そうして彼女は嘘をついた4
- 166 名前: 1−3 投稿日: 2002/12/31(火) 23:56
- 「ん……」
アスカは目を閉じ、両手の指先と股間に意識を集中した。
マスターベーションを初めてしたのは、大学を卒業する前だ。四つ年上のシャルロッテから教わった。ストレス解消だとかなんとか。それだけでは彼女はしようなどとは思わなかっただろうが、最後に付け加えた一言――「大人ならみなしてる」――が、その動機の全てだ。
左胸の頂きを左手の親指と人差し指と中指で軽くつまみ、それぞれの指の腹でこする。他愛もないそれだけの動きで、彼女の乳頭は完全に隆起し、硬度を持った。
右の指は下着の中に潜り込み、とうの昔に生え揃ったヘアの間に潜り込む。
「あっ……んん」
……昔は、初めてシタ時は、これだけのことをするのにも時間がかかった。勇気がいった、と言ってもいい。具体的に何かの性的なイメージがあった訳ではなく、ただシャルロッテより聞いた“予備知識”通りに指を動かし、胸をこねる。それだけのことをするのも、アスカにとっては全くの未知の領域に属していた。
――弱い女はイヤ。
無意識に、心を病んで捨てられた母のことが脳裏にあったのかもしれない。あるいは父に絡みつく継母の姿が。
それらに対する嫌悪が、性感の開発に対する忌避も生み出していた。
だが。
つぷっ
第一関節まで、中指をもぐりこませる。
濡れた音がする。そして、彼女の花弁の内に溜まっていた愛液が溢れる。
「ああん……」
――それらは、全て昔の話だ。
シンジの愛情を受け、彼女の心は満たされていた。
昔のNERVの用語でいうのなら「補完された」とでも表現されたかも知れない。
女であることに、その悦びを求めることに、アスカはなんの躊躇も感じることはない。
むしろ積極的に受け入れようとする。
「シンジィ……シンジィ……」
うなされるような声を出し、アスカは脳裏にシンジが己の身をまさぐる姿を思い描いていた。アスカにとってシンジは最初の男であったが、シンジにとってもアスカが最初の女だ。数年間、ずっと二人でともに愛の密戯を研鑚しあってきた。彼女には、シンジが何をどうやって愛撫するのか、その全てのバリエーションが解っている。
それを物足りないなどと思ったことはない。未だにシンジはアスカの肉体に飽くことのない情熱を抱いており、全身にある感覚の全てを性戯のために磨き上げようとしてさえいる。
アスカは己の愛撫する手を、シンジのものと一致させていた。
あるいは、かつてのユニゾン特訓の成果かも知れない。
From:『そうして彼女は嘘をついた。』