QLASのバッドエンド
- 287 名前: 通行人S 投稿日: 2002/08/20(火) 01:41
- ……レイは冷蔵庫からブルーベリージャムを取り出して、焼いてもいない食パンに厚めに塗った。
疲れ目にはこのジャムがいいと聞くが、どれほどの効果があるのかなど彼女にはよく解らない。
ただ、一日の大半をディスプレイを眺めることに費やす今の仕事では、目の疲労などというものはできるだけない方がいい。
それからマグカップに低脂肪乳を注ぐ。
その横には昨日コンビニで買い置いたサーモンのサラダ。
それが、今の彼女の朝食。
「……おはよう」
「…………………」
背中にかかった声を、彼女は無視した。
その声の主はそれに少し焦燥を感じたのか、どうでもいい言葉を継ぐ。
「昨日は凄かったよね」
「………………………」
やはり、彼女は無視した。
もくもくと食パンを齧り、それを牛乳で押し流していく。
「……なんていうか、俺もあんなの初めてだったよ。なんていうかさ、君って見た感じ凄く清楚って言うか神秘的だし。あんな……酒が入ってたからって、あんな風に乱れるなんて、その……ギャップもあるけど、こー、凄くよかったから。あー、何言ってるのかな。俺、ゆきずりになんて初めてじゃないけど、こんな――こんな感じ初めてなんだ」
「………………………」
レイは、やはり何も言わない。
まるで後ろで喋っている男など、自分とはまるで無関係だ――とでも言うように。
無論、そんはずはない。
彼女は男と何処で出会ったのか、どういう経緯でこの家に連れ込んだのか、昨晩に自分のどちらの胸に先に触れたのかもはっきりと覚えている。確か何処かの商社に勤める新人で弟が一人と妹が一人いて、隣りに坐ったのはなんだか自分が寂しそうに飲んでいるからとかいってた。馬鹿みたい。自分を酔い潰そうとしていたのははっきりと解る。そういうことが解らないようなネンネに思われるのはいつものことだ。しかし生憎と酒に弱かったのは高校を卒業するまでだ。今はかつての上司ほどとまでは行かないが、斗酒なお辞せぬ酒豪になっていた。多少飲まされたからって男の思惑通りにはならない。
それなのに彼女は男の腕を胸にかき抱き、都内でも一人で住むには大きすぎる古めかしいビルへと連れ込んだ。
そう。
誘ったのは自分だった。
男の思惑なぞ、どうでもよかった。
男はなおも続けていた。
「……体からの関係から初めてこんなこというのもアレだけどさ……」
「――出てって」
ぴたり、と男の動きは止まった。
「……なんだって?」
「さっさと出て行って」
その時、ようやく彼女は振り向き、男を見た。
微笑を浮かべていた。
「いや、そんな、昨日のことはなかったことにしてしまうのか? ――それは、だけど――」
「加持監査官、いつものように」
意味不明の言葉をその微笑を貼り付けたままで言う。
「――了解」
全く不意にその声は聞こえた。背後から。
「な、何だよ――」
男は振り向こうとして、できなかった。
それ以上叫ぶ暇すらも。
男はその場に崩れ落ちた。
「記憶調整処理をして外部に放り出しておくよ」
「ありがとう……」
「しかしな、こういうのはよした方がいい」
「…………………」
「こう毎日のように不特定の異性を連れ込むのは歓迎できんよ」
彼女は俯いて首を振った。
「ごめんなさい。だけど……少し、一人にして」
「……了解。――じゃあ、な」
声の主は倒れた男を担ぎ上げ、やがて音も無く部屋を立ち去り、やがてその気配も消えた。
レイはしばらくそのままでいたが、体の中から昨晩の情事の証明になる男の体液が漏れ出たのを感じ、全身を震わせた。
「ガウンが汚れちゃった……先にシャワーを浴びてればよかった……」
ぽつぽつと言葉をこぼしながら、彼女の目から涙が溢れた。
テーブルの上に落ちていく。
「碇くん……アスカ……わたし……」
ぎゅっと、膝の上に置いた拳を握り締める。
「シャワー、浴びなきゃ……シャワーを……」
言葉は幾度となく繰り返し続けられた。
- 288 名前: 通行人S 投稿日: 2002/08/20(火) 01:42
- ……なんかなかなか進まないので、とりあえず書いておこうと(笑)
上のは設定としてはQLASのバッドエンド。
幸せになった三人だけど、レイを残し、アスカとシンジは死んだ(?)。
レイはネルフに勤めながら、毎日のように男を連れ込み――
ま、別にレイがアスカでも構わないんですが(爆)
元々、これって別ジャンルの二次創作の掲示板に書き込んだヤツを、キャラを変えて細部を直してこうしたものだから(笑)
いや、評判悪いっていうか無視されてそのまま埋もれていくにはちょっともったいないなぁとか思ったもので。
かつてのバージョンを知っている人が万が一いたとしても、そっとしておいてくださいね(笑)
「性欲アリ地獄優等生」なヒカリは、今山場ですから(^_^;
ぼちぼち待っていてやってください。
ではでは。
- 292 名前: 通行人S 投稿日: 2002/08/20(火) 12:34
- >>287の続き。
「碇くん! アスカ!」
レイの叫びは虚しく響き、やがて吸い込まれるように大気に溶けた。
かつての使徒との戦いから数年を経て、『ロストナンバー』と呼ばれる使徒の出来損ないが第三新東京市へと襲来してきた。
そう。
そいつらは使徒の出来損ないであった。
名すら与えられず。
リリスの元に還ろうとする本能すらも希薄な連中だった。
一体一体は第三使徒ほどの力もなかった。
それが、十七体まとめてきた。
「――タンデムシンクロ、ですか?」
「そう」
「それって二人以上でエヴァに乗るっていうこと?」
「そう」
「……どのような効果を期待できるんです?」
「それは――」
リツコはかつての第六使徒との戦いのおり、アスカとシンジが弐号機にのって一瞬だが異常なシンクロ率を弾き出したというデータを引っ張り出してきた。
「現状で可動できるエヴァは実験用に組み立て直されたTayp-1だけ」
「……シンクロ率を上げて個体の性能を上げるというプランね」
「他に手はないわ」
チルドレンたちはその言葉に同意した。
いまや自分らのために調整されたエヴァはなく、あるのは三人のシンクロ率のチェックのために模擬体を換装して作ったTayp-1だけしかない。そしてそのシンクロ率は最大のシンジで五十%を超えないのだ。
「乗るのはシンジくんと――アスカ」
「ちょっと!! レイはどうするのよ!?」
「アスカ?」
「タンデムでシンクロ率が上がるのなら、レイも載せるべきよ」
「……三人で意思の統一なんてできると思う?」
「僕らなら、できると思います」
「…………ごめんなさい。二人以上でのタンデムシンクロは危険だと判断されたの。それに万が一のことも考えられて……」
「解りました」
「レイ?」
「綾波!」
「……わたし、待っているから」
「――解ったわ」
「うん。約束する。僕らは帰ってくる」
「そう。それで三人で……」
「くっ!」
「シンジ! 後ろ!!」
「暴走!?」
「碇くん! アスカ!」
「……サルベージはできないわ」
「そんな……」
「二人が混ざっている状態なんて、とても……けど、可能性が一つだけ」
「還ってきて……二人とも……」
「駄目です! ――クライン空間に――」
「――還りたくないの? 二人でそこにいることを望んでいると!?」
「そんな……わたしたち、あんなに……あの暖かさは……絆は……全部嘘だったの?」
(……碇くん……アスカ……)
レイは封印処置を施されたTayp-1を見上げた。
そこには彼女の最愛の人物の魂がいるはずだった。
いや。確実にいる。そして母の子宮にも似た場所で、永遠のまどろみに浸り続けるのだろう。
「わたしは――あなたたちを――」
その眼差しは、かつて二人に向けられていたものとは、余りにも違いすぎていた。
「……主任、葛城司令がお呼びです」
かけられた声に、彼女は頷いた。
「解ったわ。すぐに行きます」
そうしてその場を立ち去った。
――ユルサナイ――
残滓のように、その呟きは空間に残った。
- 293 名前: 通行人S 投稿日: 2002/08/20(火) 12:42
- なんかFUJIWARAさんのに似たような感じが(笑)
ここで二人の娘とかいればまんまそっちに……。
はっ。
息子がいて、それをレイが寂しさに手篭めにするというのでもよかったんだ!!!
……さて、絆を信じたいけど裏切られたという思いがあるレイ……そして彼女を慰めようとする周囲は、しかし彼女等の関係を知らなかった……。
見当違いの同情をするある人物に対して、レイは自分でも解らない暗い情念が湧きあがる……。
――ってな感じでいきますか。
- 294 名前: PDX. 投稿日: 2002/08/20(火) 17:51
- >>292
通行人Sさん
「数年を経て」ってことは3人は19歳くらい?
子供までいるとするともっと上か?(^_^;
(でもアスカだったら16位で産んでいるかもなぁ(爆))
>>293
>息子がいて、それをレイが寂しさに手篭めにするというのでもよかったんだ!!!
『黒』?(^_^;
# どっちかというと『黒2』か?
- 295 名前: 通行人S 投稿日: 2002/08/20(火) 18:04
- >>294
PDX.さん
>「数年を経て」ってことは3人は19歳くらい?
> 子供までいるとするともっと上か?(^_^;
>(でもアスカだったら16位で産んでいるかもなぁ(爆))
子供がいるいないは書き終えた直後ですので(^_^;
この時が十七歳くらい。
んで現状のレイは二十一歳くらい。
アスカが若くして出産というのは激しくありそうだと思います(笑)
>>息子がいて、それをレイが寂しさに手篭めにするというのでもよかったんだ!!!
>『黒』?(^_^;
># どっちかというと『黒2』か?
中昭さん……(涙
いや、それはともかく、『黒2』のほうですかね(^_^;
でもあれは自分の息子を手篭めにしたのはアスカで、レイは相思相愛でしたなぁ。
ちなみに一瞬、二人がふたなりになって帰ってくるというのは――と考えましたが、それやると悪ふざけがすぎるのでその選択肢はなし、と。
いや、『las』みたいに性格が凶悪になってしまっているというのなら……。
ま、この後の展開は決っていて、それは無いんですけど。
From:漏れの思いついたネタを酒の肴にしてみるスレ