米澤穂信 ふたりの距離の概算

アニメ化された関係で……

  米澤穂信の人気作品、『氷菓』シリーズの最新作が『ふたりの距離の概算』だ。先日アニメが始まったとかで、こういうのをタイアップというのだろうか、文庫版もこんな感じでアニメ絵の表紙である(正確には但し書きが必要だが、後述)。読んだことのない人が見たら、「ああ、最近流行のライトノベルか……」と思うだろうが、部分否定はしておくべきだろう。ごく一般的な小説に比べたら多少軽めではあると思うので、「ライトノベル」の部分は間違ってはいないのだが、「最近流行の」というのはちょっと違う。タイトルからして純文学寄りだし、文庫のシリーズとしても普通の「角川文庫」である。少なくとも最初の3冊に関してはこんな表紙じゃなかったし……(これまた但し書きの必要あり、後述)。
  さてさて、表紙の黒髪ロングの女の子はヒロインの千反田える。「える」とはまた思い切った名前である。これで名家のお嬢様なんだぜ。奥で何か悩ましげなのが主人公の折れたほうき……じゃなくて折木奉太郎。省エネをモットーとし、やらなくていいことはやらない、やらなければならないのであれば手短に、を実行しようとして周囲にそれを邪魔されている感のある無気力ヒーローだ。あと2人、メインの登場人物がいて……

裏はこんな感じ

  文庫を裏返すと、その2人がいる。女の子は伊原麻耶花。背は小さくいが、見た目に反してキツめの性格(特に奉太郎に対して)という設定なのだが――私は小説を読んでいて、どうしても背が高く大人っぽい人物像を描いてしまっていた。奉太郎に対して辛辣な意見ばかり言っているせいだろう。所々に小柄である記述が挟まっているので「ああ言われてみればそうだった」と人物像を訂正しようとしたのだが、なかなか上手く行かない。アニメ化されて公式サイトの人物紹介を見て、ようやく固定できそうである――残りの3人が若干イメージと違うのだが。最後に何か背中に背負っているのが福部里志。奉太郎の親友?だ。

  さて、この文庫の裏側を見ていて鋭い人は気付いたはず。鋭くなくても「何か妙だな」ぐらいには思ったことであろう(そうじゃなかったとしても決して鈍いとかそういうことはないと思う)。普通の本であれば……この面にバーコードが印刷されていて、定価が記されているはず。あと、ISBNというインターネット接続方式みたいな文字列から始まる本のコードナンバー(でいいのかな?)もない。この本一体なんなの?

これが真の表紙

  正解はこちら。これが本当の『ふたりの距離の概算』の表紙である。裏側にアニメ版キャラクターが印刷されたリバーシブルのカバーなのだ。本屋にはこちら側を表にして並べられており、こちら側を表にすればきちんと裏側には先ほど書いた、バーコードや定価等が印刷されている。シリーズ通して表紙のイメージはこういった感じで、だから決して「最近流行のライトノベル」ではない……と思う。なお、アニメ化に際して既刊4冊には、別添えのアニメ版カバーが被せられていたようである。6冊目以降は……どうなるんですかねえ。どうでもいいですけどね。

(2012.08.06)

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