【恋ってね! 萩原編  -01-】
 
天使がいるかと思った。



笑いたければ笑え。
だが俺は、あいつを初めて見かけたとき本気でそう思ったんだ。
入学式の日、式が行われる体育館に向かうため、俺は廊下を半ば駆け足で通り抜けようとしていた。思ったより電車の乗り換えに時間がかかった。あともう少しで式が始まってしまう。初日から遅刻、なんて悪目立ちしそうなことは、できれば避けたい。
「…………?」
廊下に面した中庭に、人が佇(たたず)んでいることに俺は気が付いた。上履きをチェックすると、俺と同じ緑色だ。ということは俺と同じ一年生だということになる。
……なんであいつ、あんなところでボーっとしているんだ?
同じ新入生ならもうすぐ式が始まってしまうはずだ。俺がこんなに慌てているというのに、どうしてあんなにのんびりしているのだろう。
不思議に思って思わず足を止めて見ていると、あいつがゆっくり俺のほうを振り返った。
「……………………………………!」
俺は、一瞬、言葉を失った。
あまりにもあいつが綺麗だったからだ。
……天使だ……。
俺はばかみたいに、あいつに見とれてしまった。あいつは俺の姿を発見し、心から嬉しそうな笑みを浮べた。
どきん。
あいつの笑顔を見たとたん、心臓が大きく跳ねた。
……なんでそんな顔で笑うんだ? そんなに嬉しそうな顔で……。
「あー、よかった! 俺と同じ新入生だよね? 俺、迷子になっちゃってさ。体育館までどうやって行けばいいか分かる?」
「……………………………………」
……………………………………………………迷子かよっ!!!
天使は恐ろしく、大ぼけな性格をしていたのだった……。



「俺、宮城十夜(みやしろ とおや)。君は?」
「……萩原賢司(はぎわら けんじ)」
「ふーん。男らしくていい名前だね。男らしくてカッコイイのは名前だけじゃないけどさ!萩原くん、モテるでしょ。男らしくて凛々しい顔立ちでさぁ、羨ましいよ。俺、十夜って名前、あんま好きじゃないんだよねー。親には悪いけど、ただでさえ俺、女顔じゃん? なんか、よりなよなよしいっつーか……」
「……その顔で玉三郎と付けられるよりマシだと思うが?」
「あはははは! たしかに! 萩原くんって面白いね」
「くん、は付けなくていい。萩原で」
「そう? じゃあ、俺のことも呼び捨てで。ねぇ、萩原、どこのクラス? 俺、B組。一緒のクラスだと嬉しいな」
黙っていれば文句なしの美貌の持ち主なのだが、天使と見まがうばかりの外見とは裏腹に、宮城はけっして大人しい性格ではなかった。半ば駆け足で体育館に行くまでの間、宮城はにこにこと微笑みながら機関銃のように喋り続けた。
……お前、遅れそうなんだから、ちっとは慌てろよっ!
「…………俺もB組だ」
内心イラっとしつつ、無視するのも悪い気がして、仕方なく俺は返事をした。
「わーい。嬉しいな! あ。体育館だ。時間に間に合いそうだね。よかった。新入生代表が遅れたらシャレになんないもんね!」
…………………………………………新入生、代表?
……と、いうことは……。
「お前、入試でトップだったのかっ!?」
俺は驚き、まじまじと宮城の顔を眺めてしまった。
この高校は学区ではトップだ。いわゆる超進学校というヤツである。俺は中学時代、学年で5位前後の成績を維持していたが、それでもこの高校に入るためにそうとう勉強した。ずっとガリ勉生活を送っていたので友達と派手に遊ぶこともあまりなかったし、恋愛などもってのほかだった。意外と思われることが多いのだが、女子から告白されたことは何度かあったが、彼女を作ったことは中学時代に一度もなかった。そんな余裕はこれっぽっちもなかったのだ。この高校は父親の母校で、「面白い学校だった」と父親が子供の頃から自慢話を繰り返すから、つい俺もその気になってしまった。今思えば、あれは子供に勉強させようとする親の策略だったのかもしれない……。
そんな俺の家庭事情は置いておいて、俺がそこまで必死に勉強して入った高校に、この目の前の男は一番で入学したのだ。
綺麗ではあるがふんわりした雰囲気の宮城は、とても頭が切れるタイプには見えない。
俺はにわかには信じられなかった。
「うん。そうみたい」
宮城は気負うところもなくあっさりと頷いた。
もし宮城が自分の頭のよさを自慢するところが少しでもあれば、俺はすぐさまこの天使に幻滅できただろう。だがあいにく、宮城にはそんな態度は微塵もなかった。
俺はうっかり、宮城に好意を抱いてしまった。
……こいつとは、いい友達になれるかもな。
「う〜。新入生代表の挨拶、ヤダなー。俺、人前で話すの苦手なのにな〜」
「……辞退すればよかったのに」
「その手があったか! でも俺、頼まれごとを断るのも苦手なんだよね〜」
宮城は舞台に上がることを心から嫌がっているようだった。綺麗な顔が辛そうに歪むのを見て、出来ることなら俺が代わってやりたいと思った。大勢の前で話すのが得意というわけではないが、それが苦痛になるほど苦手というほどでもない。だが、そういうわけにもいかないので、俺は宮城に励ましの言葉を送った。
「安心しろ。新入生代表の挨拶なんて、ほとんどの人間がまじめに聞いていない」
「……萩原……ヒドイ……」
宮城は傷ついた顔をした。励ますつもりだったが、どうやら逆に突き落としてしまったらしい。
すまん、宮城。悪気はなかった。
「ううううう。俺が失敗したら、萩原のせいだからな〜」
宮城は目にうっすらと涙をため、拗ねた表情で俺を睨んだ。
……カワイイ。
俺は自分の思考に自分で慌てた。
男相手にカワイイって感想はおかしくないか?
可愛くて可愛くて、胸のあたりがむずむずするなんて変じゃないか?
宮城は、身長は俺と変わらないぐらいだが、男にしては線が細いし顔もキレイだ。あまりにも男っぽくないから、勘違い的にときめいてしまったのだ。ほんのちょっぴり気が迷っただけだ。
きっとそうに違いないと無理やり自分を納得させようとしたが、一目惚れだったと諦めにも似た気持ちで認めるのに、そう長い時間はかからなかった……。



「萩原って、健気だよな」
クラスメートの春日登(かすがのぼる)がしみじみといった口調で言った。
「……なんだそれは?」
「正直言って、お前ってば顔はいいし頭はいいし運動神経はいいし高校一年生だっつーのにみょーに落ち着きあって、出来すぎでむかつくやろーだと思ってたんだよな」
……ほー。春日、俺のことをむかつくやろーだと思っていたんだな。
俺の冷たい視線に気づかず、春日はなおも言葉を続けた。
「だがっ! 宮城にたいするお前の献身的な姿を見て、俺たちは考えを改めた!」
……俺たち?
複数形かよ。誰と誰のことだよ……。
「尽くしても尽くしても、宮城のヤツ鈍いから、萩原の気持ちにこれっぽっちも気づいてねぇもんな。最初はわざと気づかない振りしてんのかと思ったけど、ほんとーに性格が天然なだけらしいし。そんな宮城の鈍さにめげずに一途に宮城を想い続ける萩原っ! 俺たちはお前の姿を涙なしでは見れないぜっ!!」
「…………」
じゃあ見るなよ、という気持ちを込めて冷ややかな視線を春日に向けるが、ヤツは気にせず熱弁を振るい続けた。
「で、俺たちは決意した! 萩原の恋が報われるようにできるかぎりの努力をしようと! 男同士だろうが、関係ないっ! お前と宮城だったら超オッケーだとクラスの女子も言っている!!」
「……ちょっと待て、春日。俺たちって、誰と誰のことなんだ?」
俺はようやく口を挟み、気になっていたことを問いただした。
「はっはっは。もちろん宮城と萩原を除いた1年B組全員さっ! お前たちのおかげで、うちのクラス、学年のなかで一番団結力が強いんだぜ!」
言われてみれば、覚えがあった。
宮城と俺が二人で話しているときは、他のクラスメートは話しかけてくるどころか近づいても来なかった。授業で二人組みになるときも、宮城を誘うとするヤツは一人もいず、どうして人気者の宮城と積極的に組もうとするクラスメートがいないのか不思議だったが、それはこういう訳だったのか……。
「俺たちはお前の味方だからな。頑張れよ!」
「ありがとう」
素直に俺は頭を下げた。
……これで少なくとも、クラスにライバルはいないわけだ。
俺はほっと息を吐いた。
本人にはほんのわずかの自覚もないが、宮城十夜は男女問わずよくモテる。あれほど美しい容姿をしていて頭もよく、天然ボケではあるが性格はこれでもかというぐらいに優しい。俺は、宮城が他人に対して怒ったり、悪口を言うところを見たことがなかった。
宮城は密かに『天使』と呼ばれていることを俺は知っている。宮城を『天使』のようだと思ったのは、自分だけではなかったのだ。姿かたちだけでなく、その中身も宮城は無垢で純粋で天使のようだ。
自分の惚れている人間が人気者というのは、なかなか辛いものがある。宮城への想いを自覚して以来、俺は気が気ではなかった。
女子や見ているだけで満足、という輩(やから)だけなら問題ないが、中には力づくで宮城をモノにしようとするやつらもいる。俺は宮城の知らないところで宮城に悪さをしようとするものどもを、情け容赦なく殴り倒してきた。
中には屈強な三年の男子もいた。同じ学校内だけとは限らず、近くにあるガラの悪い男子校の、これまたガラの悪い不良グループだったこともあった。
だが、怖いと思ったことも臆したことも一度も無かった。怖いのは、宮城を奪われること。高校に入学し、宮城に恋して以来、すっかり喧嘩慣れして腕っ節が強くなってしまった。
経験上、喧嘩に勝つのに必要なのは腕力ではなく、『覚悟』なのだとつくづく思う。けして大げさではなく死ぬかもしれないと思ったことも何度かあったが、かろうじて今まで負けることもなく名をあげ続け、ついについたあだ名が『帝王』。
自分が影でなんと呼ばれているか知ったとき、不本意だと思った。『帝王』とはいかにも偉そうで、不遜じゃないか? 一年生ふぜいがそんな呼ばれ方をしていいものだろうか? 俺は分をわきまえた、慎ましやかな人間なのだ。
だが、いいこともあった。『天使』は『帝王』のお手つきだという噂が流れ、宮城に手を出そうという愚か者は激減した。……完全に不埒者がいなくなったわけではないあたりが、俺が『帝王』と呼ばれ続け、宮城が『天使』と呼ばれるゆえんなのだが。
……それにしてもクラス中にばれているとは。そんなに俺の態度って露骨だったのかね? ……露骨だっただろうな。自分でも恥ずかしいほどなりふり構ってないもんな。にもかかわらず、宮城のヤツ、ちっとも気がつかないってのはどういうことだ?
答。完全に眼中外……。
「……俺ってけっこう可哀相かも」
前途多難な片想いに、俺は深いため息を付いたのだった。



宮城への想いを自覚してから半年後、母親から勘当された。
さっさと彼女を作って家に連れて来いといった母親に、俺はゲイだから彼氏ならともかく彼女は無理だと答えたことが原因だった。
なにもバカ正直に答える必要もなかったのだが……一言で言えば、血迷ったんだな。本人に言えない自分の想いを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。告白欲というヤツである。だが、告白する相手を間違えてしまったため、大事に発展してしまった。
いやはや。俺もヤキが回ったものだ。
「ヒドイっ! けんちゃんに彼女が出来たら、一緒にお買い物行くのを楽しみにしてたのにっ!! 男の子の『彼女』じゃ、スカート一枚買ってあげられないじゃないのっ!!!」
……母よ。怒る論点がずれてないか?
嘆く母の気持ちも分からなくもないが。
昔から女の子が欲しかった母は、よく俺の顔を見て「娘が欲しかった……」と恨めしげに呟いたものだ。
……男であることはそれほど罪ですか、お母さん?
我ながらよくぐれなかったものである。
男の子なんてつまらないっ! とのたまった母は、俺がまだ小さかった頃、俺に無理やり女の子の格好をさせていた。あの頃の写真は門外不出だ。小学校を卒業するまで……さすがに女装させられるのは家の中でだけだったが……俺はワンピースやスカートを履かせられていた。
しかし中学校に上がってからは俺も身長が伸び体格も変わって、どう贔屓目に見ても可愛らしい格好が似合わなくなってしまった。そこでようやく俺は母親の魔の手から逃れることが出来たのである。
「似合わないのに着せてもつまらないっ!」
とことん我儘(わがまま)で身勝手な母だ。
こんな女を妻にした父を、俺はある意味尊敬している。
正直言って究極に悪趣味だとも思っているが。
……あんな性格でも美人は美人だからな。壊滅的な性格を美貌でカバーしてるってとこかな。
父親は間違いなく面食いなのだろう。そしてその性質は、息子である自分にも脈々と受け継がれていた。
「けんちゃんの顔なんて、しばらく見たくないっ!」
「分かった」
母の言葉に俺は神妙に頷いた。アブノーマルな息子を前に、取り乱す母の姿に罪悪感を覚えないことも無い。ほんの少しだけだが。
で、俺は結局、家を出て一人暮らしをすることになった。バイトをして家賃、生活費、その他もろもろをすべて自分でまかなおうとしたが、父が学費と家賃ぐらいは出させてくれと懇願するので、甘えることにした。この年齢で自活と言うのも、正直厳しい。
……父さんも大変だよな。息子と妻に振り回されて……。
せめて生活費は自分で稼ぐことにした。
バイトは母の弟、俺にとっては叔父にあたる人物が開いているお店ですることになった。最初、バイト先ぐらい自分で捜そうかと思ったが、これまた父が知り合いのお店のほうが安心だと懇願してきたためしぶしぶ承知した。
息子が好きな人間が男だということで、父にはずいぶんとストレスがかかっているに違いない。両親にこれ以上に心労をかけるのは自分の本意ではない。譲れるところは譲るべきだろうと俺は思っていた。
「賢司……。同性に片想いしてるって両親に告白するの、勇気がいっただろう? よほどその子に本気なんだね。叔父さんもできる限り協力するから」
……いや、別に勇気とかそんなんじゃなく、ほとんどその場の勢いだったんだが……。
しかし目を潤ませてすっかり感動モードにはいっている叔父に水を差すのもなんだったので、俺は無言で曖昧な笑みを浮べた。
俺の態度をどう受け取ったか知らないが、叔父はますます感動していた。こんなに人がいい叔父が、あの母親の実の弟とは信じがたい。
……姉があんなんだから、弟がこうなったのかねぇ?
かくて、俺の一人暮らし生活はこうしてスタートしたのであった。





春から夏。そして秋を通り過ぎ、今は冬休み二日目である。
つまり、クリスマスイブだ。
相変わらず俺は宮城に片想いし続けていて、鈍い宮城はそれにまったく気付かないでいた。もし俺の気持ちに気付かれたら、俺は今までどおり宮城のそばにいられなくなるかもしれない。だが、ここまで気付いてもらえないのも、宮城にとって自分がまるっきり恋愛対象外であることを思い知らされてこれはこれでツライ。
宮城が男で、俺も同じ男であることを差し引いても、鈍すぎないか、宮城? フツーは、もうちょっとこう、感じ取るものがあると思うのだが……。
「あーあ。周りはカップルばっかりだっていうのに、男同士だなんてちょっと虚しいよね」
……ぐっさり。
宮城の言葉は俺の心臓に深く突き刺さった。俺は密かにこのビックイベントを宮城と二人っきりで迎えられることを喜んでいたのだが、宮城はそうではないのだ。クリスマスイブに二人きりで映画を見て買い物をして。恋人気分を味わっていた俺に、今の言葉は堪えた。
……ヒドクないか? 宮城……。
俺はそうとう傷ついていた。情けないことに涙が出そうだったが、俺は必死で平静を装った。宮城にとって何気ない一言に傷つき、それを本人に気付かれるなんて、俺のプライドが許さなかった。
「でもさ、萩原と一緒にいるの、楽しいからまあいいかな」
俺に気を使っているというわけでもなく、宮城はにっこり微笑みながら言った。
……ヤバイ。俺、単純な男かも。今ので一気に幸せになったぞ……。
俺に向かってにこにこと笑っている宮城は頭からばりばり食べてしまいそうなほど可愛くて、そのまま抱き寄せてキスしたいような気分になった。残念ながら、実行に移してしまえるほど俺の理性の砦は脆くはなかったが。
「それにしても、萩原に彼女がいないなんて不思議。男の俺から見ても萩原ってカッコイイし。萩原すっごくモテるじゃん。なんで彼女作らないの?」
……それはな、俺がお前のことを好きだからだよ。
俺は心の中でこっそり本当の答えを口にした。
「……別に。理由なんてないさ」
「ふうん? 萩原の彼女になるこってどんな子かな。ちょっと楽しみかも」
……ざくっ。
再び気分急降下。
宮城、俺の彼女なんて楽しみにするんじゃない! お前がいる限り、俺が他の人間に恋する可能性は限りなく低いんだから。
「ねぇ、萩原。もしサンタクロースにプレゼントをお願いするならなにを頼む?」
唐突な話題転換。
宮城と話していて突然話が変わるのは珍しいことではない。おしゃべりな宮城は目をきらきらと輝かせながらいろいろな話題を口にする。
理路整然と話すのではなく感性で喋る。
表情をくるくる変えながら、宮城がいきいきと話している姿を見るのが俺は好きだ。
宮城は可愛い。
容姿はキレイという形容詞が似合うのだが、中身は純粋で子供っぽくて無邪気で可愛い。
可愛くて可愛くて、俺はどうにかなってしまいそうだった。
「……なにいきなり、子供みたいな質問してるんだよ」
内心を押し隠し、俺は出来る限り平静な口調を装った。
「いーじゃん。夢のある話でしょ? 萩原だったらなにを頼む?」
お前、なんて言えないから、ちょっと考えてから無難な答えを口にした。
「……金」
「オカネ〜? なんだよ! 萩原ってば超現実的―っ!」
「じゃあ、宮城だったらなにを頼むんだよ?」
「んー。そりゃスケールでかく『世界平和』!」
「…………アホか」
「むぅー。アホじゃないやいっ」
宮城はちょっとむっとした顔をした。拗ねた顔も可愛いと、俺は思わず見とれてしまった。
……『世界平和』ね。他の人間が口にしたら偽善だと思うけど、宮城の場合はけっこう本気なんだよな……。
俺が諦めてしまっていることを宮城は諦めていない。宮城は『人間』という生き物を、心から愛しているのだ。宮城は人の長所を探すのが上手い。宮城には、嫌いな人間はいないのだろう。
誰よりも美しい存在。姿も。心も。
宮城は人間の姿をした天使なのかもしれない。
人間は天使を手に入れることなどできないのだろうか?
もし、サンタクロースが本当にいるとしたら、俺が願うのはたった一つ。
どうか天使を俺にください。
絶対に幸せにしますから。
だがあいにく俺は、サンタクロースの存在など信じていない。
天使を前にして無力な人間である俺は、ただため息をつくしかないのであった。
 
 
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