人気絵本『くまのがっこう』の映画化第二弾。数年前に『彼方のアストラ』が見たくてHuluに加入してたときに一度見たのだが、去年ふと思い出してDVDを買ってみた。Huluで見たときに感想文書いた気がしないでもないのだが、DVDでしっかり見たので改めて。
絵本やグッズのイラストと比べると、目や口の表情表現が豊かで違和感がある。オリジナルのイラストでは目にハイライトがなく、口は基本的に「ヘ」の字をしており、開くときは「△」形が基本。目はともかく「▽」の口して笑うジャッキーにはPVで見たときから「コレジャナイ感」が強かった。映画本編を見始めてもそこが気になってしまうのだが、10分ぐらいで気にならなくなるのは不思議。尤も何度見返しても冒頭10分は「違うんだよな〜」なのだが。その冒頭10分の物語の導入部はというと、ジャッキーがお兄ちゃんたちの作ったカップケーキを勝手に、それも全部食べてしまう。これまた何度見てもドン引きである(苦笑) ジャッキーってそんな我儘全開の子だっけ?
その後はジャッキーが元気よく頑張り、お兄ちゃんたちにも見せ場があったり、ジャッキーが「あーん」って泣いたり、色々あったけど最後はめでたしめでたしの物語。子ども向けなので短くシンプルにまとめられている。村長という悪役ポジションがいるのが『くまのがっこう』としては珍しいかも?
以下、橘雪翼っぽく細かいところをねちねちと(笑)
スイーツランドに村長がやってくるシーン。横断歩道を渡っているのだが、車が警笛とともに急ブレーキを掛けて止まる。これ、信号機はあるのだが青赤黄色どれが点灯しているのか分からない。車の挙動からして我儘な市長が信号無視しているのだと思われるが……実は帰りのシーンではきっちり青信号が灯っている。ここ、考察(笑)してみたのだが、子ども向けの作品で大人が堂々と信号無視をしているシーンを流すのはコンプライアンス(笑)の観点からよろしくないので、どれも点灯させないことで曖昧にしたのではないだろうか。
村長がスイーツランドにやってきたのは、スイーツランド……の土地?が狙い。ミンディのおばあちゃんにスイーツコンテストでの勝負を申し込み、「勝ったらスイーツランドはワシのもの、負けたら二度とスイーツランドには手出ししない」と言うのだが……それ、勝負として不公平じゃね? スイーツランドサイドは負けた時のリスクのわりに勝っても旨味が少ないんだが。そもそものスイーツコンテストで村長が審査委員長を務めるというインチキ全開モードなのに、「負けた時」の条件提示が小物すぎる。
ジャッキーがミンディと共にお日様のスイーツを作ろうとしたとき、お兄ちゃんたちが総出で助っ人としてやって来る(食べ物の恨みとか、そういうねちっこい感情は存在しない……のだろう)。そのうちの1人、ロイがミンディに一目惚れする。ハリセンで叩かれ、「またかよー」「前の子はどうしたんだよ……」と呆れられる。この「前の子」とは、前作のケイティのことだろうか? きっと失恋したんだよ。そっとしといてやれ……。
太陽の下で作られたお日様のスイーツ。途方もなく巨大なのだが、その後おばあちゃんやコンテストに出したものは普通サイズだったので一安心……ってか最初の巨大なやつって作る必要あったの? お兄ちゃんたちが試食のために並んでいたところ、最後の2人の目の前で「SOLD OUT」の札を出されてしまう(今回のギャグパートで、少しずつシチュエーションを変えて3回繰り返される)。いや、人数分かってるんだから全員に行き渡るように作ろうよ。それとも誰か、冒頭のジャッキーみたいに一人でたくさん食べちゃったのか?(笑)
スイーツコンテストでは村長の妨害工作によりお日様のスイーツが試食不可能になる。何とかしようとするジャッキーに「審査委員長であるワシに逆らうのか?」と威圧する村長……こいつ小物過ぎる。権力持たせちゃダメなやつだ。誰だよこいつを村長の座に就かせたのは。その村長に一発かましたのが、村長の孫であるスー。最初登場したシーンではただの嫌味な子だったのに、こんなおいしいところを持っていくとは……。再びお兄ちゃんたちの見せ場で、スーと示し合わせたように追加のお日様のスイーツを手に登場する。楽しそうな表情の他の審査員とは対照的に渋い顔で試食に入る村長は、「こんなもの、まずいと言ってしまえばおしまいだ」……とどこぞの料理漫画の料理評論家みたいなことを独り言ちる(笑) でも一口食べるとその美味しさに、というのも料理漫画的王道展開。流行りのトレンドを取り入れてあるねえ。
体調を崩して家で寝ていたおばあちゃん。ミンディが置いていったお日様のスイーツを食べ、お皿に「はなまる」を描いていてくれた。ネットとかでよく見る「昔はあったけど今は廃れました」という話にジェネレーションギャップを感じることも多いが、どうやら「はなまる」は残っているようで安心する。漫画『姫様“拷問”の時間です』にも「はなまる」ネタがあったので、今でも幼稚園や小学校低学年で健在なのだろう。
エンディングで横山だいすけ氏の歌う『さよならだよ、ミスター』が流れる。Huluのときに「一発で気に入った」と言っていた曲である。その後CDも購入し、「橘雪翼の好きな歌ベスト10」が久々に書き換わった瞬間でもあった。この曲の位置付けで少々詳細の分かってないところがあったが、DVDの特典映像を見ていてようやく理解した。映画館では『ふうせんいぬティニー なんだかふしぎなきょうりゅうのくに!』と同時上映で、この曲は『くまのがっこう』『ふうせんいぬ』の2つ合わせてのエンディングだったようだ。HuluやDVD版のラストでは『くまのがっこう』専用仕様のムービーが流れ、特典には映画館で流れたジャッキーとティニーの映像のエンディングが収録されていた。おそらく『ふうせんいぬ』の方にも専用ムービーがあるのだろう。
何となくスーは男の子だと思っていたのだが、特典映像で女の子であることを知った。言われてみれば着てるのはワンピース? 態度と顔がふてぶてしいので男の子だと思い込んで、あまり服装までよく見ていなかった。まだ幼い子どもだから声では区別付かないし。
絵本も何冊か持っているが、まだ全部は網羅していない。あまりお兄ちゃんたちがコントするところのイメージはないのだが、映画版ではどちらもクスリと笑えるシーンが盛り込まれている。どちらも絵本と同じあいはらひろゆき氏が脚本を書いているので(但し『ジャッキーとケイティ』の方はもう一人携わっている)、映画は絵本より話が長くなるということで変化を付ける目的があったのかもしれない。
あいはらひろゆき氏は去年亡くなっている。ご冥福をお祈りするとともに、『くまのがっこう』の世界が続くよう、良い後継者が現れてくれることを願う。
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超余談。『ロケットニュース24』という主に面白系の話を載せているサイトがある。今年の最初の頃に福袋の開封記事がいくつか出ていたようだが、その中に『くまのがっこう』の福袋があった。その記事を書いたスタッフさんの『くまのがっこう』を知ったきっかけにも言及されていたのだが、映画『くまのがっこう 〜ジャッキーとケイティ〜』が最初らしい。しかもそれ、『くまのがっこう』じゃなくて同時上映の『チェブラーシカ』が見たくて行ったらしい。そんなやつ(私以外にも)いるんだ。
そんなやつ(私以外にも)いるんだ。
大事なことなので二度言いました。ちなみに私はその映画を一人で見に行った……わけではありません。誰と行ったか暴露すると、当時婚活というものをしており、結婚相談所で紹介された女性と見に行ってきました。デートで見に行く映画のチョイスがこれだから婚活苦労するのも当然ですよね?
なおそのスタッフさん、映画見に行ったのを「数年前」と記述していたが……ちゃうんよ。『チェブくま』上映されてたんはもう10年以上も前のことなんよ。月日の流れは残酷や……(遠い目)
(2023.04.14)
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