トミックスの新製品、ワイドレール

トミックスの新製品、ワイドレールシリーズのうちの曲線レール

  長らく待たされたトミックスの新製品、ワイドレールがついに登場となった。私が購入したのはここにお見せするカーブレール群、と周辺部品。ワイドレールと言っても線路幅が広いわけではない。当たり前だがNゲージは線路幅9ミリと決まっていて、ここを拡げたり狭めたりするとNゲージ規格の車両が走れなくなってしまう。何がワイドなのかと言うと、線路の周囲のバラスト部分(道床:どうしょう、と呼ぶ)が従来品よりも広がったレールだ。都市部の複線を再現するのに、従来品だと道床と道床の間が開いてしまって間抜けだったが、ワイドレールなら線路と線路の間がぎっしりバラストで埋められることになる。
  さて、私が何故カーブレールばかりを買ったか。それには別の理由がある。このカーブレールにはとあるギミックが仕込まれているのだ。

左:ワイドレール 右:従来品

  左が今回のワイドレールで右が従来からあるカーブレール(複線レール)である。左側の車両が傾いているのが分かるだろうか。別にこれ、欠陥品で水平が出てないわけではない。"カント"が付けられているためである。"カント"とは何か。それは(中略)である。


……もう少し丁寧に説明すると(←白兎に怒られた)……鉄道車両はカーブが苦手だったりする。特に遠心力が問題で、普通に水平に線路を敷いてしまうとカーブで外側に車両が倒れてしまう。その遠心力を打ち消すため、少しだけ車体が内側に傾くよう傾斜が付けられているのだ。モータースポーツのサーキットで言うところの「バンク」のようなものである。模型の場合、実車とはいろいろバランスが違うこともあって遠心力はほとんど問題にならない(最高速度でカーブに突っ込ませると脱線の恐れはあるが)。そんなことや技術的な問題もあって、これまで市販品のカーブ線路にはカントがないのは常識だった。それを最初に突き崩したのがカトー。文字通りカントレールという製品を発表して模型ファンの心をぐっと掴んだ。それを見て地団駄踏んだのがトミックス。キング・オブ・レールを標榜していたのにカトーに先を越されてしまった。追いかけるようにワイドレールでカーブにカントを付けると発表。されてから発売までが長かったが、先月末にようやく発売に至ったというわけである。

単線レールとして発売されている

  橘雪翼は主にトミックスのレールを使用している。カトーからカントレールが発売された時、隣の芝生が青く見えたものである。ま、実際その時点では青かったわけだが。だけれど、そうそう簡単にレールをカトーに取り替えるわけにも行かない。トミックスのレールにどれだけ投資したと思っている。そんなわけでなるべく隣は見ないようにして生きてきた。が、トミックスから新製品が発表されてこれまで、どれだけ首をぬらりひょん……じゃなかった、ろくろ首にして待ち続けたことか。っていうか予定より1年ぐらい延びてない?? そして、カント付きも嬉しかったが、もう一点嬉しい点がある。それはワイドレールが単線として使えるようデザインされていたことである。
  今回発売されたワイドレールのカーブの半径は354ミリと391ミリ。共にトミックス規格の半径である。実はこれまで、高架線路として使える半径391ミリの線路は、一つ内側の354ミリとセットになった複線レールとしてしか販売されていなかった。常設線路の配置の見直しを行った結果、半径391ミリの単線高架が必要となった。ところがそういう製品がないので、最悪の場合複線線路を強引に切り離して使うぐらいの手しかなかった。そこへ今回のワイドレールである。渡りに船とでも言おうか。カーブにカントが付く上に単線高架線路として使える。相次ぐ発売延期がどれほど憎たらしかったことか。

穴の秘密

  上の画像でもこの画像でも、線路の脇に小穴が空いているのが確認できる。これ、何かというと……この画像の左のように、付属部品で2枚繋げて複線線路として使えるようになっているのだ。トミックスはこういうギミックが好きだ(と思う)。さっき単線で使いたいと言っていたくせに早速接合して複線化しているのは矛盾しているが、そこは気にしないでくれ。半分は複線線路として、残り半分を単線線路として使う予定なのだから。穴と複線用、穴埋めパーツのはめ合わせはかなりきつかった。そのせいか、はめ込み後はよ〜く見ないと分からないぐらいに周囲に溶け込んでくれる。日本のプラスティック成型技術は高いね。だけれど、このギミックのせいで単線線路として使用する際にも小穴を部品で塞がないといけない。塞がなくても線路としての機能には問題ないけれど、見た目がちょっとね。

従来品とは断面が違う

  なお、従来品とは断面が違う。手前が今回のワイドレールで、奥が従来から発売されている複線レール。何故こういう違いが出たのかというと、おそらくはワイドレールのワイドな部分を切り落とせば、従来からある単線線路と断面が揃うようにしたかったのだろう(事実、そのための溝が裏側に掘られている)。直線のワイドレールをわざわざそうする意味はほとんどないが、カーブはカントが付いているためそういう需要があると考えたのだろう。
  現状直線のワイドレールは購入していないので、ここのところ段差が発生してしまうのだが……ま、細かいことは気にしないでおこう。

カーブで車体を傾けて走る鉄道車両はカッコイイ

  ワイドレールは地上線でも高架線でも使えるよう設計されている。そして、線路の脇に取り付ける壁(柵)部品も別売されている。地上ではお好みで、高架ではほぼ必須と言える。早速壁も取り付けてレイアウトの一部に組み入れてみたのだが……写真を撮るとき邪魔になるので一時的に外してみた。もちろん実物に対してはこんな真似はできない。模型ならではである(笑) トミックスに望むのは、現状2種類しかないカーブ半径を増やしてくれること。より小さい半径の280ミリ、317ミリが出てくれると、うちの家のメインカーブが全てカント付きに置き換えられる。
  写真は、左が最新鋭のN700系、右は一番レトロな0系新幹線。実車ではもう見られない離合シーンである。

(2009.11.06)

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