ボクのヒミツたいけん
Scene.32Original text：引き気味「碇くん……碇くん……」
綾波が僕を呼んでくれる声はとても可愛い。
「……ん、ん、ん……」
ひしと僕の上に抱き付いて、声を堪えている彼女。
きゅっと唇を噛んで―― それでも心許ないらしく、僕の首に噛り付くようにしながら、唇に小さな手のひらを重ねている。
コツコツとお腹の底を小突き上げてあげる度の微かな喘ぎを、僕の耳に零してしまわないようにって。
「んっ、んっ……んンゥン！」
そんな綾波の必死な顔が可愛くてたまらなかったから、それは、ふと口元を緩めてしまった悪戯心。
やわらかい重みを腰で揺らしてあげて、ベッドのスプリングの力を借りる。
一瞬だけ浮き上がる躯。
一瞬だけ、僕と綾波のお腹の間に、ひやと忍び込む夕方のそよ風。
そうして沈み込む僕ら。
跳ねた分の重みを受けて、僕と綾波の繋がりが深くなる。
「あっ、いかり、くっ―― 」
綾波のそこはとても幼くて、中はとても狭くって、うっかり壊してしまいそうなくらい敏感だから。だから僕もそっとそっと抜き差ししてあげなきゃと思ってるのに、熱く濡れた奥底に、少し乱暴なノックになってしまう。
綾波はひゅっと詰まった息を吐いて、鳴いた。
「んくぅ……ぅ、いかりくっ、くん！」
もう一度。もう一度。まだ、もう一度―― 。
揺れる髪が僕の頬をくすぐる。ベッドの脚はその安っぽさに、らしい軋みを上げてる。
ちゅぐっ、ちゅぐっと、いやらしい潤いの音が繰り返して、綾波のほっぺたはどんどん赤くなった。
「あやなみ……、あやなみ……」
「いかり、くん……ンッ！」
僕が呼べば彼女は必ず応えようとしてくれる。そうして鼻にかかった悲鳴に乱れてしまうのを恥じるよう、急いで閉じてしまう唇に、もっともっと僕しか知らない声を聞かせてと、僕は綾波を突き上げ続けた。
「はぁっ、ッ―― ！ 出すよっ、綾波！」
「ぃあ……あ、いいわ！ わたしの……なかに、いかりくんを―― ！」
あんまり気持ちが良過ぎて、綾波の中に脈打たせて吐き出していると、腰からドロドロに溶けてしまうかと思った。
綾波は足も使って必死に僕にしがみ付く。
男子の上に裸で両手両足絡めてしまって、汗まみれに腰の辺りをビクビクとのたうたせる。きっとそんな綾波の格好は、いつも物静かな彼女がするには酷くイメージの合わない不恰好な姿に見えるのだろうけど。でも、それをさせているんだと感じることは、僕にとても誇らしげな気持を与えてくれた。
綾波にとても虚ろな顔をさせて、ちゃんと気持ち良さの天辺に連れて行ってあげられてるから。
「綾波も気持ち良かったんだ？ ふふ、口の周りがよだれでベタベタだよ」
「……！ ……いじわる」
綾波は不思議だ。
最初は裸で僕に押し倒されてしまっても顔色一つ変えなかったのに、こういう事をするようになって、逆にどんどん恥ずかしがり屋になっていってる気がする。
それがまた一層かわいい。
伝えると、ますます照れたらしい顔を、さっと向こうに背けてしまった。
そんな綾波と、狭いベッドでくっつき合って心地良い気だるさに身を任せている。
荒い息を繰り返す胸の起伏に手を這わせて、まだ尖ってしまっているままのおっぱいを緩々と揉みながら、とてもゆったりとした気分だったんだ。
―― だから、その時アスカから掛かってきた電話は酷く耳障りに聞こえた。
最初の声は酷く不機嫌で、僕が遊びに行ってるとすぐに呼んできて、ご飯を作れとか、あれ買って来いって言い付けてくる彼女だからかと思った。
今日は綾波のところでゆっくりしようと思って、アスカの分と夜遅くなるって言うミサトさんの分、ちゃんと夕食は用意してきておいたのに。そう思って聞きなおそうとした僕に、アスカは酷く不明瞭だった。
何の用さと聞いてもはっきり答えないで、綾波のことばかり聞いてくる。
『それでっ―― ン、どうなのかしらぁ？ 愛しの優等生のお味は。どうせ……、今もベッドで宜しくやってンでしょぉ？』
そうしている間にアスカの様子のおかしさに気付いて、不機嫌に聞こえたのはそうだからじゃない―― 後ろでトウジの声がしてる、きっと僕らみたいにエッチをしてて、最中にわざわざ電話を掛けて、その声を抑えながらからかってるんだって漸く分かって、僕はそれまでの気分を台無しにされた気がした。
「……ッたく、悪趣味なんたがら」
付き合いきれない。そう思ってさっさと切ろうと一度は思ったけど、いつもアスカの良いように付き合わされているのが癪だったから、僕は通話をそのままサイドボードに放って、綾波を抱き寄せた。
偶にはアスカがうんざりすれば良いのさと、そう思って。