ヒカリ日記
Original text:引き気味
『 夏の日 』
寝そべったまま、陽射しの射し込む方を仰ぐ。
窓のひさしを掠めて手元の畳を焼く陽光は、ヒカリの汗みずくの肌もたちまちに乾かす強さだ。ひさしが落とす影に収まる二の腕と、直に日に焼かれる肘から先。同じ肌の色とは思えない二色の境目は、放っておけばそのまま、日焼けになってしまう。
ぬらついた指をなんとなく広げて、陽射しを手のひらに乗せる。
さっきまでの奉仕の後始末もしていない手指だから、暫く灼かれていれば絡まっている精液が糊の跡のようになって、かさかさと剥がれ落ちていくのだろう。
「お布団、干しておこうかしら」
開けっ放しにした縁側の先に、こんな日に昼になっても洗濯物の一枚、吊しておいてもらえていない物干し台が、目に留まったのだった。
雲一つ無い空から降り注ぐお日様の光というやつが、無性に勿体無く思われた。
「……別にいいんじゃないの」
すぐ側から髪をかき上げながら身を起こした姉が、そう気怠げに言ってふんふんと鼻をならす。
「うーわ、生臭い。っていうか、イカ臭い? 干したくらいでどうにかなるって感じじゃないし、全部干すのも面倒だわ。気になるなら、ノゾミのベッドの布団はまだ使ってなかったんじゃなかったっけ?」
暑い暑いとボヤいて裸の背中を掻いていた姉は、解けた長い髪がどうしても汗で背中へ張り付いてしまうのにうんざりした顔を見せると、シャワーを浴びるといって立ち上がっていった。
それを聞いて、やはり父親の布団に寝転がっていた妹が自分もと、ぴょこんと体を起こす。同じくらい体力を使った後の筈なのに、えらく元気な足取りで追っかけていく。
「ね、コダマお姉ちゃん。どうせならプールだそうよ。浮き輪と一緒にしまってあったでしょ? あの、ぷくーって膨らますやつ」
「あー、でもあれ小さくなかったっけ? あんたは良いかもしんないけど、あたしじゃ水浴びにもなんないわよ。それよか、水風呂張ろうよ、水風呂」
本気で暑さに辟易としているらしい。じゃれついてくるノゾミを普段なら女同士のタッチで構ってやる姉も、邪険に振り払おうとするばかりのようだ。
出るところも引っ込むところもまだ平坦な裸をぴとりとすり寄せ、ねだっていたノゾミにしたところで、涼しい気分が味わえるならそれで構わなかったということか。まぁ良いかと頷いて、可愛いお尻を丸出しのまま、先に風呂場へと駆けていった。
「ちょっと、あたしが先にシャワー使うって言ったんじゃない」
それで済むかと思った話だったのだが。
ヒカリがそのまま父親の体臭も濃い布団に寝転がって暫くしていると、廊下の向こうからやけに面白がっている風のその父親の声が聞えてきたのだった。
また午後からのシフトで出掛ける支度中だった筈だが、髭を剃っている洗面所の鏡の前だと、娘達の会話も耳に入っていたのだろう。
聞いていると、どうせ近場の市営プールも閉鎖されてしまったのだしという話になっていた。
◆ ◆ ◆ 「……時間、良かったの?」
「良い良い。どうせこうなっちゃうと、父さんの仕事も半分店じまいみたいなもんだ。車のバッテリー切れかけてるの忘れてたら、この停電で家から動かせなくなって遅れたとでも言っておくさ」
ビニールプールと一緒に引っ張り出してきた浮き輪と一緒に腰程度の水に浸かって、チャプチャプと。ノゾミはご満悦だ。
そのノゾミに、もっと足を開いてなどと注文を出しながらカメラのシャッターを切っている父親は、結局もう一戦お愉しみをしていくことに決めたようだった。
ピニールプールの縁に左右で膝の裏をひっかけさせ、無毛の秘部が丸出しなった写真を撮る末娘と、そして長姉には素裸でいさせながら、ヒカリにはわざわざ学校指定の水着を着けさせている。
その方が面白い、のだそうだ。
ヒカリが恥ずかしがりつつ紺のスクール水着姿を披露するとすっかり喜んで、持ち出してきたカメラの餌食に真っ先に選んでいた。
小さな円形ビニールプールには成長しすぎた躰で窮屈そうに、ヒカリが乳房を、秘部を、水着から覗かせて様々に取ってみせるポーズ。顔をやに崩れさせながら、昨晩の分をPCに移動させたばかりのメモリーディスクを消費していた。
ささやかなプールに張ったばかりの水を最初に汚したのは、そうして復活させた勃起をヒカリにしゃぶらせ、射精の瞬間を紺色の生地の胸元に擦りつけながら行った飛び散りでだ。
「パパも結構マニアックよねー。あ〜あ、私も中学の時の水着、取っとけばよかったな。良かったわね、ヒカリぃ? 時間無いところでしっかりパパに愛してもらえて」
「か、からかわないでよ、お姉ちゃん。どうしてもう、こんな水着くらいで……。それに、お庭でなんて」
「どうせ、ご町内でまだ疎開もせずに残ってるの、ウチぐらいじゃない。気にしてどうすんのよ」
そうやってニヤニヤとするコダマに、じとっと水を吸った水着の胸の辺りを突かれると、隣近所に完全に開かれてしまっているロケーションもあって、いたたまれない恥ずかしさが込み上げてくる。
それでも、ぬるぬるとこびりついた精液を指で塗り広げるようにされると、生地を突き上げて勃起してしまっている乳首の様子を指摘されているのと同じで、ヒカリはまた別の意味で頬を染めて俯かねばならなかった。
「あ、パパ。思いついちゃったんだけどさ、お隣さんの庭にこのまま裸でお邪魔しちゃわない? ほら、塀から見えてる立派な木があるじゃない。スク水のヒカリをこう縄で縛り付けて、ガンガン犯して上げるのよ」
「ほう?」
「すっごい興奮しちゃうと思うんだけど」
「お、お姉ちゃん!」
また無茶を言い出す姉だ。
しかも即座に理解できてしまったのだが、恐ろしいことに、その淫らな思いつきを押し留めておかねばならない理由が今、ヒカリたちの周りには存在しない。
街を襲っていた怪獣との戦争が激しくなって、市街にあちこち酷い被害が出たせいで、近所中は殆ど疎開してしまった。今やまるで、ゴーストタウン同様の無人状態。
禁忌の行いに耽るヒカリたち一家を見咎めるべき視線は、もうそこには無い。
おかげで昼日中からでも声を閉じ込めておく必要さえなく、エアコンが使えないからと窓を開けっ放しのセックス三枚で、あられのない叫び声を上げている始末。
「ほ、本気にしないよね、お父さん。だって、もうそろそろ……時間も……」
「そうだなぁ。さすがにそこまでの時間は厳しいんだが」
「じゃ、明日の夜にする? ……ふふ、パパさえ良ければ、その間お仕事中の気晴らし用にあたし達でご近所ロケハンして、お勧めスポットの写真メールしちゃうけど。勿論、モデル込みで、ね」
「おいおい、父さんをクビにさせたいのか? ネルフにそんなメールを送ったら、一発でお終いだろう」
「あん、残念ねぇ。それじゃ、スク水肉奴隷ちゃんのご近所SM写真集は、パパだけ明日帰ってくるまでお預けね」
苦笑する父親に、姉妹で一番の女らしさを備えたバストを押し付けてアピールするコダマ。要するに、妹たちにばかり構っていないで、自分もしっかり可愛がっていけというのだろう。
◆ ◆ ◆ 「あン。やっぱりこれよ、これぇ。パパのおちんちん……。うふふっ、みんな聞いてぇン。わたしのパパのおちんちん、最っ高ぉー!」
「こら、コダマ。わざわざ大声まで張り上げることはないだろう。一応は偶々ってこともあるんだからな」
「そう言ってぇ……。あは、裸の娘達に玄関先で水遊びさせてるような、変態のくせに。門扉だって開けっ放しで、見回りのパトカーなんか来たら、一発でオシマイなんだからっ」
縁側に手をついて、すらっとした足を開いた後ろから父親の抽送を誘い入れたコダマは、際どい睦言をねちっこいキスの合間に交わして、貪欲に官能を貪っていく。
ビニールプールではしゃいでいたノゾミも静かになり、足をもじもじとさせながら姉と父親の交わりに見入っているようだ。
そうしてヒカリ自身も。
頼りない目隠しである門すら開け放たれた、この心許ない場所に怯えつつも。姉に独り占めにされてしまった父親の、逞しく腰を振る後ろ姿に、間近にする荒々しい息遣いに、喉の渇きを覚えていたのだった。
「お姉ちゃんも、お父さんも、分かってるくせに……。それなのに、どうしてこんな……」
その可能性への不安が脳裏を離れない通行人など、いつまで経っても通り掛かる気配もなく。車の音さえもまるで聞えてこない。
そんな中で、せわしない蝉の鳴き声だけは平和だった頃と変らない。
この終わらない夏の、その切れ端程度を懸命に生きようとする彼らの賑やかさ。それは、彼女ら家族が獣に落ちぶれて放つ淫らな叫びを別とすれば、もはや殆ど唯一の、街の住人の証明だった。
いつかはヒカリ達だって、父親を置いて街を離れねばならないのだろう。
ここは危険だ。
空を見上げれば、視界の端を、赤茶けた地肌をむき出しにして崩れた山々が掠めてしまう。
努めて見ないようにしていても、そこになぎ倒されている残骸は、元は整然と立ち並んでいたビルやモノレールの高架橋だったもの。かつての、ヒカリの日常を取り囲んでいた景色だ。
それらはすっかり、変ってしまっていた。
「あンッ、ア、アんぅっ! ンっ、んふぅ、ぅ、ぅや、やんっ。それっ、それぇっ。パパっ、パパっ、パパぁ〜。もっと……! ね、もっと奥ぅ。コダマの、おく、突いて、ついてぇ」
すっかり目も虚ろにして、自分で片胸を揉みながら、交媾の歓声をあえぎ散らしている姉。
実の娘にするものとも思えない血走った目で、鼻息も荒く、腰を動かしている父。
はぁはぁと、切ない息を漏らして未熟な秘部をプールの中で慰めている妹。
そして、水着の股布をのけた下に指を差し入れて、昨晩の名残をかき出すようにしてしまっている自分。片手では、たった今父親に掛けて貰った胸元の精液を、無意識に乳房ごと撫ぜ回してねちゃねちゃと、反芻している。
これらだけが、変らない。
ヒカリの日常を、今に至って変えずにいる。
(い、いやらしい。いやらしいわ、みんな……)
にちゃり、にちゅりと。膣に押し込んだ指を動かすたびに、ねばついた音がして太腿に伝い落ちていく。
ぬるぬると滑りが良くなった生地がまさぐり易さを増す胸元に、ぽっちりと疼く乳首を意識させられる。
昨日の夜――いや、今日の朝か。注ぎ込まれた量が、こんなにあるのに。
それなのに、ヒカリの下腹は厭らしくわなないてしまっている。涎を、新しい蜜を漏らしてしまっている。
咥え込んだ指が父親の太い性器であれば良かったのにと、肉襞全体で浅ましく締め付けながら。
「んっ、んふっ、……っく、くふっ」
人差し指と中指を突き立てる傍ら、親指の腹で敏感な肉真珠を揉み慰めたが。腰を走り抜ける快美感と裏腹に、物足りなさがなお募る。
「コダマ、コダマっ」
獣の交尾そのままを思わせる姿勢で繋がりあった父と姉。
こちらに向いてぱんぱんと小刻みの音も忙しない父親の尻の下で、赤黒い、袋になった部分が勢い良く揺れている。
「あおっ! ぉ、ぉハッ、ハッ、はぁぁぁっ、あっ、あはっ。いひぃィィイイッっ!」
のし掛かられて下になっている姉が時折、酷くドキッとさせられる声を上げて裸をしならせると、ある種ユーモラスに揺れる陰嚢の下に、同性の目には生々しいとしか言いようのないローズピンク粘膜を露呈させた秘裂が現れる。
姉のものか、父親のものか、混ざり合ってか。いやらしい汁なのだろう飛沫が、盛んに飛び散っていた。
姉の股間の割れ目は打ち込まれたペニスによって見事に割り拡げられ、土手肉ごと左右に歪んでいて。肉芽の包皮から繋がったラヴィアがずるずると、抽送で沈み込む父親につられて翻る。
濃厚に行われる交わりの場所から、ヒカリは目が離せなかった。
はぁはぁと浅ましく息を上擦らせてしまって見入る、この狂った家族のふれ合い。これだけが、この街で変わり果ててしまった何もかもを一時、嘘のように忘れさせてくれる。
「あぁぁぁ……あ、ああっ、ああああ! あ、ああぁ――」
数分後、啜り泣きをはじめた姉は、片腕一本で自分を支えることが出来なくなって縁側に突っ伏していた。
そのもう片手も、胸を自分で触っているどころでなくなったらしく、縁側の上をかりかりと力無く掻いているのみ。
父親の息は益々荒い。腰遣いのストロークも大きく、力強い物になっていく一方。
そうして、唸り声と共にびくびくと、父親の足の間から見えていた袋が収縮して。次に『もうっ、もうっ!』と限界を訴えた姉が、絶頂をなりふりお構いなしの大声で喉から振り絞って。
「も、もうっ、い――イクぅゥゥゥっ! イッちゃっ、ちゃ、ひゃうのぉーっ!! ……ぉッ、お、ぉっ、っパパぁぁぁ……!!」
まだヒカリではかなわないボリュームの胸を、縁側の板張りに、きっとコリコリに硬くさせてしまっている乳首ごと押し潰しながら、いっぱいいっぱいに首仰け反らせて叫んでいた。
「はぁっ、はっ、はっ、コダマ……。コダマ……」
達したばかりの姉の背に覆い被さって、唇を求める父。
押し潰された姉が突き出している白いお尻。それを後ろから半ば覆い隠す、父親の体毛の濃い太腿。その狭間、繋がり合った場所からは、地面に流れ落ちる夥しい液の中に、はっきりと白い濁りが見える。
姉はまた、ヒカリよりは年上でもまだ社会からとても大人とは認められない歳の、お腹の中に、父親の精液を浴びたのだ。直接。
もうずっと、ゴムを使うのをヒカリたちは止めてしまっていた。
この交わりも、今朝と昨晩のセックスも、全て膣内射精は避妊をせずに行われている。
こっそり自販機を利用していたどの店もシャッターを下ろしてしまったか、建物ごと無くなってしまったか。そして、通販ももう碌に届きやしない。
そう理由は付けられるが、だからといって放っておいて良いことでもないだろうに。
まだ初潮も迎えないノゾミなら心配も無かろうけれど、しかし。
――であっても。ヒカリは、もう父親の求める声に嫌だと言える気がしなかった。
たとえ、どんなに恐ろしい結果が待ち受けているにせよ。こうして壊れかけた街の中で、ただ一つ変らずにいる家族の体温を貪っている中では、そんな結末への想像の方が現実味を無くしていて。
だからヒカリは素直に、父親に抱いて貰ってキスをしている姉が、羨ましいと思えたのだった。
From: 【近親相姦】ヒカリ日記スレ【爛れた洞木家】