そうして彼女は嘘をついた7
- 222 名前: 2−2 投稿日: 2003/04/10(木) 14:36
- 「昨日は徹夜でメンテをしたのだが……」
「ああ、それなんですか」
どこか納得したようにアスカが言ったが、ゲンドウはそれに気づかなかったように「ふむ」とハッチを開いて中身を診る。
「やはり、駄目か」
「技術部に持っていったらよろしいのでは?」
アスカの至極常識的な言葉に、しかし彼は首を振った。
「なるべくなら、私は自分で診てやりたい――それに、もう駄目だな」
交換用の部品のストックが、すでに底をついてしまっている。今では近い部品をあてがっての代用でどうにかしているのだが――。
「ユイは、丁度十五年頃までのストックしか用意していなかった」
ぽつりと漏らしたその言葉に、アスカは妙に深みというか、含むところがあるような気がした。いや、十五年頃と言えば、考えるまでもなく使徒襲来の年ではないのか。
(碇ユイは、その予定に合わせていた? ……考えるまでもないか)
裏死海文書の解読に関してさえも、彼女は最高の権威であったというのだ。使徒襲来の日時も知っていて当然のことだ。
そしてそのことは、彼女がこの世界にて十五年以降は薔薇の世話をする人間がいなくなる、あるいは必要でなくなると考えていたことの証明ではないのか。
(でも、そうすると――彼女は赤い世界を望んでいたというの? 人の全てがいなくなるあの結末を……)
だとすれば、シンジが聞いたという言葉も声も、全てが怪しくなる。いや、それらは自分の深読みに過ぎず、このロボットのパーツがその分までしかなかったということには深い意味などないのかも知れない。そもそも機械なんていつ故障するのか解ったものではないのだ。十五年頃までしかストックがなかったというのも、この碇ゲンドウがただそう思い込んでいるだけでは……。
「あいつは、俺に何を望んでいたのかな」
初めて、アスカはゲンドウが彼女に向けてではなく、誰にむけたのでもない、ただの独り言を呟いたのを聞いた。
反射的に口を開いたが、何を言おうとしたのか、次の瞬間にそれは永遠の謎となった。
黒い何かが自分めがけて倒れこんできた。それが一瞬何なのかの判断がアスカにはできなかった。無理もなかった。こんな事態になるなんて想定していなかったからだ。それは、ゲンドウの頭だった。
「――――やっ!」
思わず手で払いのけながらベンチから立ち上がり、飛び退く。
(や、やっぱり――!)
何がどうやっぱりなのかは自分でもよく解らなかったのだが、続けて罵倒の言葉を吐き出そうとしたアスカは、かろうじてベンチの上で坐ってはいるものの、ずり落ちそうになっている碇ゲンドウの姿を見て、唖然とした。だらしなく首をベンチの背もたれから後ろに逸らしている。そしてその腕の中にはR2−D2。静かな寝息。
「寝て……る?」
恐る恐る、とゲンドウに近寄り、その様子が確かに睡眠状態なのだと確認し、彼女は腹の底から気の抜けた溜め息を吐き出した。
「そっか――寝てないって言ってたものね」
そこに無理押しするように話をさせて、さらにはまた修理……事態を認識すると、何やら自分がどうしてこんな対応をしてしまったのかと、その馬鹿馬鹿しさに随分と呆れてしまった。
(ほんっと、馬鹿みたい……)
そう思った。
思ってから、これからどうしようかと考える。
起こすのは忍びないし、このままに捨て置くというのも――。
(……ほっといたら、ベンチから転げそうね)
とりあえず、そうならないように体の位置を直すなりしてあげよう。そうと決意するのに五秒、さらに行動に移すまでに二十秒近くを要した。
そして。
ゲンドウの両肩を掴――もうとして、ふとサングラスがずれているのに気づいた。
そこで悪戯心を起こしてしまったのは、いつも泰然として司令席に坐っていたかつての姿が脳裏をよぎったからだった。このサングラスと顔の前に組まれた拳の下に全ての表情を包み隠し、自分たちの戦いを見つめていた……その口の端が微かに動くごとに、緊張に背を震わせさえもしたことがある。
でも。
(ちゃんとした顔、見たことないのよね……)
だからだろう。
ほとんど無意識に、彼女の手は彼の顔へと伸びていた。
「あ……………」
なんとなく、ずっと前からそうだろうなあとは思っていたのだが――
髭がなく、サングラスのない碇ゲンドウの素顔は、息子であり、彼女の婚約者であるシンジに、よく似ていたのだった。
- 223 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/04/10(木)
14:37
- コソーリ。
……ちょっと2−1とかぶっていますが、勘弁。
ネットにはつなげませんがPC自体は動くようになったので、まあぼちぼちと続きにとりかかろうかと。
ではでは。
- 224 名前: PDX. 投稿日: 2003/04/12(土) 18:38
- >>223 我乱堂さん
乙〜☆
ゲンドウの素顔を見たアスカが何を思うかですね。
いきなり胸キュン(死語)は無いと思いますが、ギャグSSだったらここで
シンジにヒゲを生やさせないことを決意ってとこなんでしょうけど(^_^;
はてさて、次にどうなるやら。
- 225 名前: 引き気味 投稿日: 2003/04/13(日) 06:00
- ここから始まるアスカの浮気物語ですかっ!
いよいよですか。いよいよ彼女の嘘が――つーか、婚約者持ちなのに「……意外と可愛いかも」とか、だらしない部分を発揮してしまうのですかっ!
いやもう、ドキドキものでつね(笑
- 226 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/04/13(日)
20:32
- >>224 PDX.さん
>ゲンドウの素顔を見たアスカが何を思うかですね
……まあ、いきなりここから恋が始まったりはしません(笑)
>>225 引き気味さん
>ここから始まるアスカの浮気物語ですかっ!
まだ始まっていないような、ようやくのような……。
テキストでここまでですでに40k書いてた(苦笑)
前中後編で終わらない可能性が高くなってきたなあ(爆)
- 227 名前: PDX. 投稿日: 2003/04/15(火) 12:41
- >>226
我乱堂さん
まぁいきなりここから、とは思っていませんが、でも第一歩というか、アスカの心に隙ができるための小さなヒビの1つでは。
以前渡したバラの花とかも。
- 228 名前: 2−3 投稿日: 2003/04/29(火) 21:11
- (年取ったら、シンジもこんな感じになるのかしら?)
まず、そう思った。
さすがに親子だけあって、よく似た寝顔だ。
それからしばらくして。
「……なんかあたしってば、馬鹿……」
改めてそう思い、呟きを口にしていた。
よく考えてみなくても、妻を亡くして十年以上たつ男が、別に他の女を抱いていたって構わないのだ。亡くしたばかりというのならまだしも、すでにそれだけの月日がたち、それに――彼はもう、吹っ切ったのだろうと思った。
(最後に碇ユイと会えたんだものね)
たとえ目的が半ばほどしか達成できていないにしろ、碇ゲンドウは確かにサードインパクトの際に碇ユイの姿を幻視しているはずだ。国連に提出された彼の調書にも、確かにそう書かれている。どういうことを話したとか、そういう詳細についてはさすがに解らないけど。
とにかく、自分がゲンドウとリツコの公園での一部始終を見てから、勝手に根拠もなく彼の人格、性向を著しく悪く見ていたのだ。
そのことは反省しなければならない。
(って、よく思い返してみたら、あれは痴話喧嘩にしたって、別れ話とかだったのよね……)
結局、『最愛の人以外と関係を持った』ということに、自分が一方的に腹を立てていたということであり、それはつまるところ、惣流アスカ・ラングレーの恋愛感を他人に押し付けていたということだった。
本当に馬鹿だ。
彼女は溜め息を吐くと、ベンチに坐りなおし、ゲンドウが目を覚ますのを待った。
今日は長めに時間をとっている。
ちょっとぐらいこうして時間を潰していても、別に構わないのだ。
それに、そんなに長くは待つこともないだろうと見積もっていた。
さらさらと髪が揺れた。
……空調が静かに微風を作り出しているのだ。
それは薔薇の香の充満した室内の空気をかき混ぜて、何処かへ押し流していく。
アスカは瞼を伏せ、その流れを感じた。
(変な感じ……)
自分がこんな風に花園の中でゆったりとした時間を過ごせる日がくるだなんて、想像もしていなかった。戦いの日々が始まる前、まだ自分がドイツにいた頃は、将来と言っても、ただ自分が強く華麗にエヴァを操っているイメージだけしか持っていなかった。日本にきて、戦いが終わった後、シンジと幸せな時間を過ごすようになっても、こんなところに来ようだなんて思わなかった。
「シンジはこういうところ、知らないしね……」
ついぼやいてから、苦笑した。
思い出の場所とハウトゥー本を見本にしたようなデートコースをやり尽くした後で、シンジはやっと自分の部屋に招待してくれたのだった。後はずっとデートといえば、その辺をぶらついたりしてからシンジかアスカの部屋でずーっとすごすというのが慣例になってしまった。たまに遠出とかして泊まったりするけど、立場からしてそんなに出かけられないというのが実情だ。
(そうだ……その内、ここにシンジも誘ってみよ……いい加減、顧問とも……義父さまとちゃんと和解しとかないと駄目だものね……)
なんと言っても、自分達はもうすぐ結婚するのだし――。
- 229 名前: 2−4 投稿日: 2003/04/29(火) 21:11
- 「………ん………?」
どれほど彼女はぼんやりとしていたのか、いつしか横になっていたゲンドウは覚醒し、上体を起こした。
そしてアスカの方を見てから眼鏡の位置を直そうと手を上げて、自分がそれをしていないと気づく。
(あ……)
目を覚ます前に戻そうと思っていたのに、すっかり忘れてしまっていた。
しかしそこはかつてのセカンドチルドレン。ゲンドウが何かを口にする前に、彼女はまったく内心での焦燥を表面化させずに言った。
「――眠られるときに、落ちました」
「ああ……それはすまないことをした」
本気で申し訳なさそうに言ってから、彼は首を軽く振り、そして。
「――それで、私はどれだけ寝ていたのかね?」
「えーと……三十分、です」
腕時計を見て、確認する。
ああいう眠り方をした割には、随分と早く目を覚ましたものだと思った。自分の経験からしたら、徹夜明けで気が抜けて眠ってしまったら、もっとぐっすりと何時間も寝てしまうものだったが……。
(まあ、人によるのかな)
どうでもいいことである。
気にするようなことでもない。
しかし、彼には何か気になるようなことがあるのか、アスカに眼鏡を受け取りながら、しきりに何かを言おうとするそぶりを見せては、途中でやめていた。
――はっきりとしない碇ゲンドウ――。
プレミアがつくぐらいにレアな光景だ。
アスカは怪訝に眉を曇らせてから、「どうしました?」と聞いてみた。もしかして自分がわざわざ手で取ったということに気づいて、それを問い質そうとしているのかも知れない。そうでないにしろ、そういうことを考えると気持ち悪くて仕方がないのである。はっきりしない男は嫌いということもあるといえば、あるのだが。
「いや、――……私が眠っている間、君はいたのかね?」
少しだけ逡巡して、彼は問い返した。
アスカの答えは間髪も入れない。
「ええ」
「そうか……」
「それを聞きたかったんですか?」
「いや……」
まだ、本命の質問は言っていないようだと、アスカは察した。
その微かな表情の変化で、彼は彼女の思考を悟ったのかも知れない。
思い切って。
「……寝ている間、私は何か、変な寝言を言ってなかったかね?」
はっきり言ってしまえば、その時に彼女は、自分が何を問われたのかもよく解らなかった。理解するのに三秒ほどの時間がかかった。
そして、思わず笑ってしまったのだった。
リツコのこととか、そういうことはすっかり吹き飛んでしまっていた。
- 230 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/04/29(火)
23:23
- とりあえず、今日は碇ゲンドウの誕生日なので……。
しっかし、自分で書いていて「ああ、こういう流れか」とか思っちゃいました。
もっとこー、なんか「解りやすい劇的なきっかけ」があったというか、予定ではあったはずなんだけど……。
半年も経ってたら
……忘れた(爆)
- 231 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/04/29(火)
23:31
- >思い出の場所とハウトゥー本を見本にしたようなデートコースをやり尽くした後で、
>シンジはやっと自分の部屋に招待してくれたのだった。後はずっとデートといえば、
>その辺をぶらついたりしてからシンジかアスカの部屋でずーっとすごすというのが
>慣例になってしまった。たまに遠出とかして泊まったりするけど
……自分で書いておいてアレだけど、なんか安定しきったカップルだね。
ここでしばらくしたら倦怠期に入る、みたいな。
- 232 名前: コウイに値する名無しさん 投稿日: 2003/04/30(水)
00:37
- お疲れ様です。
>『最愛の人以外と関係を持った』ということに、自分が一方的に腹を立てていたということであり、それはつまるところ、惣流アスカ・ラングレーの恋愛感を〜
という事は、ゲンドウがアスカに取っての「最愛の人」になるのでしょうか、とか色々考えてドキドキ。
続きを楽しみにしています。
- 233 名前: PDX. 投稿日: 2003/04/30(水) 01:32
- >>228-229
我乱堂さん
しかし、アスカがゲンドウと事に及ぶのはだいぶ先という感じですな。
だからこそ、序盤で絡みの場面があって、記述を前後させざるを得なかった
のかな(^_^;
- 234 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/04/30(水)
01:51
- >>232
どうもです。
えーと……まあ、色々と……その、(いつになるか解らない)ラストまでお読みください。
>>233 PDX.さん
……相変わらず、すべてを見通されているようです(笑)
ええ。
どうしても先になりそうなので、ああいう処置をしました。
まあ、ちょっとずつサービスは入れるつもりですが、なかなか……。
しかしなんてーか、あまりにアスカを情熱的に書いてしまったためか「本当にこんなので納得してくれるだろうか?」と思うことしきりだったり。
あー、まあ、思い切ってぼちぼち書きますので
- 235 名前: PDX. 投稿日: 2003/05/01(木) 10:31
- >>234
我乱堂さん
>あまりにアスカを情熱的に書いてしまったためか「本当にこんなので納得してく
>れるだろうか?」と思うことしきりだったり。
14歳アスカではなく成長したアスカですので、本編アスカとはまた違う
風味でも許容できるのではと思います。
序盤のゲンドウとの濡れ場も、しっとりとした落ち着いた感じで、犯すに
しろ犯されるにしろ激しい描写が多いアスカとしては珍しいというか、その
ためにゲンドウとの交合が彼女が望んでの和姦であることを想起させて、穏
やかな背徳感が感じられてよいと思いました。
- 236 名前: 2−5 投稿日: 2003/05/01(木) 18:55
- 「――父さんがそんなことを?」
シンジは驚き、同じベットの上にいる彼女に聞き返す。
「信じられない?」
「うん。……いや、アスカが言っていることがじゃなくて……ああ、けど……父さんがね」
自分でもどう言っていいのか解らなくなったらしい。
アスカはその様子を眺めていて、やがて苦笑する。
(本当、親子ね……)
慌てて言葉を捜しているところなぞ、よく似ている――ような気がする。
それをもう少し見たかったが、そんなのばかりだと話が進まないので、彼女はそっと腕を伸ばしてシンジの首に巻きつけた。そして自分の剥き出しの乳房へとシンジの顔を押し付ける。
「……アスカ?」
「……息吐き掛けないでよ」
無茶を言う。
「ごめん……」
「ばーか」
「うん……」
「……その後だけどね……ちょっと!」
「アスカ……」
「……落ち着いたかね?」
「はい――いや、すいません」
アスカは口元を押さえ、憮然とした面持ちであさってへと顔を向けているゲンドウに目をやる。
(……怒っちゃったわよね……)
まあ、当たり前だ。
きっと彼としては気になる事柄だったのだろう。それを笑われたりなんかしたら――。
(あ、でもそれって……ええい、ままよ!)
こうなったら、どれだけ怒らせても一緒だと思った。
だから。
「寝言を言ってたって、誰かに言われたたこと、あるんですか?」
言った。
返事はなかった。
(図星かい……)
まあ、寝言を聞くような人間といえば、つまり……。
「……奥さんに言われたとか?」
なるべく悪戯っぽく。
軽さを装った声で聞いてみた。
やはり、返事はなかった。
だが。
(……別の女に言われたのね……)
なんか解った。
なんとなくだが。
どういう訳だか解ったのだった。
(というより、嘘をついてる時のシンジと、おんなじ雰囲気だし……)
相手はリツコだろうか? あるいはそれとも――まあ、どうでもいいことだった。そういうようなことにいちいち目くじらをたてるような立場でもなければ、権利もない。いい大人同士がナニをしていようとも問題はない。アスカは自分自身にそう言い含めながら、軽く息を吐いて頭を掻いた。
その時に。
ぐぎゅる……
腹の虫が鳴った。
自分じゃない――
アスカは、反射的にゲンドウを見た。
彼は右手で眼鏡の位置を整えていた。
(ごまかしてる……)
言った。
「徹夜で、朝食もとってないだけだ」
「はあ……」
そういえば、もう昼が近い。
ゲンドウは立ち上がり、彼女へと目を向けた。
「私は、食堂にいってくるので、ここまでで失礼させてもらう」
「あ、――お詫びに、私がお金だします」
慌ててベンチから立ったアスカがそう言うと、出口に向かいかけていた姿勢から一瞥だけして。
「――いらん」
と言った。
そして。
何かをいいかけるアスカの言葉がはっきりと形を成す前に。
「話している最中に居眠りなどした私が無作法だった。――私が出す」
- 237 名前: 2−6 投稿日: 2003/05/01(木) 18:55
- 「……父さんと、食堂に……」
「そ」
シンジの腰に跨ったアスカは、「ふふん」と笑って闇の中で彼の顔を見下ろした。
「――特Aランチ。義父さまは天麩羅うどんだったわ」
「……一番高いの奢らせたんだね」
「先に注文されたのよ」
「……みんな、驚いたんじゃないかな? 父さんとアスカが食堂で食べてるなんてね……」
その様子を想像したのか、シンジは微かに口元を歪め、それから自分に乗ったアスカへと手を伸ばす。彼女はその手を掴み、自分の頬へと寄せた。
「驚くっていうか、なーんか変な雰囲気だったわね。緊張してる、みたいな」
「だろうね」
頷く。
「それがイヤだから、いつもはお弁当作ってるんだって」
「――父さんが作ってるの!?」
「……私も驚いたわ」
「ご自分で!?」
「何か問題があるかね?」
食堂から花園への通路の途中で話しながら歩いていたが、そう問い返されて思わず立ち止まった。
「――いえ」
答えてから、足早に追いつく。
「けど、ご自分で家事をなさってるとは意外です。てっきりハウスキーパーとかいらっしゃるものだと……」
「そんなに給料は貰ってない」
「…………」
「それに、自分でできることは、大概自分ですませることにしている」
「……ご立派です」
まんざら追従するでもなく、そう言う。彼女にはそういうところがあるから、なおさら思う。こういうところはシンジとは違うのね、と思ったが、まだ十代のシンジと五十も近い彼と比べるのも酷だろう。
しかし。
「大したことではない」
と彼は言い、「それに」と言い添えた。
「最近は、体がついていかん……弁当を作らないで昼を抜くというのもままある」
「面倒ですからね……ああ、それなら」
続けて言った言葉に、彼は足を止めた。
同時に花園の入り口を空けるスリットに、カードをくぐらせていた。
「……今、なんと言ったかね?」
ドアが開いてから、彼はようやく振り向いた。
アスカは微笑んでいた。
「――アスカが!?」
「そ」
思わず両手で上体を起こしたシンジに、アスカはしなだれかかった。
そして、耳元で囁く。
「明日から、私がお弁当作ってきます」
- 238 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/05/01(木)
19:02
- >>235 PDX.さん
> 序盤のゲンドウとの濡れ場も、しっとりとした落ち着いた感じで、犯すに
>しろ犯されるにしろ激しい描写が多いアスカとしては珍しいというか、その
>ためにゲンドウとの交合が彼女が望んでの和姦であることを想起させて、穏
>やかな背徳感が感じられてよいと思いました。
しっとりというか、当時の私では、激しいシーンが技術的にも書けなかっただけのような気がします(笑)
なら今はというと――ああ、師匠(涙
……ああ、見え見えの展開だ……。
エロ小説スレの人には、しっかりと失望していただきましょう……。
ってか、長期に渡って書くもんじゃあないですね。
勢いに任せてズバっと書ければなあ(しみじみ)
――しかし、どこまで長引く?
- 239 名前: PDX. 投稿日: 2003/05/01(木) 19:32
- >>236-237
我乱堂さん
お〜〜、アスカを食事に誘うゲンドウ!
自ら弁当を作るゲンドウ!(笑)
そしてゲンドウに弁当を作ると言い出したアスカ。
シンジとしては複雑でしょうねぇ。
恋愛SLG風に書くと、ゲンドウの選択「食事の話題」からチェーンした
「弁当の話題」でアスカの好意度が加算されて、「アスカのお弁当」イベント
のフラグが立ったという感じでしょうか(ぉ
しかしこれで、アスカの方が料理が下手だったりしたら立つ瀬がないか?(笑)
>>238
我乱堂さん
いえいえ、やたらと激しければいいというものではありませんし。
エロ文にもいろいろアプローチがあって、詳細に描写することでイメージを
伝える方法もあれば、思わせぶりな描写で想像力をかきたてる方法もあります
し。
- 240 名前: 眠い気味 投稿日: 2003/05/02(金) 20:55
- エロ小説スレでの「不倫ドラマ」ってたとえ、言いえて妙だと思ったり(w
順調に深みに嵌るフラグが成立していっているようで、実に期待が募るところです。
アスカの無自覚っぷりがまた、他意は無いんでしょうけど噂になっちゃいますよねぇ(笑
噂をする方も、罪の無い想像で遊んで――程度になるかと(シンジとの評判を考えると)思いますが、回り回ってアスカの耳に帰ってきた時とかイメージすると楽しいかも。そしてそれがまたアスカにゲンドウとの関係を意識させたりとか、お約束ですな(w
続きも頑張って下され。
- 241 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/05/02(金)
21:02
- >>239 PDX.さん
>恋愛SLG風に書くと、ゲンドウの選択「食事の話題」からチェーンした
>「弁当の話題」でアスカの好意度が加算されて、「アスカのお弁当」イベント
>のフラグが立ったという感じでしょうか(ぉ
ってか、そのまんまですか(苦笑)
このまま進んで「礼に映画、あるいは食事」に誘って新密度アップ(爆)
>しかしこれで、アスカの方が料理が下手だったりしたら立つ瀬がないか?(笑)
そーいえば、私の書くアスカって、たいてい料理が上手いんだよなあと気づきました(苦笑)
> エロ文にもいろいろアプローチがあって、詳細に描写することでイメージを
>伝える方法もあれば、思わせぶりな描写で想像力をかきたてる方法もあります
>し。
この道は深し!
精進しますです。
- 242 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/05/02(金)
21:04
- >>242 眠い気味さん
>回り回ってアスカの耳に帰ってきた時とかイメージすると楽しいかも。そしてそれがまたアスカにゲンドウとの関係を意識させたりとか、
>お約束ですな(w
あー……。
>続きも頑張って下され
なんとかがんばります。
- 243 名前: PDX. 投稿日: 2003/05/02(金) 21:35
- >>240
引き気味さん
>エロ小説スレでの「不倫ドラマ」ってたとえ、言いえて妙だと思ったり(w
他のネタがAVというのも納得してしまったり(笑)
AVというか陵辱もののエロゲに近い視点かもしれませんが。
主にアスカの堕ちゆく過程を描いているのであって、それ以外の要素は
枝葉末節と割り切って書いている部分とかありますし。
(StrayCat
外伝とかはとくにそう)
>>241
我乱堂さん
> ってか、そのまんまですか(苦笑)
> このまま進んで「礼に映画、あるいは食事」に誘って新密度アップ(爆)
さすがに動物園とかプラネタリウムではないでしょうし(笑)
いえ、ゲンドウが敢えてそういうところにアスカを誘うことで笑いをとり
つつ「可愛い人」という印象を与える手もありますが(笑)
>料理
アスカよりゲンドウの方が料理が上手いと、こういう場面もありうるのでは。
1)ゲンドウに料理を習うことになるアスカ
2)キッチンで二人きりの時間を繰り返すことで親密度UP
3)何かの弾みで包丁で指を切ってしまうアスカ
とっさにそれを咥えるゲンドウ(笑)
……ギャグになりそうなので却下(笑)
- 244 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/05/02(金)
23:13
- >>243 PDX.さん
>1)ゲンドウに料理を習うことになるアスカ
>2)キッチンで二人きりの時間を繰り返すことで親密度UP
>3)何かの弾みで包丁で指を切ってしまうアスカ
> とっさにそれを咥えるゲンドウ(笑)
かなり近いものを考えていたのですが、やめようかな(爆)
いや、料理を習うとかはしませんけどね。
……うーん……PDX.さんにはかなわんですよ(苦笑)
色々と。
- 245 名前: PDX. 投稿日: 2003/05/04(日) 13:39
- >>244
我乱堂さん
ありゃ?
無さそうなパターンを想像したつもりだったのですが、もしかして一部ニアピン?(汗)
でもここで、ゲンドウとシンジの味の好みの違いがあったりすると面白いかもしれませ
んね。シンジは、預けられていた「先生」の家の関係で卵焼きは甘い味付けを好むけど、
ゲンドウは関西風の出汁巻きを好むとか。
- 246 名前: 背信者・我乱堂 投稿日: 2003/05/04(日)
14:22
- >>245 PDX.さん
>無さそうなパターンを想像したつもりだったのですが、もしかして一部ニアピン?(汗)
なんか以前にも別の方のSSについて、にたようなことを書き込まれておいでたような(汗)
> でもここで、ゲンドウとシンジの味の好みの違いがあったりすると面白いかもしれませ
>んね。シンジは、預けられていた「先生」の家の関係で卵焼きは甘い味付けを好むけど、
>ゲンドウは関西風の出汁巻きを好むとか。
その辺は外伝で(うそ)。
……まあ、親子だからといってよく似ているネタではあれなので、ちょっとづつ違うところを出すというのは常道ですな。
しかし、やはり関西なんでしょぅかね
- 247 名前: PDX. 投稿日: 2003/05/04(日) 15:28
- >>246
我乱堂さん
>しかし、やはり関西なんでしょぅかね
かつて冬月とユイさんがいたのが京都大なんでしたっけ?
そのせいで関西イメージがわりとあるような。
我乱堂さんのこの作品のゲンドウの場合、ユイへの想いに固執しているので、
かつて彼女が作ってくれた出汁巻卵の味を再現しようと頑張っているとか(笑)
実はユイさんは料理下手で、ゲンドウが料理を教えたというパターンだと、
少女漫画にありそうな感じになってしまう(笑)
From:『そうして彼女は嘘をついた。』