私の左手の黒い部分、それが封されていて切り開かなくては中身が読めない部分である。現在、これを書いている時点では開封していない。黒い封印の中央の紅い部分には作者からのメッセージがある。
「突然ですが――。/これは決して「読者への挑戦状」ではありません。/ただぱらぱらと何気なくページを捲ってしまうと、本書の核となるテーマが一目瞭然になってしまうので、単に読者の方(あなた)と私、お互いの幸せのためにそれを防ごうというだけの趣向です。/しかし既に最終章に入っていますので「証明終わり」に繋がる鍵は、例によってすべて提出されていることも事実です。ですから、もしよろしければ、『桑原崇は一体何を調べに図書館まで行ったのか。そしてその答えは――』などと一旦手を止めて考えてごらんになるのも、また一興かと存じます。」 とある。「/」は改行のあった部分。で、珍しく解説を読んだのだけれど(でも袋とじの部分は読んでない)、そこで指摘がなされているとおり……すでにこのページで真犯人は分かっている。正確に言うともう少し早くから分かっているんだけど。桑原崇が謎を解き、そしてそれを一行が納得した後にこの封印があるのだ。ミステリーの山場は言うまでもなく、トリックが解明され、真犯人が判明する部分。ミステリーファンの誰もがそこを"ネタバレ"されることを嫌う。しかし、封されている部分はそこではないのだ。事件は一件落着しているはずなのだが……桑原崇は納得の行かない部分があり、翌朝図書館に向かうのだ。彼は事件の謎を解明する一方、一体何を閃いたのだろうか。それが本書の帯の部分に書かれた「いったい誰が、こんな壮大な仕掛けを日本に施したのか?」の一文に繋がるのだろう。作者の提案に乗り、今しばらく考えてから封帯を取ることにしよう。ひょっとしたらもう一度読み直すかもしれない……けど、飽きてさっさとカッターナイフを手に取るかもしれない(笑)
(2009.07.09)
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