イソプロピルアルコール

HOeの残る2両はこちら

  先日のHOe(HOナロー)の時に「あと2両あるのだが」と書いていた2両がコレになる(同一車両が2つ)。海外製品で、ブランドは「LILIPUT」とかいうところらしいのだが詳細は知らない。日本でも海外でもそうなのだが、鉄道模型はブラス(真鍮)製品よりも大量生産の利くプラスティック製品の方が値段が安い。そして日本のHOゲージはブラス製品が主流なのだが、海外ではプラスティックがメイン(というかブラスモデルってあるのかな?)。この車両はそんな感じの欧州モデルなのだが、某模型店にて特価品を見つけ、「この値段なら遊びに使えるな」と買ってきたわけである。あ、買う前にきちんと確認しましたよ。HOナローって。HOのつもりで買って家で開けてみてびっくり、「これナローじゃん!」というわけではありませんのでご安心(何を?)下され(笑)

反対側

  この車両、ちょっとシャレていて、反対側は一部の窓が開いた状態になっている。日本型ではまずありえない仕様である。日本人はこういうところ頭が固くて、片側の窓が一部開いていようものなら「何で窓が開いてるんだよ!」と一部を除いて憤慨すること間違いなし。かくしてその製品は返品の山ができてメーカーは大損害……になるんじゃないかと。かく言う私も、メーカー市販品は窓は全部閉めておいて欲しいと思うクチだ。窓を開けたきゃ自分で工夫するのがイイんじゃないか!
  で、「2両あると言った割には1両ずつの画像だな……」とか「後ろに何か緑色の物体が控えめに写ってるな……」とか思った方はスルドイ。

後ろに写っていたものはこちら

  上2枚の画像のメインの車両の後ろに写っていたのがこちら。色を塗り替えて楽しむ予定なのだが、そのままの状態から色を塗ると、完成品状態で入っているレタリング類が段差になって残ってしまう。というわけで一旦全て塗装を剥がしてしまう。剥がしてみた状態がこちら。この塗装を剥がすときに使ったのが、今回の話題の「イソプロピルアルコール」という物質になる。
  このイソプロピルアルコール(イソプロパノール、とも。以降IPAと略す)は5年ほど前に鉄道模型界で話題になった液体。プラスティックをほとんど傷めることなく塗装だけを剥がしてくれる、という触れ込みで加工派モデラーの注目の的になった(但し、プラスティックに完全ノーダメージではないという報告もあり)。どこのメーカーが製品を出しているのかというと……………………自動車業界。

  ――「???」

と思われるだろうが……これ、模型用に発売されているものではない。少なくとも現在のところ、模型用の塗料剥がしとしてIPAを発売しているメーカーはない。これだけ知ってる人も増え、模型雑誌で取り上げられることもあるのにそういう模型メーカーが出てこないということは、多分認可が下りないとかそういう理由なのではないかと。今市販されているIPAは、本来自動車のエンジンの水抜き剤としてのもの。鉄道模型の塗装剥がしに使うというのは転用流用もいいところ。メーカーにしてみれば保証対象外も甚だしい使い方なのである。引火点も低いので取り扱い要注意だし、人体にも害がある。模型メーカーが発売できないのもそういうところにあるんじゃないかと。但し、そもそも模型で使うシンナーだって引火点低いわ人体に悪影響ありまくりだわでいい勝負だと思うんだけどな……。IPAは引火点という意味でもう少しヤバイ物質なのかもしれないけど。だいたいコレ、誰が発見したんだろうなあ。「自動車の水抜き剤が塗料剥がしに使えるぞ!」って。失敗した車両を片っ端からいろんなものに漬け込んでみたとしか考えられない。

で、お次のお題がこちら

  さて、HOeの車両は色が決まらないので、次の車両に注力することにした。もともとこちらが先になる予定だったのだが……順序が逆転した理由を今からお話しよう。この車両は京王電鉄の5000系。何故に突然京王の車両なのかというと、以前作った一畑電鉄とか富士急行とかの車両が元京王5000系だから。今まで大元の京王5000系としてのこの車両に興味はなかったのだが、最近メーカーが塗装済みキットを再生産した折に、何となく興味が沸いてしまったというわけである。普通に作るつもりだったのだが、一つ気になることができてしまった。それは色。メーカーの解説によると「アイボリーホワイトに赤い帯」とあるのだが……「赤」? 上の画像を見て欲しいのだが、あまり赤くない。深いことは気にせず……とも思ったのだが、キットに付属の初期塗装用の帯デカールがもっと明るく鮮やかな赤色をしていたのだ(初期塗装も色自体は同じ……はず)。疑問に思ってネットやら何やらで京王5000系の写真を探し回ったのだが、全体的に言って「微妙」。帯が細いこともあり、古めの車両でいい状態の写真がないこともあり、これぐらい暗い色のように見えるものもあればもっとはっきりした赤色をしたものもある。塗り直しとなるとかなりの手間が増えることになるが、最近車体のマスキング塗装もしてないしなあ、という変な理由で塗り直しの手間は気にしないことにもできる(但しこの次製作予定はややこしいマスキングをしないといけない)。結局決定打になったのは、己の感性で好きなほうを選べという原点に立ち返った考え方と、HOメーカーのエンドウの製品写真では鮮やかな赤色の帯だったこと。そう、塗り直すことにした。

IPAにドボン

  私は100円ショップで見つけたパスタ保管容器にIPAを入れて使っている。模型車両の車体長は様々なので、車体は縦に入れたほうが能率が良いのではないかと。でも、使っているうちにちょっとずつ蒸発して(IPAは揮発性です)、今では明らかに液面高さが足りてません(笑) 今回は車体を入れた後、容器を振って液体をちゃぷちゃぷして全体が濡れるようにして処理。塗装が剥がれにくい車両だとそれではダメなんだけど、今回は幸いにして剥がれやすかったので問題がなかった。とはいえ、またIPAを買ってこないといけないな……。

ちなみに液体はもうドロドロ(笑)

  この容器でIPAを使い始めていろいろな車両の塗装を剥離したので……剥がれた塗装が底に溜まって汚くなってきている。ああ、ええと、IPA自体はほぼ無色透明な液体ですよ。ちなみに匂いは刺激臭。消毒用アルコール(エタノール)に近い匂いなんだけど、それよりはややキツい感じ。HOeの車体を2両剥離した時点までは透明感もあったのだが、京王5000系を半数放り込んで処理した時にこんなに濁ってしまった。明らかに車体色のクリーム色の剥がれた塗膜が液体中に……。ただ、IPAは剥離という働き方をするようで、こんだけ液体の色が怪しくなっても問題なく作用してくれた。画像は半数を処理したあとの残る半数を漬け込んでいるところ。

剥離前と剥離後

  画像の時系列が前後するんだけど、後半の処理に移る前の記念写真。言うまでもなく左の帯の入ったのが剥離前(上の画像で液体に漬かってるモノ)で、右が剥離後。これだけ綺麗にツルツルテンに剥がれてくれるのだ。あとはちょっとした処理をして塗装に移ることになる。

(2010.08.16)

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