キワ90トータルキット

別件の捜索中、偶然発掘したワールド工芸「キワ90トータルキット」
手前はメーカー完成品の「キワ90」

  多分、今ではレア物の部類に入るであろうワールド工芸のキワ90のキットである。手前がメーカー完成品で、奥のキットの表紙に写っているものとは別塗装仕上げ。実車からしてレアな車両で、確かわずか3両試作されただけにすぎず、さらには短命に終わった車両だ。一応ディーゼルカーだが、「ワ」というのは貨車に付けられる記号。言ってみればこいつは「自走できる貨車」なのだ。貨物運搬用に、後ろに「ワム」(キワ90と同サイズの貨車)をくっ付けて走れるよう設計されたらしいが、牽引力不足で1、2両しか牽けなかったらしい。ディーゼルカーを表す「キ」の後に貨車の記号である「ワ」が付くのは、多分日本の歴史で唯一こいつだけだろう。文字通り「キワ物」に入る車両だ。
   実は半年前に、この車両のことを話題に出した事がある。正確に言うと「このキットのことを」話題にした。いつの頃かというと、去年の7月ごろに画像で侃侃諤諤で「また積み木しちゃったよ〜(←懲りてない)」とかいいながらワールド工芸のキットを見せていた。そのときに、「なかなか難しそうだし、ワールド工芸は組んだことがないので以前買ったキワ90で練習したいところ……」というようなことを書いているはず。ところがそのキワ90のキットが行方不明で、探したけれど見つからず、仕方がないのでぶっつけ本番でジハニかクモルに犠牲になってもらうつもりでいた。ところが2日ほど前、別の物を探して箱を開け回っていたら……蓋を開けてこんにちはしたのがこのキワ90トータルキットだった、というわけである。というわけで、新たに買ったものではないのですよ(笑)
  ところで、何故完成品も持っているか?の問いにも答えなくてはいけないだろう。このキットが発売されたのが……のさらに前からお話しよう。最初に私がキワ90を知ったのは、表向き「鉄道模型趣味(Tetsudo Mokei Syumi)」の頭文字とされるものの、実は鉄道模型趣味で大きな問題となる3つのファクター「Time(時間)、Money(お金)Space(場所)」の頭文字を取って雑誌名とした「TMS」誌誌上である(なんかややこい文章やな。説明も嘘くさいし)。この世にこんな面白い車両が存在したのか!――当時まだ、鉄道模型を始めて数年だった私は感動した。そして同時に、模型で欲しいと思った――というか、多分そのTMS誌の記事はワールド工芸のキット組み立てレポートだったような気がするのだが。しかし鉄道模型は、物にもよるが「発売された時に買わないと手に入らない」という原則がある。もちろんそうでないものもあるのだが、そう思っておいた方が上手く行くことが多い。仕方がなく諦めて何年かが経ったころ……改良再生産が発表された! 当然だが私は嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。で馴染みの模型屋に予約しに行ったのだが……はたと気付いて困った。完成品とキット、どっちにしよう? 当時まだ高校生か大学生になりたての頃だった……ように思う。はっきりとは覚えていない。まだキット組み立て技量もあまりなく、しかもワールド工芸のキットはハンダ付けが前提となる。だから自分で組み立てるのは無謀もいいところ。しかし完成品は……このキットの場合、小型車両であることも手伝って値段はそんなに高くなかったのだが(あくまでワールド工芸の完成品としては)、塗装がクリーム/茶色のツートンではなく茶色単色だった。2両手に入れるなら両方の塗装を1両ずつだが、どちらかと言えばクリーム/茶色のツートンカラーの方が欲しかった。悩んだ。とても悩んだ……かどうかは記憶があやふやで良く覚えていない。ただ、最終的に弾き出した私の選択が冒頭の画像に写っているわけである。とりあえず完成品、キット、両方買っておく。組み立てる自信が出来たら組み立てて、クリーム/茶色のツートンに塗ろう。
  今思うと、私が組み立てられるようになるまでに、さらに改良再生産される可能性を考えていなかった(ワールド工芸は、再生産するときに組み立てやすいように、あるいは商品クォリティをアップするために改良する事が多いような気がする)。まさか10年ぐらい?も放置することになるとは思っていなかったし、まだ鉄道模型始めて日が浅かったのかなあ。特にワールド工芸の事を良く知らなかったかもしれない。まあでも幸か不幸か、キワ90は再生産されていない。のみならず、他社も手を付けていない。今組み立てて完成させれば、あの日の選択が(私の選択としては珍しく)正しかったことになる。

  ――まあひょっとしたら
上手く組み立てられず、ジハニとクモルの踏み台に終わる可能性も有るのだが。まあそれはそれで、練習台として役に立ったと思う事にしよう。キワ90自体を諦める事になるが――そんときゃそんときで、次に再生産されるのを地道に待つことにするよ。

(2009.01.13)

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