カトーVSキングスホビー 〜スニ41〜

左、カトー製品  右、キングスホビーキット組み立て品

  スニ41とは……国鉄時代に走っていた、分類上は客車ながら実質は貨物用の車両。確かパレット輸送のための車両だったかと。当時はまだ数が多かった客車による夜行列車などに連結されて活躍していた。客車列車に繋ぐために"客車"として製造、管理されていたと認識していたのだが……スニ41と良く似た構造で貨車扱いのワサフ8000形もまた客車列車に連結されて走っていたらしい。別に貨車を客車に繋いでも問題ないはずで、だから何故客車ということにしていたのか厳密な理由を私は知らない。
  模型として見たとき、人を運ぶ普通の客車列車の端にこういった荷物車が連なっているのは面白い。しかしながら大手メーカーの完成品もなく、キングスホビーとワールド工芸が金属キットを発売しているのみであった。ある日キングスホビーのスニ41を購入し、組み立て始めた。完成間近になったときに……よもやのカトーからの製品化発表。急行「能登」セットの中の1両としてではあるものの、大昔にカタログに載せていたものがようやく実現? よりによって組み立てている最中に製品化発表しなくても……とは不思議にもあまり感じなかった。キットを組み立てたものはそれはそれで、完成品はそれはそれで楽しむことにして、キットを完成させつつなじみの店に「能登」セットの予約に行った。
  で、「能登」セットは去年のうちに発売されていたのだが、何となく延ばし延ばしになっていた両者の徹底比較をしようと今日思い立った。左がカトー製品で、右が拙作のキングスホビー製キット組み立て品。色は、当時手元にあったカトーの客車のブルーに合わせて調色したつもりだが、こうしてみるとやや暗く感じる。ま、誤差範囲内かな?

左、カトー製品  右、キングスホビーキット組み立て品

  「徹底比較をしようと思い立った」わけではあるが、両者にそこまで激しい差異もなく、結局は写真は2カット撮影したのみである。全体的に、カトー製品はプラ成型を生かした深い彫りの製品。キングスホビー製品は、まあ良くも悪くもエッチングキットである。屋根のプレスの様子がちょっと違うのと、ベンチレーター。それから妻面の窓のガラス押さえの表現の違いの3つが目立つ点かな。カトーの妻面窓ガラスはゴム押さえ(画像のグレーの部分)になっているのだが、キングスホビー製品は……? プロトタイプの違いか、それともどちらかが考証を間違っているのか。それはどうか分からないが、グレーのふちどりが入るか入らないかというのはこの車体色では目立つ。キングスホビー製品はこの妻面パーツの選択により、写真の扉あり(窓の下の小さな凹みが扉)と扉なしのどちらかが作れるようになっている。カトーの製品化発表がもう少し早ければ、扉なしで作っていたんだけどなあ。
  あ、それから、カトー製品はテールライトが点灯する。キングスホビー製品にも……頑張れば点灯装置を組み込めないこともなかったのだが、頑張っていないので点灯しない。

上の写真の拡大

  カトー製品ではよくあることだが、ベンチレーターが屋根と一体整形になっている。一方、最近の他社完成品や多くのキット(プラスティック金属問わず)では別パーツになっている。物にもよるが、やはり別パーツのほうが立体的でシルエットも好ましく、下手をすると一体整形のカトー製品は「何か変なものが屋根に付いている」印象を受けてしまう。最近リニューアルされたスハフ42形、スハ43形客車はようやく別パーツになり、カトーも一体整形を諦めたか……と思わせておいてスニ41では復活(苦笑) 何故形態面で不利な一体整形をするのかというと……もちろん部品点数が減り、取り付けの手間も減ることでコストを下げることができるからだ。製品価格の上昇を抑える企業努力と評価することもできるが、でもそれは時と場合によるのではないかと……。
  そんなわけで両者甲乙付け難し――いやまあ、キングスホビー製品は私が組み立てたというだけで劣っているのだが、自分で作った車両は可愛いんだよ? というわけで、両者等しく愛でていこうと思っている。

  さて……実はスニ41を模型化したメーカーはこれだけではない。去年ぐらいに確かマイクロエースがワサフ8000も含めて製品化(客車セットのうちの1両として)。ワールド工芸も、スニ41、ワサフ8000を従来品から設計変更してディティールアップした製品を発売している。3社が製品を新規に発売しているのに……何を血迷ったのかこの期に及んでキングスホビーが今月、スニ41、ワサフ8000を再生産したらしい。
  他社の動向見てないんですか?
  どっちかというとマイナーな車両を市場に溢れさせてどないするんですか?
と思わなくもないけど、これで商売成り立つなら、消費者としては様々なメーカーから様々な形態の製品が発売されるのは素直に歓迎したい。事実、去年スニ41を買いに行ったときはワサフ8000の在庫が切れていて手に入らなかった。マイクロエース製品は私はアンチなので買いたくない。ワールド工芸のワサフ8000はディティールアップしたせいで、一緒に繋ぐであろう客車群よりもワンランク上の細かさになってしまい、組み立ても面倒で、おまけに値段も上がってしまった。カトーは今のところワサフ8000を製品化する気配はない(いずれやる可能性はあっても)。ということで、実はキングスホビーの再生産は嬉しい。スニ41も妻面扉なしを作るためにもう1両買おうかな、とか、ワサフ8000は扉の色が銀と青の2種類あるので2両買おうかな、とかいろいろ考えている。予算と作る都合上で、ワサフ8000を1両だけにしそうだけど。

(2010.3.10)

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