乗車券/定期券

分割購入

 普通乗車券を購入する場合、普通に買うよりも何枚かに分割して購入する方が安くなる場合があります。これはJRの運賃体系には様々な盲点があって、キロ当たり運賃が逆転するケースあるためです。
 分割して安くする方法には以下の5通りあります。
  1. キロ当たり運賃が安い11〜15km区間(15円33銭)等のきっぷを組み合わせる(キロあたり運賃逆転)
  2. 運賃が安く定められている「特定区間」を組み合わせる(特定区間)
  3. もう少し全体の距離が短ければ1段階安い運賃となる場合、1段階安い運賃の乗車券とはみ出す部分の乗車券に分ける(超過分切り落とし)
  4. もう少し全体の距離が短ければ手前にある特定市内に差し掛かる場合、その特定市内までの乗車券と特定市内の先端から目的駅までの乗車券に分ける(特定市内駅制度の有効利用)
  5. 目的駅がある特定市内に引っかかり、特定市内の中心駅までの運賃が目的駅までの距離から算出した運賃を上回る場合、特定区間の手前にある駅まで乗車券とその駅から目的駅までの乗車券に分ける(特定市内の回避)
 例として大阪−東京の場合を挙げると、大阪−京都、京都−大津、大津−横浜市内、川崎−東京と4枚に買うと140円安くなります。大阪−京都は2.の特定区間、川崎−東京は4.の特定市内駅制度の有効利用で、残る京都市内−横浜市内については3.の超過分(京都−大津)切り落とし、ということになるのです。
 5.は4.の逆パターンと考えるといいでしょう。2.も1.の一種ですが、特定区間の場合は区間に限りがあること、割引額が相当大きいことから別としました。では、順を追って説明します。

1.キロ当たり運賃が安い11〜15km区間(15円33銭)等のきっぷを組み合わせる
 (キロあたり運賃逆転)

 まず、JRの運賃体系は案外単純でして、区間の距離に対する賃率から算出する方法で構成されております。順を追って説明します。
 区間の距離に対する賃率は表の通りとなっています。
10kmを超え300km以下の区間\16.20/km
300kmを超え600km以下の区間\12.85/km
600kmを超える区間\7.05/km
 次に、この賃率計算に用いる距離ですが、同一運賃となる区間の中間に相当する距離を用います。つまり、11km〜50kmでは13km、18km、…、48km(5kmきざみ)、51km〜100kmでは55km、65km、…、95km(10kmきざみ)、101km〜600kmでは110km、130km、…、590km(20kmきざみ)、601km以上は620km、660km、…(40kmきざみ)となります。
 そして、運賃については、上の方法で賃率計算をした値に対して、
  • 100kmを超える場合、100円未満を49捨50入して求めた額(100円単位)
  • 100km以下の場合、10円未満の端数を10円単位に切り上げた額
    に、消費税相当分(5%)について10円未満を四捨五入したものを加えた額となっています。
     つまり、221〜240kmのきっぷを買うと賃率は230kmで計算するので230km分の運賃を払っていることになります。
     簡単に言うと、239kmだと230km分の運賃なのに、241kmだと250km分の運賃になるので逆転現象が起こる、というわけなのですが、キロ当たり運賃の逆転現象については分かりにくいかも知れません。そこで、同一運賃帯において最大となる距離におけるキロ当たり運賃を下記にまとめます。
    幹線の営業キロ普通運賃キロ当たり運賃幹線の営業キロ普通運賃キロ当たり運賃
    1〜 3km\140\46.67301〜320km\5,250\16.41
    4〜 6km\180\30.00321〜340km\5,460\16.06
    7〜 10km\190\19.00341〜360km\5,780\16.06
    11〜 15km\230\15.33361〜380km\6,090\16.03
    15〜 20km\320\16.00381〜400km\6,300\15.75
    21〜 25km\400\16.00401〜420km\6,620\15.76
    26〜 30km\480\16.00421〜440km\6,830\15.52
    31〜 35km\570\16.29441〜460km\7,140\15.52
    36〜 40km\650\16.25461〜480km\7,350\15.31
    41〜 45km\740\16.44481〜500km\7,670\15.34
    46〜 50km\820\16.40501〜520km\7,980\15.35
    51〜 60km\950\15.83521〜540km\8,190\15.17
    61〜 70km\1,110\15.86541〜560km\8,510\15.20
    71〜 80km\1,280\16.00561〜580km\8,720\15.03
    81〜 90km\1,450\16.11581〜600km\9,030\15.05
    91〜100km\1,620\16.20601〜640km\9,350\14.61
    101〜120km\1,890\15.75641〜680km\9,560\14.06
    121〜140km\2,210\15.79681〜720km\9,870\13.71
    141〜160km\2,520\15.75721〜760km\10,190\13.41
    161〜180km\2,940\16.33761〜800km\10,500\13.13
    181〜200km\3,260\16.30801〜840km\10,820\12.88
    201〜220km\3,570\16.23841〜880km\11,030\12.53
    221〜240km\3,890\16.21881〜920km\11,340\12.33
    241〜260km\4,310\16.58921〜960km\11,660\12.15
    261〜280km\4,620\16.50961〜1000km\11,970\11.97
    281〜300km\4,940\16.47

     この表を見て面白いのは、460kmまでの区間で最もキロ当たり運賃が安いのは11〜15km区間(230円区間)であるという点です。この区間のキロ当たり運賃は15円33銭と突出して安いのです。また、16kmから420kmまでの区間では15円台後半から16円台中半で推移していますが、この中では101〜120km区間(1,890円区間)と141〜160km区間(2,520円区間)は15円75銭と安いので、120km地点や160km地点で分割すると安くなることが多いのです。
    全体の行程が220〜300kmでしたら、キロ当たり16円50銭程度と高いので、分割する方が安くなるという区間が概ね存在します。300kmを超えると前述の賃率が下がるため、分割の効果が低減し、ある距離を越えるとこの方法は使えなくなります。
     この方法で乗車券を分割する場合、キロあたりの運賃が最も安い15kmずつで分けたほうが安いのですが、当然、駅間が15kmちょうどという区間は少なく、幾分はロスが出てきます。ですから、実際上は比較的安い区間(キロ当たり運賃が16円までの区間)を組み合わせると安くなりやすいです。101〜120km区間や141〜160km区間を組み合わせると必要枚数も少なくなるので、購入時は楽かと思います。

    例1:金沢−京都の場合

     金沢−京都間の運賃は3,890円ですが、右のとおりに分けると3,610円となり、280円得します。
     初めの3つのきっぷが230円区間というのが効率がよい証拠です。金沢−小松のように480円区間は中間に適当な駅があると2分割で20円安くできるのです。これは定期券購入にも使用できます。  加賀温泉から先は適当な駅がなかったためこのようになりましたが、京都−丸岡間は160.0kmとちょうど2,520円となり、非常に効率が良いのです。
    (参考)一括購入3,890円
    金沢−加賀笠間230円
    加賀笠間−小松230円
    小松−加賀温泉230円
    加賀温泉−丸岡400円
    丸岡−京都2,520円
    分割購入3,610円

    2.運賃が安く定められている「特定区間」を組み合わせる(特定区間)

     これは1.の変形とも言えます。「特定区間」は私鉄と競合する区間においてJRが運賃を安く設定している区間です。そのためキロあたりの運賃が非常に安いのが特徴で、特定区間でもある大阪−京都間のキロ当たり運賃は12円62銭と、840km相当の乗車券と同程度となっているため、大変お得です。また、大阪−東京間のように600km近い乗車券でも分割購入が活かせることも出てきます。
     また、より割引率の高い回数券や昼間特割きっぷ(平日10〜17時及び土曜・休日に使用可)との組み合わせもできます。特定区間の回数券は9回分の値段で11回分使えるところが多いのも特徴です。大阪−京都間で回数券を使った場合のキロあたりの運賃は10円32銭、昼間特割きっぷの場合は7円15円となります。
     この方法は「特定区間」をフル活用するだけでいいので、1.を検証する前に2.に相当する区間があればこちらから優先して行うと良いでしょう。

    例2:大阪−名古屋の場合

     大阪−名古屋間の運賃は3,260円ですが、右のとおりに分けると2,880円となり、380円得します。
     名古屋−岐阜、京都−大阪の2枚が特定区間なので効率がよく、もとの乗車券よりも12%得します。特定区間が設定されているところは積極的に利用しましょう。  また、方向変更を用いると2,660円まで下げることができますが、ややこしいので後述します。
    (参考)一括購入3,260円
    大阪−京都540円
    京都−岐阜1,890円
    岐阜−名古屋450円
    分割購入2,880円

    3.もう少し全体の距離が短ければ1段階安い運賃となる場合、1段階安い運賃の乗車券とはみ
     出す部分の乗車券に分ける(超過分切り落とし)

     特定市内発着でない場合、全体の距離が400km程度以上ある場合にはこの方法で安くすることを考えます。まずは全体の距離に相当する運賃帯から一つ安い運賃帯の最大キロ数を調べ、この運賃でどこまで行けるかを出発駅と到着駅から調べ、距離の長い方を優先します。
     距離の長い方が出発駅からの乗車券となる場合は乗り越しでも対応できますが、逆の場合は残り分を旅行会社で購入することになります。
     なお、特定市内発着の場合は5.の方法となります。

    例3:福井−秋田の場合

     福井−秋田間の運賃は9,560円ですが、右のとおりに分けると9,540円となり、20円得します。
     特定市内や近郊区間に絡まない長距離乗車券の場合はほとんど安くなりません。1段階上がると運賃が310円上がるところで、140円区間と分割できたとして170円安くなるのが限界で、狙って安くできないのが欠点です。
    (参考)一括購入9,560円
    福井−春江190円
    春江−秋田9,350円
    分割購入9,540円

    4.もう少し全体の距離が短ければ手前にある特定市内に差し掛かる場合、特定市内までの
     乗車券と特定市内の先端から目的駅までの乗車券に分ける(特定市内駅制度の有効利用)

     経路の途中に特定市内があり、出発駅から、その特定市内の中心駅までの距離が200kmを超える場合(特定市内駅制度の適用条件)、出発駅からその特定市内までの運賃と、特定市内の出口の駅から目的駅までの運賃を組み合わせた方が安くなる場合もあります。全体が300km程度なら先端部で切らなくとも、全体の中間あたりで2分割しても特定市内を回避できます。特定市内に含まれる区間が長いほど有利なため、広島市内、神戸市内のように横に広い特定市内に近い駅の場合は有効です。

    例4:藤沢−朝霧の場合

     藤沢−朝霧間の運賃は8,510円ですが、右のとおりに分けると8,310円となり、200円得します。
     朝霧の隣の舞子は神戸市内なので、藤沢から神戸市内の乗車券を購入し、残りの舞子−朝霧を別にするのです。1枚目のきっぷで朝霧で乗り越した場合も請求されるのは120円です。
    (参考)一括購入8,510円
    藤沢−神戸市内8,190円
    舞子−朝霧120円
    分割購入8,310円

    5.目的駅がある特定市内に引っかかり、特定市内の中心駅までの運賃が目的駅までの距離
     から算出した運賃を上回る場合、特定区間の手前にある駅まで乗車券とその駅から目的駅
     までの乗車券に分ける(特定市内の回避)

     4.とは逆に、出発駅または目的駅が特定市内にあるため、特定市内制度の適用を回避するために特定市内の手前で分割する方法です。全体が300km程度なら特定市内付近ではなく、全体の中間あたりで2分割しても特定市内を回避できます。特定市内に含まれる区間が長いほど有利なため、広島市内、神戸市内のように横に広い特定市内に近い駅の場合は有効です。

    例5A:金沢−瀬野の場合

     金沢−瀬野(広島市内)間の運賃は9,350円ですが、右のとおりに分けると8,950円となり、400円得します。
     瀬野は広島市内にあるので、隣の八本松までの乗車券と分割するのです。金沢からの場合、八本松までの乗車券を乗り越してもOKです。
    (参考)一括購入9,350円
    金沢−八本松8,720円
    八本松−瀬野230円
    分割購入8,950円

    例5B:舞子−瀬野の場合

     舞子(神戸市内)−瀬野(広島市内)間の運賃は5,250円ですが、右のとおりに分けると4,410円となり、840円得します。16%もお得です。
     中間で2分割する場合、1,890円区間〜2,520円区間を利用すると効率的です。
    (参考)一括購入5,250円
    舞子−上道1,890円
    上道−瀬野2,520円
    分割購入4,410円

     以上のように分割運賃についてあげてきましたが、分割運賃は奥が深く、分割すればするほどやすくなる場合もありますし、2分割する場合に安くなる区間が存在しないが3分割、4分割とすることではじめて安くなる区間が存在することもあります。こうした区間は2分割しか計算しない「駅すぱあと」では発見できません。
     その典型的な例を一つ紹介致します。

    応用例:金沢−岡山の場合

     金沢−岡山間の運賃は7,140円ですが、右のとおりに分けると6,840円となり、310円得します。
     この区間を「駅すぱあと」を用いて2分割しようとすると、高島(または野々市)で分割し、6,830円区間と180円区間に分け、130円得するという結果が出るでしょう(3番目の方法に相当します)。分割のコツを知っている人なら「金沢−高島でもう一度分割してみよう」と考えるでしょうが、この区間は2分割では安くならないのです。結局は分割の方法を考え直さないと行けなくなります(なお、金沢−高島は9分割して110円安くなります)。
     途中に特定区間が入っている場合は、特定区間を最大限に活かすことも考えてみると良いでしょう。京都−大阪、大阪−神戸は相当得ですので押さえておきます。(京都−神戸も特定区間ですが、大阪で分割した方が安いです)。そうするとあとは金沢−京都と神戸−岡山となります。前者は例1で解説しましたので省略します。神戸−岡山はいたって簡単で、熊山で分けると安くなります。
    (参考)一括購入7,140円
    金沢−加賀笠間230円
    加賀笠間−小松230円
    小松−加賀温泉230円
    加賀温泉−丸岡400円
    丸岡−京都2,520円
    京都−大阪540円
    大阪−神戸390円
    神戸−熊山1,890円
    熊山−岡山400円
    分割購入6,830円

     なお、私は分割運賃を計算するプログラムを自作して使用しております。自分の使用しているプログラムでは複数分割にも対応しているので、このページに記載した値段が分割による方法で最安であることは確認しております。「鉄道旅行なんでも質問箱」へのお問い合わせにも時々利用しておりますので、個人的に知りたい区間がありましたら質問お願い致します。
     また、こうした区間を何回も利用する場合は、乗車券を分割したあとに、同区間の回数券を購入するとさらに安くなります。京都−大阪、大阪−三ノ宮・元町間のように昼間特割きっぷが設定されているところは有効に使うと相当安くなります。普通回数券は200kmまでの区間でしか購入できないため、200km以上の区間で回数券を買う場合は分割が必須となります。ただ、回数券の購入は原則として両端の駅に限るので、3区間以上に分割する場合は分割駅で下車して回数券をを購入する必要があります。
     私も金沢−大阪間で分割回数券を使っておりますが、加賀笠間、小松、加賀温泉、丸岡、京都の5駅で分けるとなると手間がかかることから、丸岡、京都のみの分割とし、丸岡−京都間の回数券と京都−大阪間の昼間特割きっぷは京都で購入しています。
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