可愛い。誰がなんと言おうが、十夜は地球上で、いや、宇宙中で一番可愛い生き物だ。どこもかしこも可愛すぎる。
気がつけば俺は十夜の体をキツク抱きしめていた。
「十夜、その姿は、俺のためだと理解していいのか?」
つか、それ以外ねぇよな?
俺を喜ばせるために、その格好をしてくれているんだよな?
「こんな色っぽい格好して……。俺を誘ってるってことだよな?」
ってゆーか、それ以外の答えはないよな?
この状態でストップかけられたら、俺は地球を破壊し尽くすまで暴れてやるぜ。もちろんその場合も、十夜にだけは怪我なんてさせないけどな。
「あのね。俺、今日、萩原の言うこと、なんでも聞くから……」
「十夜……」
……おいおいおいおいおいおいおいおい。
今、この可愛くて愛しくてたまらない恋人さまは、なんつった?
なんでも言うことを聞く?
なんでも!?
あんなことも?
こんなことも!?
アレをやらせてもOKってことか!!!!????
「……………………………………」
……やばいぜ。妄想だけでイっちまいそうになっちまった。だがな、こんなとこで無駄撃ちする気はねぇんだよ。せっかく目の前に十夜がいるっつーのに。
「俺を、好きにして?」
好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして好きにして……………………。
俺の頭の中で、十夜の声が無限にリフレインした。
……うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!
……なんつーすごいことを言ってくれちゃうんだよ!!!!!!!
……たまんねーっ!!!!!!!!!
「十夜っ!」
俺は十夜の後頭部をしっかりと手で支え、激しいキスを仕掛けた。十夜は俺に応えようと、必死で俺の舌に舌を絡めようとしている。
……か・わ・い〜っ!!!!!!!!!!
キスをしながら俺は、十夜のまろやかな尻に手を伸ばして撫でた。十夜の臀部はすべすべで、いつまでも触っていたくなるような心地良さだ。



……俺、今なら死んでもいいぜ……。いや、今だからこそ、死ねないのか? こんな可愛い十夜を残して……。
「ああんっ……あっ……」
口付けの合間に十夜は甘い声を漏らした。俺が十夜の内部に指を入れたため、感じているのだ。ぐりぐりと中を人差し指で掻き回し、十夜の感じる場所を何度も刺激すると、十夜はますます色っぽい顔をした。
…………………………………たまんねー。
しかも十夜は俺の口付けを受けながら、震える手で俺のモノに手を伸ばしてきた。ズボンの中から俺のモノを取り出し、ソレにぎこちなく指を絡める。何度もしたはずの行為なのに、いまだ慣れない十夜の愛撫はいっそう俺の欲望を誘った。
「……十夜。今日は積極的なんだな。信じられねぇぐらい、可愛い……」
「お願い、萩原。萩原がして欲しいことなんでもするから、俺になにして欲しいか言って……?」
十夜は唇と唇が触れ合うぎりぎりのところで甘く可愛らしく囁いた。桜色の唇を、俺は思わず凝視してしまう。
……この可憐な唇に突っ込みてぇ……。
俺のモノはぷるぷると期待で振るえ、先端から熱い液を垂らしていた。下の口にも入れたいが、まずは上の口で可愛がってもらうことにした。
「……舐めてくれよ。十夜が俺のを舐めるとこが見たい」
「……うん」
十夜は恥ずかしそうに頬を染めながら、それでも大人しく俺の前に跪いた。そして口を大きく開け、俺の先端の部分に吸い付いた。
俺のモノを十夜が愛しそうに咥える姿は可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて、もうそれだけでイっちまいそうだったが、なんとか堪えた。ここで出したらもったいなさ過ぎる。たっぷりと十夜の可愛い姿を堪能しなくては。
十夜は指と口を使って一生懸命、俺に奉仕している。口でスルのも最初の頃と比べれば上達した。先端の部分をぴちゃぴちゃ舐めながら、竿や根元の部分を指で丁寧に愛撫している。
フェラをしながら、十夜は俺の顔を上目遣いで見てきた。口にはグロテスクなものを咥えているくせに、その表情はどこかあどけなくて、そのミスマッチが腰にずんと来た。
「うっ……」
……今のはすげぇキたぜ。そろそろ限界だな……。
十夜は指で俺の根本の部分を支えると、今度は深く俺を咥えて、頭を上下に激しく動かし始めた。喉の奥まで咥えて苦しいらしく、目にはうっすらと涙を滲ませている。前はよく歯が当たって痛かったが、今はそんなことはない。ただでさえ限界に近かった俺のモノは十夜の期待に応えてますます育っていった。
「十夜……」
俺は十夜の頭を抑え、喉の奥まで俺のモノを突っ込み、大量の液を吐き出した。
十夜は咳き込みながらもソレをなんと飲み下した。最後に俺のモノを舌で清めることも忘れない。
今日の十夜はいつもにも増して従順だ。
十夜は心配そうな顔で、俺を見上げてきた。俺がヨかったかどうか気になるのだろう。
イイに決まっている。
十夜にあそこまで尽くされて、ヨくないはずがない。
「すっっっっげぇ良かった」
俺が十夜の口元を拭いながら言うと、十夜は嬉しそうににっこりと笑った。裸エプロンという恐ろしくエロイ格好をしているくせに、その表情はまるで親に褒められて喜ぶ無邪気な子供のようだ。どんなにエッチなことをさせても十夜が汚れることはない。
純白の羽を背負った、清らかな俺の天使……。
「ほんと? 良かった? えへ。萩原に気持ちよくなってもらいたくて、俺、頑張っちゃった」
「マジで良かった。十夜、可愛くてサイコーだぜ」
俺が力説すると、十夜はますます嬉しそうに笑った。そして俺の体に抱きついてきた。
幸せそうに微笑みながら俺にしがみ付く十夜が可愛くて、俺のナニはまた元気になってきた。
「あのね、萩原」
「ん?」
「あのね、あのね。今日は、俺が上に乗ってもいいかなあ?」
「…………え?」
「えっとね、恥ずかしくてずっとダメって言ってたんだけど……。その、騎乗位ってヤツ? 萩原のために、俺、頑張っちゃおうかな、なんて……」
騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位騎乗位……。
……本気か? 本気なのか、十夜!? 本気で言っているのか!!!!!?????
騎乗位は俺が何度も頼み込んでも、恥ずかしいからと言って断られ続けているという幻の体位だ。無理強いするわけにもいかないので憧れを抱きつつ、俺は諦めていた。俺の上で動く十夜はさぞかしかーいらしーと思うと諦め切れないものがあったが、しつこくして十夜に嫌われるほうが怖い。
「…………ダメ?」
俺の沈黙を誤解したのか、十夜は悲しそうな顔をした。
「ダメじゃない! ぜんぜんダメじゃない! すぐヤろう。十夜の気が変わらないうちに!!」
慌てて俺は言った。このチャンスを逃してなるものか!
「そ、そう?」
俺の勢いに十夜は驚いた顔をした。
……十夜の気が変わる前に、とっとと始めるぜ。
押入れから布団を取り出し、俺はいそいそと床に敷いて準備をした。



さっさと服を脱ぎ捨て、俺は全裸になって布団の上に仰向けになった。
十夜は自分で自分の後ろにローションを塗りつけ、俺を受け入れる準備をしている。
手のひらにローションをたっぷりと取り、自分の後ろに指を挿入させている十夜の顔は、まさに真剣そのものだ。俺はその姿をたっぷりと堪能していた。
俺の邪な視線には気が付かず、十夜は作業に夢中になっている。
……すんげぇ可愛いよな……。自分で自分の中に指入れちゃって……。どんな卑猥なポーズを自分が取っているか、気がついてないんだろうな。
……まったく、信じられないぐらい可愛い生き物だぜ……。あいつが俺の恋人だなんて、いまだに夢みたいだ……。
内部にまでローションを塗り込めた十夜は恥ずかしそうに視線を彷徨わせながら、俺の体に跨った。
……いよいよだ。いよいよ十夜が……騎乗位を……。
俺は十夜の一挙一動をも見逃すまいと目を凝らした。
エプロンの裾に隠れて肝心な部分が見えない。だが、そのことが一層、俺の妄想を煽った。俺のナニはビンビンに立ち上がり、早く十夜の中に入りたいと期待に震えている。
十夜は俺のモノを後ろ手で掴み、自分の後ろにあてがった。俺の先端が十夜の窪みに触れる。俺はどきどきしながらその瞬間を待った。
ところが………………………………………………。
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…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
……おい〜っ! 十夜、ここまで来て焦らすなよっ!!!
いくら待っても、それ以上行為を進めようとしない十夜に俺は焦れた。
「…………十夜?」
「う、うん…………」
俺が促すように名前を呼ぶと、十夜は追い詰められたような顔をして、きゅっと唇を噛み締めた。
恥ずかしいのだろう。
これは十夜のほうから積極的に動かなければいけない体位だ。
何度も体を重ねたのに、まだまだコッチのほうでは十夜は奥手な部分がある。
その慎ましやかなところも十夜の魅力で俺は微笑ましいと思っているのだが、この場面でこんなふうに硬直するのはマジでカンベンして欲しい。
羞恥に涙を浮かばせ、恥らう十夜の姿は愛らしい。
だからこそ、なおさらツライ。
この状況は、かなり厳しい。
……くそうっ。耐えられんっ!!
十夜が自分から腰を落とすのを楽しみにしていたのだが……これ以上、我慢できるかっ!!!!
俺は下からぐいっと突き上げた。
「あっ……」
先端が十夜の中に潜り込む。十夜が切ない表情で悲鳴を上げた。
俺は十夜の体を強く引き、さらに下から深々と突き刺した。
「〜〜〜〜〜〜っ」
いきなりの挿入に、十夜は苦しそうな辛そうな顔をした。
すぐにでも十夜の内部を掻き回したかったが、俺は十夜が慣れるまでそのままの体勢で待った。あまり無茶をして怯えさせては可哀相だ。
……そろそろ、いいか?
「十夜、動いて」
頃合を見計らい、俺は十夜に言った。
俺の言葉に十夜は顔を真っ赤にして涙をぽろぽろ流した。十夜の足は、緊張のためか震えていた。
「……ごめん、萩原…………ダメ。俺、恥ずかしい……」
泣きながら十夜は、小さい声で俺に無理だと訴えた。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
…………………………………………………………。
………………………………………………やられた。
……十夜、お前は、なんでそんなに可愛いんだよっ!
……………………………今のは、すげぇ、やられた。
……心臓、撃ち抜かれたって感じ。ズキュンときた。
……狙ってやってんじゃねぇのが、十夜の凄いところなんだよな。
俺は繋がったまま上半身を起こし、十夜を優しく抱きしめた。
「……十夜」
……十夜、そんな哀しそうに泣くなよな。泣き顔も可愛いけれど、やっぱ笑って欲しいよな。
……知ってるか? 俺はお前がいるだけで幸せなんだぜ? 十夜、お前は? 俺はお前を幸せに出来ているか?
俺は十夜の涙を拭うように、十夜の頬に唇を這わせた。
「ごめん……萩原……俺……」
「十夜……可愛い……」
俺は十夜の中に入れたモノを抜くことなく、十夜を布団の上に押し倒した。騎乗位には未練があるが、十夜を慰めることが先決だ。十夜の心を傷つけてまで欲しいものなんてそう多くはない。
……もしお前が俺と別れたいと言っても、許さないけどな。それ以外だったら、お前が望むように俺は動いてやるよ……。
俺は十夜を快感の極みに押し上げるため、ゆっくりと腰を使い始めた。哀しげだった十夜の顔に、艶やかな色が浮かび始める。
「ん……あんっ……」
十夜は甘く喘ぎ、俺の首にしがみついた。
甘えるような無意識の仕草が嬉しい。
「十夜……俺の十夜……すげぇ可愛い……」
「ああんっ……あっ…あっ……ああっ……!」
十夜のイイ部分は覚えてる。初めてのときと比べると、俺も十夜を悦ばせるコツをかなり心得ていた。独りよがりのセックスになっていないか心配で、高校時代はソノ手の参考資料をいろいろと読み漁ったものだ。母方の叔父も同性を恋人に持つ人だったので、いろいろレクチャーを受けることが出来たのも幸いだった。
……ここ、だな。
俺は狙いを定めて徹底的に攻めた。
十夜は俺を中に入れたまま、何度でもイった。切なげに身を震わせながら、欲望を吐き出す十夜は可愛くて色っぽかった。十夜の表情は、逐一俺を魅了する。
……十夜……。俺の十夜……。
「あんっ……。萩原ぁ……」
十夜への愛情と独占欲。
男としての単純な性欲。
それらのものが綺麗に混ざり合い、俺の中で熱い奔流となった。
……十夜、俺のモノだ。愛してる……愛してる……。
前から貫きじっくり十夜を喘がせた後で、今度は後ろから挿入した。バックからの体位に変えると、十夜は俺の動きに合わせて腰を揺らしてくれた。だた一方的な、俺が奪うだけのセックスじゃないことに俺は安心する。十夜もまた、俺の体で快感を得たいと思ってくれているのだ。
「十夜、愛してる……」
濃厚なセックスに疲れ果て、眠りかけた十夜の耳元に俺はそっと囁いた。十夜は閉じかけた目を開き、にっこりと微笑んだ。
「俺も、萩原のこと、愛してる……」
そして口元に笑みを浮べたまま、十夜は今度こそ眠ってしまった。
俺の腕の中で安心して眠る十夜を見ていたら、自然と涙が浮かんできた。
俺は何度でも感動する。宮城十夜が俺の腕の中にいるという奇跡に。
俺は十夜がいて幸せだ。だが十夜はきっと、俺ほど、俺がいることで、幸せにはなっていない。
そのことが少しだけ哀しくて泣けた。
……ごめんな、十夜。俺ばかりが幸せでさ。
努力はするから。
俺に出来る限りの、努力はするから。
だからお願いだから、ずっとこのまま一生、俺のそばで微笑み続けていて欲しい。
「十夜、愛してる」
聞く者のいない愛の告白は、暗闇の中で溶けて消えた。
 
 
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