「水妖の性・・・福音館の天使たち」
written by ひらやまさん
一.時は、大正末期の日本・・・一台の馬車が、ある山奥に立てられた洋館の前に静かに停車する。
「ふう・・・ようやく着いたのね」
御者を勤めた銀髪の美少年に手を取られ、馬車から美しいひとりの女性が降り立った。
年の頃は20代半ばほどであろうか。
単に顔立ちが整っているというだけではなく、短く整えられた髪や、溌剌とした生気に満ちた瞳などどこか活動的な少年にも似た雰囲気を湛え、なかなかに魅力的である。
女性の名はユイ・・・・先年、夫君であった碇ゲンドウ男爵に先立たれたばかりである。
「これはまた・・・・大きなお屋敷だこと」
晩冬の夕暮れに佇む洋館を仰ぎ見るユイの視界に、しんしんと降り頻る雪が白い影のように重なっていく。
「福音館・・・か、確か、あちらの宗教の言葉で善き知らせという意味よね」
ユイは、縁者の伝手で、この屋敷の主・・・急逝した惣流公爵の一人娘アスカの家庭教師として招かれていた・・・とは言え、別にとりたてて生活に困ってという理由ではない。
政府への数々の勲功によって、華族として認められ、末席に近いとはいえ爵位を有していた亡夫の残した蓄えは、まだ充分にあり、今日明日に暮し向きがどうにかなるというわけではない。
たまたま、惣流家の家令が高齢で職を辞する際、幼少で身体の弱いひとり娘のため、教育係を探しているという話を耳にした時、強い関心を抱いたのは、旺盛な勤労意欲が7割と、生来の仔猫のような好奇心が3割といった理由であろうか。
ゲンドウとの間に授かった子供は、ひとまず、生家の六分儀の乳母やのもとへ預けることにしてこの地に赴いたユイだが、さすがに少々軽率が過ぎたのでは・・・と、後悔の念が少々首を擡げかけた。
(まさか、ここまで辺鄙なところだとは・・・・、まあ、今更、後にも引けないけど・・・)
ちなみに、この時代の爵位は一代限りだが、華族は世襲制である。
(もっとも、その実態はかなり形骸化しているが・・・)
碇家の世継ぎの誕生を見届けて逝ったゲンドウは、まだ幸福と言えるかもしれない。
幸福といえば、ユイもまた、男尊女卑の風潮の根強いこの時代の女性にしては、非常に恵まれていたと言える。
洋の東西を問わぬ洗練された教育をきちんと施され、また、この時代に女性にしておくには惜しいと万人に言わしめるほど才気に富み、性格も朗らかで、情が深い・・・上流階級、それも気難しい年頃の子供の家庭教師役として、これほどの適格者はいるまい。
積もり始めた雪に気を払い、ゆっくりと歩を進めるユイ・・・。
ふと、門柱の影にひとりの少女が身を屈めているのが目に付く。
可愛いフリルのついたカチューシャと、胸元の飾りリボン、そして、肩口のふくらんだ袖と、いった要素を除けは、黒一色の機能的な衣装・・・そして、それに重ねられたエプロンドレスと、黒のニーソックスといった出で立ち・・・。
ユイは、それが西欧のメイドの装束であることを思い出した。
おそらく、この屋敷の下働きの娘であろうか・・・黒目がちの大きな瞳が愛らしいなかなかの美少女である。
寒風に長い黒髪が弄られ、吐息の白さがそれを彩る・・・肌寒さをこらえながら、少女は、小さな腕に愛しそうに一匹の黒い仔猫を抱きあげる。
(・・・くす)
邪気の無い、愛らしいばかりの笑みを浮かべる少女の可憐さに、ユイは、なんともいえぬ微笑ましさを覚えた。
ふと、少女もユイに気付いたのか、少し恥ずかしそうに眼を伏せ、やがて、自分の役目を思い出したかのように表情を改め、仔猫を傍らに置いて歩み寄ってくる。
「い・・・碇・・だ、男爵夫人ですね・・・。あ、あの、・・・あ・・・、あたし、め、めー、・・・メイドの、み、ミサトと申します」
少々言葉がたどたどしいのは、緊張のせいなどではなく、心に何らかの疵を負ってのことと、明敏なユイは即座に見抜いたが、ここは、さして気に止めぬような風情で微笑み返すことにした。
「はじめまして、碇ユイと申します。よろしく、ミサトちゃん」
にこりと微笑むユイ・・・なかなかに人好きのする魅力的な笑顔である。
「あ・・・は、はい!!」
ミサトの頬が、ぱあっと赤く染まっていく・・・メイドの少女は、ユイのさして大きくもない荷物ケースを大急ぎで受け取り、ぱたぱたとした足取りで、主人の待つ屋敷の中に導いていく。
(まあ、豪華だこと・・・、やっぱり、あるところにはあるものねえ)
公爵家ともなれば当然のものかもしれないが・・・ミサトの先導で奥の間に向う最中に、ユイは、広大な面積の屋敷や、目にした豪奢な数々の調度品に、いささか不謹慎な感想を抱いていた。
「・・・あ、あの、こちらです」
やがて、目的の部屋に到着し、中に通されるユイ。
「・・・あなたが、碇男爵夫人ね」
正面に位置する安楽椅子に座った少女が、声をかける。
まだ幼い・・・年齢のころは、まだ10歳かそこらであろうか。
「アタシが、アスカ・・・惣流アスカよ」
「・・・はじめまして、碇ユイと申します」
小さな女主人に、スカートの裾を摘み上げ、作法に従い優美に会釈するユイ。
(・・・まあ、これはこれは)
改めてアスカを見やり、思わず瞠目してしまうユイ。
透けるように白い肌、碧玉のような瞳、そして、艶やかな朱金の糸のような髪。
顔の造作はややきつめだが、まだまだ残るあどけなさが、絶妙なバランスで共存してその魅力を高めあっている・・・まるで西欧の陶器人形(ビスクドール)の逸品でも連想させるような、見事な美少女である。
(確か、惣流公っていえば、欧州への留学時代にいろいろ浮き名を流したそうだけど、なるほどね、・・・この娘の存在が公になってないのも・・・)
「遠路遥々ご苦労様・・・、今日のところはゆっくりおやすみなさい。あなたの身の回りの世話は、メイドのミサトに任せるわ・・・」
年に似合わず、物言いにやや高慢さが感じられるのは、生来の性格のものか・・・、あるいは、子供と軽く見られぬよう気負いが過ぎてのことかもしれない。
いずれにしても、鷹揚な性格のユイは、そのくらいのことで気分を害することはなかった。
「アタシ、少し疲れたわ・・・じゃ、今日のところはこれで、・・・カヲル」
先刻、馬車の御者を務めた銀色の髪の少年が、アスカの小さな体を抱き上げた。
少年も、少女と見紛うばかりに細身だが、意外に膂力があるのかもしれない。
彼は、ずっとこうやって幼い主人の身の回りの世話をしてきたのであろうか。
(あらあら、まるで一幅の絵のようねえ・・・とびきりの美少年と美少女だけあってまるで、あちらのキネマの主人公みたいにサマになること・・・)
・・・翌日から、ユイの教育係としての新しい生活が始まった。
しかし、アスカは、想像以上に賢い生徒で、ユイは、早くも内心舌を巻くことになってしまう。
身体が弱くかつ幼いが故に、具体的な経験や実践が不足しているというだけで、アスカは、驚くほど明晰な頭脳の持ち主であり、また、幼い見かけからは想像が付かぬほどの知識の蓄積量があった。
これでは、ごく近い将来、ユイの教えるべきことは、ほとんど無くなってしまうであろう。
・・・そして、さらに数日の後。
「ふう・・・此度はここまでにいたしましょうか」
「・・・・」
アスカは、病弱で体力が無いためか、疲れが見えるのが早い。
ユイは、教育係というよりは、むしろ心身の健康管理の方に、より心を砕かねばならなかった。
「どうです、アスカさま・・・ここいらで、気分を変えて、お手玉でもなさいませんこと。うふふ、こう見えても、あたし、いろんな遊びも得意なんですよ」
「いいわよ、そんなこと!!」
「でも、アスカさま、小さな子供には遊ぶ時間も必要ですし・・・」
「碇夫人、余計なことはけっこうです!!」
思ったとおりというか・・・、この少女は、不快な反問に耐えることに慣れてないようである。
「・・・・・・・あたしは、はやく大人になるの」
ぽつりと小声で呟くアスカ・・・それはユイの返事を期待したものではなく、どこか自分に言い聞かせるような口調である。
「・・・・・・・・・・・・・」
ユイは、アスカの言葉の裏に、様々な感情が溶けこんでいるのを聞き逃さなかったが・・・、
それ以上取りつく島もなく、やむなく退室しようとするユイの前に、メイドのミサトが姿を見せた。
「あのー・・・、い、碇夫人、・・・ご入浴の・・・じゅ、準備が整っておりますが?」
いつもの、少々たどたどしい言葉使いで、ユイに窺いを立てるミサト。
(・・・後に聞き正したことであるが、やはり、ユイの想像通り、とある痛ましい事件から、一時は失語症にまで陥っていたらしい)
「あら、ありがとうございます、ミサトちゃん・・・あのー、アスカさま。・・・よろしければ、ごいっしょにお入りになりませんこと?」
物怖じしない性格のユイが、ずっと年下の女主人に朗らかに呼びかけた。
「・・・けっこうよ!!」
乱暴にテーブルを叩き、アスカは、そのまま背後に控えていたカヲルに、抱きかかえられながら退室していった。
その後姿を見ながら、深いため息をつくユイ。
(・・・まあ、そう簡単に新参者に気を許してはくれない・・・か)
・
・
・
薔薇の香料の芳香が周囲一面に漂う・・・ゆったりした気分で、広い湯船の中、すんなりとした四肢を伸ばしきるユイ。
「ふうう・・・」
・・・が、すぐにまた、彼女らしくもないため息が漏れてしまう。
いかなユイとてまだまだ若い・・・人の心の暗部の全てを知り尽くしているわけではない。
(アスカさま・・・か。・・・あんな小さいのに、ああも潤いに欠ける環境では、・・・ほんと、誰だって心が歪んでしまうわ)
・・・ちゃぷ
ふと、自分の豊満な胸に触れてみるユイ・・・。
昨年の春に出産を経験したとはいえ、いまだ彼女の肌は瑞々しい潤いを残している。
(んー、まだまだ、お乳の張りが・・・これなら、あの子たちの弟か妹くらい余裕で作れるわよねえ・・・)
楽しげに呟くユイ・・・早々に世を去った夫のゲンドウに操を立ててはいるが、これほど健康的な美貌の持ち主ならば、たとえ寡婦といえど、世の男どもがまだまだ放っておくまい。
(それにしても、まあ・・・ほんとに大きい浴室ねぇ・・・)
碇家や富裕なユイの生家のものも、それなりに贅を凝らしたものではあるが、湯殿まで、これほど無意味に思えるほど大きなものではない。
(あちらのお屋敷って、みんなこうなのかしら?・・・贅沢だこと)
驚くほど広大さを持つこの大浴場は、おそらく一時に十数人で利用することが出来るであろう。
もっとも、他所様の台所事情といった、立ち入った事柄まで、あれこれ想像する事を、いささか下世話にすぎると感じたユイは、ここは素直に快適な入浴を楽しむことに決めた。
がらがらがら・・・不意に戸を開く音がユイの耳に入ってくる。
「あ、あのー・・・あの、・・・お、お背を」
「あら・・・ミサトちゃん?」
見れば、メイド服の二の腕の辺りまで袖口を捲り上げたミサトが、舶来の新しい香料や乳液と思しき容器とタオルを手に持ったまま控えていた。
少女のか細い素足が、ふと、ユイの視界に入ってくる。
右足首だけ巻いた紅いリボンに、可愛らしいおしゃれ心を感じ、思わず微笑ましくなるユイ。
一方、ミサトは、ユイの美しい裸身にうっとり見惚れてしまう。
(・・・わぁ、きれい、きれい・・・、まるで聖母さまみたい・・・)
陶然とした表情で、全裸の自分を見詰めるミサトに、ふと気恥ずかしさを覚えるユイ。
ミサトは、時折、ひどく大人びた表情を見せることもあるが、近くで見るとまだまだ幼な顔を残している・・・実際の年のころは、13,4そこらであろうか。
「・・・あのね、ミサトちゃん・・・、別にあたしにまでそんな気を使わなくていいのよ。
この家では、同じ使用人同士なんだし・・・・」
「で、・・・でも、あ、あの・・・あの」
少女の拒絶されることを怖れる眼に、気心の優しいユイは、また、傷ましいものを感じてしまう。
「えうぅ、ご、ご・・・めん・・・なさぃ・・・」
「あ、待って!・・・、うーん、それじゃ、ま・・・お願いしようかしら?」
「は、はい、ユイさまぁ!!」
ミサトの幼な顔が、ぱあっと喜びの色で染まっていく。
ユイの背中にぴったりと張り付くように奉仕をはじめるミサト。
この体勢では、ユイからは見えないが、実に甲斐甲斐しく尽くしているのが肌身で判る。
「んー、気持ち良いわ、・・・上手ね、ミサトちゃん」
小さなメイドの努力と誠意を充分に感じるのか、時折、ユイが振り返り、微笑みながら褒める。
「(ぽっ)・・・あ、ありがとう、ござぃ・・ますぅ」
ユイの優しい微笑を間近に見ると、ミサトの小さな胸はすぐに幸福でいっぱいになってしまう。
・・・ぶくぶくぶく
少し張切りすぎたのか、ミサトは、ユイの背中のみならず周囲を泡だらけにしてしまった。
ユイが、嗅いだことのない植物性の芳香が一段と広がっていく。
・・・くら
(あ、あら・・・どうしたのかしら?)
いつのまにか、堪え難いほどの睡魔に襲われるユイ。
「んん・・・・、あ」
やがて、完全に四肢から力が抜け、ユイは暖められた床面にがくりと横たわった。
(・・・ユイさま)
悲痛な面持ちで、ミサトが倒れたユイの傍らに跪く・・・
その幼い表情には、畏れと後悔の色がありありと浮かんでいる。
「ご苦労さま・・・って、言いたいところだけどね、・・・どうもキミは、この女(ひと)に必要以上の関心を抱いてるようだね・・・」
不意に背後から聞こえる声に、ぴくりと身を奮わせるミサト。
「あ・・・ひぃ・・・」
声を掛けたのは、あの常にアスカの傍らに付き従っている少年、渚カヲルだった。
その右手には、何か注射器のような奇妙な器具を携えている。
特に叱責のような口調でも、言葉の内容でもない・・・だが、よほど恐ろしいのか。
ミサトは、へなへなとその場にへたり込んだまま、しばし動けなった。
・
・
・
ほぼ一刻後・・・、先刻の浴室の件で、いかなる不興を買ったのか・・・、
ミサトは、アスカの前に引き据えられていた。
「・・・お、おゆる・・し・・・を、ア・・・スカ・・・さま!!」
「この破廉恥な雌猫!・・・優しそうな相手にはすーぐ媚びを売るのね。でも忘れないことね・・・、この屋敷のものは全部アタシのもの。それは、お父様から譲り受けたアンタも同じことよ・・・カヲル!」
そう言うアスカが、身に纏っているのは、昆虫の薄羽のように透けた夜着がただ一枚きり。
昏い閨房の薄明かりに晒されても、その下に、下履きひとつ纏っていないのが判ってしまう。
アスカの言葉を受け、無言で一歩前に出ながら、絹のドレスシャツを脱ぎ捨てるカヲル。
素肌の上から直接着ていたらしく、白い裸の半身が早くも顕わになる。
それは、生身の暖かさを感じさせぬ・・・、まるで現在もなお降り頻る新雪のような冷ややかさを感じさせる白さである。
「ひ・・・あっ、ああっ!!」
音も無く近寄り・・・ミサトの小さく震える両肩に手をかけるカヲル。
さして力を込めた様子はない・・・が、弱弱しいミサトの肢体は、呆気なくテーブルの上に組み敷かれてしまう。
可憐なメイド服の前が暴かれ、勢い良く引き降ろされ、ミサトの細い両肩が顕わになる。
こちらも、下着をつける習慣がないのか、顕わにされた、ようやく膨らみかけた小さな胸が、か細い首に架かった白い十字架(クルス)といっしょに、ふるふると揺れて哀れさを余計に強調させる。
「や、あぁ・・・やうぅううう・・・」
ミサトの喘ぐような抗いの言葉を無視して、小さな肢体の上に覆い被さるカヲル。
この美少年の身体は、まるで体温が無いかのようにひどく冷たく、ミサトには、以前から、それが耐えられなかった。
きし・・・、きし・・・
「ぅあぅっ、・・・ひぃたぁ・・・いたぃよぉ・・・・」
小さな尻肉の合い間の・・・その後ろの秘門に無理やり冷たい肉の鏃が侵入する。
ぎっしりと満たされ、張り裂けそうになりながら・・・ミサトは、容赦の無いカヲルの責めに、ただ、涙するしかなかった。
「カヲル・・・もっと、突いておやり!!」
きち・・・、きち・・・
「やああぅ、ぅんーーっ、・・・・やああぁぁ、お、お赦し・・・おゆるしを・・・」
排泄器官の粘膜を、強く抉られるミサトの涙でくしゃくしゃになった顔を見つめる内に、年齢に似合わぬ淫蕩な表情がアスカの顔に仄かに浮かんでいく。
「ふぅっ、相変わらずそこのほうが好きなのねぇ・・・・カヲル!!」
またしても、具体性のまるでない、アスカの命令にゆっくり頷くカヲル。
両膝の裏のやや上を掴みながら、背後から挿し貫いたままで、ミサトの小さな肢体を軽々持ち上げ、細い両足を大きく拡げながら、幼い女主人の眼前に無慈悲に晒していく。
「あぅ・・・うぅぅ・・・」
「ねぇ、ミサト・・・あんまり、じたばたすると、カヲルの冷たくておっきなものを、ここに挿れさせるわよ」
「やぁぁっ・・・、それは、やぁああなのおぉ!!」
ミサトの晒された淡い色の秘裂に、その花のような唇で触れていくアスカ。
そのまま、紅い小さな舌が、秘めやかな蕾のような突起を暴きはじめる。
ちゅぷ・・・ちゅぷ・・・
「あぁぁぅ、・・・やぁうぅっ!!」
咽喉を鳴らすような、ミサトの喘ぎ声が、薄明かりの部屋にこだまする。
こり・・・・
アスカの真珠のような歯と舌が、代わる代わるミサトの剥き出しにされた緋色の蕾と戯れる。
「ひぃ、ん・・・いぃぃ、あ、あすかさまぁ・・・!!」
ミサトの赦しを乞う泣声が、ごく短い間響き、やがて聞こえなくなる。
だが、ミサトの謝意は、意識を手放すその瞬間、全く別の方向に向けられた!
(・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・ユイさまぁ・・・)
・
・
・
さらに一刻後・・・、素肌を夜気に晒され、ベッドの上でユイが目を覚ました。
「あーまいったなぁ、湯当たりっていうのかしら・・・・頭がまだがんがんするわ」
ふと、自分の姿に気付くユイ・・・、何時の間に巻かれたのか、二の腕に広い範囲で包帯がきつく巻かれている・・・倒れたときに怪我でもしたのだろうか?
一応、薄絹のような素材の、体の線が薄っすらと透けて見える夜着を身に付けてはいるものの・・・その下には下履きすら付けていないことに気付き、しばし憮然としてしまう。
そういえば・・・、どうやって自分はここまで運ばれたのであろう?
この屋敷で、男手といえば・・・ユイは、あの銀髪の美少年しか知らない。
(や、やだ・・・み、見られた?)
あの美少年、渚カヲルの前で一糸まとわぬ姿を晒したかも知れない・・・。
そう思い始めた胸の奥で、もやもやしたものが浮かび上がって止まない。
カヲルの胸に抱かれた自分を想像しながら・・・いつしか下腹部にじわりと高まる熱を感じてしまうユイ。
・・・ぎぃ
ふと、軋むような音のほうに視線をやると、何時の間にか外に面した窓が開いている。
(?・・・鍵閉めてないのかしら・・・・・・えっ!?)
欧風の広い寝台の上に横たわる自分の足元・・・。
ユイは、何か白いものがわだかまっているのに気付いた。
「な、何なの!?」
ようやく絞り出せたユイの言葉に応えるかのように、別の彩りが仄かな白の中に浮かぶ。
それは、不吉な紅玉(ルビー)を思わせるような、紅い瞳だった。
息を呑むユイの前に、ゆっくりと・・・、白いものが人の姿へ変化して這い寄ってくる。
(何?・・・濡れてる?)
シーツを通して、奇妙な湿り気を感じる・・・黄色の染み?
それに、この・・・鮮血のような匂いは?
ぴちゅ・・・・ぴち
白い影のような塊は、ついにユイの眼前までにじり寄った。
「ひっ・・・!!」
幼少の時分から、女性ながらになかなかに胆力のあると誉め称えられてきたユイが、思わず、怯えた声を漏らしていた。
その姿は、まるで、娘の時分のユイのものに生き写しだったが・・・しかし、これは、まるで生きたものの気配がしない。
・・・魂のない、まるで昏い水底の魚を思わせるようなうつろな紅い瞳。
・・・これは、まるで、・・・・生きている白い闇?
・・・それとも、水から生まれたばかりの妖物(ウィンディーネ)?
紅い瞳の下、また新しい紅が生まれる・・・それは、艶やかな口腔部の色だった。
そこから生えた艶かしい舌が、動けなくなったユイの唇を撫ぜ回し、やがて、堅い貝をこじ開けるように潜りこんできた。
こくんっ・・・・
「うっ!!」
注ぎ込まれる吐息が、ユイの咽喉の奥に灼けるような熱を産む。
それは、少しずつ体内の奥深く伝播し、やがて、下腹部まで到達していく。
(な、何、これっ!?・・・・あっ、あついっ!!)
ユイは、俄に抵抗力を喪失して、再び寝台の上に倒れ伏した。
その間にも、白い少女は、ユイの豊かな肢体に覆い被さり、そのちいさな掌に余るほどのたわわな乳房を、無造作にこね回していく。
「つぅっ・・・」
女としてもっとも敏感な部分を、見掛けにつり合わぬ強い握力で、まるで麺かパンの生地でも練りこむかのように、強く揉みしだかれるユイ。
「ひぃっ、ぃたいっ、いたいのっ・・・・やめてぇっ!!」
ユイのきつく閉じられた瞳の端に、色濃い恥辱と苦痛の入り交じった涙が浮かぶ。
だが、少女は力の加減なぞ、まったく理解出来ないのかユイの呼びかけに全く反応しない。
出産の経験があるにも関わらず、まだまだ透明感のある桃色の乳首は充分に瑞々しく、強い刺激に反応し、少しずつ固さと質感を増していくそれに、強い好奇心をそそられたのか・・・血の気の全くない唇をそっと寄せていく少女。
ちゅ・・・
「ひぃ、ぁんっ!!」
乳首の先が、じんじん痺れているところに、乳児が戯れるような口吸いを受け、疼きが止まらなくなってしまうユイ。
白い少女の口腔部は、乳児のように歯が存在せず、まるで性器同様の柔らかな粘膜の坩堝を思わせる。
乳輪ごとぷくんと持ち上がり、堅く勃起した若い未亡人の乳首は、はたして、どちらをより深く犯しているものなのか・・・
小波のようにうねる快感が、少しづつ、少しずつユイの心からも抵抗力を剥奪していく。
びく・・・・ぴく、ん・・・んんっ・・・
鮮紅色の舌が少しずつ、ユイの敏感になりすぎた肢体の上を這っていき、やがて黒々と生い茂る下生えに隠された成熟した秘割れにたどりつく。
「あぁっ、いやあぁっ・・・そこは、だめええっ!!!」
乳首を濡らした、あの粘り着くような柔らかい肉壷を、こんな敏感なところに見舞われてしまったら、もはや、はしたない‘女’の性(さが)が、目覚めていくのを、抑えられるはずもない・・・。
白い少女の、造り物めいた浅い縦筋とは違う・・・既に産褥を経験した成熟しきった器官に、あえかな吐息がかかるだけで、もう昇り詰めて、意識を手放してしまいそうなユイ。
くちゅ・・・ちゅぷ、ん
「あ、ひっ・・・あううぅぅぅん!!」
まるで、軟体生物の吸盤のように粘着する異様な感触・・・明らかに人間のものでない少女の舌は、ユイの自身の指や、良人のゲンドウの陽根にも触れた事のない秘部にまで確かに及んでいた。
「ああぅ・・・・ううっ、だめ・・・だめぇ・・・」
ぽってりと腫れ上がった襞々の隅まで行き届く生暖かい感触にうち震えるユイ。
今まで感じたことのない・・・まるで魂の奥底まで、吸い尽くされてしまうようおぞましい快感。
しかし、それに怯えるか、耽溺するかの、選択する暇さえユイには与えられなかった。
ふと、無防備になった内腿に、なにやら濡れた塊が触れる・・・
(う、うそっ!?・・・こんなのってっ!!)
今、水揚げされたばかりの活魚のように、ぴくぴく蠢くそれが何なのか、直感的に悟ってしまうユイ。
・・・眼前の生きている白い闇のような少女・・・
・・・もし、見掛け通りの存在であれば、決して、有り得ないはずの器官。
そして、何よりもおぞましいのは、いつのまにか自分の秘芯が、それを受け入れるのが当然であるかのように潤み切り、微かに口を開いていることだった!!
「・・・あ、ああっ!!」
狼狽えて、逃れようとするが、ユイの四肢からは力が完全に抜けきってしまっていた。
なけなしの力で、なんとか少女を押し返そうとしても、もはや何の効果ももたらしようもない。
くぃん・・・
想像通り、それはゆっくりと鎌首を持ち上げ・・・ユイの肉付きの良い内腿を撫で回すように、少しずつ、少しずつ・・・一点に向かって、這い上っていく。
「そんな・・・だ、だめっ!!」
俄に信じがたい状況に追い込まれ、懸命に内腿を閉じ合わせようともがくユイ・・・
・・・だが、ユイのなだらかな下腹部は、もはや鍵の開け放たれた宝石箱も同然だった。
それは、やがて入り口まで辿り着くと・・・、じわりと馴染ませるような感触と共に、確かな圧力で、美貌の未亡人の貞操の門扉をくすぐり、羞恥心と柔らかな媚肉を同時に責め立てていく。
その動きは、まるでユイに観念する猶予を与えるかのように、緩慢だった・・・
その間にも、ユイの胎内の内側に、まるでとろ火で炙られるような疼きが極まっていく。
「くぅぅっ・・あぅんっ、もうだめっ、・・・・・あなた、たすけてっ!!」
進退窮まった悲痛な喘ぎが、煩悶するユイのか細い咽喉から漏れ出でる。
伏せられた白い秀麗な貌から、零れ出る屈辱の涙が枕を濡らしていく・・・。
白い少女は、少しも急がなかった・・・まるで、ユイが自ら堕ちるのを待ち受けるかのように。
そして、その意のままに・・・ユイの忍耐は、今にも燃え尽きようとしていた。
・・・よもや、このような異様な形で、貞操を奪われることになろうとは
苦い諦念が、少女のように活力に満ちていたはずの若い寡婦の心を焦がし、苛んでいく。
(ゆ、・・・ゆるしてっ、あなたっ・・・・・、シンジ、しん・・りっ!!)
今は亡き良人と、自分の帰りを待っているであろう愛しい子どもたちの顔が、ユイの脳裏に浮かんでは消えていく。
・・・ずぶっ!!
「あっ、ああぁぅうううううぅーーーーーっ!!!」
ついに重々しい感触に、鋭敏な女の芯を深々と貫かれてしまい、悲痛な声を上げるユイ!!
しかし、白い少女に、生身の人間の男の交情のように腰を送る素振りは一切見られない。
ユイの膣内に進入し、みっちりと詰められたものが、ひとりでに蠕動しているのである。
「くぅっ、ううんっ・・・あぅっ、あうんっ・・・そんなっ!!」
うねうねと這い回り、まるで、まだ飽き足りぬかのように、膣内で異様に膨張していく
盲目の海鰻のような鎌首は、荒々しいばかりではなく、精妙な律動を加えて、ユイを責め立てていく。
「ひっ、いやぁっ、おなかの中でっ・・・ふ、ふくらんでっ・・・」
ユイの小娘のように肉付きの薄い下腹部に、太い筋が隆起するようにぷくりと浮きあがり、まるで周囲にその威容を誇示するかのように、びくんびくんと脈打っている。
「・・・あん、あっ、ひっ・・・さ、裂けちゃうううぅっ!!」
いかな気丈な賢婦とて、無防備で敏感な粘膜を内部から圧迫されては、ひとたまりもなかった。
ゲンドウに処女を捧げた時や、初産の時以来の鈍痛に、ユイはただ無力な涙を流すしかない。
「あんっ、あっ、ああっ、ふぁうぅっ!!」
幾度も太い楔にずんと子宮口を強く突かれ、閉じた瞼の端から幼子のように涙を零してしまう。
(あぐ、あふぅっ、も・・・もう、いっぱいなの・・・いっぱいなの・・・・に)
みし・・・みし・・・
大きな寝台が、微かながらに軋むほど、ユイの胎内を蹂躙する律動は暴力的な激しさを増していく。
あまりの辛さに、血の気が無くなるほどに、シーツを握りしめ、全身を弓なりに反らすユイ。
豊かな双乳が、自分の意に反して、水妖の少女の眼前で挑発するようにふるふると揺れていく。
「あうっ、はぅっ、・・・だめ、もうだめっ、・・・、んんっ、こわれるっ、こわれちゃうぅぅっ!!」
暁を迎え、夜は白々と明けかけていた・・・しかし、ユイの生殺しのような煩悶は、いまだに続いていた。
人外のモノの交わりに、あたりまえの・・・人間同士の交合のような絶頂は、なかなか訪れなかった。
もう既に、性器の感覚はなかった・・・人の身には、信じがたいほどの異様で激しい凌辱に蹂躙され続け、あれほど下腹部を穿ち、掘り起こされるような苦痛を感じていたものが、今では、もう襞々にすっかり馴染み、まるで一体化してしまったかのようである。
その事実は、幽かに残された理性や、ひとつの生命持つものとしての本能に訴えかけ、耐え難い恐怖を生み落とし、年若い貞淑な未亡人を、苛み続けていたが・・・・・・・ついに。
「あふぅ、あうぅうぅーーーんっ!!」
凌辱に敗北したユイの細い喉から、ついに・・・、自分でも驚くほど鼻にかかった甘ったるい媚声が漏れ出た。
下腹部に深々と、太い楔を打ち込まれているというのに、いつしか自然に腰が浮いてしまう。
このような異様な状況でも、性愛の快感を思い出した若く瑞々しい躯が、浅ましいほどに反応してしまう。
「ああんっ、あひぃっ、ああんっ・・・・だめ、もう・・・・あぅ、ううっ、ひぃ、くうううぅーっ!!」
痺れるような・・・まるで、下半身の全てが性器に作り替えられてしまったような甘い感触。
理性を喪い、惑乱しきったユイは、悩ましい嬌声を、あらん限りの声量で上げ続けた。
・
・
・
ようやく意識を手放したユイは、下肢さえ閉じ切れぬしどけない様で、ベッドの上に長々と横たわっていた。
そして・・・、自分が犯した年若い寡婦の傍らに寄り添う、あの水妖の少女にも、何時しか変化が顕れていた。
その双眸には、もはや、あの深淵の魚たちを思わせるような虚ろさは無く・・・
まるで、ユイの魂を分け与えられたかでもしたように、瑞々しい輝きが宿っていた。
少女は、まるで、丸一晩責め立てた詫びをするかのように、気を失って横たわるユイの面(おもて)に向け、
まるで、初恋の相手に対するような口付けを捧げた。
(続く)