異世界パパ活!
Original text:引き気味
『 MEETING HIS DAD 』
繰り返し苦情を言われるまでもなくめぐみん自身にも分かっていることなのだが、彼女は気が短い。相当に短い。
それでもまた今日も、めぐみんはどうにも(目にもの見せてやらずには……!)といきり立つ気持ちを抑えられず、爆裂魔法の詠唱を開始しようとしていた。いや、開始していた。
慌てふためいて建物の外へ逃げ出していく野次馬たち。
なんの冗談かとへらへら笑っていた喧嘩相手も、紅魔族特有の赤い瞳を爛々と輝かせて魔力を高めていく、その尋常ではない気配に遅まきながら悟る。酔っぱらいにからかわれた程度で持ち出して良い範疇を逸脱した、本気も本気のガチ詠唱。この冒険者ギルドどころか、周辺ごと街の一角まるごと吹き飛ばしかねない勢い。冗談の通じない相手だったのだと。
ギルドの職員らが血の気の引いた顔で退避を呼びかけながら、その辺に居てくれる幸運を祈って叫ぶのだ。この頭のおかしい魔法使いの保護者を大至急! と。
そら恐ろしいことにこれが最早このアクセルの街の通常進行であって、取り扱い注意劇物呼ばわりされているめぐみんの日常でもある。
近頃そこで少し変わってきたことはといえば、暴走娘に手綱を付けられる唯一の人物である若い冒険者、パーティーのリーダーたるカズマがギルドに駆け込んでくるやいなや取り出した魔道具である。
「だから、そのすぐにカッとなる性格をどうにかしろぉぉぉ……!」
トランキライザー、と呼んではいるが異世界出身の当人以外に意味は通じない。そして錠剤の類でもない。
以前、魔道具を扱う商店主が「異世界に転移できる」という触れ込みで購入を持ちかけてきた小箱と同じ物のようにも見える。
どうやら確かに一時的な転移は成立させたらしいが、ただしその間の記憶はすっぽり欠落するという欠陥品も良いところのあれだ。
よく似たこれをめぐみんに向けて蓋を開けば、一瞬ぼやけたように姿がゆらぎ、次にはスッ――と怒りの抜けた顔つきへとたちまちに変貌。なんなら別の方向性でヤバいのではと感じるへらりとした笑みを浮かべすらして、またお手数をお掛けしたみたいでとカズマに謝ってみせるのである。
さして悪びれた風でもないのだから、これがバツが悪くて誤魔化しているものなのか、魔道具の副作用か何か心配しておかなければならない効果のせいで引き起こされている症状なのか、カズマにも判別が付かないところだ。
「すいませんねぇ。……あ、どうもどうも、皆さんにもご迷惑をお掛けしたみたいで」
まったくだ、とぼやきながら机や椅子を元に片付ける周囲の面々を他所に、先程までの荒ぶりっぷりも嘘のように素直に踵を返す。
「なんだか落ち着いちゃいましたし、帰りましょうか」
「……お前、ほんとにコレなんかマズい効き目があるのとは違うよな? 感情の揺れ幅がヤバいぐらいに見えるぞ?」
「そうですかねぇ。私はもう、かかずらうのもつまらない小物のことなんて記憶から抹消ですよぐらいの気分で、すっきり爽快なんですが。――カズマにはどう見えます?」
「だから、毎度毎度そういう意味深な顔してこっち見んなって言うんだよ。むやみに焦るだろうが」
「……ふふふ」
うっすらとした笑みで口の端を持ち上げ、一度振り返ってきためぐみんは上機嫌そうに軽い足取りだ。
ふんふんと杖も振って、カズマの先を歩いていく。
「なんだかなー。こう、姿がボヤけて見えるっていうか、コマが飛んだみたいな感じのブレ方にも見えるんだよな。前に一度、日本に帰れてたっぽい時の俺たちが周りからどう見えてたかなんだけど。だとしてもこれ、一瞬だけのことだしなぁ……」
よく似た魔道具を使用した経験から転移系の効果を思い浮かべるカズマだったのだが、怒り狂うめぐみんを落ち着かせるのには実際便利なので、ついつい頼ってしまうのだ。
「まぁ、本人もおかしなことになってる感じはしないって話だし。アクアのやつも呪いだの精神異常だのの悪影響が出てる気配は無いって言ってるからな」
八割方のところで大丈夫だろう。そう納得して、また繰り返す騒ぎの中で何度もめぐみんに向かって使用し、やがてそれが完全に日常風景の中に溶け込んでいった。
そういう日々の、ただの一コマである。
――気付けばめぐみんは、また異世界に居た。
◆ ◆ ◆
「……ん? んんんー?」
杖を突き付けていた相手はムサ苦しい腕っぷし自慢者系の冒険者だった筈なのだが。
急に周囲の景色が変わった今、光渦巻く杖の先端に目を丸くしながら両手を上げている男性はまるで違う顔をした、全くの別人物だった。
同じ肌着一枚の軽装備極まりない姿ではあっても、ぱんぱんに筋肉で膨らんだ腕周りを誇示しているというタイプには見えない。間違っても見えない。
商人かなにかをして荒事とは無縁に過ごしてきたのだろう経歴が窺える、呑気そうな、そしてうだつの上がらない風の。加えて黒い髪と黒い瞳という珍しい特徴を備えた、めぐみんのごく近くに居る特定約一名を彷彿とさせる、中年の男性。
丁度、風呂上がりのカズマが肌着一枚で屋敷をうろついているのに出くわした時そっくりの格好、腰の引けた佇まいで、ただ年齢を二周りばかり引き上げたかのような。
「人違い、だと思うんだけどね」
「……ええ、そのようですね。そうでもないとも解釈できそうですけど」
めぐみんは自分が脅す形になっていた相手が誰かに気が付くと、すぐに杖を引っ込めた。
(そういうことですか)
なにしろこれが初めてのことではない。知力の高い紅魔族の脳裏には、即座の理解が駆け巡っていた。
自身の変調にも気付く。
こめかみの血管が千切れそうな怒りにもまだ突き動かされる感覚があるが、塗り替える勢いで下腹部の方から広がってくるまた別の衝動の存在も自覚出来る。
原因はあの魔道具だ。
普段は欠落していた記憶が、この事態に陥ることで再び蘇っていた。
「……おや」
ついでにそのまま少し視線を下げていって呟き、『随分と気が早いみたいじゃないですか』とも。
「たはは」
体裁が悪そうに咳払いで誤魔化したしたその、膝丈の薄い部屋着――ステテコという日本の一定年齢以上の世代に馴染みのある――を履いて、まさに風呂上がりだったところの男は、こちらも目の前に立つ赤い瞳をした少女が誰かをはっきりと認識した様子で、改めて『やぁ』と挨拶したのだった。
「また来たのかい、お嬢ちゃん」
「どうやらそのようで。またお世話になりますと言うべきでしょうか?」
只のくたびれたおっさんだ。湯上がり姿が色気を醸すという程の男ぶりでは全然ないのだが、顔を赤らめためぐみんは照れた様子で目を逸しながら応じる。
それは結果的に、この近所ではそうそうお目にかからないレベルで目鼻立ちの整ったこの美少女がどんな意味ありげな目配せをするよりも、中年男の気の早い下半身を熱くさせたのだった。
明らかに聞こえただろう。それぐらいはっきりと、生唾を飲む音をさせてしまう。
「…………」
しかもそれに、この当然思春期は迎えているだろう女の子が気を悪くするでもなく、どう考えても勘違いでは無しにまんざらでもなさそうな――気恥ずかしそうな態度を見せるのだ。
愛らしくもいじましい媚態にしか見えなかった。
生地の薄いステテコでは隠すべくもない。そこに現れたのが異世界から来たのだという、あなたの息子を知っているかもしれないと最初に声を掛けてきて以来、度々訪れる少女だと悟った瞬間から、ムクムクともう条件反射じみて固くなり始めていた股間が、隆々と鎌首をもたげていたのだった。
「興奮を……鎮めなければならない状態に、させられているんだったね?」
「…………」
ちょっと走ればすぐに下着が見えそうなぐらいの短いスカート丈だ。めぐみんが裾を摘んでもじもじとしているだけで、黒いタイツで覆いきれなかった太股の付け根から続く際どい生肌、危うい布地が見えそうになってしまう。
むしろチラチラと、幾度かはわざとその小さな布切れの一部が目に入るようにしている素振りすらあった。
小柄な背丈からするといかにも大胆な、黒。
男からすれば娘ほどにも歳の離れた彼女は、女を主張するには胸も尻もあまりに肉付きの薄い、華奢な肢体の持ち主だったが。背伸びにも感じられるそれであろうと、鼻息は荒くなるというものだ。
それはまさに青少年育成条例モノの禁断の、しかし男にとっては手の届かない果実などではない。甘美な味わいを、もう何度も貪らせて貰ったことのある――。
「……君の後ろのそこが勝手口だ。出たらすぐ、隠れるのに丁度いい植え込みがある。塀に沿って車の近くまで続いてるから、音をさせないように気を付けて」
なあに、家族には適当に言ってすぐに迎えに行くからね。そう、妙に気取った口調を作ってみせる。
そこは誰かとの血の繋がりを感じさせるものだ。
指示は適切で、すぐに身支度とこんな時間から家を抜け出す口実を巧みに整えてみせたらしい手際の良さも、また同じく。
「君の言うその魔道具だったっけ? 段々と手際が良くなってくるというか、せっかちになってきてるねぇ。最初はあいつと似た雰囲気だったからって、街中で声を掛けてきてだったのにさ」
彼女が乗せられた、御者台と客席が一体になった馬無しの馬車。舵輪に似た道具を操りながら、男が間を持たせようとしてか続ける話の殆どが、もうめぐみんの頭には入ってきていなかった。
自覚している変調はいよいよ酷くなってきている。
「とうとう今回は僕の家に、直接とはね。脱衣所だったのがまだしも不幸中の幸いだったのやら。他の家族に出くわす場所じゃなくて良かったよ」
独り言めいてうんざりしてみせる、男のその口調がいけない。
ふとした言葉の選び方、呼吸の挟み方。格好を付けようとしてみせる時の、声色の取り繕い方。
至るところにあの少年の影がちらついてしまう。重ねてしまう。
それに声もよろしくない。
彼がもっと歳を重ねて大人になったら、これぐらいの低い声で話すようになるのか、と。そう考えだしたらもう堪らなくてならないのだ。
「……っ、っッ」
はぁっ、はぁっと次第に荒くなっていく一方の息遣いだ。
当然、これだけ狭い空間に二人きりで居る男にも気取られているのは間違いない。
――分かっているくせに。こっちだって分かってるんですからね。
マントを脱いでしまうと、身に着けているワンピースはアダルトに攻めた、肩を出したデザイン。肩紐も無い。本来であればもっとバストのふくよかな女性向きの、それによって胸元がずり落ちないよう支える作りなのだが。
スレンダーな体つきをしためぐみんが俯いて胸元が緩むようにしていると、どうしてもそこには隙間がぽっかりと。高い位置の目線からは簡単に内側を覗き込めるようになってしまう。
そして格好を付けることがまず第一という紅魔族の信条に忠実なめぐみんは、サラシを巻くことはあっても、普段は下着が見えてしまうのは格好悪いからと着けないままでいることも多い。
横目にチラチラと気にしているのは承知の上なのだ。
(いやらしい、目をして……)
分かっているからこそ、胸の先などはツンと尖って疼いてきてしまう。
すぐにも手を出してきたくてソワソワしているというのに、まだそれでも表面上の紳士を取り繕っていたいらしい。そこが小憎たらしい。
そんな小憎たらしさすら、また彼をダブらせて。どうにもこうにも。
(あああああ、本当に……タチの悪い!)
気を張っていても発情しきった思考にばかり流れていく今のめぐみんの脳裏は、なんであれ限界でしかないのだ。
精神安定剤、などという意味の言葉で呼んでいたか。あの魔道具は、なるほど確かに一瞬にして興奮を鎮めてみせるのだろう。
しかしだ。
興奮を収めさせる為に、一度別の種類の興奮状態に強引に持っていった上で諸共に発散させる。それを異世界で、別の時間の速度の中で行わせる。そうしておいて、異世界における記憶を綺麗に奪いとって元の場所に。
だから傍目には一瞬で気持ちが落ち着いたように見えてしまう――。
触れ込み通りの結果をもたらすその手段として、使用者がまるで想像すらしなかっただろう悪質なやり方をあえて選ぶ。この魔道具は、きっとあの碌でもない悪魔と同類の存在が拵えたものに違いない。
まるでそれ自体が意思を、判断能力を持っているかのように。めぐみんの意識を読み取っているとしか思えない的確な選択で、目的がより速やかに達成されてしまう相手のいる場所を、状況を、選ぶようになってきている。
いっそ、彼と一緒にこの異世界に連れて来てくれていたなら何も問題なく丸く収まっていたものを。
それでもあの、最初に飛ばされてしまった時。後少しで抑えが効かなくなって誰彼構わず破廉恥な誘いを掛けてしまいそうになっていた時に出会えた相手としては、最良だったのではないか。
いや、やはり意味するところの具体的な結果を思えば最悪でしかなかったのではないか。よりによって、よりによって彼の――父親だとは。
本当にあの魔道具の製造者が仮面の悪魔の同類であるのなら、そもそも問題など起こらないように取り計らっているのだと、したり顔で嘯くのに違いない。
なにしろ相手は彼に流れる血の源流。親子だけあってよく似た風貌の持ち主。犯した間違いに相応の結果がめぐみんの身にもたらされたとしても、まかり間違っても似ても似つかないということにはならないだろう。
それはつまり、それはつまりだ。
(ああ、もうっ。何も……考えられないじゃないですか!)
考えられないのではなく、考えたくなどないのだ。それこそが現在のめぐみんの真実。
本意ではなく不可抗力。
選びえた選択肢の中ではと言い切れる、唯一の次善。
そして万一の場合も、上手く立ち回りさえすれば不幸を最小限に留められる――。
逃げ道は、言い訳は、幾らでも用意されていた。
余計なことにも憎たらしいほど知恵が働く。紅魔族の生まれをこうも呪わしく感じる日が来ようとは。
これでは最早、もう冗談ごとでなく悪女のそれそのものではないか。
だとしても、
「もう、限界です……!」
「……お、お嬢ちゃん?」
舵輪を操るでもなく添えられているだけだった片手を掴み、力任せに引き寄せる。
導いた先は、隣り合った座席に行儀よく収まっているのも限界だっためぐみんの、揃えた膝を震わせている付け根の方だった。
スカートの裾をがばっと一息で捲り、既に黒い布地をシミが浮かび上がるぐらい濡れそぼった有様にさせていた下着の中心へと。
「ふうっ、ふぅぅぅ……っ、つっッ」
ぶつけたような最初の接触、その瞬間でもう電撃めいてビリビリと待ち望んだ快美の感覚が『はぅ!?』と迸った。
「うっ、わ……」
「どうです! わかるでしょう!? もうこんなですよ、私は!」
濡れた薄布は素肌に張り付き、ふっくらと柔らかそうに盛り上がった下着の中身と、そこの可憐な一筋の亀裂の形さえ浮かび上がらせている。
下着を履いてはいても、既に意味も無いのと同然。じっとりとした乙女のデリケートゾーンへのタッチを許された男の手には、自分から羞じらいのヴェールを剥がしてみせた彼女の欲情の素顔たる場所の温もりと、花唇の器官の抜き差しならない爛熟具合が生々しく伝わったことだろう。
つい、と言わんばかりに手指が動き、わきわきと感触を確かめてしまうのだ。
「ああ……!」
男からすれば年端もいかない少女のくせに、めぐみんはなんとも色っぽい喘ぎを漏らした。
見るからに小柄で幼い彼女は、14歳になったばかりだと男は聞いている。
精神状態をいじられたおかしな具合になっているとはいうが、毎回大人である男の方が度肝を抜かれそうになる。それ程の肉体の欲求への前のめりぶりだ。
中年男にスカートの内側をまさぐられて、待っていましたと言わんばかりの蕩けた笑顔は、こちらの世界でなら下手をするとまだランドセルを背負っていても通ってしまいそうな、そんな見かけの子がして良いものではない。
「そう、そうです……! あれを……して下さいよ。猫の顎をくすぐってあげるような、アレを……」
もっととせがんで自分から押し付けさせ、淫靡な感覚には一際の鋭敏さで目覚めてみせるコリッとした肉芽の部分へ。更に貪欲に、愛撫を求めようとしてくるのである。
守勢に立たされているのは男の方だった。
ヒヤヒヤの運転をしながらだ。利き腕ではないが、リクエスト通りの手付きでそこを刺激してやる。
「あっ、あーっ……。気持ちいい、気持ち良いです……」
少女はもう、あられもなく股を拡げてしまっていた。
猫の顎に下から指先を使ってやるようにして、薄いパンティ越し、入り口が解けた少女の亀裂部分を可愛がってやればやるほど、未成熟な腰つきがうねる。
次から次へと熱い愛液を垂れ流してくる。
スリットが綻んだ頂点の場所、そこで自己主張を強める小粒のクリトリスをくすぐって、ソフトタッチに責め立てれば、
「ンンッ、ンぅぅンンン! あうっ!? 頭まで直接――来ちゃうくらい、それがぁぁ……」
きゅぅっと眉根を寄せて切なげに、めぐみんの身の捩らせは更に激しくなっていった。
「いや、しかしお嬢ちゃん。事故っちゃう、事故っちゃうから」
「子ども扱いはやめてくださいよ!」
目尻に恍惚の涙さえ浮かべたまま、そのまま憤慨してみせるのは、どこからどう見ても中年男が情熱の相手に選ぶのに難のある子供そのままの容姿の女の子であったのだが。
しかしこれで、もう一端のオンナとしての待遇を男に要求するに十分なだけ、それだけの資格を彼女は獲得してしまっている。
逆の立場から言えば、それだけ男が申し訳の立たない真似をめぐみんにしてきてしまったということだ。
「今更なんですからね。それに、この躰を満足させないと私は帰れないんです」
今日までにもう何度も。あの魔道具を使われたのと同じ回数だけ、肉体を預けた相手であれば。めぐみんからしてみれば例えそれが自分にとって特に重大な意味を持つ男性であったとしても、躊躇してみせるような段階は過ぎてしまっていた。
「ここに屋根も壁も、柔らかいクッションのソファーだってあるじゃないですか。どこに行くより、私はもうここで。私をっ、もうここで……!」
「…………。あぁ〜、悪いのは俺じゃない、俺が悪いわけじゃない! これはあくまで合意の上。双方の同意の上での――それにお前にだって責任はあるんだからな……」
恨むなよと、形だけ手を合わせてみせるような台詞をこぼしてみせて。男はまだこの辺りには多い田んぼの集まった道へとハンドルを切った。
◆ ◆ ◆
暗くなってきたこの時間帯なら農家の人間もそう通らないだろうというアテに賭けて、田んぼの広がった真ん中に車を止めると、男は助手席のシートを倒してやった。
一番引いたところまで位置もずらす。それでも、少女の足元に陣取るには窮屈過ぎるスペースがやっとだ。
華奢で体温の高い肢体に伸し掛かりながら、早速自分のベルトも緩めていたのは、男ももう充分に気が逸っていたからか。度々の邂逅で、娘ぐらいの年齢でしかないこの若すぎる肢体を抱く快感に、味をしめてしまっていたからなのか。
――なにより、自分の息子が親御さんへの挨拶も済ませていると聞く少女相手の行為だという、罰当たりな真似だからこそなのだろうか。
「うーん……。俺にこんな火遊びを楽しむガッツがまだ残っていたとはな」
ここまで来るともう後には引けない気持ちだ。
彼女のスカートの中、下着の両端に手を掛けてやれば、あちらからも協力して腰を浮かせ、次に膝を小さく折り畳んで。狭い中で足首までを抜き取り易くしてくれる。
するすると――とはいかず、たっぷりとめぐみんの羞ずかしい汁っ気を吸って肌に張り付くパンティを脱がせるのは、あまりスムーズにはいかなかったが。二人にはいよいよ焦れったさから事を性急に進めようという気にさせる、そんな効果しか無かった。
いたいけな少女のものでしかないほっそりとした下肢を割って、男が体を入れる。
「……はぁっ」
待ちかねたといわんばかりの息遣いで歓迎の体勢をとり、彼女はその瞬間を受け止めた。
入り口の位置を確認することもなく、スリットの左右の肉土手を巻き込むぐらいの強引な剛直が雑にその辺りへと押し当てられたまま、ぐにっ――と媚肉を歪めさせて最初の侵入を行う。
熱く潤んだめぐみんの膣前庭を暴き、そのまま膣口を捉えて膨れ上がった亀頭を埋没させていく。
「あっ、アッ……!」
粘膜で直接に感じる、ドクッ、ドクッという彼女への欲望を溢れさせんばかりにさせた脈動。
同じサトウという姓を持つ男。かつては息子としてあの少年を妻に生ませた、その肉茎が、めぐみんの狭い膣を貫き、奥に届くまで収まっていた。
根本までは入り切らない。
その分がたわみとなって、男の体重のかけ具合だけでバネ仕掛けのようにグッ、グッと子宮口を押し込んでくるのだ。
それがもう、えも言われぬ刺激。
「あ、あぁ〜。いい、イイです……。とっても……」
声を漏らすめぐみんは、背筋をゾクゾクと震わせているのが一目で分かる。
本格的な抽送の動きが始まると彼女も応じて腰を巡らせ、ズボズボと中年男の肉棒が抜き差しされる回数の増すごと、淫らな喘ぎを大きくさせていった。
「あふっ。あっ、アッ、エッチな……音っ。もっとです。もっとですよ! 私の頭を……もっとメチャクチャになるまで、このおちんちんでかき回して貰わなきゃいけないんですから……!」
下から見上げる少女の瞳はいよいよ赤く爛々と輝いている。
もはや止めどもなく漏れ出てしまう淫らがましい反応の声。それと共に顎に伝っていきそうな涎を気にしてなのだろう、しきりに舐め回している唇が艶めかしい。
とても14歳になりたての小娘とは思えないほどだ。
最初の邂逅の頃。それ相応の初々しい反応でいっぱいいっぱいだった時から、調子に乗って大人の女相手にさせるようなあられもない体勢のあれこれを覚え込ませた張本人、それがこの中年男なのだったが。男という生き物にとってはある意味厄介な素質の持ち主を目覚めさせてしまったかなと、少し申し訳なく考えるのだった。
どうせ息子が責任を取ってくれるのだ。
「なんの後顧の憂いも無い、とか言って済ませてしまうと、先々ブーメランが返って来ちゃったりするかな?」
「なにをブツブツ言ってるんです。集中してくださいよ」
『私に!』と、濡れた瞳が下から見上げる。
紅玉のように透き通った美しい瞳が、劣情に潤んで男を誘う。
「ほら、私みたいなロリっ子――もとい、若い娘相手だと、こちらの男性は……あっ、アッ……あっ。見ている、だけで、捕まると聞きましたよ……!」
やっちゃいけないことほど、やらかすと最高な気持ちになれるのだと。
乱れきったワンピースの胸元から身体の弾ませ方次第で丸見えになっている、下着を付けない少女の胸。乳房らしい隆起にもなっていないロリータの風情も甚だしいそこで、異様に目立つ二つの赤い乳首が、男の目を引き寄せる。
「こんな飛びっきりの美少女を好きに出来てるんですから、あなたの本気というものを見せてくださいよ!」
「生意気なお嬢ちゃんに言われるまでもない」
あの乳首をもっともっと、痛みと快感で泣き出すくらい苛めてやって。腫れ上がってずっともっと大きく見えるぐらいにしてやったら、どれだけ卑猥だろうか……と。そうとりとめもなく思い浮かべながら、男は応えた。
「覚悟は良いだろうね。僕はワイフには二人子供を生ませてる経験者だからね。君にも先達を敬う、立場相応の態度ってやつを教えてあげよう」
「……最、高、ですよ。うふっ、ふふっ。望むところです。この、私の中で偉そうにしているおじさんのおちんちんが、口先倒れじゃないところに期待させて貰いますよ……?」
下から抱きついたまま、感触を確かめるかの様子で腰を動かしてみせる。
「ぁはァ……」
めぐみんのちっぽけな膣を大人の最大膨張ペニスで串刺しにしているのだ。お腹の下の方、裏側から突き破ってきそうな感覚さえあるのだろう。
「実績のある大人の男の本気がなにか、分かっているのかな?」
「ふふ、格好付けてますね。分かるんですからね……。ンッ、アンっ!? なんです……?」
「よいしょ、っと」
狭い車内で始めた交わりだが、体格差で男には随分とコンパクトに感じられるめぐみんのお尻である。両側から鷲掴みで掴み上げ、屈めたお腹に抱え込むようにしてしまうと、具合良く当たる場所を自在に変えられるようになり、
「ンっ!? あぅっ、ッ、これぇぇ……」
ただでさえぱんぱんに充填された腟内を、少女が悦ぶだけ幾らでもリクエスト通り小突き回してやれるようになった。
「い、ひっ、イイですッ。とってもぉぉ……イイですぅ――。こんなにっ、ああっ、出来るなら……! もっと本気に、もっともっと本気に、本気で私をぉぉ……!」
見付け出した体位は彼女も随分とお気に召したらしく、蕩け貌でああんと、囀るように甘い嬌声を上げっぱなしにさせていくのだった。
「こっ、これぇぇぇ……。このおちんちん、こんなに私にぴったりなんです。もうこれは……私専用ということで、良いですよね……」
「それじゃあ、君のここは僕専用ということで良いのかな? 僕のだと最後まで咥えきらない、ちみっこい躯のくせに」
爛れきって尚、窮屈な蜜壺をこじくられ、揶揄われて。めぐみんは上と下の両方の唇から、とろんと心地よさげに涎を垂らした。
「しょっ、そこはぁ……」
呂律が回らなくなっていたベタベタの口元を一度、それだけこなすのでも大儀そうに噛んで、歯で唇を揉むようにしてから、
「その、カズっ――息子さんに悪いからと、遠慮するところじゃないんですか……?」
「んん? それじゃ、あいつのだとココはどうなんだ? 君のこのおちょぼ口みたいな可愛らしいのに、ぴったり合うぐらいなのかい?」
「あぁ……」
子宮口を圧迫され、膨れ上がった下腹部の内側をゴリゴリ掻き混ぜられている感触に、酔いしれていたい。その欲求にすぐにも飲まれてしまいそうな自分を愉しむ一方、少女は少しだけ呆れた風に、息を吐き出した。
「それ、あなたの方が大きくて立派ですと、そんなことを言わせたいんですよね。……息子のその、こ、恋人の口から」
「息子の恋人を寝取る。これも男として生まれたならの浪漫、一つの冒険さ。まぁ、答えはもうこっちのおクチで言って貰ってるみたいなもんだから、勝ったも同然だけどな」
男が首を動かし、見づらい体勢になった少女との結合部分を覗き込むようにした。
互いの体液でぐちゃぐちゃになった陰毛が黒々と密集している、その中年なりに幾らかは弛んだ下っ腹に抱え込んだ少女の下半身は、対照的に少しも発毛が見えないぐらいすべすべとしていて。やはりグチャグチャのいやらしい粘液で、若い瑞々しい肌を汚していた。
こじ開けた格好で割り拡げられた幼い女性器に、男の黒ずんだ色をした陰茎が根本を残して潜り込んでいる。
「もうっ、違いますからね! 私の方が、この溢れんばかりの女の魅力で、あなたを血迷わせたんです」
男が抱きしめる力加減を間違えればたちまち折れてしまいそうに、どこもかしこも細っこい体付きではあるが、めぐみんは良く応えていた。即席のベッド代わりの助手席で、小さな肢体に伸し掛かられてというより、むしろ彼女からもせり上げさせた下半身を押し付けるようにして、腰を精一杯振りたくる。
「あっ、ハゥっ……っッ。あっ、あっ、アッ! アッ――アッッッ!!」
彼女自身は勿論、男が受け取る快楽にも奉仕する懸命ぶりは、たちまち顔中を真っ赤の汗だくにさせるハイペース。
火照りようと汗まみれぶりは起伏に乏しい未成熟な胸元も、はだけた肩も、男の腰に回された太腿も同じ。スカートをはしたなく捲り返らせた下半身で、濡れ濡れになった連結部周辺は一際だ。体中の服から覗いた白い火素肌の部分を、扇情的なピンク色をした発情サイン一色へと変えてしまう。
「ふわっ、あっ、あふっ。ぁふわぁぁッ」
「フッ、フッ、フッ……。ムッ、っ……」
言葉数も少なくなっていったどちらの顔にも、オーガズムの大波に押し流されるその時が近いのが見て取れる。
きゅぅっと陰嚢の近くが引き締まる感覚があり、その瞬間の間際だと分かっても、男に躊躇は無い。ただいっそう少女を犯すピストンの動きを加速させるばかりだった。
「もっ、ダメです……。イキます。わたし、もうそこまでっ……イキそうで、ッ、っっっ!?」
「フッ、フッ、フッ、ぅおおおっ!」
甲高いよがり声と太い唸り声とが、一心に。
年齢差も立場も、なにもかも投げ棄てて。この小さく閉鎖された空間でただの男と女、服こそ脱ぎ捨てず残してはいても、もはやケダモノの牡と雌となにも変わらない。
「気持ちいいっ! 気持ちいいですっ! 気持ちっ、イイぃ……っ!!」
「うおぉっ。なんて、締め付けてきてっ」
肉の交わり合いでぴったり一つになる快楽への貪欲な意思だけが、明らか。
ここに至るまでもう何度も、カッとなって騒ぎを起こしためぐみんを落ち着かせようと魔道具が使われた回数だけ繰り返されていた行為に、馴染んだ肉体同士。呼吸を合わせて全身を揺らし、共に快感の頂点へと登っていくのも既にお手の物だ。
「……っッ! っッ――ッッッ! ああああ゛あ゛あ゛っっッ!!」
いよいよ自分でも分からなかったタイミングに『ひぎっ!?』と歯を食いしばり、ビクビク全身を痙攣させだしためぐみんに続くこと、数回の抽送。遂に男も、直前までには引き抜いておこうという、過去の毎回とは言わず見せていた配慮を、この時は微塵も感じさせることなく。飛沫を立てる勢いの射精をドクドクと、もうちゃんと初潮を迎えている子宮に向かって繰り返し繰り返し、噴出させていったのだった。
◆ ◆ ◆
「ふわぁぁ……」
男の胸の下、軽く仰け反るように身体をシートから浮かせて、小刻みな痙攣と共に過ぎていった一時は夢見心地のようだったのだろう。
アクメの恍惚を噛み締めためぐみんの口元では、うっとりと淫蕩な余韻が消えないまま。
お腹の奥深くに向かって一直線に蜜肉の小路を潜り込んだ猛々しいものを、未だみっちり頬張らされている。そこに残ったとろみのある感触。
容赦なく最後の一滴まで行われた膣内射精が、軽く内腿をもぞつかせるだけで入り口まで溢れ返りそうになっているのが分かる。
決して不快ではなかった。
「ンっ……」
普段ならパンティで覆っている場所だ。陰阜をすり切れるぐらい擦り合わせた直後でもあったから、車内の僅かな空気の流れだけですぅすぅとしている。
肩で息をしている男は、それでもめぐみんに体重を被せたりはしていなかった。
幼い愛人の尻肉を抱え込んだ姿勢からはそのまま手を突いて支えるのも難しかったからか、斜めに体を崩してドア側に寄りかかった余計窮屈そうな格好だ。
紳士的なというより、優しいのだろう。ごく自然体で。
そんなところにも通じる面影を見出してしまう。
どうして好意的にならずにいられるだろう。この男性はやはりあの少年の父親で、彼に多くのものを与え、伝えた人なのだ。
彼の持つ多くの美点の元になったものが、この決して逞しいとは言えない――けれども幾度となく抱かれた女としての欲目なのか、頼もしくすら見えてくる胸板の内側に宿っている。
例えばそう、ふと気付けば悪戯っ気のある眼差しでこうして彼女を見詰めているようなところも。
(このひとの専用にだなんて、冗談では言えなくなってきましたね……)
他に道がないのならと、あくまで理性による判断のもとで躰を預けた筈だったのに。心までが馴染んできていた。
変われば変わるものだと思うし、変わってしまったことに空恐ろしさすらめぐみんは覚える。
あの少年と友人以上恋人未満だなんて建前で付き合い始めた頃は、肉体関係についても『責任を取ってくれるなら』と但しを付けて受け入れようとしていた。それぐらい当たり前に後先のことを判断出来ていたのが、そもそも責任を取ってもらうわけにも行かないこの妻子ある男性相手に、いつ子供が出来てもおかしくないことまで全てを、今となっては自分から進んでのように許してしまっているとは。
「…………」
見られている前だからこそふと気付いて自重したが、熱い迸りが子宮にまで届いてしまっただろう場所を、めぐみんは無意識に触って確かめたくなっていたところだった。
「ふむ」
「……なんですか? 夜明けにはまだ随分遠いみたいですけれども、コーヒー代わりの小洒落たピロートークでも聞かせてくれるんですか?」
「いやなにね。抱いた女をちゃんとイカせてやって、これだけ満足そうな顔を拝ませて貰えたなら男として満点だと思うんだけどね?」
ただ――、と。
「体、透けてきてる気配がないよね。まだ、向こうには帰れない感じ?」
異世界転移の前兆現象であるそれを指して男は言った。
もう何度も経験しているのだから慣れたものである。
「…………」
これは言わば、向こうで爆発しかけためぐみんを、こちらですっきりさせてやるのが達成条件というミッション。
満足セックスするまで戻れない異世界、というわけだ。
あどけない顔に一人前のオンナの表情を浮かべて、聞くだに悩ましいイキ声で絶頂したはずの彼女が、一向に復路となる転移を起こす様子がないのなら、
「――ええ、ええ、そうですよ!」
その通りですよ! と、めぐみんは顔中を真っ赤にして喚いた。
「どうせ、すぐにお代わりを欲しがるエロい女になったと思ってるんでしょう! 正解ですよ! どんな気分です? してやったりですか!?」
丁度そういう自覚があった所だっただけに、余計に気まずかったのだ。
「そう、いきり立たなくても。別に改めて恥ずかしがらなくても良いだろう? 一回で済まなかったの、これが初めてでもないんだし」
「そういうデリカシーに欠けるところ、ほんと親子ですよ!」
有り体に言えば男の言う通りである。
紅魔族の里で同じ年頃の女の子たちを集めても一際小柄で、発育レースに差を付けられていたのが彼女だ。可憐な秘所はほぼ無毛。肉ビラのはみ出しもない女陰は未だいとけない童女同然であって。れっきとした成人男性が最大まで勃起させたペニスともなれば、こうしてツルツルの割れ目に実際深々と突き立てられていても、それでもまともに入りっこないのでは、壊れてしまうのではと思わせる。
そうでなければ一本の筋のようなクレヴァスを、左右の土手肉ごとぐにゃりと変形させて無理矢理めり混んでいるような。めぐみんの悦びの声がなければ、字に書いた通りの暴行にしか見えないぐらいの強引さでやっと、この親子ほども離れた年齢差での肉交は成立している。
受け入れきるのに最初は随分と苦労もしてみせていた大人ペニスにも漸くこうして身体が馴染み、自在に快楽を貪れるぐらいになってきてからというものの、彼女はむしろ打って変わって――という、そういう話であった。
「もうすっかり、一回だけじゃ満足できない欲張りな身体ですからね。だいたい何ですか、あなたこそ!」
めぐみんはいよいよ火を吹きそうな恥ずかしさなのか、涙目にまでなってまくし立てている。
「こんなに一杯わたしの中に注ぎ込んでおいて、全然ちっさくならないじゃないですか! 抜かず三発とかいうやつですか!? そういうチャレンジ精神か何かですか、これは」
変態なんですか、ロリコンなんですかと、次第に照れ隠しが行き過ぎて、自分でも本意ではないのに口がエスカレートしていく。
冒険者のはじまりの街、アクセルに出てきて暫く、拾ってもらったパーティー片っ端から丁重に追い出され、禄に食事も取れないところまで追い詰められた理由の半分ぐらいはこれだったろう。
幾つかは男にもしっかり刺さる言葉のキレっぷりだったが、しかしここで売り言葉に買い言葉とはいかないのが年の功だ。
『そうだね』とあやす具合に受け止めて、ゆっくり優しく髪を手櫛に梳いてやる。
「なんですか。撫でポとかいう黒髪黒目の人たちの間で流行ってる秘術だとかのつもりなんですか? こんなもので絆されるようなチョロイ娘じゃありませんからね、私は」
そうは言いつつも次第に目付きの険も取れて、頬を撫でてやった男の手のひらに気持ちよさそうにしている。
攻撃的な気質でいて、気を許した相手にはこんな人懐っこい猫を思わせる貌を見せもする。本当にあどけない、子供のような女の子なのだ。これだけ淫らがましく乱れる姿を披露しておいて、その一方では。
それはこの後、倒したままの助手席で待ちきれなさと男への挑発を兼ねるようにくちくちと精液まみれの秘唇をいじくるめぐみんを乗せたまま滑り込んだ先の、ラブホテルでも同じだった。
個室に入ってしまえばもう邪魔の心配も要らない。良い歳をした中年男とその胸ほどまでしか背の届かない少女の、二人きり。
気忙しく男の手を自身へと導きつつも、転移の瞬間に備えてめぐみんは服を完全には脱ぎ捨ててしまわない。その分、更に胸元などはだらしなくはだけさせて。今度こそ自在に手足を絡めての激しい行為が可能になった広いベッドでの、肉交の再開。
薄い胸を締め上げていた上着の飾り紐を解き、普段から露出させている鎖骨の直ぐ下まで以上にずらし落として男の目を誘い、そしていじらせやすくした胸乳。肌を直接晒してしまえばさすがに男子だと見違えることはない。その程度には膨らみかけの、そしてなによりツンっと乳首が尖り立ったAカップほどの丘陵を、ざらざらとした手に撫ぜ回して貰う。
自分の方から『もっと強く……。跡が残ってもいいです。握りつぶすぐらいにもっと、もっと可愛がってください!』とすらも。
先端のコロコロとした感触を転がされて更に硬くさせると、続けては音を立ててしゃぶり吸われ、周辺に歯型まで付けられていった。
刺激としては痛みの成分の方をより多く与えられてしまっても、それでも自覚できるほど股間が熱くなって、愛液がだだ漏れになっていく。
大人の男に乱暴に扱われて、それでゾクゾクと興奮してしまう類の性癖を自分の中に見出すことになるとは思いもしなかっただろうに。彼女は心底嬉しそうに『アッ、アアッ』と何度も顎先を跳ねさせ、男の頭を掻き抱くようにしていった。
こういう抱かれ方をした。繰り返し、教え込まされた。その記憶は転移のたびに封じられていたが、より深い領域にはしっかりと根付いていたのである。
執拗に唇と歯、そして舌で愛撫され、はしゃぐような嬌声のスイッチ扱いされたそこは、色付きが瞬く間に薔薇のごとくに濃く変化してしまった乳暈ごとぷっくり、倍には膨らんでいっただろうか。
男の指の一摘まみに少し余る分がぷくりと隆起し、ロリータボディの発情ぶりをアピールする有様は、そこだけが過剰に成熟を促進させられた風情のパフィーニップルだ。
二戦目、三戦目と精を注がれ、ベッドの上にくてりと精根尽き果てた肢体を投げ出すまでに肉交の悦びに溺れた後も、足を開いたまま白濁した残滓が溢れ返ってくるに任せている性器に負けないだけ、そうやって肉付きの薄いなだらかな胸に二箇所、天井に向かってツンと尚も主張を止めない乳首の様は、
「……満足です、って言わなかったっけ?」
「んふ、ズキズキって疼いてるのが収まらないんですよね。おっぱいと、股のところと。自分でもコレ、今このまま帰ったらどうなるんだろうってぐらい固くなったままで、この部屋の冷えた風が当たるだけで背筋まで痺れが響いてきそうです」
後戯めかして優しく頬や耳たぶ、髪を撫でてもらいながらも、それは一層ギャップのある淫乱さの象徴じみていて。
靴を抜いだタイツの足先でぎゅっ、ぎゅっと指を丸めたり伸ばしたりしているのは、敏感になった場所をエアコンの冷風に撫ぜられる刺激を、まだうっとりと愉しんでいる――性欲の収まらなさとも見える。
余韻は余韻として浸り、寛いだ表情とは裏腹であっただけに、そこで漸く転移の前触れでもある身体の透過が起こりはじめた時、二人は互いして顔を見合わせ、笑ってしまったのだった。
「……満足しただろうってことらしいですよ」
「ちなみにその格好のまま帰ったらどうなるんだろうね。一応、裸ではないにしたって、胸もそんな有様で丸出しだし。スカートも短いから太腿が見えてるだけでもなぁ」
「あなたがこんなに出して汚すからいけないんですよ。まぁ、都合よく辻褄は合わせてくると思うんですけどね」
◆ ◆ ◆
『ほんとうに恐ろしい魔道具ですよ、これは』と言い残し、つば広のいかにも魔法使い然とした帽子で別れ際の表情を隠した彼女は去っていった。
もじもじと言い出しにくいことがあったかにも見えたあれは、恋人同士がするみたいな別れの前の甘いキスをひょっとして期待していたのではないだろうか。
こっちから踏み出すのを期待していたと解釈するのは、いくらなんでもムシが良すぎるとも思ったのだったが。
「まぁ、これだけ繰り返してるぐらいなんだ。次もその内だろ。その時に聞いてみるのも悪くないな」
息子の恋人であるのだから一線は引いておこうという自戒も、こう男にとって都合の良い逢瀬が繰り返され、なし崩しを重ねる度、もう流れに委ねてしまえば良いのかなと思うようになっていた。
悪魔への願い事。結局は破滅させられる顛末とセットで語られるものだが、異世界だの魔法だの、果てには悪魔の存在だのを絵空事で済ませられない体験を重ね、さんざんに美味しい思いをさせてもらっているからには、男も無事では済まないのかもしれない。
「だけど、いくら都合の良いかたちに辻褄を合わせてくるったって、これじゃ真っ先に破滅するのはあの子の方だと思うんだけどな」
すうっと宙に溶けていった彼女を見送り、ベッドの端で座ってタバコを吹かす彼の手元には、悪戯っ気たっぷりに少女がそのまま残していった黒いショーツが置かれていた。
自分自身のことながら、魔道具を使われた一瞬の間になにが起きているのか、一切を自覚しないまま過ごしている普段の彼女に対して、こちらの世界を訪れている時のあの子がどう思っているのか。
藪を突付けばそれこそ蛇が出てきそうな、女の怖さというものにも目覚めているような、そんな予感すらあったのだった。
記憶を封じられて異世界に飛ばされ、一歩間違えば行きずりの相手と関係を持たざるをえない状況に追い込まれて。しかもそれを直接実行しているのが、故意にではないとはいえ恋人によって。
道具一つで、こんなにも人生を破滅させられかねない目に遭わされて、それが繰り返し繰り返し。
――気を紛らせられることなら、こんなことだって大歓迎なんですよ。
真正面から向き合って考えていたら、頭がおかしくなってしまっても不思議は無いのだからと、そんな言い訳も口にしていた。そうやって自分からスカートを捲り上げ、大洪水の愛液がシミを広げるショーツを見せ付けてきた最初の頃。
そうまで言われて迫られたなら仕方がない。その理屈で男も納得して、年端も行かない少女に人倫に悖る真似を繰り返してきたわけだ。
割り切ったという体で関係を深めていっているあの少女とのこれからは、きっとこの先もずっと続いて行く。
それがどこに向かってかは知らないが、きっと表面に見えている範囲で彼女がそう振る舞ってみせている以上に、深まってきていること、進行していることがある筈なのだ。
「……ふぅっ」
細く唇から押し出していった息に乗って、煙が伸びていく。
ある程度まで勢いよく伸びていって、その先で壁に当たったかのようにもやもやと散らばって、霞んで薄れて。
一人きりになった静かな部屋で、まだ暫くは帰らなくていいかなと、そう男は考えていたのだった。
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