秘密基地
- 666 名前:引き気味 投稿日: 2009/12/09(水) 00:45:46 [ OIWTcfIU ]
- 『秘密基地』
西暦2016年。もはや『セカンドインパクト後』では無い。
第3新東京市は復興の象徴として、数年後の遷都を視野に急ピッチで建設が進められていた計画都市である。
その都市整備は先端技術がふんだんに盛り込まれたもので、セカンドインパクトを生き延びた大人達が思い出す子供の頃に語られた「未来都市」そのまま。
地下にさえ街は広がり、巨大な居住空間ジオフロントを形成する。
中心部に至っては、災害時には巨大なビルがそっくり地下に沈み込むシステムを備えているのだ。
空飛ぶ自動車こそ実現していなかったものの、住人達は地下世界にも広がる森や湖の風景を驚くものではなく、ただ当たり前に仕事や生活の場としてこれを受け入れて、そして日々を過ごしていた。
開発も一段落というところを襲った突然の災害で一度街を離れねばならなかった彼らだったが、また戻って来た後は以前にも増してラッシュのかかった建設景気に、人口をひたすら増やしつつ、街は発展を続けていた。
◆ ◆ ◆
賑やかな声を上げて、子供達が駆け抜けていく。
「……おっと」
ぶつかりそうな脇をすり抜けていかれたサラリーマン風の男を見て、エントランスの共用花壇に何かの花を植えていた主婦が苦笑しながら声を掛けた。
「ごめんなさいね。遊ぶ時は周りに迷惑をかけないようになさいって、言ってるんですけれど」
「いえいえ、あの時分の子供たちなんて、あんなものでしょう」
口ぶりからすると、今し方エントランスを駆け抜けて、転げやしないかという勢いで大階段の方へすっ飛んでいった中の、どの子かの親であるらしい。
まだ若い女だ。付け加えれば、楚々とした感じの、男の目から見てもなかなかの美人でもある。
――はて、今の子たちの中にこんな美人の母親似の、それらしい年齢の子供は居ただろうか。
男はもう一度、ちょっとした規模の駅ビルあたりのだと言っても違和感のない幅広の階段が、延々と下っていっている先を見やった。
しかし、うるさいぐらいの歓声は既に大階段からあちこち左右に伸びる枝道、枝階段のどれかに吸い込まれていった後だったようで、男は少しばかり残念に思いながら夏の陽による汗を拭った。
ここはまるで、中世のお城だ。
それも、本場ヨーロッパでも実際にはあまり残っていないだろうという規模の、街一つがアーチや通路付きの城壁、中に商店街まで取り込んだ回廊橋などで複雑に繋がり合い、一つの巨大建造物になっているような。
蟻の巣の入り組んだ造りを人間様向けに上等で広々とした上で再現したようなと、言い換えても良い。実際、殆どの部分が地下に潜り込んでいるのだし。
そんな立体的に迷宮じみた空間を遊び場所にされていては、親も『目の届く範囲で』とは中々いかないだろう。
ぼんやりとそう口すると、女は大変ですと頷きながら、携帯を取り出してみせた。
「そういやここも、ネルフの地図案内に組み込まれたんでしたっけ」
「ええ。そうは言っても、やっぱり元からあった地下と新しくビルを繋いだ辺りとか、図面にない所も多いらしくて。そんな場所だともう近づくなとしか言えないんですけどね」
男が改めて振り返ると、女が植えているのはパンジーの花だった。
育てても別に食べられるわけでも薬になるわけでもない、ただ眺めて綺麗だねと言うぐらいしか価値のない植物。しかし、これが余裕というものなのだろう。
『この辺が華やかになりますね』と、当たり障り無いところを社交辞令で口にしておく。
この公団住宅は半地下とはいえ、エントランスは10階層分を越える高さをぶち抜いた上方から、地上の集光ビルより直接引っ張ってきた太陽光が贅沢に降り注ぐ造りになっている。花だって元気に育つだろう。
子育てをするには良い環境だ。
地上まで行かなくたっても、近くには公園も体育館もある。本当に、子供にとっては伸び伸びと遊び回れる良い場所だろう。
ジオフロントに半分沈み込んだまま、元は男の務め先である研究機関が所有していた地下施設空間と中途半端に高さが揃ってしまっていたものを、地上に近いからと急場しのぎの団地開発でそのまま一繋ぎにしてしまったエリアだが、この住宅事情の悪いご時世、まともな住み処にありつけた住人たちに不満は無いようだ。
「……そりゃ、隣に落ちてるような墜落ビルで、斜めの床無理矢理直して住めるようにしたところよりはなぁ」
比べものにならんだろうさ、と頷き、男は一声挨拶を交わしてから、幸せそうな若妻が土をいじっている花壇を離れた。
- 667 名前:引き気味 投稿日: 2009/12/09(水) 00:46:13 [ OIWTcfIU ]
- ◆ ◆ ◆
男が向かったのは、メインストリートと言うべき大階段とは平行に、また別の階段を三フロア分ほど上った階層だった。
距離的にはあの花壇とそう離れた場所でもない。男がまた汗を拭うハンカチを取り出すまでもなかった。感覚としては少し裏路地に入った程度のすぐそこ。
そこに、車も軽自動車なら通って行けそうな幅の通路が200メートルほど直線で続き、また別の上り階段へと折れ曲がっている。
道の片側は100メートルほど進んだ辺りで側壁が消え、まさにさっきのエントランスの上にあたるぶち抜きの巨大な縦穴に、手すり程度の壁越しで接しているのだった。
縦穴の側面にへばりついたキャットウォークのようなものだ。眺めが良い。下にメインストリート階段を望むことも出来る。
あの若妻が背中を丸くしゃがみ込み、花壇の手入れを続けているのも目にすることが出来た。
逆にあの主婦から見上げてみれば、この通路は吹き抜けの側面に100メートル分横に引かれた溝といった具合だろうか。
本当に眺めが良い。
しかし、ここもこんなにも日差しは強く明るく差し込んでいるのに、人通りは滅多に無いことを男は知っていた。
いかにも見捨てられた地下空間のといった風情とは、この暑いぐらいの明るさからして違うのだけれども。
(勿体無い)
と思う。
公団の分譲に応募してきた連中も、慣れてくれば中にはここを抜け道に使う人間も出てくるかもしれないが、今はまだ周辺地理をさほど掴めずにいるのだ。
地下であるのに、こんなにも日光に溢れた場所が半ば放置されている。
それはとても贅沢な話だと男は思うのだ。
それこそ、これが日頃目にして暮らす中のただ一背景と化してしまっていて、何も気付いたりはしないのだろう、あの主婦は。
興味を持つのは、いつも子供だ。
男がまさに子供の頃、そうだった。
「冒険が好き、ってわけだ」
よしよしと頷く。
満足そうにする男が目をやっているのは、通路を進んで折れた所の目的地。日陰に入った階段壁際に転がっていた缶やペットボトル、そしてそれらを置いていったのと同じ犯人によるらしい、ゴムボールや飛び縄、お菓子の箱といった荷物だった。
これらは全て、男が先日に同じようにチェックしに来た時は無かった物ばかりだ。他に隅にのけられていた野球ボールや壊れかけのプラスチック製バットには、男は興味を示さなかった。
そして逆に、最初からあった物もきちんと残っている。
まず、ダンボール箱。
眩しいくらいだった通路から奥に入って、日差しが急に届かない階段の付近は少しひんやりとも感じられる。そこで階段を腰掛けにすると、丁度手を伸ばして取りやすい位置に置いておいた――男が仕込んでおいた、アダルト雑誌の数々だった。
「ようし、今度は減った分はあっても、増えた分は無し、か」
さらに、もう一つ。
これみよがしに三脚まで使って据え付けられた、双眼鏡。これも男が仕込んでおいた物である。
見付けられるのが前提でも、そのまま持って行かれることの無いように苦心して探してきた殊更に大型で、不格好な代物で、元は閉園した遊園地に置かれていた。
馬鹿でも気付くだろう。
階段を背にしたこの場所が、開けている方向はたった一つ。
セッティングも済ませてるのだし、まず誰だって覗いてみた筈だ。
「くくっ、時間は選べよって言ってあるからなぁ……」
確認できた手応えにまた楽しくなってきたという顔をした男は、腕時計を確かめて自らもその双眼鏡を覗き込んだ。
倍率設定のツマミは壊してあるから、焦点が合う対象は一箇所しかない。
微妙にずれていた向きを修正し、小さく限られた視界の先に、男自身の我が家を捉える。大階段に陽光を注ぐ吹き抜けの縦穴を隔てて対岸、何軒分も連なる窓の中から、我が家のベランダの、大きなガラス窓を捉える。
- 668 名前:引き気味 投稿日: 2009/12/09(水) 00:46:26 [ OIWTcfIU ]
- そこには今日も、一人の少女の裸身が躍っていた。
窓に手を付き、それどころかぴったりと胸を腹を押し付け、乳房をガラスにひしゃげさせるほどにして、背後から覆い被さった小柄な人影に犯されている少女が、全裸でこちらに顔を向けているのだった。
顔の辺り、特に少女の唇の近くは窓ガラスが白く曇っていた。
どれだけ熱い息で喘がされているのだろう。
遠目に見ても、彼女の全身が帯びた熱のほどが伝わってくるようではないか。
ばっと長い髪が波打たされて、ガラスにも叩きつけられる。
それほどに激しく顔を打ち振るわせる少女は、はっきりと分かる美しい顔立ちをしていた。
次期首都であってもこの時代、海を渡っての行き来自体が珍しい金髪、碧眼の持ち主。
外国人の美少女だ。
肌も白く、大理石のよう。
肩幅よりも大きく開かされた両脚の付け根には、この距離では肌の色と混ざり合って見分けが付けにくいものの、やはり金髪のアンダーヘアが薄く逆三角形を形作っている。
年の頃は一四、五。まだ大学に通う年齢にはなっていまい。
そしてこれほどの美少女を裸にさせて、窓際での大胆なセックスに喘がせているのは、どう見ても彼女より幼い少年だ。
立ちバックに突かれまくっている彼女の背中に隠れているせいで、この位置からの顔の確認はともかく、背丈は下手をすると小学生ぐらい。
であるのに、少年は間違い無く一人前に、年上の美少女にたっぷり性の悦びを与えてやっているのだった。
真っ赤に染まった美貌を左右に打ち揺すり、折れそうな細い首でがっくりと時に俯き崩れ、口をOの字に大きく開いて叫ぶ金髪の少女が、何度かは間違い無く絶頂に達しただろうという様子でいるのに。終いには哀れに白目を剥きかけ、這々の体でガラス窓にしがみ付いて身を支えているのに。容赦無く、その度ごとにまた力強く腰を振るい、少女の裸身をのたうたせ、重ね合った股間からぼたぼたと粘性の液を滴らせていた。
あの背格好はまさにそう、この薄暗い踊り場に残されていた、野球ボールや子供向けのバットで遊んでいるような年頃だろうというのにだ。
(今度はどんな子が見付けてくれたのかな……?)
堪えられない。そんなニヤニヤ笑いで双眼鏡から目を放した男は、そうしてこれこそ本命の仕掛けとして慎重に隠しておいたビデオカメラを回収するのだった。
その中には、冒険心に富んだ結果のこの素晴らしい報酬を、眺めを、満喫したのだろう誰か――多分、またこの辺りの子だ――の姿が映っている筈なのだ。
- 671 名前:引き気味 投稿日: 2009/12/09(水) 23:39:17 [ OIWTcfIU ]
- >>666-668続き
◆ ◆ ◆
時間の掛かるエレベーターがやっと下まで着いてくれて、扉が開ききるのも待ちきれないように、少女は団地の入り口を飛び出した。
その背中に、入り口の脇で花壇の手入れをしていた母親が声を掛ける。
あまり遠くには行かないように。携帯で地図を確認出来ない区画には入り込まないように。見知らぬ人には気をつけなさい。
いつもの注意だ。
いつものことであったら、母親はどこへ行くのかとは尋ねなかった。
少女にとって、幸いなことに。
そうして勢いよく走って出掛けた少女だったが、大階段を駆け下りて母親の後ろ姿が見えなくなった辺りで脇道に入ると、うって変わってその足取りは慎重になった。
ちらちらと途中何度も振り返って、辺りの様子を確かめる。
次第に次第にと、人通りの少ない方へ細道をくぐり、どこかに繋がる太いケーブルの束がそのまま脇にのたくっている鉄板床の小橋を『タン、タン、タン』と渡っていって。そうして子供の足では一苦労といった急な階段を上りきった場所は、彼女の秘密の場所だった。
――正確には、彼女たちの。もっと正しくは、「あの子達の」。
地下団地の吹き抜けに面した見晴らしの良い道だ。まるで地上の学校で屋上から校庭を見下ろすのと同じ感じに、自分たちの団地やその入り口を眺めることが出来る。
せっせと花壇に肥料を混ぜている母親の、丸い麦わら帽子も下に見える。
『おーい』と大声で呼んで手を振りたくなるのだけれども、それはしない。
なぜなら、ここが秘密の場所だからだ。
本当は、彼女がこの新しい団地に引っ越してきてすぐに仲良くなった近所の男の子達が「秘密基地」と呼んでいた場所だった。
秘密基地だから、女の子には教えてやらない。入れてあげない。
そんな意地悪をされていて、彼女は大層腹を立てていたのだけれども、すぐに自分で場所を見付けてやることが出来た。秘密基地に向かう男の子達の後をこっそり着けたのだ。
彼らがいない時を見計らって何があるのかも確かめたし、彼らが自分を呼びたがらなかった理由もばっちり知ることが出来た。
女の人のハダカになった写真でいっぱいの、いやらしい本。
男の子ってこんなものよね、と。
一通りを把握して、馬鹿にして、愉快な気分になって、そうして後は忘れていたのだけれど。
――暫くして、男の子達は消えてしまった。
朝は見かける。通学路を眠そうな顔をして歩いているし、学校にも来ている。
けれど、放課後になるとどこかに行ってしまうのだ。
もう随分と一緒にボール遊びもしていないし、ゲームの話もしていない。
何をしているのと問い詰めても、ごにゅごにょと誤魔化されてしまう。
すっかりつまらなくなってしまって、その内に思い出したここにいるんじゃないかと、また来てみた。
それでも彼らの姿は影も形も見えず、もう一緒に遊んで貰えないのかなと階段に腰掛けて考えていた時、ふとまた目の前に置かれている大きな双眼鏡が気になったのだった。
初めて来た時に覗いてみても面白いものは何も見えなかった、つまらないもの。
けれどその日再び覗いてみた時、――あの子達はそこにいたのだ。
- 672 名前:引き気味 投稿日: 2009/12/09(水) 23:39:31 [ OIWTcfIU ]
- ごくっと、唾を飲む。
少女の手は震えていた。
見晴台のような道に着いた時から、心臓もずっとうるさい音を立てていた。
(今日も……いるの、かな)
きゅうっと胸の辺りが締め付けられている気がする。怖い、恐ろしい。それでも、気になって仕方が無い。
また覗いて見ずにはいられない。
プールの飛び込み台の上に立つのと同じくらい、踏ん切りを付けるまでに何度も息を吸う必要があって。しかしこの時にはもう、妖しい胸の高鳴りに少女は、可愛らしい顔立ちを真っ赤に染めて、頬火照らせていたのだった。
(あ、居る……)
はたしてこの日も、彼らは居た。「あの女の人」もいた。
双眼鏡で覗き見る、対岸の誰かの家の窓の中。少し前まで一緒になってサッカーボールを追いかけていた男の子が、見たこともないような怖い顔をして目を血走らせて、見たこともないような美人の外人さんのおっぱいをしゃぶっている。しゃぶりながら、反対側の胸を鷲掴みにして、ぎゅうぎゅうと揉んでいた。
女の人は床の上で寝そべっていると言うより、押さえつけられていると言う方が正しい感じに、その男の子ともう一人に、覆い被さられていた。
(……おちんちん、また大っきくしてる。あんな風になって、女の人のあそこに……)
――ここに、入れるんだよね。
彼女の遊び友達だった男の子が、皮も被ったままを背伸びした風のぎんぎんにそそり立たせて、もう一人に胸肉をいじられている金髪の少女の唇に押し込むのを眺めつつ。はや少女の頭の中にあったのは、この後にも展開されるのだろう、男女の腰から下同士が絡み合った挿入シーンだった。
保健体育の授業が始まるよりも早く。男子と女子の体には違う部分があって、そこはどう使うためにあるのだと、実際の場面を目にすることで知ってしまった少女は、忙しない息の傍らにこぼれ出る呟きを上擦らせながら、いつしかその息よりも忙しなく、己の股の付け根をさすり立てていた。
「あ、……ぅあ、ぁ……。なん、で……?」
はあっ、はあっと、息を切ないものに変えていきながら。
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