金星の日面通過を撮ってみた

朝起きたら晴れてたのに、写真撮ろうとしたら曇ってきた

  この機会を逃すとおそらく生きているうちは二度とは拝めない、とされている金星の日面通過の写真を撮影してみることにした。朝起きて晴れているのを確認して、一昨日の部分月食で晴れ男パワーを浪費しなくて良かったと思ったのも束の間、朝食を終えてカメラのセッティングが終わるころには曇っていた……なんてこったい! とは言え、雲が切れる時間も多々あり、撮影には充分。カメラはいつもの通りα350、太陽を撮影していて仮にイメージセンサーが壊れても諦めの付く機体である。レンズはサンニッパこと300ミリF2.8、ミノルタ時代の今や化石になりつつある古いレンズである。これにメーカー非推奨のテレコン二個付けをして、合成焦点距離35ミリ判換算で1260ミリでの撮影――いつもの私の装備である(これしかない、とも言う)。

  この画像はα77で撮影したもので、Dレンジオプティマイザーとやらを使ってカメラが黒く潰れないようにしている(初めて使ってみた機能なので「使ってみたよ」と言いたいだけ)

テレコン二個付けアップ

  こちら禁断のテレコン二個付けの様子。純正2倍にケンコー製1.4倍。両方2倍にすりゃいいんじゃないの?という疑問には1.4倍しか持ってないと答えておこう。ちなみにミノルタの純正品で二個付けできるかどうかは不明。一部のレンズにしか取り付けられないようツメの形状を違えてあるようで、そこまでしてあるということはテレコンの後ろには付かないようにしていると思う。ケンコー製品との組み合わせも、順序を入れ替えると付かない。

いつもの悩みは影で解消

  1260ミリとなると、被写体を探すのに苦労する。何せ画角がとんでもなく狭く、何の目印もない空に浮かぶ太陽を探し出して画面に納めるのは至難の業である。ファインダーは直接覗けないし、輝度が高すぎてライブビューの画面もあてにならない。いつもカンで頑張っているのだが、今日はそのカンがなかなか当たらず一向に太陽が見つからない。どうしたものかとふと下を向いたら、いいものがあるのを発見。影の形を頼りにカメラを太陽の方角に向ければいい! 即ち、カメラが太陽の方向を向いていれば影の形がカメラを正面(若しくは真後ろ)から見た形になるはず。影の形がカメラを斜めから見たシルエットをしているうちは、光軸がずれていて太陽が画面に入ってくることはない。

ありゃっ?

  そうして無事太陽の補足に成功。シャッターを切ってみるものの……シャッター速度は最高速、絞りも64まで絞り込んである。もちろんISO感度は一番低い100だ。つまり、これ以上被写体を暗く撮影することは出来ないのだが……太陽はそれより偉大だった。既に太陽面に見えるはずの金星の影は全く見えない。なるほど、太陽を撮影するための専用のフィルター(ND10000とかいうやつ)が必要と言われるわけである。前回の日食の際は、太陽の形が大きく変わるのでそれがなくても撮影できたが……金星は小さくしか写らないので、カメラのシャッターや絞りに頼った減光作戦では追いつかないというわけだ。
  「そんなものなくても撮影できる」と大見得切っていたため、ND10000の手持ちはない。日食グラスを通して見ても、私の視力が良くないこともあって金星の黒い点は全く確認できない。悔しいが諦めるしかないのか……と日食グラスを掲げて途方に暮れていた。

手元にあるこれ、使えないかと試してみることにした

  だがしかし、橘雪翼は諦めが悪い人間でもある。何か手はないのかと思って思考を巡らせていると灯台元暗し。手元にあるこの日食グラス、使えないかな? もちろん画像のように、サンニッパの口径の方が日食グラスよりはるかに大きい。普通に考えたら「使えない」。しかし、テレコン2個付けに加えてα350のセンサーはAPS-Cサイズ。サンニッパのイメージサークルからすれば、中央のごく一部しか使っていない。その上、それだけ頑張っても太陽は画面いっぱいには写らないのだ。いや、御託はどうでもいい。とりあえずやってみよう。失敗上等。フィルムじゃなくデジタルだから失敗してもほとんど痛くない。思い立ったら即実行。カメラはほぼ天頂を向いている。特に何かして固定することもない。日食グラス、置くだけ。

やったぜ!

  最終結果はこちら。見事成功!と言っていいんじゃないかな? ピントが随分怪しいが、まあこんなものだろう。テレコン2個付けで画質は落ちているだろうし、本来写真撮影用じゃない日食グラスも”装着”したわけだ。”何かよく分からない黒い点が見える”だけでも万々歳。もちろん、プロカメラマンが撮影したもっと綺麗な写真が新聞紙面やテレビのニュースでお披露目されるわけだが、私にとっては自分で撮影したことに意味がある。鉄道模型製作やバッティングセンター通いと同じで、それが楽しいのだから。

(2012.06.06)

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