深宴 第4話
著者.ナーグル
「イバよ。これで汝の口と胃は清められた」 気合いを入れ直すように腰を叩きながら、上機嫌に教祖は言った。恨めしい眼をして見上げるレイの怒りを感じてもどこ吹く風だ。強がっていても、気丈に振る舞っても、赤くなった頬と涎で濡れた口元を晒した状態では怖くも何ともない。いやその強がりがかえって滑稽にさえ見える。 「だがまだ清めの儀式は続けなければ」 不平の声がなぜか客席の狂人達の間からあがる。いつもなら、この辺りで自分たちにも回ってくるのに、と。白痴らしくまったく教祖の言葉を理解していないことが丸わかりだ。 「落ち着け神の子羊たちよ。今はまだ清めの時だ」 いつもと違う反応の狂人達に戸惑いつつも、教祖は大袈裟に手を広げてなだめる。 それにしても奴らはなにを焦っているのか、と怪訝に思うが、すぐに焦っているのは自分も同じだ、と考える。ちらりとまだ恨みがましいレイの顔を見つめ、確かにこんなにも上玉の女は初めてだからな、と納得していた。 一度射精したらすっかり消耗してしまい、精力のつくものを食べて半日は休むか、とある趣味を満足させないと回復しないはずの一物が、既に胆力とともに回復し、鋼鉄のような堅さとH2ロケットのような角度でそそり立っている。 ともすれば教祖であることも忘れてしまうような美女。日本人特有の面立ちをしながら白人よりも肌が白く、そのくせ染みやソバカスなどが微塵もない肌。微かに光沢すら感じさせる白銀の髪。紅玉のように赤い瞳。 初めて奴らに混じって女性を凌辱して以来だ。圧倒的な高みから、絶対者として女性を支配するあの陶酔。まるで自分が世界と一体になったかのようだった。 ここ数年は慣れてしまったことと体力が落ちたこと、それにそうそう彼の趣味に合致する獲物がかかるわけではないのでそんなことは少なくなっていたが。 あの時の、いやそれ以上の興奮と昂ぶりを覚える。アンドロギュヌス…神話の時代に別たれた半身を見つけた気がした。 「もう、解放して。…私は約束を果たしたわ」 見惚れるように美しい瞳を険しくして、レイが睨んでくるのを教祖は肩をすくめて受け流した。 「イバよ。まだだ」 「……………………そう」 答えは聞く前からわかってはいたがレイはうなだれた。 避けられないなら、早く終わらせて欲しい。 「…こんどは、どうすればいいの?」 「おお。それでこそだ。さあ、服を脱ぐのだ。私が充分だと言うまで全部を」 「………わかったわ」 言いつけに答え、首輪の下に隠れた盆の窪に手を伸ばす。手が柔らかいベルベットに触れた瞬間、微かに息が震えた。ドレスをゆるめる為に。ファスナー、フックを外しながら再びアスカに視線を向ける。 大丈夫だから。なんでもないもの。 あなたは大丈夫、私が守るもの。 守りきれるかわからないけど、でも、碇君と約束したから。だから…。 アスカの呻きを意識から閉め出し、呼吸を止めるとレイはドレスをたくし上げ、袖を引き抜く。一瞬の逡巡後、まずは上だけ無造作に脱ぎ捨てる。 もともと肌が半分透けて見えるレースだから、ほとんど剥き出しみたいな物だったけれど、方が外気に直に触れたとき、レイはこの部屋の中が思っていた以上に寒いことに気がつく。無駄に広い空間に、熱が奪い取られていくこの感じ…。 「寒い…」 「なにすぐに暖めてやるぞ」 廃墟のビルに住んでいた時のことを思い出す。 あの寒々しいところにシンジはよく来てくれた。そして、たわいない大抵は一方的にシンジが話すだけだったけれど、でも暖かくなった。そっと手を握ってくれた時、とても幸せだと思った。 温もりを知って以来、骨まで冷えるような肌寒い環境は嫌いになった。 だからこれ以上脱ぐことには抵抗があるが、男の要求していることは服を脱ぐこと。抵抗や拒絶は鏡の映像のようにアスカ達にはね返って行く。 「はぁ……………………」 軽く身震いしてドレスを支えるストラップをずらす。胸を隠すブラの隙間に手を入れ、タマネギの皮を剥くように引きはがす。形状記憶合金入りのブラは主の望まぬ脱衣に抵抗する。 ぶるん 一瞬の拮抗の直後、勢いよく乳がまろびでる。形よく芳醇に実った女の果実は羞恥に赤く色づきながらふるふると震えた。 (レイ…) アスカは教祖同様レイの胸から目を離せないでいた。 気づかなかったけど今ではレイの方が大きくて形が良い。柔らかく、白いが健康的な肌は生命力に満ちあふれていた。なにより白い肌に栄える桃色の乳首など女のアスカが嫉妬してしまうほどだ。 (本当に、綺麗に…。シンジ、あんたどうして私たちを、レイを避けるのよ…。あんたが、パーティに来てれば、私たちもヤケ酒飲むなんてこと無かったし、そして電車に乗るなんてことしなかったのに) あの美しいレイが、無碍に蹂躙される。天地がひっくり返ってもあり得ないと思っていた美女と醜男の組み合わせ。その光景を想像した途端にぞくりと背筋が震え、ああ、と心の中でアスカは呻いた。 ドレスやその下のウェスト・ニッパーが、くしゃくしゃの状態になるのも構わずレイは臍の辺りまでずらした。わずかに肋骨の線が浮かぶ脇腹や細腰が目にまぶしい。 (………まだ、脱ぐの? でも、このままだと) そこまで脱いだところでレイは戸惑った。完全に脱ぐためには、立ち上がって足をスカートから引き抜くか、逆に上に脱いで頭から脱ぐかしないといけない。首輪と鎖が邪魔になって上に脱ぐことは出来ないから、スカートから足を抜かないといけないのだが、狂人達はレイに立ち上がることを許そうとする気配がない。 このままでは脱げないのに…。 教祖の目が執拗に見つめることに戸惑いを覚えたのか、両手で胸を隠すように肩を抱くと、レイは恐る恐る聞き返す。 「まだ、脱ぐの…?」 「む、ああ、そうだな。ドレスはもう脱がなくて良い」 「え…? なぜ」 好色な笑みとはこういうのを言うんだとレイは思う。シンジがにやけた顔をさしてアスカがイヤらしいと言ったことがあったけれど、それとはまるで違う。 「あとでじっくり脱がせてやるからだ」 狂人の一人が手になにやらどす黒い瓶を手に持ってベッド側にやってくる。液体の正体がわからないまま、かぎ慣れたアルコールの強い臭いにレイは鼻をひそめる。 「安心して良い、ただのワインだ。汗もかいたし喉も渇いただろう。飲め」 ふるふるとレイは首を振る。 瞬きをしないまま瓶を脅えた目で見るレイの姿に、彼女が『もう、アルコールの類は飲みたくない』、そう考えていることをアスカは悟った。今夜、いやもう昨夜のパーティでほんのわずかなアルコールで真っ赤になったり真っ青になったり、最終的には目を回して苦しんでいたレイだ。アルコールを苦手に感じておかしくない。 「いらないわ…。美味しくないから」 もうお酒は嫌い。シンジに勧められても、飲みたいと思えないのに…。 鎖を引っ張られ、肩と頭を押さえられる。 「はうっ、いや、やめ…」 無理矢理顔を上向きにされ、頬を左右から押さえつけられるレイ。緩く開いた口に、容赦なく瓶の口が傾けられる。アスカの見ている前で、赤い液体が注ぎ込まれた。一瞬、レイは吐き出そうとするように咳き込むが、その前にその口を塞がれてしまう。 (あ、ああっ。あんなに、まだ昨日のアルコールが残ってるレイに、ワインを飲ませたりしたら) ゴクリ、ゴクッ。 いやに耳に響く音をさせてレイはワインを飲み干す。飲み干さざるを得ない。 「よしよし、まだ足りなかろう。もっと注いでやるぞ」 「うう、やめっ。ぐぶ……うぐっ」 結局、小ぶりな瓶一本分を全て飲み干すまで、レイはその拷問を受けた。 空になった瓶が床に放り投げられる。 瓶が床にぶつかる前に、もろ肌脱いだ教祖は正面からレイを押し倒した。 「ふぁ、あぅ。や、やめて…」 急に仰向けに押し倒されて、吐き気と熱で視界が台風のように渦巻いている。 身体に密着してくる教祖の肌の感触も気持ちが悪い。廃棄された脂身のプールにつけ込まれたような嫌悪感がする。 「あっ、はぁ、はぁ。息、が…」 胸に詰め物が入ったみたいに、ごわごわとした息苦しさで肩で息をする。体が自分の物とは思えなくなったような浮遊感に苛まされながら、レイはかろうじて拒絶の言葉を漏らした。レイは正体を無くすほど飲んでワケでなく、さらに酒を飲んで美味しいと思う体質ではない。意識はハッキリしたまま、体が溶けていく、形が形でなくなっていくのを感じるのだ。 「ふぁ、ああっ。自分が、自分でない…。うぐっ、とても変、私がわからなく…なる」 「そうかそうかこれからもっと良くしてやるぞ。 さんじゅわん、適時香油を私たちにかけろ」 大きな水差し壺をもった狂人が頷く。アルコールの酩酊作用で体は熱を持ち、血管が開いて鼻づまりを感じるが、利かなくなった鼻孔に微かにオリーブオイルの匂いが届く。 「んんっ。やめ、て」 背けたレイの頬を冷たい舌がべろりと舐め跡を付ける。 気持ちの悪い感触にぞわぞわと背筋が震えた。 「はっ、あっ。だめ」 舌の凌辱は頬から口へ。 口で息をするために、開いたままの口を閉ざすことも出来ず、レイの舌は無防備だ。唇を塞がれた時、「んふぅ」と背筋がゾクゾクするような媚びた鼻息を漏らし、潜り込む肉塊に反射的に応えてしまう。 「あむぅ……うっ………うっ…ううぅ、はっ…んっ、んんっ」 スピーカーを聞かなくても、ちゅぷちゅぱと2人の舌が絡み合い、粘つきかき混ぜあう水音がアスカの耳に届く。艶めかしくも蠱惑にレイと教祖のものが絡み合う。舌が舌で犯されていく。 「んっ、んんっ。ちゅく、んちゅ…。ふ……ひゅぷ。ん、んっ…………ふぁ。ああぁぁぁ」 2人の舌は絡み合い、もつれ合い、お互いの触感を刺激しあう。嫌と言うほどに唾液を飲まされた後で、ようやくレイの唇は解放された。 「ぷあっ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。はっ、ふぅ…。ふぅ…。ん……」 存分に口を犯されて忘我状態のレイは、酸欠の金魚がするように空気を求めて大きく喘ぐ。教祖は開いたままの口目がけて、悪戯好きの子供がするように泡で白くなった涎をおとす。 「んあぁ。あっ、ごぶっ、うんっ」 にちゃにちゃと粘つく唾液にレイは戸惑うが 「………………………んくっ」 やがて諦めたように喉が鳴る。 ワインを飲まされて目が回ったレイにはそれ以上の抵抗なんて出来ないのだ。 「な、なに……………………ああ」 ぼうっとしてる間に、生ぬるい液体が教祖ごと注がれる。胸の隆起、谷間、鎖骨、首筋、脇腹が油で濡れて、テカテカと艶めかしく光る。オイルには何か刺激性の物が混ぜられているのだろうか、生ぬるい液体が触れたところが微かにヒリヒリと疼く。 油まみれの身体が擦れ合うのは、思っていた以上に気持ちが良い。 気持ちが良い? 一瞬でもそう考えてしまったことにレイはおののく。本当に、心が折れていっていることを嫌でも自覚させられてしまって。 「は、ふぅ、んっ。あ、あつい…の」 紅色に染まったレイの胸を無骨な手が無遠慮に掴んだ。 「くぁっ……………………ああぁ、っ、あんっ」 指先が柔らかい乳肉にめりこみ、思う様に揉みしだいていく。仰向けになっても形が余り崩れない豊かな胸の稜線が、ぐにぐにとパン生地のように捏ねられる。 「んんっ、ふぅぅ、んはぁ…っ。はっ、はぁっ。な、んで…」 その気がなくても、どうしても声が出てしまう。 触られるたびに、ずくん、ずくんと体の芯から疼いてしまう。 吐き気がする。肉体と精神両方で嫌悪と拒絶を感じている。 (やめて、触らないで。いや、気持ちが…悪い。碇君、以外の人に、触られたくない) 今までは特にこんなことを考えたことはなかった。だから検査の時に多くの人に裸を見られても、全くの平気だった。いや、そもそも裸体を晒すことで羞恥を覚える事なんて無かった。 そのはずなのに、他人の手が今現実に触れてくると血を吐きたくなるほど気分が悪い。 「はぁ、はぁ、はぁ、あ……はぁぁ、ん。ん、んんっ。や…ぁ」 私の形が無くなっていく。溶けていく。男の指が、自分の中にめり込んでいって、奥の内蔵をつかみ取っていく。 暑い、たまらなく暑い。病気かと思うほど汗が流れ、先に注がれた油と混じって泥だまりの上を転がっている気さえする。 (私、は、綾波…レイ…。私という存在は…うううぅ…痺れ……熱…が、犯して、はぁぁ…犯されていく。 なにも、わからなく…なる。わたし、は…なにを、してるの…) パチパチと、時折火花が走る瞳を見開く。それだけで今のレイには重労働だ。 (今の、状況…は、あぁぁ…む、胸が、断続的に、ズキズキと、いた………い。違うわ、こ、これは痛み、じゃない。 これ、は…なに。) ずちゅ、ぬちゅ、ぐちゅ、泡が弾ける威勢のいい音を立てて胸が執拗に揉まれている。 「んんっ…。は、はなし…て。あっ………あっ………あっ………あっ………あっ………ああっ」 乳房というのはこんなにも勢いよく震え、そして柔らかくも形を変えるなんて知らなかった。疼きと熱で溶けそうな乳房が、自分の物ではないような気さえする。 「はうっ、うぅ。あ、ああぁ」 本能的に両腕でのしかかる男の体を押し返そうとして、胸や肩を押し、油で滑っている。意図せず、逆に男のたるんだ体を愛撫しているようなことになっているが、そんなことにも気づかない。 「うあぁぁ、あっ、はぁ。どうし、て…あああっ。胸が、痛い…」 揉まれた時、ゆっくりと力が抜けて乳房の形が元に戻っていく時、悲鳴のような声が漏れる。意味なく声を出すと無駄に疲労する。だから止めないと…と思うのだけど、どうしても止まらない。特に指で乳首の先が擦られたりつままれたりすると、甲高い喘ぎが時折漏れる。 「あっ、あっ、あっ、ああっ。い、ひっ……んんんっ、あうっ、ひぅぅん」 無意識のうちに右手を突き上げ、指先がヒクヒクと空を引っ掻いて足掻く。教祖は手にたっぷりと油を受けると、柱のように伸ばされたレイの腕全体にすり込むように愛撫していく。 恋人同士がするようにまず指を絡め合い、それから手の平、手首、肘、二の腕、肩、脇、再び乳房へと滑っていく…。 「あっ、はぁ………………っ!」 気持ち悪いのに、指先が蜘蛛の足のように体を這うたびに喉を突いて声が溢れてしまう。押し返すことに疲れ切った両腕が、いつの間にか教祖の背中を抱きしめるようにしがみついていた。 「んふぅぅ、ふぅぅ、ふっ、ふぅ。ふあぁっ。はぁぁ…。い、いかり、くぅ…」 また唇が奪われる。 息苦しさにむせるが、舌の進入に今更抵抗することも出来ず、大人しく受け入れる。 「んちゅ、ちゅぷ、んんっ、んっ、んっ、んっ、んんん〜〜〜〜っ。ひ、あ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」 堅く凝った乳首が、コリコリとした弾力と共にほぐされていくのに合わせて腰が持ち上がっていく。 「おお、可愛らしい乳首だ。乳輪もほどほど濃いピンク色が白い肌に映える…」 「はっ………あっ。はっ、あ、うん…んっ」 乳房全体が絞り上げられるようにつかまれ、突き出た乳首が舌先で舐られる。 「はっ、はっ、はっ、はぁぁ…………っ」 その気がないのに首が反り返る。膝が曲がり、足全体で山形を形作っていく。踵が尻たぶに触れるほどきつく折り曲げ、蹴り上げるように膝を上につきだした姿勢。そのまま背筋は仰け反り、筋をつる寸前の厳しい姿勢のまま、ブルブルと小刻みに痙攣を始める。 「あっ、はぁぁ…………っ!」 レイの声はこれまでになく甲高い。 ごりゅ、と鈍い音を立てて乳首を甘噛みされた瞬間、レイの脳裏で白い光がスパークした。喉奥から吐き出すように空気の塊が溢れ、ぶる、ぶるぶるっ…とアスカにも聞こえるほど大きな音を立てて体を痙攣させた。そして、ふっと力が抜けた肢体がベッドに音を立てて横たわった。 アスカもさすがにレイが絶頂を迎えた瞬間は目を伏せた。伏せようとした。だが、そらせないままレイの身体が反り返り、痙攣する様を見ていた。何度見ていられないと目を伏せようと思ったか。何度凌辱者に気が萎えるような罵声を浴びせてやろうと思ったことか。しかし、凌辱されるレイの残酷な艶姿に声をなくし、瞬きも忘れて魅入っていた。 美しかったから。 その自分と同じ、あるいは自分以上に美しいレイが汚されていく…。 (れ、レイ…。レイ、いったんだ…。いったのね、レイ…。レイが、あの、レイが…シンジでない男相手に) 忘れていたはずの、無くなったはずの昔の記憶と感情がどす黒く記憶の泥の中から浮かび上がっていく。泥で汚れて、それの名前はまだわからない。 ほんのわずかにアスカの口元が吊り上がったことには誰も、アスカ自身も気づかなかった。 ちゅぷん 「あっ」 音を立てて吸い上げられていた乳首が解放される。その瞬間の甘美な刺激でレイの意識が急速に覚醒していく。 「ん、んんんっ。はっ…あぁ。あっ、私………な、に」 絶頂を迎えたこともわからないのか、レイは戸惑った顔で教祖の顔を見上げる。体内で爆発しそうだった圧力は、少しゆるんだのだが、体中がリハビリをする時みたいに痺れて細かく震えて、状況はさっきより悪くなったとレイは思う。 「もう、やめ…て」 「なんのなんの。まだまだこれからだぞ…イバよ」 教祖はドロドロに濡れたスカートに手を差し入れると、これまたドロドロに濡れたレイの細腰を撫で回し始める。 「んんんっ」 触られたのは秘所ではない。あくまで腰と引き締まった腹部だ。だがそれだけで神経が剥き出しになったように敏感になっていたレイの体は反応してしまう。臍の周囲を撫で回されるだけで、再び身体が熱を帯び、制御できない震えが全身を犯していく。 「はなし、てっ。だめ…だから」 むっちりとした太股が垂直に抱えられ、スカートの中で教祖の腕があるものを求めて更に動きを激しくしていく。 「どうして、そんな、ことっ。は、放して」 無体な仕打ちに、さすがに怒ったのか猫のように目を吊り上げてレイが声を強める。だが、剣呑な言葉を教祖は委細気にせず、油で濡れてつかみ所がなくなったレイのショーツを丸めるようにして太股の上を滑らせていく。 「ええい、面倒だ」 「い、あっ」 焦れた教祖は膝の所とまで脱がせたところで、大きく左右に押し広げる。細く伸ばされたショーツが足に食い込み、苦痛にレイが呻く。じたばたと膝先を振り、ヒップを油溜まりの上で左右に振り立てる。 ビリッ、ビィ――ッ 音を立ててショーツの一端が引き裂かれ、レイの足は大きく割り広げられた。すかさず狂人の操るカメラが回り込み、剥き出しになったレイの秘所を大写しにする。 (――――あっ) 怪物と狂人達のざわめきが一瞬収まる。 自らが犯されているような疼きを股間に感じ、興奮に囚われていたアスカが息を呑む。 (いよいよ、なのね…。レイが、レイが…これからあの男に) 青白いほどに白い肌に、うっすらと筋がついていて、その周りにあるはずの茂みが見あたらない。一瞬、子供のそれを見たかと思うような寒々しい秘所だ。だが、それが子供のそれではあり得ない証拠に、控えめな淫裂はアルコールと入念な愛撫による弛緩と興奮で緩く開き、奥に潜む毒々しいまでに淫らな淫唇と、ほんの指先ほどのピンクの真珠をわずかにのぞかせていたからだ。 (あれが、レイのラヴィアとクリトリス…。はは、私と同じ…だ。やっぱり、レイも、同じなんだわ。それに、はえてない…。はえて、ないんだ) ごくりとアスカが唾を飲み込む音がやけに大きく響いた。 いや、それは教祖の出した音だったのかも知れない。 「ほほぅ、いや、これはこれは」 涎を本当に垂らしながら、教祖はレイの股間に顔を埋めた。 「ふぁぁっ、んっ、あっ、ああぁぁぁ。した、を…い、いれない、でっ」 既に5分以上レイの泣くような喘ぎ声は止まらない。 教祖はスカートの奥に顔を突っ込むようにして、休むことなく身体を激しく揺さぶっている。スカートが覆い被さっているため、中がどうなっているかはわからない。 「んっ……んっ……んんんっ。ああ、あう、おあっ、くぁ…あっ」 しかし休むことなく右に左に顔を歪めて身体をよじるレイの様子と、じゅぱ、じゅく、と些か大仰なほどに舌が蹂躙する音から察することが出来る。 押さえつけられたレイの足が小刻みに震え、さらに決して長い叫び声を出さなかったレイが、啜り泣くように喘ぎ続けているのだから、どれほどの刺激に…いや、快感に翻弄されているのか見ているアスカには手に取るようにわかった。 (レイが、レイがあんな女の顔をして、喘いでいる…。あんな、あんな顔、出来たんだ…) 「はっ、あぁぁぁぁ。んっ、んっ、あぁぁ、はぁ、ぁぁぁ…」 レイはいやいやと首を振る子供のように、頭を左右に振っている。固く閉ざした瞼からは嫌悪以外のものが混じった涙をこぼしている。 「はぁぁ、あっ、ああっ、そんなことは、だ、だめ…。い、碇君、いかり…く!? んああああっ」 碇君、それがどういう字で、どういう人物かはわからなくても、それがレイの思い人だと言うことはわかるのか、ますます教祖の動きが激しくなる。 「ああっ、ああっ、あっ、ああっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ。 やめてっ、は、はげし、あつ…い、のっ」 スカートに浮かび上がっていた、レイの太股がぎゅう…と間に挟まれていたこんもりとした膨らみ ―― 教祖の頭 ―― を締め付けた。同時に両手を限界まで突っ張っらせ、胸を二の腕で絞り込む格好になりながらも教祖の頭を押さえつける。はね除けようとしたつもりだったが、実際には強く股間に押しつけるように。 「ふぅ、ううぅぅぅ――――っ!」 再び、ビクンビクンとレイの身体が小刻みに震えた。跳ね上がるレイの身体は教祖と狂人達に押さえ込まれ、その分、Eカップの胸が余計に揺れ、レイの口から喘ぎが代償行為としてあふれ出る。 「はぁ、はぁ、ふぁ、はぐっ、うっ、ううっ」 嫌悪と屈辱に歪みつつも、うっすらと甘美な官能でゆるむレイの顔…。 アスカはじっと見ていた。 (またアクメで体を震わせてる…。シンジでない男に弄ばれてるのに、あんな顔して、口元から、涎なんて垂らして…) 裏切り者、みっともない…。 そんなマイナスの言葉が一瞬浮かび、霞と消える。 「ふぅ、舌がどうにかなりそうだ」 「なら…もう、やめ……て」 どろどろに濡れた口元をぬぐおうともせず、教祖はスカートをはね除けるとゆっくりと顔を上げ、再びレイの上にのしかかってくる。 「聖油と私の舌、指先でイバの身体の表面は清められた。そして神の子を宿す子宮の入り口も、今私が舌で清めた。まったく、喩えようもないほどに美味だったぞイバ」 「…………っ。わ、私は…イバ、なんかじゃ、ない」 「ふん、おまえが自分をイバと認めようと認めまいと、そんなことは重要ではない」 「どういう、こと、なの?」 「私たちがそう信じているから。他が認めていなくとも、違うという証拠を突きつけようとも。私たちがそう信じている。だからおまえはイバなのだ」 「あなた、おかしい…わ」 にやりと笑うと教祖はレイの太股を抱え上げた。強引に押し開き、間に自分の腰を滑り込ませる。「くぅ…」と子犬のようにレイは呻き、密着を阻止するため両手で肩を押し返す。 「だめ、やめて…。も、耐えられない…」 「やめても良いが。その時はあの金髪の舶来娘がイバの身代わりだ。いや、おまえだけじゃないぞ。他に捕らえている黒髪の娘と、栗毛の娘もだ。私はもちろん、あいつらもどっちでも良いんだ」 どすの利いた教祖の脅しに、レイは静かに瞳を閉ざした。この男はきっと言ったことを実行する。間違いなく、アスカ達を自分の代わりに凌辱する。 たとえ、今とつぜん無くしたはずの使徒の力を取り戻して、この部屋の怪物達を引き裂き、アスカを助けたとしても、他の部屋にいるだろうマユミ達を無事救うことが出来るかどうかはわからない。 (そんなことになったら碇君は悲しむから) 自分が犠牲になったとしても悲しんでくれると思うけど、でも、他の三人が犠牲になった時よりは悲しまないと思うから。 自分がどうかなっても、アスカが、マナが、マユミが無事でさえいれば、シンジの悲しみを癒してくれる。元々、人を慰める事なんて苦手だから…。 (私が死んでも、アスカ達がいるもの) 従うしかなかった。 はぁ、はぁ、と喘ぐように息を荒げてアスカは美女と醜男のやりとりを見ている。決して言葉にはしなかったけど、レイが戦うことを選ばないことを願って。 アスカがそんなことを考えているなんて、レイは夢にも思わない。 「好きに…したら」 覚悟を決めて自分から足を開き、ぎゅう…っと音がするほど強くシーツを掴み締める。 「よしよし、そうまで言われては」 「きっと…」 「ん?」 「きっと、碇君があなたを殺して、私たちを助けに来るから」 その一瞬、レイの目に力が戻り使徒を睨んだ時そのままの眼光で男を射抜いた。 ポジトロンライフルよりも強烈な眼光に教祖は戸惑い、脅えたように視線が彷徨う。 「………うっ、こ、この、強がりを!」 吐き捨てるようにわめくと、教祖は腰を引いた。 濡れてヒクヒクと震える淫唇に灼熱のペニスが、独特の形状をした亀頭がぐぅ…と押しつけられる。 (あぁっ) 挿入直前、刹那の一瞬、レイは固く目を閉じ首を仰け反らせた。走馬燈のようにいままで体験したこと、思い出、特に楽しかったこと、嬉しかったこと、友達に関する思い出が脳裏をよぎる。 (アスカ、霧島さん、山岸さん…。私はどうなっても良いもの。だからあなた達だけでも、無事で…) 教祖の身体がのし掛かってくる。 「碇く、んぁぁぁ…」 内蔵から押し出されるように切ない吐息が漏れた。 ぐちゅり、と音を立てて亀頭はレイの入り口を割り開き、シンジ以外の誰にも許したことのない無抵抗な秘所を蹂躙していく。 「んっ、あっ、ああっ」 「くくっ、これまでになく可愛い声だな」 赤く染まっていたレイの全身が更に赤く染まっていく。 さらにペニスが潜り込んでくる。 「…ん、ふぁぁぁぁっ」 折れそうなほどに華奢な身体が仰け反る。伸ばされた足がブルブルと腓返りを起こすが、レイは痛みにも気づかないままヒィヒィとかすれ声を漏らす。 (ああ、あんな、あんな太いのが、レイの中に入っていってる。広げてる、ずぶずぶって) テレビに大写しになった2人の結合部、かすれた声で喘ぎ声を漏らすレイの顔と、アスカは交互に視線を移す。映像のペニスが充血した淫唇を巻き込みながらミリ単位で潜り込んでいくと、スピーカーからは下品なまでに『じゅぷ、じゅぷ』と、潤った肉の花園が肉棒で蹂躙される音を響かせている。そしてスピーカーに負けないほど大きく―― 本人は気づいていないが ―― 喘ぎ声を響かせるレイ。 「あああ、ああっ。きつい…の。太い、のが、な、中で…あ、あつい。あつい、の。はぁ、あっ、はぁ。あぁ――っ」 亀頭だけでなく、余った皮が襞のように取り巻く竿部分までが、レイの膣内をえぐり、全てを絡み取るように蹂躙していく。女を喘がせるためだけに、泣かせ悶えさせるためだけに整形をした教祖の極太ペニスは確実にレイの身体を溶かしていった。 体の芯から噴き出る汗と熱、レイにはそれがアルコールと激しい運動による物なのか、それとも挿入されるペニスがもたらす物なのかわからなかった。 (い、いや…。気持ち、悪いはずなのに…。碇君とは、違うのに) 内臓がうねる。それがとても気持ちいい。そう、今自分が感じているのが快感だということを嫌でも意識してしまう。 (入って、入ってくるっ。私の中に、太い、のが、入って…くる!) せめて痛みでも感じれば、なんとか耐えられたかも知れない。だが、入念に準備された身体は、意志に反して受け入れてしまう。膣に触れる亀頭の形がわかるほど一杯に押し広げられ、性感が集中した箇所をゴリゴリと擦りあげられてしまう。 「ううぅぅぅ。んあっ、あぁぁぁ」 「お、おおおっ。入る、根本まで、行くぞイバ」 「うんん、うんっ、あああぁぁっ」 ペニスが根本まで挿入された瞬間、レイは頭頂部がシーツに擦るほど大きく後ろに首を仰け反らせる。両足の足指は無意識のうちに縋る物を求めてシーツを挟み、ベッドメークでもするようにシーツをピンと張りつめさせながら強ばった足先は左右に広げられた。そして限界まで押し広げたところでブルブルと大きく震えた。 「おお、入った、ぞ。きつい、きつい。うう、予想以上だ…お、おお」 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………ん、くぅぅ」 大きく上下するレイの胸に教祖は手を伸ばす。 「くくく、良い手触りだ。おお、そうだ。揉みながら、動くぞ」 「や、やめ…てっ」 「やめない」 「そん、なっ。あ、んん――――っ!」 教祖は全身から汗を滴らせながら、両手でレイの胸を思う様に揉む。手の痕が残るほど強く、時には産毛を撫でるように優しく。まだオイルで濡れていた胸はたちまちぐちゅぐちゅと淫靡な音と共に形を変え、レイの喘ぎに新たな和音を重ねていく。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ん…っ。んっ、んんっ。だ、だめ、おね…がい、だから。はぅ、うんっ、うんっ、うっ、あっ、やめ…。せ、せめて、動かない、で。ああ…」 レイの哀願虚しく、教祖の腰は激しく前後する。浅く、早く。深く、遅く。レイの心と体をより追いつめられるように。膣をかき回し、愛液をこそぎ出しながら時には『の』の字を描いていく。 「ああ、んんっ、あっ、あぁぁっ。もう、だめ、碇君、碇君、碇くんっ」 「おお。おお、い、いくぞ」 腰の動きが限界まで速くなる。 もうすぐ…。教祖の言葉と膣内のペニスの様子から、射精が近いことを察したレイは首の筋を浮かせ歯を食いしばる。 「う、ううっ、うっ、うっ、ううっ。ああ、や、はやく…は、はやく。ううっ、いかり、くんっ」 一瞬も気を緩められない。少しでも気を緩めれば、胸を愛撫される刺激と体中を溶かすような性交の快感で何もかもを忘れていきそうだ。 「ああ、先に、先に…ああああっ」 無意識のうちに強く、きつくレイの膣がペニスを締め付ける。その締め付けに構わずペニスは前後する。より強く密着し、さらに締め付けたことで意識が集中してしまったレイを襲う快感は何倍にもなっている。自分の身体が形を保っているのか。そんなこともわからない。 「はぁ、あっ、そんなに、はげし、わたし、こわれ…る。くぅぅ…ん。くぅ…ん。いかり……く…ん」 体内の圧力はもう限界だった。破裂しないように空気を抜くため、口を開けてレイは悶え喘ぐ。 「あん、あん、ああっ。あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あああっ!」 「おおぅ」 もう、限界…! レイがそう思った瞬間、野太く獣みたいに呻きながら教祖の身体から力が抜け、重々しくのし掛かってきた。ずしりとした重みに、肺が押されて深々と息が漏れる。 「あ、ああぁぁぁ…」 レイが意識したわけではない。あくまで反射的に密着してくる教祖の身体を抱きしめながら、レイは安堵の溜息を漏らした。まだ体中が性交の余韻に浸って痺れたようになっているが、それでも、これ以上動かれなければ、胸を愛撫されたりしなければ…。 (んくっ…。いかなかった…わ。碇君、以外の人で、そんなことになったら、いけない…から。碇、くん。どこ…なの? あい、たい…。碇、く…ん) 涙がぽろぽろとこぼれ落ちているけれど、ほっと安堵した表情をしているレイ。だが、唐突にその表情が一変した。 「ん!? くっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 目を見開き、教祖の背中を抱きしめ血が出るほどに爪を立て、両足が引きつったように痙攣する。首輪に結ばれた鎖がジャラジャラと音を立て、シャギーの髪は濡れそぼり頬や額に疎らに張り付く。 「んあああっ、あっ、ああっ、あああっ、や、やめてっ!」 顔を上げた教祖の唇はいやらしく引きつっていた。その腰は黒人ダンサー顔負けの激しくもリズミカルなテンポで波打つように前後している。肉がぶつかるパンパンという音が激しく空間に響いた。 「ああっ、あっ、あっ、いや! 碇、くん! ああぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!」 興奮に胸の動悸を速めてアスカは戦慄する。 (あいつ、わざとレイを油断させるために…) 教祖が達したように見えたのは、全て演技だったのだ。レイを油断させ、力も、決してイったりしないという誓いと覚悟を踏みにじるための。つまらない時間差だったが、レイは完全に囚われていた。 「ああぁぁっ。ぐ、がっ、ああぁぁっ! 碇君、碇君、碇くんっ!」 混乱し、身悶えしながら愛しい男の名前を馬鹿みたいに叫び続ける。しとどに濡れた性器は断続的に強い収縮を繰り返し、名前を出すたびにかえって快楽が増していることにも気づかずに。 「碇、くんっ! はうぅ、いか…り、うあぁぁっ、おぅ、はぅぅ」 大きくたっぷりとしたグラインドで犯される。 わかっているかのように膣で最も感じる箇所を重点的に亀頭でノックするように擦り立てられる。じゅっく、じゅっく、と溜の入った水音が空間全体に響く。スピーカーなんてなくとも全体に届くような淫らな水音だ。 「くぅぅっ、うっ、ううっ。い、やぁ。やめ、て…ぇっ! 碇、くん。たすけ……ぐぁっ、う」 扉を閉じようにも、隙間に身体を、いやペニスを差し込まれた状態ではもう我慢することは出来ない。 内蔵がずれそうなほど激しくえぐられる。淫唇は巻き込まれるように擦られ、性感のかたまりであるクリトリスはだぶついた教祖の腹部の肉で愛撫される。 もうレイはほんの数時間前まで、高価なドレスを着てパーティの華として振る舞っていた彼女ではなかった。くしゃくしゃになったドレスを半端に纏い、決して人前では出せない淫らな喘ぎ声を漏らした一匹の雌。友を救うため、その身を差し出したはずなのに、その気高い思いも愛しい男の顔も半ば忘れて喘いでいる。 「ああっ! あっ、あああっ! い、いかり、ぐぅ…っ!」 甘やかな快感が全身を満たす。細胞一つ一つが官能の刺激で飽和した。 「い、いかりく…。あ、あ――――っ!」 人形のように白い肌が怪しくくねる。全身が引きつる。大きく開いたレイの口から、長く甲高い叫び声が空気を裂くように溢れた。 どびゅ、びゅく、びゅくびゅく…。 何日も何週間も我慢して溜め込んだように熱く粘ついた精液が膣内にあふれた。先に一度レイの口にはなったとは思えないほど濃く、大量の精液が…。子宮口に放水されるように精液が吹きかけられる。妊娠とかそう言ったことに対する恐怖はない。しかし、使徒に侵食された時以上に屈辱的だった。 「あう、あう、ううっ。あ…ああ」 今度こそ間違いなく達した教祖は満足げに、まだ堅さを失わない自慢の一物の為しえたことと、伝わってくる快感に酔っていた。いまだとまらずに精液が出ている。レイの膣はペニスに残った精液を一滴残らず絞り出すように蠢き、しめつけてくるのだ。 魂までも吸い取られていきそうだ、教祖は涎を垂らしながらそう思う。 「うっ、うっ、うっ、ううっ。終わった、の。終わったの…ね」 涙を流しても決して泣きじゃくることのないレイ。それが彼女のせめてもの抵抗なのか。 レイの精一杯の矜持であったが、教祖は彼女の身体が堕ちたことですっかり満足していた。 正直、彼女を趣味に付き合わせるよりお持ち帰りしてもっともっと楽しみたかったが。 なにしろ、趣味に付き合わせた女は著しく疲労し、時にはたったの一回で発狂する。こんなことなら、彼女が得意な容貌をしているからと、イバだなどと言わなければ良かったか。 ちらり、と周囲に目を向ける。狂人達が期待に満ちあふれた眼差しで自分とレイを見つめている。彼らの期待を裏切れば、狂人はともかく、怪物はきっと牙を剥く。彼らを手なずけるのに要した苦労と資金、設備を思い返すと背筋が凍る。 ぐちゅ。 「…はぅ」 粘つく音を残して名残惜しげにペニスを引き抜く。 濡れたローブの感触を気味悪がりながら、教祖は声を整えると朗々と宣言した。 「いざ、イバは清められた。いよいよヒニダとの契りを結ぶ。さんじゅわん、ヒニダを連れてくるのだ」 狂人の一人がそそくさとアスカの視界から消える。耳を澄ますと、なにか重い扉のような物を開く音が聞こえた。 かすかに鼻を突く生臭い獣の臭いが漂ってくる。周囲の怪物や狂人達から流れてくる臭いとは違う、純粋な獣の臭い…。この喉奥から酸っぱい唾液が出てくるすえた腐臭は、肉を食らう獣の臭いだ。 (なに、が、来るのかしら?) 恐怖に震えながらも、毒々しい期待にアスカは胸をふくらませる。 これから起こるは何事か。レイに、あの汚されてもなお気高く美しいレイがどう汚されていくのか…。そしてあの娘は、どんな淫らな姿を見せてくれるのかしら。 ゾクゾクと背筋が寒くなるサディスティックな気持ちで一杯になる。 恐怖をのみこまれないためには、その恐怖を殺すか、恐怖を受け入れ、恐怖も自分の一面だと言うことを理解しなければならない。 レイを見るアスカの青い瞳は、友人でありライバルを見るそれではなくなっていた。 それはまるで絞首刑を見物する野次馬のような、あるいは周囲の怪物や狂人達と同じ様な…。 初出2005/11/21
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