肉厚を削る

去年組み立てた大糸線の旧型国電、窓回りの様子が4種類ある

  先日から凝っている旧型国電、主にグリーンマックスのキットを組み立て加工して作っている。ところがそのGMキット、最近になって作られたものは別として大きな欠点を抱えている。それは窓周りで、プラスティックの板に裏側から透明なシートを張る構造のため、どうしても段差ができてしまう。実車にも段差はあるのだが、それよりもはるかに”大きな”段差になってしまうのだ。というわけで、去年作った大糸線の車両で実例をば。左上クモハ51(GM)、右上クハ55(GM)、左下クハ68(タヴァサ)、右下クモハ40(リトルジャパン)。このうち左下のクハ68だけが金属キットで、板厚が最も薄い。段差がないわけではないが、贅沢を言ってはいけない。右下のクモハ40は、最新設計のキットで窓ガラスがはめ込み式になっている。これは凸型に成型したクリアパーツを窓部にあてがうもので、段差が最も小さくできる。但し、断面が光を反射して角度によってはそれが目立ってしまうという一面も。なお、大手完成品メーカーはほぼ全てはめ込み式窓ガラスの手法を使っている。
  さて問題は上段のGM製品2つ。実は同じGM製品でも両者で違う。左のクモハ51の方がクハ55より分厚いのだ。右のクハ55も金属キットに比べると厚みがあるのだが、旧国を広く網羅しようとするとこの分厚さの製品がメインとなるので……慣れるしかない。というかもう慣れてしまった(笑) ところが、クモハ51の側板の分厚さにはどうにも慣れられない。先日完成させたばかりの京阪神線でもクモハ51を使って作った車輌が2両あったのだが、やはりなんとかしたい。

まず、原因を探る

  まず、同じメーカーの製品なのにどうしてこういう差ができるのかを考察する。……本当は考察するまでもないけど。単純な話なのだが、窓の裏側にひと細工入っているかいないかだけ。上がクモハ51用で下がクハ55用の側板だ。見れば明らか、クハ55の窓回りは一段凹んでいるのだがクモハ51ではそれがない。この差がそのまま窓周りの肉厚の差となって現れる。
  ところで、品番を見る限りクハ55の方がクモハ51より先に登場している。クモハ51の方がドアの表現が進化しているのに、何故か窓周りのこの部分については退化著しい。というか、他のキットを見ても大抵は窓の裏側は凹ませてあるのだが……。他に一体成型のモハ70なども肉厚が目立つ。

というわけで、削ってみました

  肉厚を消すには2つの方法がある。一つは板厚を削る。もう一つは窓ガラスの部品をはめ込みにすること。しかし後者は難しい。いや、前面ではやっているので決して技法としては難しくない。しかし、2〜3枚で済む前面と違って側面は……窓ガラスが1両で50枚以上必要になる。1枚1枚寸法をきっちり切り出して、そして1枚1枚貼り付けていく……気の遠くなるような作業だ。というわけで却下。「モデラ」という機械があればプログラムでやらせることもできるのだが……かなり高価なので却下。但し、これだけ旧国作るんなら買っても元が取れそうな気はしている。
  というわけで板厚を削る方向で検討を始めた。画像の説明が最後になったが、左側が試しに実行してみたもの。右はそのままの状態である。なかなかいい感じだと自分では手応えを感じている。

作業は2段階、まずタガネで溝を掘る

  削るといっても闇雲にヤスリ掛けをするわけではない。広範囲をなるべく均一に削らなくてはいけない。というわけで新アイテムが活躍する。タガネ、である。これでまず窓の上下に溝を掘る。この溝の深さを基準にして窓部分をヤスリで削っていくのだ。

削ってみたところ

  とりあえず実験なので、端の窓2枚分だけを削ってみた(この部品は余りの活用なので、実際にこれを使って車輌を組み立てることは多分ない)。その結果が先ほどの画像で、次からGMキットで窓裏が薄くなってない車輌にはこの作業を入れてみようと思う。次に作る旧国となる大糸線第二弾で早速活用予定だ。また手間が増えて完成が遅れそうだが。ただ、作業時間は思ったよりは短くできそう。一番の問題は削りかすが尋常じゃないぐらいに発生することか(苦笑)
  実はこの試行は旧国以外の目的も持っている。どちらかというとそちらの方が重要だったりする。先日少しだけ侃侃諤諤本編で…………話したかどうか忘れたけど……京阪京津線の小型車両3度目の正直挑戦の際に使おうと思っている。京阪京津線車輌のキットには動力が付属しているのだが、トミックス製品の流用もいいところでサイズ以外は全然違う。だから応用の利く鉄道コレクションの動力を使うつもりでいた。しかしボディの幅が足りなくてそのままでは入らないことが判明。雑誌の組み立て記事を見ると動力のフレームを削っているのだが、故障時に簡単に取り替えられるように……と私は側板を削ってみることにした。上手くできるかどうか自信半分不安半分だったが、この方法を思いついて試してみる気になったのだ。ちょうど旧国の一部車輌の肉厚も気になっていたので、上手く行けば一石二鳥というわけだ。
  こういうことが考え付けるのも、日頃模型屋で鉄道模型とは直接関係ないコーナーにも足を運んでいるお陰だ。このタガネを最初に見たとき、自分で使うことになるとは全く思っていなかったが頭の片隅にはインプットされていたようだ。使ってみるとなかなかいい道具で、決して単価は安くないのだが”安い買い物”になりそうである。

(2011.02.13)

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